新・ ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock Presents-
ビン詰めの魔物
-The Jar-

※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

記号[☆：スタッフ・キャスト　→： 始めに　←：終わりに]

ナチに追われて逃げ込んだ部屋で不思議な出 来事に遭遇する女。
女 を追い込んで勝ち誇ったように笑いながら撃とうとした兵士が、隠れていた女の横の棚に置いてあったガラス瓶 の中を見た途端に様子が一変する。
顔が凍りついたようになり、そのガラス瓶の中の奇妙な物体に向かって、
兵 士…「失礼を」と 言い精気をなくしたように銃を置いて立ち去ろうとしたのだ。
女 は置いてあった銃で兵士を撃ち難を逃れるのだが、女もその奇妙な物体に興味を持ってしまう。
　
女 は、そのガラス瓶を持ってナチが乗ってきた38年製のメルセデスに乗って逃げる。
そ の後も奇妙な物体による不思議な出来事が続き数十年経過する。

今回は、画廊のオーナー、ハーウィンクルの協力で個展を開催していたが、タイムズの批 評家に虚仮威しされ面白い題材を探していた売れない芸術家ノールだ。

ノールは廃材などを扱っている商人の小人ハピーより、五重衝突事故の真ん中にあったと いう38年製のメルセデスを購入する。
そ の車のロゴマークの部品をアートとして使おうと取り外そうとしていると、傍にいたハピーの飼い犬が異 常に吠える。
部 品は外れない上に煩く吠える犬に苛立ち、ノールがボンネットを激しく叩くとボンネットが開く。
中 を覗き込むノール。
静かになる犬。
あの奇妙な物体が入ったガラス瓶が入っていたのだ。
そ のガラス瓶を取り出し、奇妙な物体に見入るノール。

怯える犬。

ノールは開催中である個展会場に気に入った奇妙な物体が入ったガラス瓶を置く。
す ると、大勢の客が奇妙な物体に見入り、まったく人気のなかったノールの作品も次々に売れてゆく。

喜ぶノールとハーウィンクル。

浮気している妻エリカは、夫の作風、言動に不満を持っていた。
今 度の粘土にカツラを被せただけのような薄気味の悪い奇妙な物体は特に気に入らない。
自分を睨んでいるように見えるからだ。
イ ライラが高まってくる。

そんな中で個展の大成功を祝って画廊でパーティを行う。
彼 を愛しているハーウィンクルは横暴な態度の妻エリカに苛立ち自殺未遂をする。
一 命を取り留めたハーウィンクルに真意を問うノールに、あの物体がそういう行動に走らせたと言う。

妻エリカは画廊で浮気相手と抱き合おうとするが、男はあの物体に見られているよ うで落ち着かないと言い拒否する。
抱 く気になれない男と抱かれたいエリカが、あの物体が因で口論となる。
男 は半年続いていたエリカとの愛人関係を解消させ去ってゆく。

苛立つエリカ。
煙 草を吸いながら、あの物体を見る。
エ リカ…「こうなったのも　全部お前のせい よ」と 謎の物体に話しかける。
エ リカ…「皆と違って　私は騙されないわ」
立 ち止まって物体を見るエリカ。
ガ ラス瓶に近づくエリカ。

不気味に思いながら瓶の蓋を開ける。
気味悪そうにしながら、瓶の中に手を入れるエリカ。
エ リカ…「アッ〜」
物体が動いたように感じ悲鳴を上げる。
その拍子に台にぶつかって、上に置かれていたガラス瓶をひっくり返す。
得 体の知れない物体がソファーの下に滑り込んでゆく。
腹 ばいになり怖々と手を伸ばし、その物体を取ろうとするエリカ。
そ の時、
エ リカ…「アッ　ア〜」と 声を上げ怯えるエリカ。
後 ろからノールがエリカを引っ張り起こしたのだ。
　こ の辺の演出は上手い。
エ リカの両腕を掴み、
ノー ス…「何をしたんだ！」と エリカを揺すりながら言うノール。
怯 えているエリカ。
エ リカ…「アッ　ア〜」
床 を見て気付くノール。
慌 てて腹ばいになり、ソファーの下の物体を取り出すノール。
大事そうに抱き抱えて、台の上に乗せるノール。
床 に転がっているガラス瓶に入れようとノールが瓶を取ろうとした時に、鬼の首でも取るような形相のエリ カがナイフで台の上の物体を刺す。
ノー ス…「やめろ！」と エリカのナイフを奪い取ろうとするノール。
ナ イフが床に落ちる。
ノー スとエリカが物体を壮烈に奪い合う。
お 互いに物体を掴み引き合う。
物 体の付着物が飛び散る。

引き合っていた物体が切れ、弾みに飛ばされるノールとエリカ。
壁 に付いた物体の一部が不気味に流れ落ちる。
ま るで血が流れているように。
傍にナイフが落ちている。
それを見ていたノールがエリカを睨む。
救いを求めるエリカ。
首を振り拒否するノール。

再び個展会場に奇妙な物体が入ったガラス瓶を置いているノール。
その目は殺気だっている。

ガラス瓶がアップになる。
そこには、出て行ったと言っていたエリカの生首が…

　瓶に詰められた奇妙な物体が持つ不思議な力、それは“己の内面を映し出す 鏡”ということだ。
　 得体の知れない物体に対して救いを求める者と、不安を持つ者。
　 夫と妻がその対極にある。
　 破壊することで安定を得ようとしたエリカは、守ろうとするノールによってガラス瓶に閉じ込められた。
　 物体の破壊は成功したが抹殺され、気味悪がっていたガラス瓶に入れられてしまうエリカ。
　 それも虚仮威ししていたノールのアートとして。
　 エリカを抹殺したものの、完全に壊れているノール。
　 そして、あのガラス瓶のエリカの生首もアートだと絶賛し疑わない人々。
　 何ともグロテスクで皮肉がキツイ。
　 それに、ガラス瓶に何が入っているのか興味を持って 覗き込む人間の心理を衝いていて上手いものだ。
　 暫くはガラス瓶の中を覗けそうにない。
　 怖い。