新・
ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock
Presents-
悪妻の値段
-World's
Oldest Motive-
アルフレッド・ヒッチコック
※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ
い。
☆ → 〜バー〜〜悪態〜〜解約〜〜取引〜〜ネックレス〜〜変身〜〜殊勝〜〜悪夢〜〜出航〜〜脱出〜〜金食い虫〜〜中止〜〜呆然〜〜悔恨〜 ←
記号[☆:スタッフ・キャスト →:
始めに ←:終わりに]
(1980年代)(米)(TV映画)-World's
Oldest Motive-
演出…アラン・キング
制作…タウンゼント・フィルム・プロ
ダクションズ(米)
原作…ラリー・M・ハリス
脚本…リチャード・チャップマン
出演…ドワイト・シュルツ(デビッド)
ストーリーテラー…ア
ルフレッド・ヒッチコック
翻訳…鈴木導
デビッド(ドワイト・シュル ツ)が帰って来
る。
空
になった酒瓶に、付けっ放しになっている電気にテレビ。
“またか”と苛立ちスイッチを切るデビッド。
す
ると、二階から妻エレンが、
エ
レン…「ああ〜ん もう 何するのよ
私が観てるのに〜」と
言いながらグラスを片手に降りて来る。
デ
ビッド…「ああ すまない
誰もいなかったんで」
嫌みを言われるだけなので謝るデビッド。
エ
レン…「寝室から観てたの
愛する旦那様を 私が出迎えなかったことあった」
酔って嫌みを言うエレン。
デ
ビッド…「…」
“また 始まった”と黙ってしまうデビッド。
エ
レン…「それで
今日は安物の建売住宅 何軒売れた?」
ウ
イスキーを飲みながら言うエレン。
デ
ビッド…「ああ この請求書は何?
アルフォンソ トスカノ家具店
イタリアン モデルナーズチュアーズ」
話
を摩り替えるデビッド。
エ
レン…「この部屋を 模様替えすることに したの
イタリアの椅子は デザインがいいから
私が選んできた 大理石のタイルともピッタリ合う…」と
言うエレン。
デ
ビッド…「君は値段は幾らするか 考えな
かったのか
イタリア製か何だか知らないけど 椅子二つで2.100ドルだ」と
言うデビッド。
頷
くエレン。
デ
ビッド…「スチームバスのローンも 内庭の
改造費も払い終わってないのに」
エレンの浪費癖に呆れて言うデビッド。
エ
レン…「そうよ 悪いのは私
あなたの会社の社長さんを招待しても 恥ずかしくない家にしたいと思っ
てるだけ
あなたを見直して 大きな仕事をくれるかもしれないでしょ
あんな建売住宅じゃなしに
でも 無理ね あなたは根っからのけちですものね」と
蔑むエレン。
デ
ビッド…「けち」と
言い返すデビッド。
頷
くエレン。
デ
ビッド…「誰に沿い言ってるんだ そのダイ
ヤのネックレスは誰に買って貰ったと思ってる
8.000ドルもした んだ
どうしても欲しいからって 車を買い換える金を使わせちまったくせに」と
言うデビッド。
エレン…「パパが言ったとおりね あなたに
会って5分と経たないうちに
まるで見込みのない男だって 見抜いてたわ
ハッハハハ もっと酷い言い方だったけど
怠け者で 喧嘩する勇 気もないのよね」
悪態を並べるエレン。
『悪妻の値段』
デビッド…「君と遣り
合ってどうなる」と
言うデビッド。
エ
レン…「いいわよ 黙ってなさいな
自分を主張しないで 何
でも人の言いなりになってればいいわ
煩く言うのは 大人に なって欲しいからよ
怒るってしらないんだ から」
馬鹿にするエレン。
デ
ビッド…「違う
知ってるさ」
頭
に来て出て行こうとするデビッド。
エ
レン…「ああああ また始まった
家出て行けば あたしが心配するとでも思ってるの
何処へでも どうぞ!
