新・ ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock Presents-
死霊の復活
-The Canary Sedan-
        
     アルフレッド・ヒッチコック

※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  〜謎の女〜〜動揺〜〜愛人〜〜〜〜薬 草〜〜お茶〜〜道士〜〜苛立ち〜〜診察〜〜遺骨〜〜成仏〜〜新 たな旅立ち〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わりに] web拍手 by FC2
(1980年代)(米)(TV映画)-The Canary Sedan-
演出…ジョーン・テュークスベリー
制作…レビュー・スタジオ(米)
原作…アン・ブリッジ
脚本…ジョーン・テュークスベリー
ストーリーテラー…ア ルフレッド・ヒッチコック
翻訳…鈴木導

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妻アンが夫ポール・ゴルビィーンの赴任地中 国に来るという。
部 下から出迎えの手配を聞いた夫が、机に飾っている写真を手で愛しく撫でながら、


『死霊の復活』

ポール…「私はどうす ればいい」と 言っている。

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〜 謎の女〜

港に着いたアンが初めて見る異国に興味を持ち眺めていると、若い中国の謎の女リンから 声を掛けられる。
謎 の女リン…“ごめんなさい”
ア ン…「はい?」
謎 の女リン…“今何時でしょう”
デ ニム…「ゴルビィーン夫人」
ゴ ルビィーンの部下デニムから声を掛けられる。
ア ン…「午後の2時半」
謎 の女リン…“何故早く来なかったんです”
リ ンを訝しげに見ているアン。
デ ニム…「ゴルビィーン夫人 こちらです」
リ ンを見ながら運転手の方へゆくアン。
ア ン…「Hi」
デ ニム…「ようこそ奥様 デニムです」
ア ン…「よろしく」
デ ニム…「船はどうでした」
ア ン…「ええ とっても素敵な航海だったわ」
デ ニム…「こちらへどうぞ」
用 意された車に案内される。
ア ン…「主人の車?」
デ ニム…「左様です」
ア ン…「素敵」
車 に乗り込む。
走 り去る車を見ているリン。

車を運転しながらデニムが、
デ ニム…「丁度 タチュウの祭りの最中でし て」と 話す。
ア ン…「タチュウ?」
デ ニム…「隣亡でさまよっている死者の霊を  鎮めるためのお祭りです」
ア ン…「隣亡?」
デ ニム…「ええ そこに入り込んでしまうと  祖先の霊に遭うことも出来ません」
ア ン…「そう でもどうしてそんな所に入り込 むの」
謎 の女リン…“現世の人が 過去に執着してる からです”
リ ンがアンの横に突然現れる。
ア ン…「ハァッ!」
驚 いて声を上げる。
リ ンもアンの反応に驚く。


『死霊の復活』

手で口を押さえながら、
ア ン…「驚いた」と リンを見ているアン。
謎 の女リン…“過去の記憶に囚われていると  今を生きられないし
死んだ者も 大変迷惑 します”と 煙草を吸いながら話し煙をアンへ吹きかける。
噎 せっていたアンが隣を見るとリンの姿はなく、花びらが座席に残っていた。
不 思議なことが目の前で起こり、“私 はどうしたのか”と 頭に手をやり気を鎮めようとするアン。
車 の窓を開けようとするアンに、
デ ニム…「どうかしました」と バックミラーから覗きながら声をかけるデニム。
ア ン…「ああ 大丈夫よ
船に乗って来て 疲れただけ」
車 内を見渡しながら、
 アン…「素敵 本当に素 敵な車だわ
黄色だといいのに」
デ ニム…「偶然ですね 素は黄色でした
カナリアのような」
動揺を隠そうとするアン。

