新・
ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock
Presents-
高層の死刑台
-Man
on The Edge-
アルフレッド・ヒッチコック
※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ
い。
☆ → 〜空腹〜〜指示〜〜煙草〜〜別れ〜〜野次馬〜〜方針〜〜疲労〜〜電話〜〜溜息〜〜真相〜 ←
記号[☆:スタッフ・キャスト →:
始めに ←:終わりに]
(1980年代)(米)(TV映画)-Man
on The Edge-
演出…ロバート・イスコブ
制作…タウンゼント・フィルム・プロ
ダクションズ(米)
原作…ドナルド・ホーニング
脚本…ジェームズ・ノーマン・ビー
バー・ジュニア
出演…マーク・ハミル(ダニー)
ストーリーテラー…ア
ルフレッド・ヒッチコック
翻訳…鈴木導
高層ホテルの窓の外に出ている客ダニーに気
が付いたボーイが、飛び降り自殺だと思い急いで支配人へ連絡する。
連
絡を受けた支配人が外に出て、ホテルの上階の窓の外に立っているダニーを見て驚く。
支
配人…「警察へ電話を」と
ボーイに指示し、
「なんてゆうことを〜」と
言いながら見上げる支配人。
ホ
テルの前を通り掛かった人々が、上階の窓の外を見上げる。
Top
〜
空腹〜
高層ホテルの窓の外に立っているダニーが回想する。
『高層の死刑台』マーク・ハミル
ダニー…「本当に大丈夫か」と
妻サリーに言うダニー。
サ
リー…「だから なんでもないのよ」
小
鳥に餌をやりながら、何度も聞かれることに疲れたように答えるサリー。
「ほ〜ら」と
餌をやるサリー。
ダ
ニー…「道を歩いてて 気を失ったのに
なんでもないってことは ないだろ」と
サリーの前に来て言うダニー。
サ
リー…「そうじゃないったら 眩暈がしただ
けよ」と
ダニーの方を見て言うサリー。
ダ
ニー…「“倒れた”って 言ったろ」と
言うダニー。
サ
リー…「だけど どうってことはないの〜」と
言いダニーの視線を避け離れる。
「お医者さんみたいな
男の人が 起こしてくれて
ちょっと 目を見ただけ」と
服を片付けながら言うサリー。
ダ
ニー…「なんて言った」
サ
リー…「“毎日 きちんと食べてないから”
だって」と
苦笑いして言うサリー。
ダ
ニー…「そりゃあ 分かってるよ
きちんと食べられりゃ 苦労しないさ
嫌になってくる」と
苛立ってくる。
「“働けば楽になる”って 言うけど
人の倍働いてるのに 小鳥の方がよっぽどマシな物を食べてる」
ど
うしようもない現実に不満を言うダニー。
サ
リー…「ダニー」
“それを言ってもどうしようもない”という風にダニーを見て言うサリー。
溜
息を付き、
ダ
ニー…「またクビになったよ」と
言うダニー。
サ
リー…「えっ」
驚
いてダニーを見るサリー。
ダ
ニー…「また クビだ」と
言い視線を避け離れるダニー。
サ
リー…「どうして〜」
ダ
ニーに近寄り聞くサリー。
ダ
ニー…「“修理のやり方を覚えるのが遅 い”と言われた
トラクターとか コンバインなら知ってるけど
エアコンやビデオなんて 触ったこともない」
『高層の死刑台』マーク・ハミルら
サリー…「ああ ダ
ニー」
興
奮しているダニーの肩に手をやり宥めるサリー。
ダ
ニー…「時間過ぎまで働いて 夜はマニュ アルを読んでたのに」
サ
リー…「よく知ってるわ 立派だと思って
る…」と
ダニーの手を握り締めるサリー。
ダ
ニー…「俺は 思わないよ
思えないだろ」
声
を荒げるダニー。
サ
リー…「農場を差押えられて 責任を感じて
いるんじゃないの
今日 リックも言ってたけど…」
ダ
ニー…「リック 誰の?」
サ
リーを見るダニー。
サ
リー…「眩暈がした時に 私を助けてくれた
人
はっきり言ってたわ “何をしても上手くいかないのは
農場をなくしたのを 自分のせいだと思ってるから”だって」と
言いながら食事の準備をしようとするサリー。
ダ
ニー…「そんなことまで 喋ったのか」
サ
リー…「ええ そうよ」
振
り向いて言うサリー。
ダ
ニー…「何故?
