新・
ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock
Presents-
小指切断ゲーム
-Man
From the South-
アルフレッド・ヒッチコック
※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ
い。
☆ → 〜提案〜〜ス
ポーツカー〜〜肉切り包丁〜〜カウント〜〜素性〜 ←
記号[☆:スタッフ・キャスト →:
始めに ←:終わりに]
(1980年代)(米・NBC)(TV映画)-Man
From the South-
演出…スティーブ・デ・ジャーナット
制作…レビュー・スタジオ(米)
原作…ロアルド・ダール
脚本…スティーブ・デ・ジャーナット
/ウィリアム・フェイ
出演…スティーヴン・バウアー(青年)
………ジョン・ヒューストン(老人/カルロス)
………メラニー・グリフィス(若い女)
………キム・ノヴァク(女)
………ティッピ・ヘドレン(ウェートレス)
ストーリーテラー…ア
ルフレッド・ヒッチコック
声…熊倉一雄(ア
ルフレッド・ヒッチコック)
翻訳…鈴木導
カジノで賭けを楽しむ青年(ス
ティーヴン・バウアー)。
調
子よく勝っていたが結局、摩ってしまう。
時
化こんでカウンターに座る青年。
後
ろのテーブル席でウェートレス(ティッピ・ヘドレン)が若
い女(メラニー・グリフィス)に“無銭飲食をしようとしている
んじゃないか”と嫌
みを言っている。
実の母娘、ティッピ・ヘドレンとメラニー・グリフィスの演技が楽しめる。
若
い女の食事代をウェートレスに渡し追っ払う青年。
『小指切断ゲーム』スティーヴン・バウアー、ティッピ・ヘドレン、メラニー・グリ
フィス
その若い女はカジノで時間を潰しながら、自分に関心を示す男を待っていた。
青
年が賭けていたのも見ていたので、青年も若い女に興味を持っていた。
そ
れに二人には共通のものがあった、金がないという。
Top
〜提案〜
青年…「座っていい」と
若い女が座っているテーブル席に移る青年。
若
い女…「随分勝っていたけど あのまま止め
たの」
首
を振る青年。
若
い女…「全部取られるまで 賭けちゃったの
ね」
青
年…「儲かっている内に 皆が止めてりゃ
ここは まだ砂漠のまんま」
若
い女…「ウフッ」
笑
う若い女。
青
年…「残ったのは これと煙草だけだ」と
一枚のチップをテーブルに出し、煙草を取り出そうとする。
頷
く若い女。
青
年…「吸うかい」
若
い女…「ええ」
貰った煙草を銜えて青年を見詰める若い女。
“カチッ”とライ
ターを点け、若い女の煙草に持ってゆく青年。
そして、自分の煙草にも。
いい感じになっていたところに、裕福そうな老人カルロス(ジョ ン・ヒューストン)が、
老
人カルロス…「わしにも頼む」と
葉巻をライターの火に近づけ邪魔する。
『小指切断ゲーム』スティーヴン・バウアー、ジョン・ヒューストン
葉巻に火を点けているカルロスを驚いて見ている青年と若い女。
老
人カルロス…「二人とも若くて 親切だな
コーヒーも一人じゃ 美味くない
出来たら 一緒に飲みたいが如何かな」
嬉
しそうにしている若い女と“どち
らでも”という表情
をしている青年を見て、
老
人カルロス…「コーヒーを頼む
それと この二人の注文も聞いてくれ」と
ウェートレスに向かって言うカルロス。
青
年…「いいって」と
プライドをみせる青年。
老
人カルロス…「わしゃラスベガスの 気取ら
んところが好きでな
昨日までの赤の他人も 今日は友達だ」
二
人を見ながら、
「君たちも 今日会ったばかりだろ」と
言うカルロス。
若
い女…「ええ」と
にっこりして青年を見る若い女。
返
事に困っている青年。
