新・ ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock Presents-
鏡の中の死者
-If the Shoe Fits-
        
     アルフレッド・ヒッチコック

※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  〜双子〜〜サミー〜〜副社長室〜〜マジッククリーナー〜〜会長室〜〜企画〜〜社長室〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わりに] web拍手 by FC2
(1980年代)(米)(TV映画)-If the Shoe Fits-
演出…アラン・キング
制作…タウンゼント・フィルム・プロ ダクションズ(米)
脚本…ジョナサン・グラスナー
出演…テッド・シャッケルフォード(兄/ギャレット)(弟/ジェイソン)
ストーリーテラー…ア ルフレッド・ヒッチコック
翻訳…鈴木導

墓地。
ギャ レット…「エバリー社長は有能であっただけ ではなく 心温かい人でした
エバリーさんがアダムズ会長と共に 広告社を創立されたことは
皆さんもご存知の通りですが そこで雑用係の少年と出会いました
教育を受けられなかっ たことを僻んで 世を拗ねてた少年です
エバリーさんは少年に目を掛けて あの人にしかできぬ教育をしました
広告業務の全てに亘って 教え込んだんです
そして今や その少年はエバリーさんの会社の副社長を務めています
その少年は
少年とは 私のことです」
腕組みして聞いているアダムズ会長。
ギャ レット…「もしエバリーさんと出会わなかっ たら 今頃は刑務所の中か何処かで
のたれ死をしてたでしょ」
亡くなった社長を惜しみ涙を流す副社長ギャレット(テッ ド・シャッケルフォード)
渋い顔をして聞いているビクター。

ギャレッ ト…「本日はどうも
本当に惜しい方を」と 社長の親族たちに声を掛けるギャレット。

アダムズ…「ギャレッ ト いい挨拶だったよ
心が籠もってた」と 言うアダムズ会長。
ギャ レット…「恐縮です」と 言うギャレット。
ア ダムズ…「君がそれ程 エバリーを慕ってる とは思わなかったが…」と 言うアダムズ会長。
ギャ レット…「単なる 恩人以上の人です」と 言うギャレット。
ア ダムズ…「なるほど」と 言うアダムズ会長。
会 長の傍に来て、
ビ クター…「私にとって あなたがそうです」と 言うビクター。
ア ダムズ…「君が何故そう思うか 分からんね
もし私の親父が 大株主じゃなかったら
私は きっと今も平社員だった」と 言うアダムズ会長。
ビ クター…「…」

Top

 〜 双子〜

ギャレットが葬儀から帰ると双子の弟ジェイソンが来ていた。
ベッ ドの背に凭れてグラスを片手に、ボリームを上げて音楽を聴いているジェイソン。
そ れを呆れて見ているギャレット。
ギャ レットに気が付いてスイッチを切り、
ジェ イソン…「やあ〜 兄さん
そっちの景気はどう?」と にこやかに言うジェイソン。
ギャ レット…「何しに来た ジェイソン」と 不機嫌に言うギャレット。
ジェ イソン…「実の兄貴に会いに来ちゃ いけ ないのかい」と 言うジェイソン。
ギャ レット…「また金か」と 言い、酒を注ぎに行くギャレット。
ジェ イソン…「そう言えば この前もらった分 はもう使っちまった」
しかし 今日は違うと 言い、ギャレットを見るジェイソン。


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォード

ギャレッ ト…「お前 働く気はないのか」と 言いながら、ウイスキーをグラスに入れるギャレット。
ジェ イソン…「よしてくれよ 俺は芸術家だよ
これでもプロの俳優だ」と 言うジェイソン。
ギャ レット…「フッフフフ その仕事で金を取れ るようにならなきゃ
プロとは言えんよ」
グ ラスを片手に軽く笑うギャレット。
ジェ イソン…「フッフ〜ン 毎月金を貰って
人前に顔を出さない弟の役目を 務めてるだろう
完璧に」と 言い返すジェイソン。
ギャ レット…「それはお前の僻みだ」と 言うギャレット。
ジェ イソン…「フッフフフ」
笑 うジェイソン。
ジェ イソン…「話は違うが 兄さんは考えたこ とないか
もし俺の方が1分でも先に早く生まれていたら
立場は逆になってた」
ウ イスキーを注ぎに行きながら言うジェイソン。
ギャ レット…「そうは思えんが そのむさ 苦しい髪を刈り込んで
髭を剃ったら 少しは マシな役を貰えるだろと 言うギャレット。
兄 の方に向き直り、
ジェ イソン…「ほんと? それだけでいいの」と 惚けるジェイソン。
ギャ レット…「手始めとしてはな」