何時だ 起こしてもらっている間にか」
声
を荒げて聞くダニー。
サ
リー…「違うわよ 一緒に食事したの
私を見て この様子じゃ…」
食
事の準備をしながら言うサリー。
ダ
ニー…「“食べさせてもらってない”って 言ったか」
サ
リー…「そんな言い方しないわ とてもいい人で
素敵な店に…」
ダ
ニー…「俺には 連れてけないような店 か」
苛
立つダニー。
サ
リー…「やめて ダニー」と
言い、振り向くサリー。
「こんな風な生活になったのが あなたのせいだとは言わないわ
でも お腹が空いて 死にそうだった私に
食事をさせてくれた人と お話をするのも
いけないって言うなら 自分の缶詰は自分で開けるのね」
缶
詰を流しに投げ出し、泣きながら部屋を出てゆくサリー。
ダ
ニー…「サリー 悪かったよ
謝るよ
サリー」
サ
リーの後を追うダニー。
Top
〜
指示〜
ダニー…「サリー」と
回想していたダニーが寂しそうに言う。
支
配人が窓から顔を出して、
支
配人…「ねぇ 君
何をしてるんだ
そこから降りたまえ」と
ダニーに話しかける。
ダ
ニー…「ここを降りるときは 死ぬ時だ」と
答えるダニー。
警
官ストーカーが駆けつけて、
警
官ストーカー…「お〜い やめろ
その男を殺すつもりか」と
言い、窓から顔を出している支配人を室内に引き入れる。
支
配人…「私は ここの支配人だ」と
警官ストーカーに言う。
警
官ストーカー…「ああ たとえあんたが市長
でも同じだよ
勝手に窓に近寄るな」
指
揮官が客室に入ってくる。
指
揮官…「ストーカー 廊下に見張りを立てて
誰も入れるな 新聞記者もだ」
警
官ストーカー…「手配は もうしてありま
す」
指
揮官…「客の身元は分かってますか」と
支配人に聞く。
支
配人…「ニューヨークのスティーブ・スミス
と 名乗っていますが」と
答える。
指
揮官…「スミス?」
頷
く支配人。
部
下の方を見て、
「向こうへ照会しろ」と
指示を出す指揮官。
客
室に入って来て聞いていたマルズーン警部が、
マ
ルズーン警部…「まず偽名だろう 連中は本名は名 乗らない」と
言う。
マ
ルズーン警部の方を見る指揮官。
マ
ルズーン警部が言うのを無視して、
指
揮官…「ああ いいから一応 調べてみろ
荷物はどうだ」と
部下に言う。
ト
ランクを開け、
警
官ストーカー…「これだけです
電話帳 市内版です」
中
に入っていた電話帳を手に取り、指揮官に言う警官ストーカー。
指
揮官…「ううん よし
ストーカー 救出班にロープを用意して
屋上で待機させるんだ
消防署にも連絡しとけ」
警
官ストーカー…「ハイ」
支配人の方に向き直り、
指
揮官…「スプリンガーさん ホテルの平面図
を頼みます」と
言う指揮官。
支
配人…「分かりました」と
言い指示に従う支配人。
指揮官に近寄り、
マ
ルズーン警部…「先を急ぎすぎるんじゃないか
そこにいるのは人間だ 猫とは違う
まず 私が話してみよ う」と
言うマルズーン警部。
指
揮官…「マルズーン警部 あんたの“人情味溢れる警官”ってや
つを
我々がどう思ってるか 知ってるでしょ」と
呆れたようにして言う指揮官。
気
まずそうに唇を嘗め俯くマルズーン警部。
指
揮官…「誰かが怪我をしないうちに あいつ
を捕まえるのが私の仕事です
その間 お守りをしたけりゃ
どうぞ ご勝手に」と
馬鹿にしたように言う指揮官。
反
論できずにいるマルズーン警部。
指
揮官…「しかし この前あんたが精神分析し
ようとしたやつを
忘れんでくださいよ
タクシーの屋根を打ち 抜いてくれた
時速300キロでね」と