老
人カルロス…「ああ遺憾 話に夢中になって
た」と
葉巻の火が消えているのを見て言う。
ラ
イターを老人に向ける青年。
老
人カルロス…「すまん」
“カチッ”と
ライターを点け、煙草に火を点けてやる青年。
満
足そうに、
老
人カルロス…「ありがとう
いいライターを持ってるな」
青
年…「何だって?」
老
人カルロス…「そいつは よく点くかね」
“何を言おうとしているのだろう”とカルロスを見る青年と若い女。
青
年…「バッチリ」と
得意そうに言う青年。
老
人カルロス…「何時も点く はずれなしに」
思
い掛けないことを言われ、言葉に詰まる青年。
青
年…「一日中試したことはないけど」
老
人カルロス…「で君は自分のライターを ど
こまで信頼してる」
青
年…「まあ 型は古いけど
いいライターだ 不自由してないよ」
老
人カルロス…「君はそれに 賭けてみる気は
あるか」と
言うカルロス。
面
白そうに青年の反応を見る若い女。
カ
ウンターで飲んでいた男が興味を持ちテーブル席へ移ってくる。
賭
け好き男…「ああ 飛び入りで悪いが
私も賭けとなると 目がない方でね」
老
人カルロス…「もう一度言う 賭けてみる
か」
青
年の反応を見る若い女と賭け好き男。
青
年…「ああ 賭けるって?」
ラ
イターを指しカルロス。
老
人カルロス…「ライターにだ」
ラ
イターを持ち上げ、
青
年…「ああ これが点くか」
老
人カルロス…「それとも点かんか」
青
年…「あ〜ああ やってみよう
最後のチップを賭けるよ」と
テーブルに置いていたチップをカルロスの前に出す。
老
人カルロス…「分かっとらんね
わしゃ賭け事が生き甲斐で 金には困らん
どうせやるんだったら 一生の思い出に残るような
賭けをやらなくては」
青
年…「どうやる」
老
人カルロス…「風のある所では 公平といえ
ん
わしの部屋へ行こう
一度のミスもなく ラ イターに火が点けば
勝負はわしの負け」
青
年…「で 何を賭ける」と
笑いながら言う青年。
意
味ありげに葉巻を吹かしながら青年を見るカルロス。
Top
〜スポーツカー〜
高級スポーツカーのボディを触り感触を味わっている青年。
『小指切断ゲーム』メラニー・グリフィス、ジョン・ヒューストン、スティーヴン・
バウアーら
老人カルロス…「さ
あ〜 遠慮はいらんよ
乗ってみたまえ」
ス
ポーツカーのドアを開け、
青
年…「どうも」
運
転席に座り、若い女に向かって、
青
年…「さあ〜 君も乗ったら
ワォ〜」と
誘いスポーツカーの感触に興奮する青年。
ス
ポーツカーを見ていた賭け好き男が若い女に助手席のドアを開けてやる。
青
年…「ワォワォ」
興
奮してハンドルを持つ青年。
若
い女が助手席に座る。
青
年…「ウウ ウウ〜」と
エンジンをかけて乗っているような気分になっている青年。
青
年…「ウウ〜ン ウッウ〜」
そ
れを見ているカルロス。
若
い女…「ウ〜ン」
若
い女も満足した声を上げる。
そ
れを見て気取ったように、
青
年…「悪くない」と
言う青年。
若
い女も興奮して、
若
い女…「こういうの 乗ってみたかったの」と
言う。
青
年…「ああ〜」と
答え満足した表情を浮かべる。
「うん」と
納得しカルロスに向かって、
「一回りしていい?」と
聞く。
老
人カルロス…「それは 後だ
賭けに勝って 君の物になったら
何しようと 自由だがね〜」
青
年…「いやいやいや
駄目だ あ〜 ほんと
スッテンテンに負けて
残ってるのは チップ1枚と」
青
年を見ているカルロス。
青
年…「下着に パジャマだけ
他に賭ける物はないよ」と“これじゃ断られるだろう”と不安そうにカルロスを見る。
老
人カルロス…「それは分かってるよ
博打は何よりも好きだ