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〜 動揺〜

車を止めゴルビィーンに頼まれた花を注文しにゆくからちょっと待つように言うデニム。
気 持ちを静めさせながら、
ア ン…「ああ どうぞ」と やっと言うアン。
デ ニムが降りてゆく。
ア ン…「ああ」
溜 息をつくアン。
ブ ラインドカーテンを開けようとする。
が 要領が掴めないうちに反動で開く。
ア ン…「ハッ」
驚 くアン。
そ んなアンに反対側の窓から顔を出し、
謎 の女リン…“火はありません”と 煙草を銜えて声をかけるリン。
ア ン…「ハッ」
リ ンを見て驚くアン。
ア ン…「ないわ あたし煙草吸わないの」
謎 の女リン…“そう”と 言い立ち去ろうとするリン。
慌 てて、
ア ン…「ねぇ 待って
あなた誰」と 言い車を降りる。

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〜 愛人〜

異国の風習に戸惑いながら見て回っているアンにリンが話し掛ける。
謎 の女リン…“恋をするには いい土地です”
ア ン…「私 結婚してるの」
笑 い、
謎 の女リン…“アハッ 私も情熱的な恋をしました
それも 不倫の
あなたも 恋をしたいでしょ”
ア ン…「冗談じゃないわ」
謎 の女リン…私の場合は 悲劇に終わりました
でも 毎日お花を供え てくれてます
“燃えるような愛が欲しい”って ご主人に言ってみたら
薬草入りのお茶を ご 主人に飲ませるんです
ア ン…「ねぇ お茶を買う気もないし
後を付回されるのも 好きじゃないのよ
もうほっといて」
謎 の女リン…“あなたは霊脳力が強いわ”
ア ン…「何を言ってるのよ」
謎 の女リン…“あの車が素は黄色だったこと  感じ取れたでしょ”
気味が悪くなり逃げ去るアン。

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〜 夫〜

ポールの職場に行き、久々に会った夫に抱きつき喜ぶアン。
取 引先の男たちにアンを紹介するポール。
ア ン…「あ〜 いいお部屋ね
あら〜 こんなに沢山小鳥を買ってたの
ちっとも知らなかったわ」
鳥 篭に近づき、
ア ン…「チュチュチュ」と にこやかに声を掛けるアン。
気 まずそうに、
ポー ル…「ああ 気を紛らわすには
小鳥はいいもんでね」
ア ン…「口答えもしないし」
ポー ル…「意外と煩いけどね
遠くから来たのにすまないが 明日までにこの契約を
まとめなきゃいけないんだ
デニムに家まで送らせるよ」
交 渉を中断されていた取引先の男たちがアンにお辞儀をする。
ア ン…「遠くなければ 歩いてゆくわ」
ポー ル…「道に迷うぞ」
ア ン…「ビクターに地図を書いてもらうわ」
ポー ル…「そうか 出来るだけ早く帰る」
久々に会ったポールの態度が素っ気無くて寂しくなるアン。

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〜 薬草〜

アンが町をブラブラして見て回っていると、リンがまた現れる。
ア ンの世話をして、
謎 の女リン…“リン・チンです”と 名乗る。
ア ン…「何故 付き纏うの」
謎 の女リン…“お手伝いしたいから”
店 のテーブルに置いてあるものを手に取って、
ア ン…「この気味の悪い物は いったい何よ」と 言うアン。
謎 の女リン…“ご主人の愛を繋ぐ お薬です”
動 揺を隠しながら、
ア ン…「ありがたいけど 主人はあたしを愛し てくれてるわ」と 言う。
謎 の女リン…“冷たい態度で”
ア ン…「そんなこと 言ってないわ」
謎 の女リン…“考えてはいるでしょ”
ア ン…「あたしに何の恨みがあるのよ
止めないと おまわりを呼ぶわよ」
笑 いながら、
謎 の女リン…“寝る前にご主人に お茶を飲ま せてあげて
きっとあなたも よかったと思います”
ア ン…「いいわ じゃあ聞きますけど
何故 あなたが主人のこと
そんなに知っているの」
謎 の女リン…“愛し合っていたから…”
“し まった”という表情をするリン。
ア ン…「何ですって!」
謎 の女リン…“ごめんなさい
あなたには言わないつもりでした
女性なら当然の反応が 起きるでしょ”
ア ン…「そう 腸が煮えるような 嫉妬よ」
謎 の女リン…“それに失望と嘆きと 苦痛も
でも薬草入りの薬を飲めば そんなことはみんな忘れて
二人とも幸せになれるんです
私の言うことが信じられなけば 道士に聞いてみて”
店 主に向かって、
ア ン…「教えて 道士って誰のことなの」と 聞く。
店 主…「霊能者よ 強い力を持ってて
あなたの家に よくないことがあったら
道士に頼んで 悪霊を追い払ってもらうの」
“信じられない”という表情を浮かべているアンが、リンがいなくなっているのに気がつく。
店 主…「会って見たい?」
ア ン…「沢山よ それでなくても
あたし 可笑しくなりそう」
店 を出て行こうとするアンに、
店 主…「待って お茶を」と 言う。

