新・ ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock Presents-
悪戯なシナリオ
-Tragedy Tonight-
        
     アルフレッド・ヒッチコック

※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  〜病院〜〜嘆き〜〜オフィス〜〜〜〜悲 しみの表現〜〜溜息〜〜レッスン夢 が実現〜〜練習台〜 〜本物〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わりに] web拍手 by FC2
(1980年代)(米)(TV映画)-Tragedy Tonight-
演出…ストゥーラ・ガンナーソン
制作…タウンゼント・フィルム・プロ ダクションズ(米)
脚本…ジョナサン・グラスナー
出演…キャサリン・メアリー・スチュ ワート(姉/レイ チェル)/イザベル・メジア(妹/ケリー)
ストーリーテラー…ア ルフレッド・ヒッチコック
翻訳…鈴木導

レイチェルが帰宅すると、同居している妹ケ リーが暴漢されている。
ケ リー…「やめて〜 ああ〜 あっ あっ
お願い〜 ああ〜」
驚 いたレイチェルが近くにあった置物で見知らぬ男を殴り、腕を締め上げケリーを助ける。
だ が、男は演劇を学ぶケリーのパートナーのカートで、今日の課題“恐怖と愛”の練習をしていたと後で知らされる。

Top

〜 病院〜

腕を骨折したカートが待合室で診察を怖がっている。
レ イチェル…「演技をしてるって 言えばよ かったのに」と 怪我を負わせたカートを気遣うレイチェル。
ケ リー…「落ち着いて カート」
カー ト…「どうしようもない 風邪ひいて医者 へいっても
気を失ってしまう」
先 ほどの出来事を思い返して、
レ イチェル…「信じられないわ」と 言う。
ケ リー…「他の事を考えたら」
カー ト…「何をだ」
ケ リー…「明日の授業よ」
カー ト…「アハハ そうだな」
苦 笑いするカート。
腕 を組み考え込んでいたレイチェルが、
「こんな罰の悪い思いをしたのは 初めてよ」と 言う。
カー ト…「気にしないこと いいんです
責任はない それどころか大変な名誉ですよ」
レ イチェル…「名誉?」
カー ト…「ええ」
ケ リー…「姉さんが殴り掛かってきたというこ とは 迫真の演技だったということよ」
レ イチェル…「迫真の演技だったからこそ  “これはお芝居だ”って言って欲しかったと言ってるの」
ケ リー…「途中でやめるわけには いかないで しょ」
レ イチェル…「だからカートの腕を 折らせた の
いくらなんでも それは行き過ぎよ
腕だけじゃ 済まなかったかも…」


『悪戯なシナリオ』イザベル・メジア、キャサリン・メアリー・スチュワートら

カート…「考えただけ でも 恐ろしいよ」
ケ リー…「だって 私が頼んだわけじゃない わ」
レ イチェル…「そう
じゃどうすりゃいいの
妹がレイプされているのに 眺めてろって言うの」
ケ リー…「レイプされたんじゃ ないって ば!」と 声を荒げるケリー。
待 合室にいた柄の悪い男がケリーたちの話を面白がって聞いている。
声 を潜め、
ケ リー…「とか ないの」と 言うケリー。
レ イチェル…「咄嗟のことで 分かるわけない じゃない」と 声を潜めて言うレイチェル。
ケ リー…「はっ
分からないでしょうけど 感情を表現しようとしている時は
中断できないのよ
気持ちを盛り上げるのに また何時間も掛かるわ」
レ イチェル…「そんな馬鹿げた話 聞いたこと もないわ」
必死にケリーを助けたというのに練習台にされていた。
それに、カートに怪我を負わせてしまうという罰の悪い思いをしたレイチェル。
だが、ケリーとの話は噛み合わないで遣る方無い。

Top

〜 嘆き〜

家に帰ってきたレイチェルがカートを投げた際に、壊してしまっている模型を見る。
壊れた模型を手に取り、
レ イチェル…「初めての作品を 明日 施工主 に見せるの」と 悲しむレイチェル。
ケ リー…「まさか それ…」と 言うケリー。
頷 き、
レ イチェル…「あっ
私の模型の 中心の建 物よと 嘆き悲しみ、涙を流すレイチェル。
罰の悪い思いをした上に、大切な模型を壊してしまったのだ。
踏んだり蹴ったりだ。