負けて困るまでは 賭けろといわんよ
君の金を取る気はない」と
言うカルロス。
驚
いてカルロスに、
青
年…「じゃあ 何が欲しい?」
老
人カルロス…「君にとっては 掛替えのない
もの
しかし金銭的には
この車とは 比較にならない物だ」
青
年…「例えば?」
強
い口調で、
老
人カルロス…「左手の小指はどうだ〜」と
言うカルロス。
驚
いてカルロスを見て、
若
い女…「そんな賭けってないわ」と
言う若い女。
老
人カルロス…「何も可笑しいところは ある
まい
勝てば車を取れるし 負ければ小指を失う」
嫌
なことを聞いたと腕組みして下を向く若い女。
カ
ルロスに向かって、
青
年…「待て もし負けたら
小指をなくす それは分かる
でもいったい どうやって」
老
人カルロス…「ぶった切るんだ」と
スポーツカーをポンと叩く。
傍
で聞いていた賭け好き男が、
賭
け好き男…「変わった話も随分聞いたが
こんな賭けは初めてだ」と
言う。
若
い女が、
若
い女…「私 もう降りるわ」と
降りようとする。
青
年…「いやぁ〜 ちょっと待って
待ってよ」と
若い女を止める。
老
人カルロス…「悪い条件とはいえんだろ」
青
年…「そうね
もう一度話を 確認させてくれないか
皆であんたの部屋へ行って
ミスせずにライターを
10回点ければいい?」と
カルロスに確認する。
老
人カルロス…「そうだ」
青
年…「勝てば この車」
老
人カルロス…「その通り」
青
年…「一度でも ミスしたら」
老
人カルロス…「一度でもだ そう」
左
手を見せ、
青
年…「左手の 小指を あんたが取る」
老
人カルロス…「なんなら 他の指でもいい
ぞ」
青
年…「ハ ハァ」
“ぞくっ”とするが笑って強がる。
老
人カルロス…「奥さんに
結婚指輪を無くした理由を
聞かれた時の 言い訳になる」
呆
れ、青年の反応を待つ若い女。
若
い女の方を見て、
青
年…「女房はいないよ」と
若い女の反応を確かめる。
そ
して、
「すくなくても 今はね
別れた」と
言う青年。
老
人カルロス…「どうする 賭けてみるか」と
青年を促すカルロス。
煙
草を銜え考え込む青年。
青
年の反応を面白がって待つカルロス。
煙
草を銜えたまま車から降り、歩きながら考える青年。
髪
を手櫛で掻き揚げ考え込む。
左
手の小指を見て触る。
ラ
イターのことを頭に浮かべ、ポケットから取り出す。
ラ
イターを点け煙草に火を点ける。
そ
の火を眺める。
“カチッ”ラ
イターを閉じる。
決 心したのだ。
微
かに笑みを浮かべて、カルロスの方を指差し、
青
年…「おっさん
やってやろうじゃないか!」と
大声で言う。
『小指切断ゲーム』スティーヴン・バウアー
心配そうに返事を待っていたカルロスが青年の方を向き、
老
人カルロス…「よく言った それでいい
いいぞ〜」と
大声で言う。
『小指切断ゲーム』ジョン・ヒューストン
Top
〜肉切り包丁〜
カルロスがホテルの部屋の中を窺うにようにしてドアを開ける。
置
いたままになっている婦人用の下着を持ち上げ、見ている若い女を誤魔化そうとする。
若
い女が青年に向かって、
若
い女…「ねぇ こんな馬鹿なこと
どうして やらなきゃ いけないの」
青
年…「スポーツカーが好きなんだ」と
言う。
ボーイにチップをはずみゲームをやるからと釘・金槌・紐・肉切り包丁・氷を入れたバケツを用意させるカルロス。
青年…「何時やっても
点く」
“カチッ”“カチッ”“カチッ”ライターの状態を確かめている青年。
若
い女…「途中でオイルが切れたなんて 言わ
ないでよ」
青
年…「大丈夫 命を賭けるわけじゃない
小指だけだ」
強
がっている青年を見ている若い女。
青
年…「ラスベガスじゃ
通気孔に酸素を 流しているそうだ