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォード

と言いウイスキーを飲むギャレット。
ジェ イソン…「それなら 訳は無いさ
やってみよう」と 言い、付け髭を外す。
ギャ レット…「何を考えてる」
首を捻って見ているギャレット。
ジェ イソン…「フッフフフ」
笑いながらカツラを取り、
ジェ イソン…兄さんみたいになりたいだけだ
悪いことじゃないだろ」と 言うジェイソン。
ギャ レット…「出来ればな」
自分と同じ髪にしているのを、不気味に思いながら見ているギャレット。
髪を整え、


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォード

ジェイソン…「毎日を 楽しく暮らす 気楽に
高級車を乗り回して クラブで食事して
美味い酒を飲む」と 夢心地で言うジェイソン。
ギャ レット…「顔が似てるだけで 出来るもの じゃないだろ」と 言うギャレット。
ジェ イソン…「よしてくれ そんなことは分 かってるさ
だから この前貰った金の残りで
これを買った」と 言い、銃を取り出すジェイソン。
ギャ レット…「どうするつもりだ」
怯えて後退りするギャレット。
ジェ イソン…「一世一代の大芝居をやる
ギャレット・クックの役だ」と 言い、銃をギャレットに向けるジェイソン。
ギャ レット…「なあ ジェイソン
ワアア 毎月の小遣いを増やすから
馬鹿な考えを起こすな」
怯えて言うギャレット。
笑って、
ジェ イソン…「フ〜ン 増やしてくれなくても 自分で貰うよ」と 言い、ハンマー(撃鉄)を引き起こすジェイソン。
ギャ レット…「そのために 実の兄を殺すのか」
怯えて顔が引き攣るギャレット。
ジェ イソン…「遺憾か」と 言うジェイソン。
ギャ レット…「ジェイソン!」
怯えて言うギャレット。
ハンマーが弾かれる。
“バ〜ン!” 
“ギャチャン!”
ギャレットが撃たれ、持っていたグラスが床に落ちる。

ギャレットの死体を洞穴に埋めるジェイソン。

Top

 〜 サミー〜

ジェイソン…「いい ね〜 俺の好みだ」
ギャ レットの服を自分の体にあて、満足して鏡を見ているジェイソン。
飾 られている兄嫁サマンサの写真を手に取り、
ジェ イソン…「ヘエッ 待ってるよ
今夜が楽しみだ」と 嬉しそうに見詰めるジェイソン。

サマンサが帰ってくる。
笑いながら大声で歌って入浴しているジェイソン。
サ マンサ…「あなた」
陽気にしている夫に驚いて浴室に来るサマンサ。
ジェ イソン…「やあ サマンサ
あっ お帰り」
不意を衝かれて一瞬恥ずかしがり体を隠そうとするが、平静を装うジェイソン。
 細かい演出が面白い。
 確かに隠したくなるだろう。
サ マンサ…「お葬式の後 会社に行かなかった の?」と 言うサマンサ。
ジェ イソン…「行ったよ リタ」
慌 てて答えるジェイソン。
首 を傾げるサマンサ。
ジェ イソン…「あっ 明日までに
やっとかなきゃいけない仕事があるんだが その気になれなくて」と 言うジェイソン。
サ マンサ…「そう」と 言い、服を着替えに行くサマンサ。
ジェ イソン…「ああっ」
サマンサを見て欲情にかられ、急いで浴槽から出るジェイソン。
サ マンサ…「ああっ」
溜 息を付きながら服を脱ごうとしているサマンサ。
サマンサをじっと見ているジェイソン。
サ マンサ…「何? 私に用」
夫の行動に違和感を感じるサマンサ。
ジェ イソン…「いや」と 言いながらサマンサに近づくジェイソン。
服を脱いで下着になるサマンサ。
ジェ イソン…「見惚れてるだけだ」
下着姿のサマンサを見て興奮しているジェイソン。
サ マンサ…「あはっ 今日はどうしたって言う の」と 笑い、脱いだ服を手に取ろうとしているサマンサ。
ジェ イソン…「ああ サミー 君を愛してる よ」と 言いサマンサを抱き寄せキスするジェイソン。
サ マンサ…「あっ」
“パチン!”
驚いて平手打ちをするサマンサ。
ジェ イソン…「やあっ」