Top

〜 オフィス〜

上司が、
上 司…「模型の上に 何をしたって」と 呆れたように言う。
決 まり悪そうに小声で、
レ イチェル…「男の人を 投げたんです」と 恥ずかしそうに言うレイチェル。
“どうなっているんだ”と思いながらも、
上 司…「もう 聞かないよ」と 椅子に座りながら言う。
レ イチェル…「ありがとう」
“説明しても空しいだけだ”と気落ちしているレイチェル。
上 司…「午後には施工主が来る」
鎮 痛な面持ちで、
レ イチェル…「よく知ってます」と 言うレイチェル。
上 司…「模型は 壊れちまったんだろ」
レ イチェル…「あれでは修理のしようがないく らい」
上 司…「レイチェル 恩を着せるわけではない が
他の役員たちの反対を押し切って 君を主任設計士に推薦したのは
この私なんだ」
レ イチェル…「知ってますわ 申し訳ありませ ん」
上 司…「君だけじゃなく この設計事務所にも
重要極まる仕事だ」
レ イチェル…「十分 分かってます
あ〜
信じてください ものの弾みなんです
この償いは 何でもします」
心 から詫びるレイチェルの様子を見て、
上 司…「うん
施工主に交渉して 打ち合わせを延期したら
新しい模型は 何時ごろできる?」と 言う。
レ イチェル…「直ぐ帰って 造り始めます」
上 司…「明日の朝は?」
レ イチェル…「朝までには完成させます 一睡 もせずに作業を続けても」
再チャンスをもらえて、意欲に燃え瞳が輝くレイチェル。

Top

〜 涙〜

レイチェルが帰宅するとケリーが電気も点けずに泣いている。
レ イチェル…「ケリー
どうしたの?」
ケ リー…「…」
レ イチェル…「ねぇ ケリー
どうしたのよ」
ケ リー…「…」
悲 しそうな表情でレイチェルを見上げるケリー。
「あのカートが…」
心 配してケリーを覗き込むレイチェル。
ケ リー…「今 電話があったの」
レ イチェル…「…」
ケ リー…「病院から」
レ イチェル…「…」
ケ リー…「事故に遭ったんだって」
レ イチェル…「… まさかそんな…
怪我は酷いの」
声を出して泣き出すケリー。
レ イチェル…「ケリー」
泣きながら、
ケ リー…「死んだんだって」
レ イチェル…「…」
ケ リー…「死んだの〜」
泣いているケリーを抱き寄せ、
レ イチェル…「そうなの 知らなかったわ」と 言い優しく抱擁するレイチェル。


『悪戯なシナリオ』キャサリン・メアリー・スチュワート、イザベル・メジア

ケリー…「才能があっ たのに もう舞台に立てないの」と 泣きながら言う。
レ イチェル…「本当ね」と 慰める。
ケ リー…「いい パートナーだったわ」
レ イチェル…「…」
ケ リー…「愛してたの」
嘆き悲しんで話し続けるケリーに、
レ イチェル…「しぃ〜」と 言い“もういいのよ 分かっている から”と制止し慰める。
ケ リー…「死んだの〜 死んだの〜 もう会え ない」と 泣き続けるケリー。

ケリーを慰めながら、ソファーでケリーと添い寝しているレイチェルが、ドアをノックす る音で目が覚める。
時 計を見て、
レ イチェル…「12時過ぎなのに 誰かしら」
目 が覚めたケリーに、
レ イチェル…「少し落ち着いた?」と 優しく言う。
甘 えて、
ケ リー…「うん」と 返事するケリー。
レ イチェル…「誰なのか 見てくるわ」
ケ リー…「レイチェル」
レ イチェル…「なあに」
ケ リー…「優しい姉さんがいて よかったわ」
優 しく微笑むレイチェル。

Top

〜悲しみの表現〜

レイチェルがチェーンロックしたままでドアを開け、外に立ている男を見る。
驚 いてチェーンロックを外す。
カー ト…「今晩は
いますか」と 言いカートが部屋に入って来る。
呆然とカートを見ているレイチェル。
ケ リー…「あら カート 来たの」と 言いカートとキスするケリー。
二 人を見ているレイチェルに、
ケ リー…「どうだった」と 言うケリー。
レ イチェル…「どうって 何が?」と 頭が混乱しているレイチェル。
ケ リー…「“悲しみの表現”」
言 葉に詰まっているレイチェルに、
ケ リー…「悪くなかったでしょ」と あっけらかんと言うケリー。
呆れて、
レ イチェル…「あれも演技だったの」と 言い怒りが込み上げてくるレイチェル。

