新・
ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock
Presents-
悪魔の診断書
-The
Mole-
アルフレッド・ヒッチコック
※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ
い。
☆ → 〜駆け込み〜〜聞き込み〜〜踏み込み〜〜現場〜 ←
記号[☆:スタッフ・キャスト →:
始めに ←:終わりに]
(1980年代)(米)(TV映画)-The
Mole-
演出…リチャード・ブガイスキ
制作…タウンゼント・フィルム・プロ
ダクションズ(米)
脚本…リック・バーガー
ストーリーテラー…ア
ルフレッド・ヒッチコック
翻訳…鈴木導
15年前、殺人罪で起訴された凶悪犯リット
ンが精神疾患でハートマン州立病院に生涯監禁となったいた。
だ
が、15年目に院長が治ったと判断し退院させた。
驚
いた看護師ジェニファー・ロビンソンはリットンを診続けていたDr.ストダードに電話で知らせる。
電
話を受けたDr.ストダードと思われる男は“リットンの病気は治っていないので また殺人を起す”と言い警察に駆け込む。
『悪魔の診断書』
Top
〜
駆け込み〜
忙しいと断ろうとしていたウィリス警部に、
ス
トダード…「ウィルス警部 私の話を聞かないと
今夜 市内で残虐な殺 人が起きます」
ウィ
リス警部…「何を根拠に そう言うんです
か」
2分で終わると言い、勧められた椅子も断り必死に訴えるストダード。
ストダードの様子を見て話を聞くことにするウィリス警部。
ス
トダード…「さあ 見てください」
持っ
てきた新聞の切り抜き記事などを見せる。
「15年前のものですが 非常に狡猾な男で
リットンの逮捕には 大変な手数が掛かりました
その結果が」
ウィ
リス警部…「モグラに精神異常の判決
生涯修理作業院に監禁」
ス
トダード…「はっ 生涯か
何でもお手軽に 済ます時代ですから
最近では生涯というのは何年ですか
25年? 20年?」
ウィ
リス警部…「いったいどういうことです」
ス
トダード…「15年間 殆ど私が診てきたん
です
リットンの病状は 私ほど知っている医師は他にはいません
生涯監禁と言っても 実際は社会復帰が
究極の目標です」
何を言いたいのか、真意を測りかねているウィリス警部とアラン警官。
ス
トダード…「しかし リットンには社会復帰
は不可能です
治療してみて 私にはよく分かりました
でもそうは思わんもんが 多いんで
私は何度も忠告したんです
今度だけは 潔く敗北を認めよう
あの患者は 賢過ぎ るって」
どう言ったものかと警官の方へ目をやるウィリス警部。
それを察知して、
ス
トダード…「座ってもいいですか」
ウィ
リス警部…「ああ どうぞ
お掛けください」と
椅子を勧める。
忙しいと門前払いにしようとしていたウィルス警部だったが、完全にストダードの
ペースになっている。
ア
ラン警官に、
ウィ
リス警部…「アラン すまんが先生に水を
1杯お持ちしろ」
厄介なのが来たものだと思いながら、腰掛けるウィリス警部。
それを見透かして、
ス
トダード…「一人で勝手に捲し立てて 申し
訳ありません」と
言うストダード。
ウィ
リス警部…「やぁ〜 どうぞ続けて」
ス
トダード…「ええ そこで私は…」
アラン警官が持って来た水を一口飲んで間を置くストダード。
ス
トダード…「院長に言ったんです リットンは知能が高いから」
“話が長くなりそうだ”と思ったウィリス警部はパイプに火を点け吸い出す。
ス
トダード…「我々のすることを 全て読んでる
だからテストの結果など 決して信じちゃいけない
ましてリットンを退院させるなど もってのほかだって」
“ええっ 退院させたんだ”と身を乗り出すウィリス警部。
『悪魔の診断書』
ウィリス警部…「アラ
ン 先生の話の要点を書きとめて
文書にしてくれないか
直ぐ 全員へ配布しよう」
水を飲みながら聞いていたストダードが、
ス
トダード…「駄目です警部 そんな暇はあり
ません
私の言うことを聞かずに 院長はリットンを退院させたんです」
驚いてストダードを見るウィルス警部。
ス
トダード…「彼は今朝早く 街へ出て行った
んです」
そわそわしているウィルス警部。
ス
トダード…「病気がまだ治っていないことは