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォードら

「なんで
私が何した!」
叩かれた頬を痛そうに押さえて言うジェイソン。
サ マンサ…「何も」
悲しそうに視線を逸らして言うサマンサ。
ジェ イソン…「じゃ 何故だ」と 言うジェイソン。
サ マンサ…「これまで 何もしてくれなかった のに」
驚いてジェイソンを見て、悲しそうに言うサマンサ。
ジェ イソン…「ええっ」
驚いてサマンサを見るジェイソン。
サ マンサ…「キスもしないし 手も握らない
6ヶ月もの間 触ってもくれなかったじゃない」と 言うサマンサ。
ジェ イソン…「…」
驚いて聞いているジェイソン。
サ マンサ…“サミー”って呼ばれたのは  新婚旅行以来よ」と 悲しそうに言い、視線を逸らし泣き出すサマンサ。
ジェ イソン…「いいかい 僕は今日から別の人間になると 優しく言うジェイソン。
驚 いて聞いているサマンサ。
ジェ イソン…「この6ヶ月 君といた馬鹿者は
今日を最後に 消えたんだ
あいつはいなくなった
新しい僕が生まれた」と 言うジェイソン。
サ マンサ…「それは前にも聞いたわ」と 言うサマンサ。
ジェ イソン…「ああ 言った
しかし 今度は本当だ」と 言うジェイソン。
ジェ イソンの方に向き直り、
サ マンサ…「ああ〜 あなたを信じたいわ」と ジェイソンを見詰めて言うサマンサ。
ジェ イソン…「じゃあ 信じるんだサミー
ずっと そう呼ばなかったことも知ってるよ
だからこそ 改めて“サミー”って呼んでるんだ」と 目を輝かせて言うジェイソン。
サ マンサ…「何故?」
ジェ イソンを見て言うサマンサ。
ジェ イソン…「“誘い”よ」と 言うジェイソン。
サ マンサ…「誘い?」と 不思議そうに言うサマンサ。
ジェ イソン…「そう “2度めの新婚旅行に”と にこやかな表情で言うジェイソン。
サ マンサ…「ああっ ああ〜 ギャレット
あっ ああ〜」と 嬉しそうにジェイソンに抱きつくサマンサ。
兄の名前を言われて“まっ 仕様が無いか”という表情を浮べて喜ぶジェイソン。

Top

 〜副社長室〜

会社。
ビ クター…「やぁ ギャレット」と ジェイソンに声を掛けるビクター。
誰 だか判らずに通り過ぎるジェイソン。
ビ クター…「うん?」
“どうしたのだろう”とジェイソンを見ているビクター。

副社長室が判らずに通り過ぎていたジェイソンに、秘書レナが手で合図する。
“あっ そうか ここか”と思って戻るジェイソン。
秘 書レナ…「お早うございます」
レ ナが親しげに挨拶する。
ジェ イソン…「ヘッヘヘヘ」
誰 だか判らないジェイソンは笑って誤魔化して副社長室に入って行く。
副 社長室を見回し、ワゴンに置いてあるウイスキーを嗅ぎグラスに注ぐジェイソン。
ジェ イソン…「ああっ
ううん」
椅子に座り、足をデスクに投げ出して感触を味わう。
ゆったりとウイスキーを飲もうとするジェイソン。