カジノ 部屋にも だから酔いも早い
徹夜しても疲れない 気がついてた?」
若
い女…「知らなかったけど」
青
年…「ほんとだ」
若
い女…「ウフ」
笑
う若い女。
青
年…「だから 他よりもよく点く」と
言いカチッ”ライターを点ける。
青
年…「ほら」
それを吹き消す若い女。
こ れはポイントとなる。
カルロスが窓のカーテンを閉める。
肩
で“ふッ ”と息を吐き、
青
年…「さて」と
言い若い女に“軽く賭けをしてく
るか”といった表情
を見せ強がる青年。
老
人カルロス…「こっちだ」
青
年を手招きする。
青
年…「それで」と
強がって言う青年。
老
人カルロス…「よかったら サイズを測って
おきたい」
青
年…「どうして?」
“バタッ!”と
青年の左手をカウンターの台に置き、釘を片手に、
老
人カルロス…「手間は取らせんよ 1分で終
わる」と カルロス。
若
い女の方を見る青年。
青
年と視線を合わせて“やめてくれ
ないのか”と残念そ
うに下を向く若い女。
老
人カルロス…「そうか よう〜し」と
嬉しそうに小指を測り、
「いいぞ 誠に素晴ら しい
へへ 立派だ」と
声を上げ笑うカルロス。
表
情が強張ってくる青年。
青
年…「いいかい」と
強がっている。
大
きく頷き、
老
人カルロス…「ああ いいとも
もう終わった ありがとう」
“気味悪い”と思いながらも、
青
年…「なあに」と
強がる青年。
ボーイが、
ボー
イ…「ルームサービスです」と
言い入って来る。
老
人カルロス…「はあ〜 持って来たな」と
嬉しそうにボーイが持って来た物を確認するカルロス。
ボー
イ…「肉切り包丁は
持ち出すのに苦労しましたけど」
肉
切り包丁と聞き、顔を背ける青年と若い女。
ボー
イ…「他のは簡単でした」
老
人カルロス…「それはよかった
素晴らしいぞ 素晴らしい」
顔
を背けている青年に賭け好き男が、
賭
け好き男…「本当にやるのか」
引
くに引けなくなった青年が、
青
年…「ああ やってみるよ」
賭
け好き男…「遅くはないぞ」と
言っていると、ボーイが老人に話しているのが聞こえてくる。
ボー
イ…「生け贄は どなた」
老
人カルロス…「生け贄 誰がそんなこと
言った」
ボー
イ…「いや 私は ただ」
困
惑しているボーイ。
“先ほどおっしゃったのでは”と言いたそうな表情を浮かべている。
老
人カルロス…「ありがとう 帰っていいぞ
ああ これだけあれば 十分だ
ありがとう ゲームが終わったら
また電話するから
そうしたら 取りに来てくれ」と
ドアを開け困惑したままのボーイを部屋から追い出す。
それを見ていた若い女が、
若
い女…「嬉しそうな顔して
まるで バースディケーキのローソクを
吹き消した子供みたい」と
言う。
ド
アを閉め、皆の方を見て、
老
人カルロス…「必要なものは 揃った」と
バケツに入った道具をカウンターの方へ持ってくる。
上
機嫌に鼻唄をしながら台に釘を打ち付けるカルロス。
顔
を背ける若い女。
釘
を打ち付けるのを見ている賭け好き男と青年。
“カチカチカチ カチカチカチ”
老
人カルロス…「出来たぞ これでよし」
Top
〜カウント〜
鼻唄をしながら青年の左手を紐で台に固定させる準備をするカルロス。
老
人カルロス…「言うまでもないだろうが
手は釘の間に 置いてもらう」
青
年…「ああ」
老
人カルロス…「ああ それで結構
はぁ よし いいぞ」
シャ
ンパンを飲み気分を紛らそうとしている若い女が、賭け好き男を見る。
思
わぬ展開になり、嫌がっている風に見える若い女を前にして複雑な思いで待つ賭け好き男。
老
人カルロス…「どうかね」
青
年…「ああ いいよ
問題ない」
顔
を強張らせて言う青年。
老
人カルロス…「指は動くね」
紐