Top

〜 溜息〜

オフィスで居眠りしているレイチェルを見て、
上 司…「大丈夫か」と 言い近寄ってくる上司。
レ イチェル…「ハッ」
目 が覚めるレイチェル。
上 司を見て、
レ イチェル…「ああ〜 駄目です」と 睡魔におそわれている表情で言う。
“一体 どうなっているんだ”と苛立ちながら、
上 司…「模型が出来なかったのか」と 言う上司。
レ イチェル…「そうです」
眠 気覚ましのコーヒーを飲みながら言うレイチェル。
上 司…「話してくれないか 今度は何があっ た」
一 息つき、
レ イチェル…「妹のボーイフレンドが 死にま した」と 言う。
上 司…「そうだったのか 気の毒に」と 気遣う上司。
レ イチェル…「ああ いいんです
本当は 死んでませんから」
“何を言ってるんだ”という表情でレイチェルを見る上司。
上 司…「どういうことだ それりゃ
よく分からんな」
レ イチェル…「夕べは せっせと模型を造って いるはずの時間に
“ボーイフレンドが死んだ”って 嘆き悲しんでいる妹を
慰めるのに精一杯でした」
上 司…「本当は死んでなかったんだろ」
レ イチェル…「その通りです」
上 司…「もう聞かんよ」
レ イチェル…「助かりますわ」
“弁解しても空しいだけ”と気落ちしているレイチェル。
上 司…「いずれにしても 模型は出来なかった ということだ」
レ イチェル…「そうです 最後にカートが生き てるってことが分かった…」
上 司…「ボーイフレンドだな〜」
レ イチェル…「本当は 妹のボーイフレンドで もないんです」
上 司…「違う?」
レ イチェル…「違います
カートが生きていることが 分かった後
何とか完成させようと 頑張ったんですけど…」と 大きく溜息を付き、
「時間がなくなりまし た」と 意気消沈しているレイチェル。


『悪戯なシナリオ』キャサリン・メアリー・スチュワート

レイチェルの様子を見て、
上 司…「いいだろ
交渉して打ち合わせを 5時まで延ばす
それまでには 出来るだろねっ」と 助け舟を出す上司。
驚き、
レ イチェル…「やります!」と 気持がたかぶる。
レ イチェル…「さあ 家に帰って
模型を仕上げて シャワーを浴びて
4時半に戻ってこないと」と 急いで帰る準備をするレイチェル。

Top

〜 レッスン〜

ケリーが演劇の指導者や生徒たちの前で課題を発表している。
ケ リー…「子供の時は あたし酷い出っ歯で
ブスな子だったと思います
男の子には 渾名で 呼ばれてました
“兎のケリー”とか  “イースター・バニー”とか
指 導者が隣の生徒に耳打ちをする。
聞 いた生徒が隣の生徒に順送りに耳打ちをしてゆき指導者の指示を伝える。
ケ リー…「それを聞くたびに 落ち込んでまし た
クリスマスは楽しさ一杯です
大きなダンスパーティーもありました
だけど あたしはパートナーがいなくて
泣いてばかり
あたしみたいなブスを 誘う子はいないんです」
指 導者…「…」
生 徒たち…「…」
指 導者…「どんな気持でいた」
ケ リー…「最低!
酷いもんです」
指 導者…「今は綺麗になったと 思うかね」
ちょっ と考えて、
ケ リー…「思います」と 恥ずかしそうに言うケリー。
ケ リーの態度を見て、
指 導者…「皆の意見は どうだ〜」と 生徒達の方を向き意見を求める。
指 導者…「綺麗になったと思うか」
嬉 しそうに生徒達を見回すが、冷ややかな反応に不安になるケリー。
指 導者…「正直に」
男 の生徒…「いいえ 思いません
どこか ダサい感じがします」
女 の生徒…「頬に 肉が付き過ぎてるわね」
カー ト…「2本の前歯が 大き過ぎる」
悪口を言われていた昔のことを思い出し、暗い気持になるケリー。
指 導者…「いいかね 自分のルックスを過信し ないことだ
そうだろ
君はスターには なれない」
ケ リー…「…」
悲しくなり、感情がたかぶってくるケリー。
指 導者…「才能があれば 性格俳優は務まるが
ラブロマンスの主役が出来るほどの 美しさはない」
涙が頬を伝わるケリー。
それを見て指差しながら、
指 導者…「そうだ それでいい」と 言いケリーに近寄ってくる指導者。
ケ リー…「…」
軽 く頷くケリー。
指 導者…「君のこの瞬間の気持ちを 一生忘れ ないようにすることだ
頭にファイルしておくといい 何時でも欲しい時に取り出せるように
いいねっ」
頷 くケリー。
指 導者…「ようし」
生 徒達が拍手をする。
台 から降り指導者の前にゆくケリー。
ケ リーを抱き寄せる指導者。
指 導者…「座って」と 涙を拭っているケリーに言う。
そ して、生徒達に向かい、
指 導者…「さて 皆も知ってる通り
ケリーは 魅力的な美人だが」
席 に戻ったケリーが、酷いことを言ったカートに“プイ”と脹れる。
指 導者…「ほんの何分間か 君たちの協力も あって」
ケ リーを抱き寄せるカートを睨むケリー。
指 導者…「醜いアヒルの子だった頃の 暗い気 持をはっきりと思い出した
これからは必要に応じて 何時でも再現できるだろう」
事 情が呑み込めたケリーが、カートを見てにこりとする。
指 導者…「では このレッスンの最後の課程は
“恐怖の表現”だが
その前に 宿題をひとつだそう
“思わぬチャンスから 夢が実現”
さて 君たちはそれをどう表現する?
フ フン」
笑 うケリーとカート。