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォード

“トントントントン”
ドアがノックされる。
ジェ イソン…「うわあ」
慌てるジェイソン。
秘 書レナ…「ハワイ行きの切符が 届いたわ
フフフン」
レナが入って来て、嬉しそうに切符をジェイソンに渡す。
ジェ イソン…「ハハハ ああ それはよかった
女房が喜ぶだろうと 言うジェイソン。
“パチン!”
驚いて平手打ちをするレナ。
ジェ イソン…「やあっ」
叩かれた頬を痛そうに押さえるジェイソン。
秘 書レナ…「何よ まだ言ってないのね」
怒るレナ。
ジェ イソン…「何を?」と 言うジェイソン。
怒って書類を荒っぽくデスクに置き、
秘 書レナ…「思った通りよ 上手いこと言って
口先だけだったのね」


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォードら

「黙って引っ込んじゃ いないわよ」
ジェイソンに詰め寄るレナ。
ジェ イソン…「よく分かってる」と 調子を合わせるジェイソン。
秘 書レナ…「じゃ なぜ言わなかったの」と 噛み付くレナ。
ジェ イソン…「ああ それは…
社長の葬式の後じゃ 話せないだろ」と 言うジェイソン。
秘 書レナ…「お葬式の前に話すと 約束よ」
ジェ イソンの真意を探るレナ。
ジェ イソン…「ああ 確かにそう言ったけど
とうとう 言い出せなかったんだ
きっかけというものが あるからね
何を話すにしても」
秘 書の反応を見ながら言うジェイソン。
秘 書レナ…「話す気は あるってことね」と 言うレナ。
ジェ イソン…「勿論」と 言うジェイソン。
秘 書レナ…「“出来るだけ早い期間に 離婚し たいから”って話してくれるんでしょ」と 言うレナ。
ジェ イソン…「“離婚?”」
驚き、
「そうだ 離婚だ
話すとも 約束だろ
違う?」と 慌てて言うジェイソン。
秘 書レナ…「守ってもらうわよ」と 念を押し出て行こうとするレナ。
ジェ イソン…「どうした〜 何を怒ってるんだ
愛してるよ レナ」と 機嫌を取るジェイソン。
秘 書レナ…「う〜ん」
ジェイソンに迫りキスするレナ。
ジェ イソン…「ああ〜」
レナの濃厚なキスに驚くジェイソン。
秘 書レナ…「ああ〜」
ジェイソンをデスクに押し倒し、シャツのボタンを外すレナ。
興奮してレナの服のボタンを外そうとして、
ジェ イソン…「待て どうなってんだ〜」
驚き戸惑うジェイソン。
欲望を剥き出しにして迫りキスするレナ。
ジェ イソン…「ううう」
興奮するジェイソン。
“トントントン”
ドアがノックされる。
驚 いてドアの方を見るレナ。
ド アの方に目をやるジェイソン。
ビ クターが入って来る。
慌 ててボタンを填めるレナ。
起 き上がるジェイソン。
部 屋を出て行こうとするレナ。
ビ クターの方を見ていたジェイソンが、シャツのボタンが外れていたのに気が付き慌てて填める。
ドアからジェイソンに色目を送るレナ。
それを見ながらドアを閉めるビクター。
ビ クター…「やぁ ギャレット
キャンペーンの企画はどうだ」と 言うビクター。
ジェ イソン…「キャンペーン?」
シャツのボタンを填めながら言うジェイソン。
ビ クター…「そうさ マジッククリーナーの売 り出しだ」と 言うビクター。
ジェ イソン…「ああ あれか
あ 勿論出来てる」と 誤魔化すジェイソン。
ビ クター…「ふ〜ん」
疑 うビクター。
ジェ イソン…「ガッカリした?」と 言うジェイソン。
ビ クター…「いやあ そんなことはないさ
結構なことだ」と 言うビクター。
ビ クターの反応を緊張して見ているジェイソン。
ビ クター…「しかし アイデアに困ってるんな ら
私がいい企画を考えてやる」と 嫌みを言うビクター。
ジェ イソン…「その心配はいらんよ 準備は万 全だ」
平 静を装うジェイソン。
ビ クター…「ふ〜ん そうか」
疑 いの目を向け、
「よかろう 聞かせてもらおう」と 椅子に腰掛けて言うビクター。
ジェ イソン…「断る
仕上げが終わってない」と 言うジェイソン。
ビ クター…「今その仕上げは あの女とやって たのか」と 言うビクター。
ジェ イソン…「まずは そんなところだ」と 言うジェイソン。
ビ クター…「いいとも もう聞かんよ
1時間後には 分かることだ」と 言い、部屋を出て行こうとするビクター。
ジェ イソン…「“1時間”?」と 言うジェイソン。
ビ クター…「スポンサーが来る」
呆れるビクター。
ジェ イソン…「ああ」
やっと意味が分かるジェイソン。
“何かおかしい”と思いながらジェイソンを見て出て行くビクター。
ジェ イソン…「“1時間”」
顔を顰めるジェイソン。