で台に固定させられた左手の指を動かす青年。
青
年…「ああ 動く」
動
揺してシャンパンを胸に零す若い女。
老
人カルロス…「え〜 そうだ それでいい
結構だ」
シャ
ンパングラスを賭け好き男に持たせ、零したところを気にしている若い女。
若
い女を見ている賭け好き男、いや女好き男と言った方が近いかもしれないが。
シャ
ンパングラスを受け取り、再び青年たちの方を見る若い女。
老
人カルロス…「さあっ 今度は手を握って見
てくれ
ああそうだ
指を全部握らずに
小指だけは 伸ばしてくれないか〜
さあ レフリー 用意はいいぞ」と
近づいてきた賭け好き男に言う。
老
人カルロス…「スタートの合図を 頼のも
う」
頷
く賭け好き男。
静
まり返っているのを見て、
老
人カルロス…「ど〜うしたの」と
笑いながら言う。
渋っ
た顔をして、
賭
け好き男…「いいかな」と
青年に言う。
青
年…「ああ」
肉切り包丁を手に持ち構えるカルロス。
賭
け好き男…「あんたは」
老
人カルロス…「あ〜 いいぞ〜」と
嬉しそうに構えて待っているカルロス。
老
人カルロス…「始めてくれ」と
肉切り包丁を揺すっているカルロス。
動揺した声で、
青
年…「あっ 頼みがあるんだけど
あっ 何回点いたか 直ぐ判るように
数えてくれないかな」
賭
け好き男…「分かった」
青
年…「それと もしミスしたら
ああ 指を氷に浸けて欲しいんだ
その先に病院があったから
直ぐ行って縫ってもらったら…」
老
人カルロス…「わしのものだ!」と
声を荒げる。
僅
かな願いを退けられ追い詰められる青年。
老
人カルロス…「勝てば 指はわしが貰う
それが賭けの条件だ!」と
怒るカルロス。
顔
を背ける若い女。
顔
を顰める賭け好き男。
青
年…「…」
カ
ルロスを見る青年。
青
年を睨み賭け好き男を見るカルロス。
逃
げ道を失い、
青
年…「そう」と
言い若い女を見る。
女
に強がったことを言った手前、窮地に立たされる青年。
ど
のように答えるのか舌を出し興味深々に青年を見ている若い女。
老
人カルロス…「それでも やるかね」と
青年を見て言うカルロス。
も
う、ここまできて逃げられない。
右
手の指で眉をかきカルロスを見て、
青
年…「ああ」と
言う青年。
ライターを持っている青年の右手を満足そうに見て、青年の左手の小指を出させる。
そして、肉切り包丁で直ぐに切れるように構えるカルロス。
老
人カルロス…「よし」
肉切り包丁を揺するカルロス。
ライターを点ける準備をして、
青
年…「いくよ」
ライターの蓋を開ける。
「ああ」
動悸が激しくなる。
『小指切断ゲーム』スティーヴン・バウアー、ジョン・ヒューストン
“カチッ”ラ
イターが点く。
賭
け好き男…「1回」
“カチッ”ラ
イターが点く。
賭
け好き男…「2回」
“カチッ”ラ
イターが点く。
笑っ
ているカルロス。
緊
張している青年。
“カチッ”ラ
イターが点く。
賭
け好き男…「3回」
頷
く青年。
ラ
イターを見ているカルロス。
“カチッ”ラ
イターが点く。
賭
け好き男…「4回」
笑
う青年。
老
人カルロス…「ぞくぞくする
これ程のスリルは
他にあるかね」と
気分が高揚してきて嬉しそうに言うカルロス。
顔
を背ける若い女。
カ
ルロスを見る賭け好き男。
ラ
イターを点けようと親指を置き笑う青年と笑い返す。
テー
ブルで指を動かせ待っているカルロス。
“カチッ”ラ
イターが点く。
賭
け好き男…「5回
半分は済んだぞ」と
カルロスと青年を見る賭け好き男。
嬉
しそうに唇を嘗める青年。
興
奮してくるカルロス。
ラ
イターに指を置く青年。
そ
れを見てテーブルで指を動かし、若い女の方を見るカルロス。
気
分を高揚させ見ている若い女。
再