笑いながら言い、マルズーン警部の肩を軽く叩く指揮官。
そ
の手を見るマルズーン警部。
一
息つき、銃を近くにいた警官に渡す。
Top
〜
煙草〜
窓から顔を出し、
マ
ルズーン警部…「高いから 眺めは悪くないな」と
ダニーに話しかけるマルズーン警部。
驚
くダニー。
ダ
ニー…「傍に来るな」と
言うダニー。
マ
ルズーン警部…「ここに座ってるだけだ」と
窓枠の外に座って言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「あんたは?」と
聞くダニー。
マ
ルズーン警部…「名前は マルズーンだ
煙草はどうだ」
煙
草を渡そうとするマルズーン警部。
マ
ルズーン警部を見て、
ダ
ニー…「あんたは…
おまわり?」と
言うダニー。
マ
ルズーン警部…「何故 そう見えるか」と
言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「ああ」と
マルズーン警部を見ながら頷くダニー。
マ
ルズーン警部…「ああ そうか
その通りだ」と
苦笑いし、
煙草を吸わないか」と
煙草を渡そうとするマルズーン警部。
ダ
ニー…「いや
いらない
俺を捕まえる気だろ」と
言うダニー。
マ
ルズーン警部…「何故 それ程 落ち込んでる」と
言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「関係ないだろ」
苛
立つダニー。
マ
ルズーン警部…「人が困ってるのを 黙って見てい られない
お節介な性分でね」
ダ
ニー…「…」
マ
ルズーン警部…「それだけじゃない 警官という職 業上
君に歩道を汚されては困る
分かるだろ」
笑
い出すダニー。
ダ
ニー…「ああ
ようし 折角だから煙草を1本貰おうか」と
言い、屈んで手を伸ばすダニー。
マ
ルズーン警部…「ああ」
窓
枠を掴み手を伸ばして煙草を渡そうとするマルズーン警部。
ダ
ニー…「待て こっちへ押して」
と
言うダニー。
ダ
ニー…「ようし」
煙
草をダニーがいる所に押し出すマルズーン警部。
箱
から1本だけ取り出しマルズーン警部の方へ弾いて戻すダニー。
煙
草を口に銜えて、
ダ
ニー…「火は」と
言うダニー。
マ
ルズーン警部…「ああ」
ラ
イターを点けてやろうとするマルズーン警部。
拒
否して押し出すように手で合図をするダニー。
足
を室内暖房器具に掛けて、バランスを取るマルズーン警部。
ラ
イターを渡す隙にダニーの手を掴もうと手を伸ばすマルズーン警部。
そ
の時、
警
官ストーカー…「押さえてます」と
室内にいた警官ストーカーが警部の足を掴む。
不
意を衝かれてバランスを崩すマルズーン警部。
マ
ルズーン警部…「危ない」
ぐ
らつくマルズーン警部。
ダ
ニー…「あ〜」
落
ちそうになるダニー。
『高層の死刑台』マーク・ハミルら
必死に壁を掴み体勢を整えたダニーが、
ダ
ニー…「騙したな〜」と
言う。
マ
ルズーン警部…「いや〜 そうじゃない
仕事熱心なあまりだ」
警
官ストーカーに向かって、
マ
ルズーン警部…「下がってろ」と
叱るマルズーン警部。
真
下を見て、
ダ
ニー…「下で皆 なにしてる」と
言うダニー。
マ
ルズーン警部…「さあ 知らん」と
言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「俺を騙そうとした
そんな手に乗るもんか」と
ライターをマルズーン警部の方に蹴りやるダニー。
ラ
イターを取り、
マ
ルズーン警部…「なあ スティーブ」
ダ
ニー…「追っ払ってくれ