Top

 〜マジッククリーナー〜

ジェイソン…「ええっ  何処にある
何処へ仕舞ったんだ ああ〜」
引 き出しを開け探すジェイソン。
レ ナに電話してマジッククリーナーの資料を全部持ってくるように言うジェイソン。
レ ナが商品と依頼書を持ってくる。
ジェ イソン…「“ミスタークック 我が社の新 製品マジッククリーナーの販売キャンペーンに
貴下の卓抜な企画を期待しています マジックプロダク社 社長クルブ・ ボウト”」
依 頼書を読み、
「これだけ」と 言うジェイソン。
秘 書レナ…「そう」
頷 き、にっこりして出て行くレナ。
ジェ イソン…「“死んだ後までも 俺を苦しめ るつもりかよ”」と 天を仰いで独り言を言うジェイソン。
秘 書レナ…「マジッククリーナーを担当してい る 二人が来ました」
ド アを開け話しているレナを無視して、ドカドカと担当者が入って来る。
ジェ イソン…「よかった 入ってくれ」と 喜び、
「“ざまあみろ”」と、 天を仰いで独り言を言うジェイソン。
二 人の担当者に、
「どうなってる 出来たんだろ
聞かせてくれ」と 言うジェイソン。
担 当者ラルフ…「何を」
怒っ て言う担当者ラルフ。
ジェ イソン…「キャンペーンの企画だ」と 言うジェイソン。
担 当者ラルフ…「そんな物ありゃしませんよ」と 言うラルフ。
ジェ イソン…「それはどういうことだ」
怒 るジェイソン。
担 当者マン…「火曜日にあんなことされて ラ ルフと私に何が出来ます」
怒っ て言う担当者マン。
ジェ イソン…「“火曜日”?」と 訳が分かずに言うジェイソン。
担 当者マン…「アハ」
呆 れ、
「プランを全部没にされて 2日間で新しい企画を考えられると思うんで すか」
声 を荒げて言うマン。
ジェ イソン…「“プランを没にした”?」と 言うジェイソン。
担 当者ラルフ…「あんたが鼻で笑った あのプ ランを作るのに私とマンは2ヶ月も掛けたんだ」
怒っ て言うラルフ。
ジェ イソン…「ラルフ マ ン」と 二人を見るジェイソン。
目 を吊り上げて返事するマン。
ジェ イソン…「火曜日のことだが 謝る
社長が死んで 動転してたんだ」と 言うジェイソン。
担 当者ラルフ…「火曜日に始まったことじゃ  ありませんよ
何年も前から 何時でもそうだ」
怒っ て言うラルフ。
ジェ イソン…「“何時でも”」と 言うジェイソン。
担 当者ラルフ…「そう 苦労して作り上げた企 画を持ってくると
批評もせずに没です」と 声を荒げて言うラルフ。
大 きく頷いて、
担 当者マン…「そして 自分で遥かに いい案 を出すの」と 言うマン。
ジェ イソン…「あっ あ〜 悪かった」
謝 り、
「あ〜 これからは協力してやって行こう
今度のキャンペーンも 君たちのプランでやる」と 二人の肩に手を回して言うジェイソン。
担 当者ラルフ…「もう 遅すぎますよ
降ります」と 辞表を出すラルフ。
担 当者マン…「私たちの辞表です」と 辞表を出すマン。
ジェ イソン…「今辞められちゃ困る 30分で スポンサーが来るんだ」
困 り果て、怒鳴るジェイソン。
担 当者マン…「何時ものように 自分で考えれ ばいいでしょ」と 言うマン。
ジェ イソン…「…」
副 社長室から出て行こうとする二人の担当者。
呆 然とするジェイソン。
“バン!”
ラ ルフが激しくドアを閉める。
ジェ イソン…「ああっ」
ド アが閉まる音にビクつくジェイソン。
レ ナがドアを開けて、
秘 書レナ…「アダムズ会長が 直ぐ来て欲しい そうです」と 言う。
“どうしよう”
天を仰ぐジェイソン。