びライターに視線を戻し、嬉しそうに青年を見るカルロス。
舌
を出しながらスイッチに指を置く青年。
ワ
クワクして待っているカルロス。
“カチ”ラ
イターが点く。
首
を捻るカルロス。
賭
け好き男…「6回」
嬉
しそうに唇を嘗め、若い女に向かって、
青
年…「大丈夫」と
声を掛ける青年。
自分に言っていることである。
若
い女…「ええ 何とか 今のところはね」と
答える。
ラ
イターを見て、
青
年…「ようし」と
意気込む青年。
指
で顔を撫でる青年。
顔
を高潮させて青年を見て、目をギラギラさせてライターを見るカルロス。
“カチ”ラ
イターが点く。
賭
け好き男…「7回」
残
念そうに賭け好き男を見るカルロス。
笑っ
ている賭け好き男。
緊
張した表情でお互いを見るカルロスと青年。
薄
笑いを浮かべる青年。
指
を忙しく動かし、肉切り包丁を揺するカルロス。
“カチ”ラ
イターが点く。
賭
け好き男…「8回」
同
時に若い女も口の中で数える。
“ああ〜”と残念そうに賭け好き男を見るカルロス。
次
の準備をしている青年のライターの指先に注目するカルロス。
緊
張している指を口に持って行きに息を吹きかける青年。
指
を動かすカルロス。
舌
なめずりして見ている若い女。
目
を見開きライターの指先を見て、青年を見るカルロス。
青
年の小指がアップになる。
ギラギラしたカルロスの目が獲物を狙っている。
“カチ”ラ
イターが点く。
火
を覗き込むカルロス。
場
を楽しむように間を持たせて、
賭
け好き男…「9回」と
言いカルロスを見る賭け好き男。
若
い女ももう1回で車が貰えると嬉しそうな顔をする。
嬉
しそうな表情の青年。
肉切り包丁を揺すり、構えるカルロス。
そ
れを見て緊張した表情に変わる青年。
賭
け好き男も緊張で顔が強張ばってくる。
異
様に瞳だけが青年とカルロスを追っている。
固
い表情で青年を見るカルロス。
唾
を飲み込み若い女を見る青年。
若
い女も緊張で顔が強張ばっている。
若
い女からライターに視線を移す青年。
肉切り包丁を揺するカルロス。
ラ
イターを見ているカルロスの目がアップになり、更に見開く。
ラ
イターがアップになる。
ラ
イターの蓋が開く。
獲
物を狙っているカルロスの目がアップになる。
『小指切断ゲーム』ジョン・ヒューストン
緊張した青年、
『小指切断ゲーム』スティーヴン・バウアー
唇をかんでそれを見ている若い女。
『小指切断ゲーム』メラニー・グリフィス
ライターを見ている賭け好き男。
ラ
イターに注目しているカルロスの目のアップ。
ラ
イターのアップ。
“カチ”ラ
イターが点く。
『小指切断ゲーム』
賭け好き男…「10
回」
ラ
イターが点いた瞬間にドアが開き炎が消える。
Top
〜素性〜
裕福そうな女(キム・ノヴァク)が 入ってくる。
消
えたと思ってカルロスが肉切り包丁を振り落ろそうとする。
青
年…「やめろ〜 カルロス」
顔
をゆがめ悲鳴を上げる青年。
そ
の声に肉切り包丁が“ガシャ
ン!”と小指の僅か横に振り落ろされ台に
刃がくい込む。
血
相を変え女が近づいて来る。
皆、
女の方を見る。
カ
ルロスに近づき、
女…「それを貸しなさい」と
手を出し、
女…「包丁をこっちによこすの」
台
にくい込んでいる包丁を取り女に渡そうとするカルロス。
女…「なぜよカルロス なぜまたこんなことし たの〜」と
カルロスを叱る。
老
人カルロス…「ゲームをやってただけだ
性分は 知ってるだろう」と
しょんぼりと答えるカルロス。
呆
れた表情をしている女。
老
人カルロス…「ちょっとした賭けだよ」
カ
ルロスを睨んでいる女。
言
葉に詰まって女の視線から逃れようとするカルロス。
怒っ
て包丁を放り出し、青年の方を向き、
女…「ごめんなさい