Top

〜 夢が実現〜

模型を造っているレイチェル。
ケ リーが帰ってくる。
ケ リー…「レイチェル」
レ イチェル…「こっちよ」
嬉 しそうに、
ケ リー…「何があったか 当てて見て」と 言う。
レ イチェル…「寝不足で6杯目のコーヒーを  飲んでるところよ〜
あなたの当てっこゲームに付き合ってる 気力はないの」
ケ リー…「今日 『天国への往復切符』のオー ディションを受けたの」
レ イチェル…「…」
ケ リー…「新しいブロードウェイのショー」
レ イチェル…「そう」
ケ リー…「あたしは ほんの端役を受けに行っ たんだけど
傍で見ていたプロデューサーが “主役のサマンサに ピッタリだ”って 言って
本を読まされたの ほんとに大変だったの
それから…」
レ イチェル…「ケリー 悪いけど手身近に話し てくれない
これを仕上げて 支度して
事務所に行くまでに 3時間しかないのよ」
ケ リー…「じゃあ 大事なところだけ言うわ」
満面の笑顔で、
「役をもらえたの!」と 声を張り上げて言うケリー。
レ イチェル…「役?」
作業しているレイチェルの前に身を乗り出して、
ケ リー…「主役よ レイチェル」と 言い、レイチェルの両手を掴み、
ケ リー…「ブロードウェイのショーの 主役を やるの〜」と 嬉しそうに言うケリー。
驚いて、
レ イチェル…「あなたが主役を」と 言うケリー。
頷くケリー。
レ イチェル…「凄いじゃない おめでとう!」と ケリーを抱きしめ、興奮して喜ぶレイチェル。