下へ行って 言って来い」
驚
くマルズーン警部。
ダ
ニー…「それとも 俺が行こうか〜」と
飛び降りる仕草をするダニー。
マ
ルズーン警部…「やめろ 行って来る
短気を起こすな そこにいろ」と
言い、ダニーを見ながら室内に戻るマルズーン警部。
支配人たちがマルズーン警部に近寄り、
支
配人…「どうです
入ってくるでしょ?」と
聞く。
マ
ルズーン警部…「いや 飛び降りる気だ」と
言い、皆を見回し大きく溜息を付く。
Top
〜
別れ〜
救急車のサイレンが鳴りホテルの下に待機する。
そ
れを眺めているダニー。
『高層の死刑台』マーク・ハミル
ホテル周辺ではマスコミが駆けつけている。
野
次馬が手拍子をして飛び降りるのを煽る。
そ
の手拍子を聞きながら、寂しそうに回想する。
サ
リー…「あなたは いい人よね
よく知ってるわ
でも リックもいい人なの
それに 私たち上手くいってるとは言えないでしょ」と
トランクに服を入れながら言うサリー。
ダ
ニー…「だけど 俺たちは夫婦だろ
“死が二人を分かつま で”と
誓ったはずだ」と
サリーの目の前に来て言うダニー。
サ
リー…「覚えてるわ
人が死んだ時だけじゃ ないの
希望が死んだ時にも 別れるしかないでしょ」と
言い聞かせるように言うサリー。
ダ
ニー…「リックが そう言ったのか」と
問い詰めるダニー。
視
線を避け離れながら、
サ
リー…「もし そうだとしても
嘘ってことには ならないわ」と
言うサリー。
ダ
ニー…「奥さんがいるんだ」
責
めるダニー。
サ
リー…「そうよ
でも ずっと口も聞かないで
離婚するの」と
言いコートを着る。
ダ
ニー…「君が俺を捨てるように 奥さんを 捨てるわけか」
非
難するダニー。
サ
リー…「ダニー まだ分からないの
この方が あなたにも楽でしょう
食費がそれだけ減るのよ あたしがいなくなれば」と
泣きながら言うサリー。
ダ
ニー…「楽になんてなりたくない 君
を愛してるんだ!」と
サリーの両腕を掴んで必死に言うダニー。
サ
リー…「あたしも愛してる
だけど 意味が違うわ
もう夫婦としての 愛は消えちゃってるの」
苦
しそうに説明するサリー。
ダ
ニー…「“今 リックを愛してる”って か?」
“信じられない”というようにサリーを見るダニー。
辛
そうに視線を逸らすサリー。
ダ
ニー…「奴は君を玩具にしてるだけだ
奴はね アーカンソーの田舎者を騙すのが面白くて
今は調子のいいことを言ってるけど
飽きれば直ぐに君を おっぽり出して
奥さんと子供が待ってる家に 帰って行くに決まってるよ〜」と
悲しそうに言うダニー。
サ
リー…「そんなことないわ 愛してるのよ
私も愛してる
あたし もう行かなきゃ」と
テーブルの方へ行き、行き先をメモしようとするサリー。
頭
を垂れ悲しむダニー。
サ
リー…「それじゃ
私 ここにいるわ
お部屋借りたの」と
泣きながらメモし、
サ
リー…「もっと ちゃんとした
ちゃんとした家を探すまでの…」と
言いダニーの方を向くサリー。
『高層の死刑台』マーク・ハミル
ダ ニー…「サリー 頼むよ」
ソ
ファーに座り込み、泣きながら頼むダニー。
サ
リー…「お願いだから 止めないで
あなたは若いし 可能性はいくらでもあるでしょ
でも 私が一緒ではどうにもならないわ
別れるば 私たち二人とも幸せになれるのよ」
泣
きながら言うサリー。
ダ
ニー…「そうは思えないな」
憔
悴しているダニーの頭にそっと手をやり、
サ
リー…「さよなら」と
言い泣きながら出て行くサリー。
Top
〜
野次馬〜
思い出し悲しそうにしているダニー。
ホテル周辺。
野