酷い思いをさせて 本当に悪いと思っているわ」と
言う女。
女
を呆然と見ている青年。
女…「独りにしたのがいけないの」
女
を見ている青年。
カ
ルロスに、
女…「カルロス あなた恥ずかしくないの」
視
線を避けしょんぼりとソファーに腰掛けようとするカルロス。
再
び青年の方を向き、
女…「あの人は危険な人よ
前に住んでいた島では」
女
がカルロスの素性を明かす。
煙
草を銜える青年。
女…「47人の指を切り取って」
青年の煙草に若い女が火を点けようとライターを擦るが点かない。
若い女と顔を見合す青年。
女…「車を11台取られて」
背筋が寒くなり銜えていた煙草を慌てて取り出す青年。
女…「“刑務所に入るって言われた”って
こっちへ移って来たの」
ソ
ファーに腰掛けているカルロス。
女
を見ながら左手の紐を解く青年。
青
年に近づきながら、
女…「若い人って なんで
こんな無茶なことをするの
勇気を見せたいわけ」
青
年…「いやぁ そんなつもりはないさ
俺は ただ」
女…「車を賭けたの」
青
年…「そう スポーツカーを」
女…「車はないわ」
言
葉を失い女を見る青年。
女…「私の車よ あの人のじゃないの
負けたら どうするつもりなのか
私には理解できないわ
口では何時も偉そうに 言ってるくせに」
女
を見ている青年。
賭
け好き男を見て、
女…「あなたもなの」
賭け好き男とは顔見知りだったということか。
賭
け好き男…「見せてもらってただけだ
レフリーの役を 仰せつかってね」
女…「フン」と
呆れて吐き捨てるように言う女。
賭
け好き男…「ハァ〜 キーを返しておこう」
女…「ありがとう」と
語気を強めて言う女。
そ
して青年を見て女。
女…「あの人には賭けるものはないのよ
何一つないの」
女
を見ている青年。
女…「私が全部巻き上げたから」
女
を見ている青年。
女…「日々もかかって 辛い思いもしたけど
最後には勝ったわ」
『小指切断ゲーム』キム・ノヴァク、スティーヴン・バウアー
と言い青年の前で手袋を外す。
その女の左手には人差し指が1本残っているだけだった。
『小指切断ゲーム』キム・ノヴァク
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驚嘆のラストシーンだ。
彼
女も賭けていたということか。
普通の賭けでは満足できなくなった老人が、青年に君が持っているライターに10回続けて火が点けば高級スポーツ
カーをやる。
火が点かなかったら青年の小指を切断するという条件の賭けを提案する。
躊躇しながらも、その条件を呑み賭けに挑む青年。表向き止める若い女。若い女の手前、ひっそりスリルを楽しむ賭
け好き男。
老人を叱っていた女も己の指を賭けていた。
賭
事の怖さ、人間の愚かさを見せた傑作だ。
また、火を消すのが若い女に、女だったというのも面白い。
賭けに溺れやすいロマン派の男たちに、釘をさすのは現実派の女たちだということ
か。
※ジョン・ ヒューストン監督、ヒッチ
コックの『めまい』のキム・ノヴァク、『鳥』の
ティッピ・ヘドレンや、ティッピ・ヘドレンの娘メラニー・グリフィス、それにスティーヴン・バウアーと実に豪華
なゲ ストが顔を揃えているものだ。
更新2007.7.14
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ヒッチコックがデザインしたという似顔絵
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参考文献
ヒッ
チコック劇場
新・
ヒッチコック劇場
ア
ルフレッド・ヒッチコック
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