Top

 〜 会長室〜

ジェイソン…「ああ  お呼びでしょうか」
恐 る恐る会長室に入るジェイソン。
ア ダムズ…「ああ 掛けてくれ」
ジェ イソンが腰掛ける。
ア ダムズ…「ビクターが “何かおかしい”と 言うんだ」
会 長室に来ているビクターをチラリと見て言うアダムズ会長。
ジェ イソン…「“おかしい”?」と 言うジェイソン。
ビ クター…「君の態度が 普段と違ってるから さ」と ジェイソンを見て言うビクター。
ジェ イソン…「どうして」
反 論するジェイソン。
ビ クター…「何時もなら 自慢たらたらプラン を説明するだろ」
皮 肉を言うビクター。
ジェ イソン…「ヘっ ヘっ 会長も私の企画を 聞きたいんですか」と 言うジェイソン。
ア ダムズ…「何か問題があるのか」と 言うアダムズ会長。
ジェ イソン…「いやいや 何もありません」と 言うジェイソン。
ビ クター…「じゃあ 何故私に説明しない」と 言うビクター。
ジェ イソン…「最大の効果を上げるには 意外 性を保つことが大切です」と 苦しそうに言うジェイソン。
ビ クター…「苦しい言い訳です」と 冷たく言うビクター。
ビ クターをチラリと見て、
ア ダムズ…「君を信じよう 実績があるから な」と ジェイソンに言うアダムズ会長。
ジェ イソン…「ああ〜 決してご期待には背き ません」と 言い、会長に手を差し出し握手するジェイソン。
ア ダムズ…「頼んだぞ このスポンサーを獲得 出来れば
君の昇進は確実だ」と 言うアダムズ会長。
ジェ イソン…「“昇進”?」
驚 いて聞き返すジェイソン。
ビ クター…「惚けるのはやめとけよ エバリー 社長の後釜は自分だと思ってるくせに」
意 地悪く言うビクター。
ジェ イソン…「私の企画が “駄目だ”と言わ れたら」と 確認するジェイソン。
ア ダムズ…「何故聞くんだ “問題はない”と 言ったばかりだろ
やるさ 君ならやれる」と 言い、にこりとするアダムズ会長。
頷 くジェイソン。

Top

 〜 企画〜

ジェイソンが遅れて会議室に入って来る。
呆 れるアダムズ会長。
出 席者に向かって、
ア ダムズ…「皆さんご紹介します
ああ もうご存知の方もおいででしょうが
副社長のクックです
斬新なアイデアでは定評のある その企画は間違いなく皆さんの共感を得 るはずです
どうぞ ご期待を」と 紹介する。
ジェ イソン…「ありがとうございます
奇跡の洗剤 マジッククリーナー
奇跡の洗剤 マジック
クリーナー」   
企 画がないジェイソンは困って商品名を繰り返す。
面 白がって見ているビクター。
ジェ イソン…「奇跡の洗剤 マジッククリー ナー」と 言いながら窓際に行くジェイソン。
堪 らずアダムズ会長が、
ア ダムズ…「クック君 もったいぶらずに企画 を説明したまえ」と 言う。
ジェ イソン…「企画を」と 言うジェイソン。
ア ダムズ…「そうだ」と 言うアダムズ会長。
ク ライアント…「…」
会 長とジェイソンのやり取りに奇異の感を抱くクライアント。
ジェ イソン…「ハイ」と、 返事したものの何も出す企画がないジェイソンは追い詰められる。
困って窓の外に視線を向ける。
風俗店の看板が目に留まる。