次馬が時計を見て、
野
次馬1…「1時間半になるが まだ飛び降り
ないぜ
お前の負けだな」
野
次馬2…「あのマンホールより先には落ちな
いという方に 20ドルいこうか」
野
次馬1…「バウンドも入れてか」
野
次馬3…「一昨年 フィラデルフィアで真っ
逆さまに 飛び降りるのを見たが
弾みはしなかった」と
面白がって言いながら、ホテルの窓の外に立っているダニーを見上げる野次馬たち。
Top
〜
方針〜
指揮官…「ここの責任
者は私ですよ 余計な口は出さんでください」と
マルズーン警部に向かって苛立って言う指揮官。
マ
ルズーン警部…「新米の警官に 後ろから押されて
黙っていられると思うか」
困
惑している新米の警官ストーカー。
マ
ルズーン警部…「私まで落ちるところ…」
指
揮官…「私のやり方でやりますよ!」と
マルズーン警部に指差しながら声を荒げる指揮官。
マ
ルズーン警部…「どうやる!
ハーネスで救えるのは 当人にその意思がある場合だ
あいつにはない」
指
揮官…「お得意の心理学で 教えて貰いま
しょうか
死にたいのに 何で飛び降りないのです」
マ
ルズーン警部…「死にたがっては いない」
指
揮官…「何を言ってるんですか
ついさっきは “間違いなく飛び降りる”と言ったでしょ」
マ
ルズーン警部…「まだ そう思ってるさ
それを望んでないと 言ってるだけだ
死にたくはないが 生きる望みも失くしてる」
指
揮官…「ああ〜
もういい 沢山だ
これ以上訳の分からん話を聞かされたら 俺が飛び降りる
ストーカー 屋上に行って
“合図したら 降りて来い”と言え」
指
揮官の指示を伝えに行く警官ストーカー。
マ
ルズーン警部…「あの男は死ぬ」
指
揮官…「後15分 待ちましょ
もう一度 話してみるんですね〜」
指
差して言う指揮官。
「さもなきゃ 本社へ戻るんです」
Top
〜
疲労〜
マルズー ン警部…「調子は どうかね」と
窓から顔を出して言う。
ダ
ニー…「えっ!」
サ
リーのことを思い出していて驚くダニー。
「ああ〜
悪くない」
疲
れた表情で答えるダニー。
マ
ルズーン警部…「疲れたんじゃないか」
ダ
ニー…「ああ〜 ちょっと」
マ
ルズーン警部…「中に入って 休む気はないだろ な」と
笑顔で言う指揮官。
首
を横に振るダニー。
マ
ルズーン警部…「皆に何と呼ばれてる」
ダ
ニー…「スティーブ」
マ
ルズーン警部…「スティーブか」
穏
やかに、
「なあ スティーブ 何があったんだ」と
聞くマルズーン警部。
ダ
ニー…「話して どうなる
笑いものにするんだろ
同じだい」
真
下に視線をやるダニー。
マ
ルズーン警部…「あの連中は違う 面白い見世物が あると聞いて
集まって来てる
がっかりさせてやれ」と
言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「どうやって?」と
身を乗り出して聞くダニー。
マ
ルズーン警部…「飛び降りるのを待ってるんだから やめればいい」
ダ
ニー…「ああ〜」と
思い出したように言い軽く笑うダニー。
「煙草あったら もう1本くれないか」
煙
草を箱から取り出そうとするマルズーン警部。
マ
ルズーン警部…「無くなった 買ってこようか」
軽
く頷くダニー。
マ
ルズーン警部…「腹が空いたんじゃないか サンド イッチでも どう?」と
聞くマルズーン警部。
ダ
ニー…「ああ いいね」と
答えるダニー。
マ
ルズーン警部…「何がいい?」
ダ
ニー…「そうだなぁ ハムとスイーツチー ズ」
マ
ルズーン警部…「よし」
ダ
ニー…「マスタードは無し」
マ