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〜 お茶〜

寝室で横になり書類を見ているポールに甘えようとするが素っ気無くされるアン。
つ まらなそうに部屋を歩き回っているアンが、メモを拾う。
“リ ン・チン嬢の墓に 毎日花をお供え”と書いてある。
“リンが言っていたことは 本当だった”と悲しそうにポールを見るアン。
目 の前に置いてあるお茶を見て、“何 とかしなくては”と 思い、ポールにお茶を入れる。
ポー ル…「何だ これは?」
ア ン…「ああ ここに来る途中で買った
薬草入りのお茶よ
体にいいんですって うんと長生きして」
湯 飲みをポールに渡す。
“そんな所に行って”と心配したポールが、
ポー ル…「やはり 歩いて帰すんじゃなかっ た」と 言い湯飲みを持ちあげ乾杯する。
ア ン…「ウフフフ〜ン」
笑 いながら一緒にお茶を飲む。
ア ン…「ウ〜ン お店で道士の話も聞いたわ」
ポー ル…「この国の文化は
霊魂の存在を信じるこ とで 成り立ってるんだ
考えられないがね」
ア ン…「ウフン さっき迎えに来てくれたあな たの車
素敵だったわ」
ポー ル…「ウン あれに乗ってた 若い娘が死 んだ後
買い取ったんだ 家族から」
考えを巡らせているアン。
ポー ル…「このお茶だが 前にも飲んだようだ な
何処で買ったって」と 言いながらポールが湯飲みを片付けているのを見ているアン。
ア ン…「来る途中の店よ」と 言いガウンを脱ぐアン。
ポー ル…「ああ そう」と アンが言っていたのを思い出しながら、ベッドに横になるポール。
ポー ル…「あああ〜」と 大きく息を吸い込むポール。
ポー ルに抱きつくアン。
ア ン…「ウ〜ン」
キ スをしながら迫るアン。
ア ン…「ウ ウ〜ン」
ア ンを抱こうとするが出来ないポール。
そ して、
ポー ル…「お休み アン」と 言い寝返る。
ガッ カリして、
ア ン…「お休み?」と 言うアン。
ポー ル…「ああ そうだ」
ア ン…「ポール もう半年もあってないのよ」と ポールにキスをするアン。
ポー ル…「私も寂しかった しかし今日は
難しい仕事が続いたんで クタクタなんだよ」
ア ンにキスをするポール。
外 で爆竹が鳴る。
ポー ル…「ああ またか
早くこの祭り 終わらんかな
さてと
ああ あああ〜
お休み」と 言い寝ようとするポール。
つ まらなそうに起き上がり、
ア ン…「お休み」と 言うアン。
謎 の女リン…“どうしたんです
「お休み」はないでしょ”と リンが現れる。
ア ン…「あなたのお茶の効き目を見てよ」と 隣で寝ているポールを指し言う。
謎 の女リン…“思ったより 悪いようですね
それじゃ 指の先を使って
背骨の両側を そっと撫ぜてください”