私が保証します
巧妙になっただけです」
ウィ
リス警部…「巧妙になったとは 何がで す」
ス
トダード…「狡くなって 外見からは分かり
ませんが」
“早く指示を出して捕まえなくては”と思いながら聞いているウィリス警部。
ス
トダード…「しかし 危険なことに変わりは
ない
犠牲者が また出ます」
ウィリス警部の目を見て訴えるストダード。
返事に困って、
ウィ
リス警部…「わたしゃ あまりこの事件を知らんのです
モグラと言われた訳は?」と
ウィリス警部。
“どのように話すか”と思案して立ち上がり、
ス
トダード…「太陽が怖い 昼の光を恐れて
暗くなると動き出す」と
窓から外を見て話す。
“よく分からないが動き出さないといけないだろう”と思ったウィリス警部が立ち上がって外を見ているストダードに言う。
ウィ
リス警部…「調べてみましょう」
振り向くストダード。
ウィ
リス警部…「何かあった時の連絡先を 教
えてくれませんか
ご自宅は?」
ス
トダード…「え ああ そうだ
どうぞ」と、
慌て思いついたように名詞を取り出しウィリス警部に渡す。
「私がいなくても留守番電話があります」
名
刺を見て、
ウィ
リス警部…「ストダード先生ですか」
ス
トダード…「申し遅れました マイケル・ス
トダードです」と
言い握手する。
ウィ
リス警部…「ウィリス警部です よろしく
どうぞ」
ス
トダード…「よろしく」
ウィリス警部をしっかり見て挨拶するストダード。
圧倒され思わず頷くウィリス警部。
ス
トダード…「じゃあ」と
言い立ち去る。
手
で応えるウィリス警部。
受け取った名詞を机にポィと置き、
ウィ
リス警部…「う〜ん」と
溜息をつくウィリス警部。
ア
ラン警官に、
ウィ
リス警部…「私への連絡があったら メッ
セージセンターへ回しておいてくれ」と
言い、机の引き出しに仕舞っていた銃を取り出す。
「あ〜 使いたくない なぁ 来週で退職だ」と、
溜息をつきアラン警官に銃を見せて言うウィリス警部。
Top
〜
聞き込み〜
ハートマン州立病院へ行き聞き込みをするウィリス警部。
院
長…「ストダードは一年も前から リットン
を診てはいません」
ウィ
リス警部…「どうしてですか」
院
長…「担当が長過ぎたからです
同じ仕事を続けると どうしても弊害が出ます
客観性が失われれば 判断も狂うでしょ」
ウィ
リス警部…「ストダード先生の意見では
客観性を失くしてるのは
あなたの方だと」
院
長…「ストダードは治療を諦めてしまったん
です
この仕事をやっていくには 常に楽観的でなければいけないんです」
傍
で聞いていた看護師ジェニファーが首を傾げる。
院
長…「全てが可能だと 信ずる必要がある
分かりますか」
ウィ
リス警部…「私は警官ですからね 全てが
可能だってことは初めっから知ってますよ」
院
長…「皮肉なことにストダードが 信じたが
らなくても
治療の効果があって 患者は正常に戻ったんです
しかし ストダードは最後まで リットンは芝居をしていると言い張りま して
15年の間治療してきても その効果はまったくなかったと
症状は治っても病気は治ってないと言うんです
受け入れられませんよ」
ウィ
リス警部…「で その後は」
院
長…「3年ぶりの休暇を取らせて 旅行から
帰って来ると
市立病院の神経科の方へ転属してもらった」
ウィ
リス警部…「ははは 追い払ったわけです
か」
院
長…「ええ
リットンの記録が見当たりません
申し訳ない
今朝退院したばかりですから きっと 今 整理中なんでしょ」
不
満そうな表情を浮かべるウィリス警部。
院
長…「失礼します」
リッ
トンのリハビリ担当の医者が駆け寄ってきて「リットンに連絡を入れるように言っていたのに連絡がない」と言う。
治っていなかったと確信したウィリス警部は、院長に「リットンの記録を病院中を探して自分のところへ届けるように」と言う。
『悪魔の診断書』
そして、時計を見て、
ウィ
リス警部…「2時45分か 今日の日没は
何時だ」と
言いながら署に急ぐ。
Top
〜
踏み込み〜
夜、殺人事件が起きる。
ストダードに電話連絡して、リットンが住んでいるというアパートで待っているウィリス
警部とアラン警官。
ア
ラン警官…「直ぐ来て欲しいと 留守録して
おきました」
ウィ
リス警部…「ああ ありがとう」