ルズーン警部…「マスタードは無しね」
上
手く言ったとニンマリするマルズーン警部。
マ
ルズーン警部…「ストーカー」と
警官ストーカーを呼び、室内に戻ってゆくマルズーン警部。
Top
〜
電話〜
悲しそうに仕事から帰ってきた時のことを思い出しているダニー。
留
守電に、
サ
リー…「ダニー 私よサリー
もう嫌 何度も掛けてるのに 別れないの
リックが離婚しないの
駄目 私気分が悪くなってきた
睡眠薬飲んだの」と
サリーのコメントが入っている。
驚くダニー。
ダ
ニー…「そこの電話は
サリー そこは何番だ!」と
大声を上げる。
サ
リーが置いていったメモを思い出し慌てて探すダニー。
サ
リー…「何もかも あなたが言っていた通り
奥さんの所へ 帰って行ったの」
メ
モを見つけ急いで電話するダニー。
ダ
ニー…「もしもし お願いです救急車を」
サ
リー…「あんなに あんなに約束したのに」
ダ
ニー…「ダニー・カーライル 聞いてくれ ませんか
急ぐんです
女房が睡眠薬を飲みすぎて…」
サ
リー…「それなのに ああ〜」
ダ
ニー…「ああ ここじゃありません
住所ですか」
泣
きながら喋り続けているサリー。
慌
ててメモを手にして、
ダ
ニー…「ドレクセル通りの1616
お願いです 急いでください」と
必死に頼むダニー。
サ
リー…「部屋の中が 真っ暗
ああ〜」と
悲しそうに言うサリー。
ダ
ニー…「何時そのう…
ええ ああ 分かりました」
電
話を切る。
サ
リー…「あなたが一番だった ごめんなさ
い」
留
守電に入っているサリーの声を心配しながら、急いでサリーの元へ駆けつけるダニー。
救急隊員にサリーの遺体が担架で運ばれている。
ダ
ニー…「サリー! サリー!」と
大声で呼びながらサリーの元へ駆け寄るダニー。
警
官が制止しする。
『高層の死刑台』マーク・ハミルら
ダ ニー…「サリー! サリー! サ
リー!〜」必
死にサリーの名を呼び続けるダニー。
Top
〜
溜息〜
あの日のことを思い出しながら悲しんでいるダニーに、
マ
ルズーン警部…「スティーブ」と
窓から明るく声を掛けるマルズーン警部。
驚
いてマルズーン警部の方を見るダニー。
マ
ルズーン警部…「さあ どうぞ」と
サンドイッチをダニーの方に差し出す。
マ
ルズーン警部…「二つ買ってきたから 一緒に食べ よう」と
にこやかに言うマルズーン警部。
説得が上手く言ったと思っているマルズーン警部。
小
さく頷き、
ダ
ニー…「ありがとう」と
礼を言いサンドイッチに手を伸ばすダニー。
手
に取っただけで、
ダ
ニー…「ああ〜」と
溜息を付いて壁に凭れ掛るダニー。
サ
ンドイッチを食べようとしていたマルズーン警部が、それを見て、
マ
ルズーン警部…「応えてるな〜 出来ることは無い か」と
ダニーに声を掛ける。
ダ
ニー…「死んだ者を 生き返らせられる か」
驚
いてダニーを見るマルズーン警部。
マ
ルズーン警部…「何があった スティーブ」
憔
悴して、
ダ
ニー…「聞きたいか
女房が 死んだ」と
言うダニー。
マ
ルズーン警部…「そうだったのか〜
何て名前だ」と
言うマルズーン警部の言葉に反応する。
ダ
ニー…「何故だ」
驚
くマルズーン警部。
ダ
ニー…「そいつを聞いてどうする
話の種にするのか
考えてることは あいつらと同じだぁ」と
手に持っていたサンドイッチを投げ捨てるダニー。
ダ
ニー…「大勢いるぜ 面白い見世物を見た
きゃ
見せてやろうじゃないか」と
言い前に踏み出すダニー。
マ
ルズーン警部…「スティーブ 待ちたまえ」と
手で静止させようとしながら言うマルズーン警部。