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォード

ジェイソン…「“今夜  私を汚して”」と 呟くジェイソン。
ア ダムズ…「聞こえないぞ」と 言うアダムズ会長。
ジェ イソン…「エヘ」
案が浮かんで笑いがこぼれる。
風俗店のキャッチフレーズとキャンペーンの企画を上手く結び付けようと考えるジェ イソン。
秘 書の傍に行き、
ジェ イソン…「こういうのはどうです
美しい女性の顔を クローズアップで映し出しと
彼女はカメラに 向かって言うんです」と、 気持ちを昂らせて説明し出すジェイソン。
身 を乗り出して頷くアダムズ会長。
ジェ イソン…「“今日も 私を汚して”」と 言うジェイソン。
ジェイソンの意図することが解らないで、アダムズ会長と顔を見合わせるクライアン ト。
“何を言い出すのだろう”と聞いているビクター。
ジェ イソン…「そこでカメラはずっと引いて  傍にある洗濯機が見えてくるのと同時に
モデルは洗濯物を投げ込みながら 台詞を続けます
“どんな汚れでもいい の”と、 感情を込めて説明するジェイソン。
真意を測りかねているクライアント。
ジェ イソン…「そして実際に汚れを見せてなが ら こう言います
“口紅 脂 泥 乾い た血の染み” そして笑う
笑って」と 言い、秘書の頬を軽く叩くジェイソン。
笑 い顔を見せる秘書。
ジェ イソン…「フフフフフ」
笑 うジェイソン。
ジェ イソン…「そこへ齣落しを入れて 洗濯物 を畳んでいるシーンを載せます
勿論 全部綺麗に
モデルがカメラの方を見ながら言います
“奇跡の洗剤 マジッ ククリーナー
どんな汚れも落しちゃう 見てるうちに”
カメラがアップになって もう一度言うんです
“今日も 私を汚して
奇跡の洗剤マジッククリーナーなら
どんな汚れも落しちゃうわ 見てるうちに”と、 自信たっぷりに説明するジェイソン。
ク ライアント…「…」
ジェイソンを見ているクライアント。
身を乗り出してクライアントを見ているジェイソン。
「いいコピーだわね」と 言うクライアント。
驚くビクター。
ク ライアント…「うちの洗剤にピッタリよ」と 興奮して言い、ジェイソンの方に向かうクライアント。
ア ダムズ…「そうです ほんとですよ」
立ち上がって拍手するアダムズ会長。
ク ライアント…「いい企画をありがとう」
ジェイソンに手を差し出し握手するクライアント。
ア ダムズ…「よかったな おめでとう
社長」
ジェイソンの肩に手を回し祝福するアダムズ会長。
ジェ イソン…「ハッハハハ」
大笑いして喜ぶジェイソン。
秘 書レナ…「アハハハ」
喜ぶレナ。
後ろで苦笑いして見ているビクター。