『死霊の復活』

アン…「ウッフフ 冗 談じゃないわ」
笑 い出すアン。
謎 の女リン…“笑ってないで やるんです”
リ ンが言うようにやるアン。
謎 の女リン…“そう 今度は生え際にキスをし ながら
こう言うの
「愛してるわ ポール」”
ア ン…「アハハハハ〜」
謎 の女リン…“このまま愛を取り戻せなくて  いいんですか
さあ キスをして
「愛してる」って言うんです”
ア ン…「ああ 分かったわ」
笑っ ていたアンがリンが言うようにやる。
ア ン…「愛してるわ ポール」
ポー ルが向き直り、抱こうとする。
が、
ポー ル…「何だ 君か」
リ ンだと思って反応していたポールが驚いて起き上がる。
今 でも忘れられないでいる愛人リンの愛し方だったからだ。
ア ン…「ポール」
ポー ル…「日記を読んだんだな」
ア ン…「私がそんなことするはずないでしょ」
ポー ルを求めてキスをするアン。
「ねっ お願い
ポール止めないで」
ポー ルを求めるアン。
そ のアンを両腕で揺すり、
ポー ル…「私がどれほど驚いているか 君には 分かっちゃいない」
ア ン…「あなた何を言ってるの」
ポー ルを求めてキスをし続けるアン。
ポー ル…「止めろ!」
ア ンを両腕で離し、
「なぁ 頼む
止めてくれ」と アンを見ながら後退りしてベッドから離れるポール。
驚 いて見ているアンに、
ポー ル…「君はリンじゃない」と 言う。

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〜 道士〜

“このままではいけない 何とかしなければ”と思ったアンが道士フェン・シュイを家に呼ぶ。
道 士…「この家に住む霊に 悩ませているそう ですが」
ア ン…「はっきり言って 何に悩まされている のか
分からないんですけど
此方に来てから ずっと変な女の人が現れたり
消えたりしてるんです」
鞄 から取り出した蝋燭に火を点け、奥の方で蝋燭を持って立っているリンを指差し、
道 士…「あの女が そうですか」と 言う。
道 士が指差す方を見て、
ア ン…「ええ この人です」
道 士…「リン・チンといいまして あの女の霊 は
この家と小鳥と車に 取り付いています
車はご存知で」
ア ン…「ええ 知ってますけど
何故出てくるんですか?」
道 士…「隣亡から抜け出せずにいるんです
この世に残った誰かが 話そうとしない」
ア ン…「私は追っ払いたいの
どうすりゃいいんですか?」
道 士が蝋燭の火を吹き消す。
リ ンも消える。
リ ンがいた方を振り返るアン。
先 ほどと違う所に現れるリン。
謎 の女リン…“今から7年前に”
リ ンの声がした方を向くアン。
謎 の女リン…“奥様がある人に恋をして
「家族の名を汚した」と言われ 兄に毒薬を飲まされ
死んだんですけど 相手の方が私の思い出に
しがみ付いて 離そうとしないんです
あなたの助け無しでは ここから抜け出せません”
ア ン…「じゃあ 兄さんのところに化けて出れ ばいいのに
あたしが何かしたって言うの」
謎 の女リン…“いいえ でもあなたのためにも なるでしょ”
道 士…「此方の慣わしでは 死者が埋葬されて から
7年経つと遺骨を掘り出して 家族がそれを綺麗に洗って
壷に入れます
しかしリンは家名を汚したというので 家族の者が遺骨を引き取ろうとし ません
ですからあなたがそれを買い取って 灰にすれば
リンの霊は解き放されて 天に昇れます」
ア ン…「ファ 笑って悪いけど
私ってそんなこと信じない性格なの」
道 士…「では あなたの自由にはなれません」