前
のめりになっていた体がぐらつくダニー。
マ
ルズーン警部…「聞いてくれ
奥さんを愛してたんだろ
きっと 奥さんもだ
君が人生に絶望して 戦うのをやめたら
喜ぶと思うか」と
窓から身を乗り出して説得するマルズーン警部。
泣
き出しそうにしているダニー。
マ
ルズーン警部…「なあ
辛いこともあったと思うが 諦めちまうのは
負けを認めることだろ」と
言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「分からない」と
マルズーン警部の方を見て言い、悲しそうに首を横に振るダニー。
マ
ルズーン警部…「負け犬になったと 言われたくな かったら
戦うんだ」と
言う警部。
ダ
ニー…「俺はもう疲れて…」と
力なく下を見るダニー。
マルズーン警部…「諦めちゃいかん 生きるんだ!」
下
を見るダニー。
パトカーや救急車などが待機しているのが見える。
野次馬も。
ダ
ニー…「分かった」と
頷き壁に凭れ掛かる。
ダ
ニー…「分かったよ」と
言って壁の隙間に入り込むダニー。
マ
ルズーン警部…「ようし スティーブ
さあ 急がないでいい
ゆっくりと こっちに来い」と
言って手を伸ばすマルズーン警部。
マ
ルズーン警部の方へ行こうとするが、足がぐらつく。
ダ
ニー…「駄目だ」と
足を押さえるダニー。
ダ
ニー…「足が言うことを 利かない」
ダ
ニーの様子を見て、別の方法で救い出すことにするマルズーン警部。
マ
ルズーン警部…「ようし 分かった
そこにいたまえ 私がそっちへ行く」と
言い、室内に入ってゆく。
「ストーカー」
警
官ストーカーを呼ぶマルズーン警部。
警
官ストーカー…「ハ〜イ」と
呼ばれた警官ストーカーが来る。
マ
ルズーン警部…「上からハーネスを降ろせ」
警
官ストーカー…「ハイ」
マ
ルズーン警部…「急ぐんだ」と
指示する。
Top
〜
真相〜
直ぐに窓から出て、
マ
ルズーン警部…「そこを動くなよ」と
言う。
「今降ろしてやる
ええっ」と
外壁を伝わってダニーの方に近づくマルズーン警部。
ダ
ニーを両腕で包み込み、
マ
ルズーン警部…「下を見ないようにして もう少し こっちに来い」と
言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「嫌だ」と
怖がるダニー。
マ
ルズーン警部…「ほら ハーネスを着けなきゃいけ ない
こっちへ
いや そうだ
こっちもだ」と
屋上から吊り下げられたハーネスをダニーに指示しながら着けさせるマルズーン警部。
マ
ルズーン警部がハーネスに両腕を通したダニーのベルトを締めてやっている時に、
ダ
ニー…「女房の話をしとこうか」と
言うダニー。
『高層の死刑台』マーク・ハミルら
マルズー ン警部…「ああ 聞くよ
部屋の中に入ってからな」と
ベルトを締めながら言うマルズーン警部。
ダ
ニー…「いやあ 今だリック
それがあんたの名前だろ リック」と
ベルトを締めてあげているマルズーン警部の顔を覗き込みながら言うダニー。
マ
ルズーン警部…「ああ その通りだ」と
思わず言い、驚いてダニーを見るマルズーン警部。
マ
ルズーン警部…「何故知ってるんです スティー ブ」と
言い、ハーネスを取り付けたので引かせようと屋上の方を見るマルズーン警部。
ダ
ニー…「知ってるさ スティーブじゃない んだ
ダニー ダニー・カーライルだ」と
マルズーン警部を睨みつけるダニー。
マ
ルズーン警部…「ようし ダニー・カ…」と
言い掛け驚くマルズーン警部。
マ
ルズーン警部…「カーライル」と
言いダニーを見るマルズーン警部。