『悪戯なシナリオ』イザベル・メジア、キャサリン・メアリー・スチュワート

ケリー…「姉さんに借 りてるお金も 返せるわ」
レ イチェル…「ここの部屋代も」
ケ リー…「半分払う」
姉 の模型を見て、
ケ リー…「そして 今夜
施工主との打ち合わせの後で…
勿論 大成功に終わった後でよ
何処でも 好きなレストランに連れてってあげる」と はしゃぐケリー。
レ イチェル…「それまでに 目を開けていられ たらね」と 言うレイチェル。
ド アがノックされる。
ケ リー…「私 出る」と 陽気に玄関へ向かうケリー。
カー トが入って来る。
カー ト…「今日は」
レ イチェル…「Hi カート」
模 型を触って壊しそうになるカート。
興 味を逸らさせようと、
レ イチェル…「カート ケリーから素敵な ニュース聞いた?」と 言う。
ケ リーの方を向いて、
カー ト…「ニュース?」と 言うカート。
ケ リー…「そう ブロードウェイで主役をやる のよ」と、 はしゃぐケリー。
カー ト…「…」
何 のことか分かり笑い出すカート。
カー ト…「そうか “喜びの表現”をやってる んだな」
レ イチェル…「“喜びの
表現”」
ケ リーを睨むレイチェル。
ケ リー…「…」
レ イチェル…「また 何時もの
お芝居で 私を騙したの」
気 まずそうに、
ケ リー…「怒った?」と 言いながらレイチェルの顔色を窺う。
レ イチェル…「アハハハハ 怒っちゃいないわ
今 そんな元気ないの」
苛立ってきて、表情が険しくなってくるレイチェル。
直 ぐ傍にいたカートが、それを感じて離れる。
「おまけに 今日 私ついてるのよ
模型も もう少しで出来るわ」と 座って作業していた椅子から立ち上がり、皮肉を言う。
段々と怒りが増してくる。
「二人に手伝っても らって 私が潰したやつの代りが」と 一生懸命に怒りを爆発させないようにして言う。
が、顔が引き攣っているレイチェル。
今 にも爆発しそうな形相のレイチェルを見て怖くなり、
カー ト…「あっ ええ〜」と 言葉が返せなくなるカート。
ケ リーを見て、
カー ト…「それじゃ そろそろ行こうか」と 言う。
ケ リー…「お昼 食べに行くの」と ケロリと言う。
ケリーの態度に苛立ち、
レ イチェル…「結構ね〜 二人で精々楽しんで きたら」と 顔を引き攣らせて、今にも跳びかかりそうな形相を見せる。


『悪戯なシナリオ』キャサリン・メアリー・スチュワート

が、
「はぁ はぁ」と 一生懸命に息を整え理性を失わないようにしようと自らと戦う。
疲れ果て座り込み頭を抱え込むレイチェル。

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〜 練習台〜

昼食を摂りながら、
カー ト…「姉さんを練習台にして 演技の研究 をするのは
もうやめた方が いい んじゃないのか」と 言う。
ケ リー…「そんなことないわ 疲れてるだけ よ〜
おまけに “私のためならなんでもする”と言ってくれてるの」
カー ト…「そうだろうよ だけど練習台に他の 奴を使った方がいいんじゃない
俺のルームメイト」
ケ リー…「チャーリー」
カー ト…「うん」
ケ リー…「よしてよ あんなに鈍い人
やってみるだけ無駄
う〜ん やっぱりテス トするならレイチェルよ
カー ト…「どうかなぁ 顔が恐怖だからね
こっちの手も 折られたくないよ」
ケ リー…「大丈夫 あたしの姉さんよ
馬鹿なことはしないわ