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォードら

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 〜 社長室〜

ジェイソン…「当然だ ろ 給料も上がる
ああ そうだ
すぐ帰る
サマンサ 僕を置いてかないで」
ゆったりと社長の椅子に座り、サマンサの写真を嬉しそうに見ながら電話する。
受話器を置き、グラスにウイスキーを注ごうと立ち上がるジェイソン。
秘 書レナ…「望みが叶ったわね 社長よ
素敵だわ」と 嬉しそうにレナが入ってくる。
ジェ イソン…「私もそう思うよ」と 言うジェイソン。
秘 書レナ…「一緒に乾杯しましょうよ 私たち 二人のために」と 言うレナ。
ジェ イソン…「いやあ 事情も変わったことだ し
それは やめといた方がいいだろね」と 顔を顰めて言うジェイソン。
秘 書レナ…「何を言ってるの」
首 を傾げるレナ。
ジェ イソン…「生き方を変える」
言 い辛そうにしながら言うジェイソン。
驚 いて、
秘 書レナ…「私を捨てる気」と 言うレナ。
ジェ イソン…「そうだ」
頷 くジェイソン。
秘 書レナ…「そんなの酷いわよ」
怒 るレナ。
ジェ イソン…「レナ いい会社に推薦するよ」と 言うジェイソン。
秘 書レナ…「えっ フン」
悔 しがり出て行くレナ。
ジェ イソン…「“やあ〜 兄さん
見てるだろ どうだった
本物より上手く切り抜けたんじゃ ないかな〜
成功を祝ってくれ 乾杯”」
嬉しそうに天を仰いで祝杯を挙げるジェイソン。
ビ クターが入ってくる。
ジェ イソン…「やあ〜 ビクター
入れよ
祝杯を挙げたところだ 恨みに思わないでくれよ」と 勝ち誇ったように言うジェイソン。
ビ クター…「ううん」
笑 いを噛み殺し、首を横に振るビクター。
ジェ イソン…「その二人は?」
ビ クターと一緒に入ってきた男たちを指差して言うジェイソン。
ビ クター…「今 廊下で会った」と 言うビクター。
ジェ イソン…「ああ 一緒にどうかね」と 言うジェイソン。
ビ クター…「ああ〜 一杯貰おうか」と 言い笑うビクター。
ジェ イソン…「そちらのお二人は?」と 嬉しそうに言い、ワゴンの方を向くジェイソン。
刑 事…「結構 勤務中です」と 言い、警察手帳を見せる刑事A。
ビ クター…「そうだギャレット 刑事さんだそ うだ」と 言うビクター。
ジェ イソン…「“刑事”」
驚くジェイソン。
刑 事…「そうです
ギャレット・クックさんで?」と 言う刑事A。
ジェ イソン…「そうだ クックだが」と 平静を装って言うジェイソン。
笑って見ているビクター。
刑 事…「殺人容疑で逮捕します」
逮捕状を見せる刑事A。
ジェ イソン…「私は ギャレット・クックだ」と 驚いて言うジェイソン。


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォード

刑事…「あなたがエバ リー社長を殺害した 証拠がありまして」と 言う刑事A。
ジェ イソン…「しかし 心臓病の発作で死んだ んだろ」と 言うジェイソン。
刑 事…「死体を解剖した結果 血液から致死量 の
ニトログリセリンが発見されました」と 言う刑事A。
ジェ イソン…「ニトログリセリン?」
何のことか分からないでいるジェイソン。
刑 事…「狭心症で常用してたそうです」と 言う刑事A。
ジェイソンに手錠を填める刑事B。
ジェ イソン…「何故 私が」と 言うジェイソン。
刑 事…「薬の瓶を調べたら あなたの指紋が検 出されたもので」と 言う刑事A。
両手に手錠をされて連行されるジェイソン。


『鏡の中の死者』テッド・シャッケルフォードら

ビク ター…「あの人も年だから 焦らずに待っ てりゃ長い命じゃないのに
悪い癖だよ 欲しいも のは何でも手に入れたがると、 狸親父振りを見せて言うビクター。
ジェ イソン…“私は ギャレットじゃないの に…”と 言いいたそうにビクターを振り返って見るジェイソン。
連 れ出される。
社 長の椅子に座り、デスクに足を投げ出して感触を味わうビクター。
ビ クター…「ああ〜」


『鏡の中の死者』

社長になった気分で、
「遺憾デスクは向こうの方がいいな〜」と 独り言を言うビクター。
秘 書レナ…「ハイ 社長」
金蔓が欲しいだけのレナが、ちゃっかり乗り換えて言う。
慌てて姿勢を正し、
ビ クター…「ああ レ〜ナ」と、 満足そうに言うビクター。

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 双子の兄弟なのに兄ギャレットはリッチな生活を送っている、自分は売れない俳優 だと羨んでいた弟ジェイソンがギャレットを殺して兄に成り済ます。
  だが、想像していた生活とは違っていた。
 ギャ レットの生活を手に入れたジェイソンは、ギャレットの罪も手に入れてしまった。
  社長殺しのギャレットの罪を被ることになったジェイソンは、私は弟だとも言えない。
  兄殺しで裁かれる訳だから。
 ゆっ たりとした椅子から固い椅子に座ることになったジェイソンは、天を仰いで“ああ〜 兄貴 何という生活をしてた んだよ”とギャレットに向かって言っていたことだろう。
更新2007.11.29
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ヒッチコックがデザインしたという似顔絵

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ヒッ チコック劇場
新・ ヒッチコック劇場
ア ルフレッド・ヒッチコック
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