頷
くダニー。
マ
ルズーン警部…「サリー」
思
い出し後退りするマルズーン警部。
ハー
ネスを着けているダニーがマルズーン警部の両腕を掴む。
『高層の死刑台』マーク・ハミルら
ダ ニー…「サリーは自殺した お前が殺した
んだ
俺がここにいるのも そのためだ」
怒りを爆発させるダニー。
足を踏み外しそうになり、恐怖で顔が引き攣るマルズーン警部。
『高層の死刑台』マーク・ハミルら
ダ ニー…「ここで飛び降りる振りをすれば
必ず話に来ると思ったよ」
マ
ルズーン警部…「おい やめろ」
下を見てゾッとするマルズーン警部。
ダ
ニー…「人の心を読むのが お得意だって 言うからな」
『高層の死刑台』
「“希望が死んだら
どうなるか”って サリーに言ったろ」
怯えるマルズーン警部。
ダ
ニー…「自分で 考えてみろ!」と
言い、掴んでいた手を離し憎しみを込めてマルズーン警部を投げ飛ばすダニー。
マ
ルズーン警部…「あああ〜! あああ〜! あ ああ〜! ああ あ〜! あああ〜!」と
悲鳴を上げながら高層ホテルの上階から地面に落ちてゆくマルズーン警部。
それを見ているダニーが、
ダ
ニー…「死が分かつまでだ」と
言う。
地面に叩き付けられて死んだマルズーン警部の周りに、担架を持った救急隊員や警官
が集まって来る。
マスコミや野次馬たちが制する警官の隙間から一生懸命に覗き込む。
復讐を果たし、満足そうにその様子を見ているダニー。
『高層の死刑台』マーク・ハミル
きっと、“サリー やったよ”とサリーに報告しているのだろう。
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マルズーン警部がサリーを騙して自殺に追い
込んだリックだったのだ。
有り金をはたいて高層ホテルの上階の部屋を偽名で取ったダニーは、愛するサリーの復讐を果たそうと飛び降り
自殺をすると見せ掛ける。
このような場面に何時も現れるリックことマルズーン警部を誘き寄せるために。
罠が仕掛けられているとはつゆ知らず現れたマルズーン警部が、仲間内に馬鹿にされて
いる“人情味溢れる警官”の説得術を見せようとする。
いや、自己陶酔しようとする。
マ
ルズーン警部は説得に成功したと酔いしれた瞬間、裏の正体(親切を装って女をも てあそぶ)が暴かれ自分がターゲットだったと分かる。
ジタバタしても崖っぷちだ。
命を託すのは目の前で憎しみに燃えているダニーの手だという絶望的な状況に恐れ
戦くマルズーン警部。
そして、「死が分かつまでだ」と憎しみを込めたダニーに高層ホテルか
ら投げ飛ばされる。
「あああ〜! あああ〜! あ
ああ〜! ああ
あ〜! あああ〜!」と悲鳴を上げ野次馬たちの待つ舞台へ落
下してゆくマルズーン警部。
まさか、自分が主役になるとは思ってもいなかった舞台へ。
マルズーン警部は裏でサリーを説得(騙しだが)するのは成功した
が、本職では成功することは無かった。
欲
望の度合いが違ったということか。
更新2007.10.26
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ヒッチコックがデザインしたという似顔絵
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参考文献
ヒッ
チコック劇場
新・
ヒッチコック劇場
ア
ルフレッド・ヒッチコック
国別の映画作品一覧
サ イトマップ
映 画ありき2
映画あり
き
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