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〜 本物〜

疲れて居眠りしているレイチェル。
激 しくドアが閉まる音に驚いて目が覚める。
血 相を変えて帰って来たケリーが窓から外を見て、
ケ リー…「レイチェル」と 声を掛ける。
目 覚めたばかりで頭が“ボー”としているレイチェル。
ケ リー…「見に来て
ああ あたし
怖いわ」
レ イチェル…「ああっ」
“またか”と思って時計を見る。
レ イチェル…「いけない もう4時だわ
つい寝込んじゃった
急いで行けば 打ち合わせに間に合うわ」と 言い急いで服を着替えようとする。
ケ リー…「レイチェル!」
ケ リーが慌てて声を掛ける。
服 を着替えながら、
レ イチェル…「何よ 今度はどうしたの」と 言う。
ケ リー…「変な男が61丁目の角から ずうと 私をつけて来たの」と 寝室に入っていったレイチェルに向かって言うケリー。
レ イチェル…「“変な男”って」
ケ リー…「知らないわ スキーマスクを被った おかしな男よ」
服 を着ながら寝室から顔を出し、
レ イチェル…「ケリー 外は零下10度よ
スキーマスクを被っている人なんか 珍しくもないわ」と 言うレイチェル。
ケ リー…「だって 私の跡をつけて来たのよ」
レ イチェル…「今は もう安全でしょ」
ケ リー…「分からないわ」
外 を気にするケリー。
「中まで ついて来たみたい」
レ イチェル…「住んでるんでしょ」と 服を着ながら言うレイチェル。
ケ リー…「あいつは違うわ でかくて怖い顔し てるの」
レ イチェル…「ケリー スキーマスクを被って るのに
どうして顔が分かるの」
ケ リーを見て言うレイチェル。
ケ リー…「分かったのよ〜
レイチェル 怖〜い」
声 を荒げて言うケリー。
ケ リーの目の前に来て、
レ イチェル…「大事な打ち合わせの前に よく やれるわね」と 言いイヤリングを付けるレイチェル。
出 掛ける準備をしているレイチェルの後をついてゆき、
ケ リー…「何を?」と 言う。
レ イチェル…「あなたが何時もやってる 演技 の練習よ」と 言うレイチェル。
ケ リー…「演技の練習で こんなことしてるん だと思ってるの」と レイチェルに詰め寄る。
レ イチェル…「誰でも そう思うわ」
ぶ つかりそうになるケリーを避け、髪を梳かす。
ケ リー…「違うのよ レイチェル
練習じゃないわ 本当なの
信じて頂戴」と 必死に言うケリー。
レ イチェル…「じゃ そうしとくわ」と 言い出掛ける準備ができたレイチェルが、完成した模型を持って玄関の方へ行こうとする。
ケ リー…「何処 行くの」
驚 くケリー。
レ イチェル…「オフィスよ」と 言うレイチェル。
ケ リー…「駄目よ やめて!
あいつがいるわ」と 言い玄関の方へ行こうとするレイチェルの前に立ち邪魔するケリー。
レ イチェル…「ケリー
いくら大きな声を出しても
騙されないわ
さあ〜 そこをどいて!
ケ リーをかわし玄関の方へ行こうとするレイチェル。
ケ リー…「お願い ドアを開けないで」
レ イチェルの前に立ち邪魔するケリー。
取 り合えず模型をテーブルに置きにゆくレイチェル。
そ の間にドアの前に立つケリー。
コー トを着ながらドアの前に立っているケリーを見て呆れる。
ケ リーを無視してドアを開けるレイチェル。
ス キーマスクを被った男がドアの前に立って威嚇する。
一 瞬驚くが、
レ イチェル…「カートでしょ」と 笑いを堪えて言うレイチェル。
ス キーマスク男…「黙ってろ」と 言うスキーマスクの男。
“まだ 演じてるわ 呆れた”と言う表情をして、
レ イチェル…「いいわよ 入って」と 言うレイチェル。
レ イチェルに銃を突きつけて入って来たスキーマスクの男が、ケリーに銃を向け、
ス キーマスク男…「お前 そこを閉めろ」と 言う。
怯 えながらドアを閉めるケリー。
ス キーマスクの男を全然気にすることなく、模型を持って近寄るレイチェルを見て驚く。
ス キーマスク男…「おい そんなもの下に置い て
手を見えるところに 出しとくんだぁ」と 言いレイチェルに銃口を向ける。
ス キーマスクの男に言い聞かせるように、
レ イチェル…「ねぇ いいこと 誰だか知らな いけど
ケリーにも言ったように 大事な打ち合わせがあって
練習に付き合っている暇はないの」と 言うレイチェル。
ケ リー…「レイチェル 言う通りにして
これは演技の練習じゃないの」と 言いレイチェルから模型をそうっと取り上げるケリー。
邪 魔ばかりされて苛立ってくるが、
レ イチェル…「今度の課題は何?」
一 生懸命に感情を抑えて、ケリーに話そうとするレイチェル。
ケ リー…「レイチェル!」
レイチェルに向けられている銃を見て悲鳴を上げるケリー。
悲鳴を上げるケリーを見て怒りが込み上げてくるレイチェル。
レ イチェル…「“不安!”“恐怖!”」と 声を張り上げる。
そして、スキーマスクの男の方を睨み、
「“凶器!”と 言うレイチェル。


『悪戯なシナリオ』キャサリン・メアリー・スチュワート、イザベル・メジア

 キャサリン・メアリー・スチュワートの睨みは本当に怖い。
 凄い迫力だ。
レ イチェルの睨みに驚きながら、
ス キーマスク男…「いいか 俺は3人殺してる んだ
もう一人増えても 変わりはない」と 脅すスキーマスクの男。
睨むレイチェル。
ケ リー…「お願い 逆らわないで」
怯えながらレイチェルに必死に頼むケリー。
ケリーの方に向き直り、
レ イチェル…「あなたには 呆れたわ
今日の打ち合わせが どんなに大事か知ってて
よくこんなことが 出来るわね」
怒りを爆発させるレイチェル。