道士と遺骨を買い取りに行くアン。
そ こにポールがいるのが目に留まる。
道 士…「ご存知な方で」
ア ン…「あたしの主人
そう あの人の車に あの人の小鳥 あの人の家
まだ愛してるのね」
道 士…「違います 思い出の虜になってる
解き放してやれるのは あなただけです」

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 〜 壷〜

買い取ってきたリンの遺骨が入った壷を開けようとしているアン。
謎 の女リン…“反対に回すんです”
ア ン…「反対って どっちよ」
謎 の女リン…“そう怒らないでください”


『死霊の復活』

“さあ 左に回せば開きますから”
ア ン…「ああしろ こうしろって
指図してないで 自分でやればいいのに
あっ」
ポー ルが部屋に入ってくる。
ポー ル…「そこで何してる」
ア ン…「あ あ〜 ポール
目が覚めて 眠れないんで
壷を見てたの」
ポー ル…「見てた 開けようとしていたじゃな いか」
ア ン…「そうよ
ねぇ聞いて あなたがどうなってるのか
分からないの
この家で何が起きてるのか それも分からないわ」
ポー ル…「君には係わりのないことだ
そもそも ここへ来たのが間違いだ」
ア ン…「あなたが“来い”って 言ったじゃな い」
ポー ル…「だから今度は“帰れ”って 言って るんだ
次の船に乗って 帰りたまえ」
泣 きながら、
ア ン…「いいわ」と 言う。

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〜 苛立ち〜

ベットで横になっているアンに、
謎 の女リン…“奥様 お願いですから起きてく ださい”と 言う。
リ ンを見ながら起き上がるアン。
謎 の女リン…“余り時間がないんです
ご主人が骨を入れた壷を 移してしまいました”
リ ンを指差しながら、
ア ン…「出て行きなさい 私の幸せを
奪ったのは あなたよ」と 怒る。
謎 の女リン…“心から謝ります
でも言う通りにすれば 取り戻せるんです
信じてください
ベッ トの花瓶をリンに向かって投げつけるアン。
そ こには、リンではなくお茶を持ってきたお手伝いが立っていた。

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〜 診察〜

同郷の医師に診てもらうアン。
医 師…「どこも悪いところは ありませんね」
ア ン…「いいえ そんなはずありません
可笑しな者を 見たり聞いたりするんです
はっきり言えば 女の幽霊ですわ
御負けに主人は帰れと言うし 可笑しくなりそうです」
医 師…「この国へ来ると 全てが変わりますか ら
あなたも変わらなければ
今のあなたは信じていいものかどうか 迷っているんです」
ア ン…「だから どうなんですの」
医 師…「理性では信じがたいものも それを事 実と認めれば
悩みも解決出来るはずです
独りで思い惑うこともなくなるでしょう」
笑 いながら、
ア ン…「私の理性が そんなこと許しません わ」と 言う。
医 師…「では その理性と一緒に
次の船に乗るんですな
この土地に 合わせるしかないのです
適応できぬものは 弾き出されます」
医 師の顔を見ているアン。

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〜 遺骨〜

リンが家に現れている。
不安でありながらアンが決心したのだ。
勇 気付けるようにアンの手を掴み、
謎 の女リン…“どうぞ
先に行って待ってます”と 言いメモを取り出し、
“場所は これで分かるでしょ”
メ モをアンに差し出す。
動 揺しているアンがメモを取り目を通し仕舞う。
嬉 しそうに手を合わせてアンを見るリン。
ポー ルが壷を置いている部屋へ行くアン。
部 屋では小鳥たちが囀っている。
真っ 直ぐに壷のところへ行き、蓋を開ける。
そ して、遺骨を取り出す。
小 鳥たちが激しく泣き続ける。
遺 骨を抱いて部屋を出ようとすると、ポールの声がしドアが開く。
慌 てて向きを変え屏風の後ろへ隠れるアン。
部 下と話しながら部屋へ入ってきたポールが、激しく泣いている小鳥たちの方へ来て、
ポー ル…「どうした お前たち
何を騒いでる」と 鳥篭を覗き込み、
「シー」と 宥める。
そ して、部下ビクターに向かって、
ポー ル…「ビクター 窓を開けて空気を入れ ろ」と 言う。
そ の様子を見ながら、部屋を出る機会を窺っていたアンが遺骨を抱いて急いで出てゆく。
騒 いでいる小鳥たちを心配しているポール。
ポー ル…「シー」
窓 を開けているビクター。