ア
パートの階段の踊り場を行ったり来たりしているウィリス警部。
ス
トダードが駆けつけて来る。
ス
トダード…「どうしたんです」
ウィ
リス警部…「リットンがこのアパートの部
屋を借りてます」
ス
トダード…「そうですか」
ウィ
リス警部…「ここで撃ち合いはしたくない
担当医だったんですから あなたが声を掛ければ
ドアを開けるでしょ」
ス
トダード…「分かりませんが 何と言いま
す」
ウィ
リス警部…「“退院した後どうしているか
気になって見に来た”と
言ったらどうです」
ス
トダード…「ええ」
ド
アの前で銃を構えているウィリス警部とアラン警官。
ス
トダードに合図する。
ド
アをノックして、
ス
トダード…「リットン リットン ストダー
ドだ」と 言うストダード。
返
答がない。
『悪魔の診断書』
ウィリス警部の方を見るストダード。
続
けてと合図するウィリス警部。
ス
トダード…「君がどうしているか 見に来た
退院したそうだな」
再
びノックして、
ス
トダード…「リットン ここを開けたまえ」と
言う。
ド
アに近付いてきて、
ウィ
リス警部…「駄目ですね 退いてくださ い」と
ストダードに言い、
ウィ
リス警部…「アラン いいか
踏み込むぞ」
ア
ラン警官に言う。
ド
アを壊し中に入ってゆく。
ア
ラン警官と部屋に踏み込んだウィリス警部が、メチャメチャに壊された家具が散乱する室内を目にする。
ス
トダードに、
ウィ
リス警部…「どう思います」と
言う。
驚
きながら室内を見回すストダード。
切
り刻まれた電話帳に目をやるアラン警官。
ス
トダード…「人を襲う前には 常にこのよう
な行動を取ります」
ウィ
リス警部…「セントラル街の裏通りで ビ
ルのコンクリートの影に
持たし掛けるような死体が 発見されましてね
他所から運んだようですが 場所は分かりません
リットンがやったものなのか 手口を見ていただけませんか
アラン そこにいてくれ」
ス
トダード…「納屋と同じ状態なら リットン
です」
ス
トダードを見ているアラン警官。
Top
ス
トダードと死体安置場へ向かうウィリス警部。
ウィ
リス警部…「確かですか」
ス
トダード…「あいつがどんな夢を見るか 知って
るんです
勿論 確かですよ
死体のことを 先に言って欲しかった」
ウィ
リス警部…「言うって 何をです
リットンがやったかどうかも 分からんのに
話しようがないでしょ
時間もなかったし」
ス
トダード…「15年もあった
警部 死体のあった場所に行ってみましょう」と
ウィリス警部の腕を引き止め言うストダード。
ウィ
リス警部…「何故?」
ス
トダード…「私を信じてください
院長がそうしていれば こんなことにならずに済んだ」
ウィ
リス警部の目を見て言うストダード。
ウィ
リス警部…「ようし 行きましょう」
Top
〜
現場〜
死体のあった場所にウィリス警部とストダードが着く。
ウィ
リス警部…「ここにありました」と
バラバラにされたことを示す検証後のチョークの跡を指差すウィリス警部。
「実物がなくてよかった あれを見たら眠れんでしょ」
『悪魔の診断書』
考え込むストダード。
ウィ
リス警部…「何です?」
ス
トダード…「ああ 死体を発見したのは 何
時だと言いました」
意
味ありげに言うストダード。
ウィ
リス警部…「5時半だそうです」
ス
トダード…「暗いところが好きなんです 5
時半ではまだ明るい」
思
いついたように辺りを見回すストダード。
ド
アを見つけ開ける。
地
下道の入り口のようだ。
ス
トダード…「犯行の現場に留まる癖がありま
す まだいるかもしれない
捕まえましょ」
下
を覗き込み、
ウィ
リス警部…「その前にまず応援を呼ぼう」と
言いパトカーの方へ向かうウィリス警部。
ス
トダード…「そんな暇はありません」
ウィ
リス警部…「そこにいてください」
“豪いことになった”と思いながら、
「あ〜 指令室 指令室 ウィリスだ
セントラル街416へ パトカーを2台寄越してくれ
大至急だ いいな」
無
線で呼ぶ。
婦
人警官…「了解しました 直ぐ手
配します」
“これでよし”とストダードの方へ行きながら、
ウィ
リス警部…「先生」と
声を掛ける。
ス
トダードがいない。
地
下道の入り口のドアを開け、
ウィ
リス警部…「ストダード先生 先生!