『悪戯なシナリオ』キャサリン・メアリー・スチュワートら

ケリー…「だって お 芝居じゃないのよ」
泣きそうな声を出すケリー。
ス キーマスク男…「よし これまでだ」と 言い銃をレイチェルに突きつけ、ハンマー(撃 鉄)を引き起こす。
シリンダーがジワリと回転する。
ス キーマスク男…「死んでもらう」
ケ リー…「やめて!」と 悲鳴を上げるケリー。
銃を見ていたレイチェルが、スキーマスクの男から手荒く銃を奪い取る。
レ イチェル…「こんな玩具 何処で探してきた のよ〜」と 言い銃を手荒く扱う。
銃 口がスキーマスクの男の方に向き、
ス キーマスク男…「おお〜」と 声を出し怖がる。
ケ リー…「ああ〜」
銃 を見て怖がるケリー。
男 に向かって、
レ イチェル…「私だったら もう少し本物らし いものを使うわ」と 言い引き金(トリガー)に指を入れたまま、銃を動かすレイチェル。
ス キーマスク男…「おお〜」
銃 口が自分の方に向くたびに怯えるスキーマスクの男。
ケ リー…「ああ〜」
受 話器の方に向かおうとするケリー。
スキーマスクの男に向かって、
レ イチェル…「弾は なあに」と 言い銃口を覗き、
レ イチェル…「水 ビイ球 豆」と 言うレイチェル。
ケ リー…「そのまま 銃を向けといて
今 警察に電話するわ」と スキーマスクの男とレイチェルを見て言うケリー。
レ イチェル…「お芝居 やめて
騙されないわ」
本物だと思っていないで銃を扱っているレイチェルに怯えるスキーマスクの男。
レ イチェル…「これじゃあ〜 誰が見ても
一目で本物じゃないと 分かるじゃないの」と 銃を動かしながら言うレイチェル。
ケ リー…「レイチェル 信じて頂戴
それは本物の銃よ
そいつに向けて」
ス キーマスク男…「はぁ〜」
怯えて目が見開いているスキーマスクの男。
ケ リー…「押さえとくの」と 銃を指差すケリー。
レ イチェル…「いい加減にしたら どう」
呆れるレイチェル。
レイチェルを心配して見ているケリー。
レ イチェル…「これは玩具よ
よく見てて」と 銃口を自分の頬にあてるレイチェル。
ケ リー…「はぁ〜〜」
悲鳴を上げるケリー。
驚いてレイチェルを見ているスキーマスクの男。
ケ リー…「レイチェル」
顔を引き攣らせてレイチェルを見ているケリー。


『悪戯なシナリオ』イザベル・メジア

ケリー…「駄目!〜」
叫ぶケリー。
笑いながら頬にあてた銃の引き金(トリガー)を引くレイチェ ル。


『悪戯なシナリオ』キャサリン・メアリー・スチュワート

ハンマー(撃鉄)が 引き起こされ弾かれる。
“バーン!”
実弾が笑顔のレイチェルの顔を撃ち裂く。

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 演劇を学んでいる妹ケリーに演技の研究の練習台に され、振り回される姉レイチェル。
  打ち込んでいる仕事にも支障がでてくる。
  妹のことを心配して取った行動が、悉く自身を追い込むことになってしまう。
  もう、ケリーに騙されないと決めたときに、ケリーが血相を変えて飛び込んできた。
  また、演技だと思ったレイチェルはケリーを追ってきた強姦の銃を取り上げる。
 「それは本物の銃よ」と言うケリーに「これは玩具よ よく見てて」と言い自身に銃を放つレイチェル。
 何と言う結末なのだろう。
 言葉を失ってしまう。
 ただ、こんな人騒がせな妹が傍にいないことを願うばかりだ。

 ケリーにしてみれば“ケリーのためならなんでもする”と言ってくれていた優しい姉を失う訳だ。
 演 技の研究の練習台にしたことによって。

 この作品を観ていて、“いつも嘘をついているひとは 真実を話すときに も信じてもらえない”と言うイソップ寓話「狼と少年(羊 飼いの悪ふざけ)を 思い出した。

更新2007.10.17
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ヒッチコックがデザインしたという似顔絵

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参考文献
ヒッ チコック劇場
新・ ヒッチコック劇場
ア ルフレッド・ヒッチコック
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