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〜 成仏〜

メモに書かれた場所に行くアン。
ア ン…「何処にいるの 待ってるって言ったの に〜」
リ ンの声が聞こえてくる。
謎 の女リン…“そこを降りるんです 火が見え るでしょ”
船 場に置かれたドラム缶の前にいるリン。
ド ラム缶の中では今にも消えそうな火が燃えている。
そ こに行き、
ア ン…「それで どうするの」と 聞くアン。
謎 の女リン…“そのまま中に入れてください”
火 を見て、
ア ン…「燃えなかったら」
首 を横に振り、
謎 の女リン…“心配は要りません”と 言うリン。
“大丈夫なのか”と躊躇しているアンに、
謎 の女リン…“お願いです”と 頼むリン。


『死霊の復活』

アンが遺骨を火の中に入れる。
“ボ〜”と火柱が立 ち上がる。
ア ン…「アッ!」
驚いて燃え上がる火を見るアン。
ア ン…「ああ〜」


『死霊の復活』

嬉しそうに燃え上がる火柱を見上げるアン。
灰が舞い上がる。
謎 の女リン…“ありがとう”
リンの声が聞こえる。
声 がする方を見るとリンが小船に乗っている。
謎 の女リン…“ありがとうありがとう お幸せにお幸せに お幸せにお幸せにと ハミングするような声と共に、リンを乗せた小船が遠ざかって行く。


『死霊の復活』

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〜新たな旅立ち〜

一方、小鳥たちも。
鳥 篭が開き小鳥たちが飛び立ってゆく。
ポー ル…「どうしたんだ 待て」
驚 いて空になった鳥篭を見ているポール。
ア ンが近づき鳥篭を見る。
ア ンを見るポール。
ポー ル…「アン」
ア ン…「なあに」
愛しそうにアンを見詰め、アンの両手に手をやるポール。
その包まれた両手をポールの頬に優しく持って行くアン。
以前の感情を取り戻したポールが、アンの両手を包み込む。
ポー ル…「逢えなくて 寂しかったよ」
ア ン…「あたしもよ」
抱き寄せキスをするポール。
幸せそうに抱かれるアン。
抱擁している二人を祝福するかのように風鈴が鳴っている。


『死霊の復活』

風鈴は魔除けに使われていたというが、きっと、リンが祝福していたのだろう。
“お幸せに お幸せに…”と。

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 アンに付き纏っていたリンは幽霊でポールの 愛人だった。
 ポー ルとの不倫関係でいたリンを許せない兄が殺害する。
 そ れを不憫に思ったポールが、思いを断ち切れないでいるのでリンは成仏できないでいた訳だ。
 そ こで、リンはアンとポールの愛を繋げる手伝いをして、ポールの思いを断ち切らせようとした。
 そ して、アンにタチュウの祭りの間に自分の遺骨を火葬してもらい成仏しようと考えたのだ。
 事 実を知ったアンは悩み苦しむが、ポールの愛を取り戻したい一心で実行する。

 この話は「愛」がテーマでハッピーエンドとなる訳だが、世の中には成仏できな い幽霊は沢山いるだろうから、いくら風習が違ってもアンのような体験をする人はおそらくあちらこちらに いるのだろう。
 “ご めんなさい”と声掛けられた ら、もしかして幽霊かも…
 ご用心ご用心。

更新2007.9.1
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ヒッチコックがデザインしたという似顔絵

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参考文献
ヒッ チコック劇場
新・ ヒッチコック劇場
ア ルフレッド・ヒッチコック
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