ストダード先生」と
呼ぶ。
ウィ
リス警部…「くそ」
“「そこにいて」と言ったのに 勝手なことをして”と腹立たしくなる。
下
へ降りてゆくウィリス警部。
ウィ
リス警部…「何処へ行ったんです 先 生!」
通
路に置かれたものに躓き転ぶウィリス警部。
そ
の弾みに銃が下水の中へ落ち、懐中電灯も通路に転がる。
足
音が近づき、懐中電灯を拾う。
ス
トダード…「警部 私です」と
自分の顔に懐中電灯の灯りを向けるストダード。
転
んで痛めた足を押さえながら、
ウィ
リス警部…「ああ 何をしていた」と
恨めしく言うウィリス警部。
ス
トダード…「勝手に降りてきて すみません
あの男の気配を感じたもので」
ウィ
リス警部…「それで 今はその気配ってい
うのは」
ス
トダード…「何か聞こえた 向こうで
応援を待ちますか?」
ウィ
リス警部…「いやぁ あなたの言う通りで
す」と 言い懐中電灯を取る。
「ぐずぐずしてたら 逃げられちまう
捜しましょ」
ス
トダード…「はあ
ああ 向こうです」
ウィ
リス警部…「いいですか そこにいるんで
すよ
あなたは来ないでください
私の仕事だ」
辺
りを見回しながら、ストダードから聞いた方に向かう。
ウィ
リス警部…「リットン 隠れてないで出て
こい
いるのは分かってるんだ
リットン」
『悪魔の診断書』
電話が掛かってくる。
ア
ラン警官…「ウィリス警部 ウィリス警部
応答願います
ウィリス警部! 緊急事態です!」
辺
りを見回しながら電話に出るウィリス警部。
ウィ
リス警部…「ウィリスだ どうした
今 地下道にいる」
壁
の角に鼠がいるのを懐中電灯で照らすウィリス警部。
「君も応援に来たのか」
ア
ラン警官…「いや 私は署にいます
応援は手配しましたが リットンの記録が届きましてね」
ウィ
リス警部…「どうした」
ア
ラン警官…「ストダードの言う通りです」
ウィ
リス警部…「そんなことは 今さら言わな
くても分かってる」
ア
ラン警官…「でもあの男は違うんですよ」
ウィ
リス警部に忍び寄る足が映し出される。
ア
ラン警官…「ドクターのストダードは 今朝
殺されたんです
バラバラにされて」
リットンの記録にDr.ストダードと名乗っていた男の顔がアップになる。
ウィ
リス警部…「そんな馬鹿なことが…」
『悪魔の診断書』
アラン警官…「警部聞
こえますか 聞こえますか」
リッ
トン…「う〜」
声
がした方を向くウィリス警部。
リッ
トン…「ああ〜 アッハハハ アッハハハ」と、
Dr.ストダードに成り済ましていたリットンがウィリス警部に鋭利な刃が幾
つも付いている武器で襲い掛かる。
『悪魔の診断書』
ウィリス警部…「あ
あ〜」
リッ
トン…「アッハハハ〜」
ウィ
リス警部…「ぎゃあ〜」
受話器からウィリス警部の悲鳴と何度も振り下ろされる刃物の音、それにリットンの
笑い声が聞こえてくる。
ア
ラン警官…「…」
署
で呆然と立ち竦む警官アラン。
Top
院長を騙して退院したリットンは、まず目障りな
Dr.ストダードを惨殺した。
その後に看護師ジェニファーから電話を受けたリットンが、Dr.ストダードに成り済まして警察に駆け込んだ
という訳だ。
実に大胆なことを思いつくものである。
リットンは警察が自宅に乗り込んで来ることを計算に入れ異常者の室内のように見せかける。
動き出した警部を巧みに殺人現場へ誘い込み殺害するという手の込みようだ。
リッ
トンは精神異常者を装っていた知能犯で凶悪犯だ。
しっかり見極めて欲しいと願ってもこの手の犯罪者には手を焼くのが常だろう。
どうしたものか。
15
年間、待ちに待った殺人の快感を味わおうとしている知能犯と、定年間近で机の引き出しに銃を仕舞い込ん
でいる警部では勝負にならない。
そ
のことも調べて指名したのだろうが、警察に駆け込んだ時のリットンとウィリス警部の心理描写に、格の違
いが感じられる。
また、リチャード・ブガイスキは冒頭のシーンで看護師ジェニファーが浴槽のカーテンを開ける…と、『サ
イコ』のシーンのような演出を見せた。
これってヒッチコックへのオマージュだろうか?
更新2007.9.21
Top
ヒッチコックがデザインしたという似顔絵
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参考文献
ヒッ
チコック劇場
新・
ヒッチコック劇場
ア
ルフレッド・ヒッチコック
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映 画ありき2
映画あり
き
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