どうせ バーへでも行って
負け犬ばかり集まって 愚痴のこぼし合いをするんでしょ
いいお笑いよ また すごすごと帰ってくるんでしょ
行くところもなくて」
馬鹿にし続けるエレン。
郵
便物を手荒く渡し出て行くデビッド。
エ
レン…「何よ!」
手
荒くドアを閉め、郵便物を投げ捨て睨むエレン。
Top
〜
バー〜
バーで付き合ってるケリーに、
デ
ビッド…「僕が何をしてやっても あいつは
不満なんだ
1日24時間 週に7日働いても駄目だ〜
足りない 普通じゃないよ
どうかしてる 何でも目に入った物を買いたがるんだ
もう我慢出来ない…」
愚
痴をこぼすデビッド。
ケ
リー…「デイビッド その話もうやめてくれ
ない
こんなあなたを見てるのが 堪らないわ
どうにもならないって ことは 始めっから分かっているんだし」
優
しくデビッドの頬に触れて言うケリー。
デ
ビッド…「いやあ それは
何とかする
ケリー ケリー
今の僕には是非 君が必要なんだ
信じて欲しい」
必
死に頼むデビッド。
ケ
リー…「離婚できる
無理でしょ
あなたには出来ないわ」
首
を横に振り言うケリー。
デ
ビッド…「…」
ケ
リー…「出来たとしても
あの人はあなたを苦しめるためなら 何でもするわ
その巻き添えになりたくないの」
別れを告げ、立ち上がるケリー。
デ
ビッド…「待ってくれ」
引き止めるデビッド。
ケ
リー…「デビッド
愛してる?」
デ
ビッドの気持ちを確かめるケリー。
デ
ビッド…「他の誰よりもだ」と
言うデビッド。
ケ
リー…「じゃ 別れて」と
言うケリー。
驚くデビッド。
『悪妻の値段』
デビッドにキスをして出て行くケリー。
後
を追おうとするが、諦めて呆然として席に戻ろうとするデビッド。
ス
ミス…「ついてないな」
カ
ウンター席に腰掛けていたスミスが、デビッドに声を掛ける。
チ
ラリと見知らぬ男スミスを見て席の方に向かうデビッド。
ス
ミス…「ついてないな」
再び、身を乗り出して話し掛けるスミス。
デ
ビッド…「ええっ」
驚
いて振り向くデビッド。
ス
ミス…「話し相手が欲しいんじゃないか」
ケ
リーが出て行った出口の方をチラリと見て言うスミス。
デ
ビッド…「いやあ いらない
独りになりたいだけだ」
疲
れ切って言うデビッド。
ス
ミス…「困ったな
彼女は失いたくないが 奥さんは別れてくれない」と
クールに言うスミス。
デ
ビッド…「盗み聞きか」
怒
るデビッド。
ス
ミス…「ここは音響効果がいいんでね よく
ある話だ」と
言うスミス。
カ
ウンター席に座るデビッド。
ス
ミス…「私の仕事では 何時も聞かされてる
問題は どうやって切 り抜けるかだ」
デ
ビッドの反応を探りながら言うスミス。
ス
ミスを見て言葉を呑み込むデビッド。
ス
ミス…「遣られっ放しで 耐えてる手もある
がね」
手
に持ったグラスに視線を移して言うスミス。
デ
ビッド…「君は酔っ払いの 精神分析が仕事
か」
苛
立つデビッド。
ス
ミス…「いや そうじゃない
困ってる人を助けている
きちんと契約を結んでからだが」
デ
ビッドを見て言うスミス。
デ
ビッド…「悪いけど僕は精神分析も 百科事
典も要らないし
保険に入るつもりもない」
苛
立って言うデビッド。
ス
ミス…「当然だ
悩み事の 解決が先だ ろ」
意
味深なもの言いをするスミス。
ス
ミスの真意を探ろうとするデビッド。
ス
ミス…「この仕事はもう長いから 初めて
会った相手でも
どんな悩みを抱えているか 一目で読み取れる」
デ
ビッドを見ながら言うスミス。
デ
ビッド…「…」
ス
ミス…「どうにも対応しきれぬ男は 消すし
かない
女でも同じだが」
平
然と言うスミス。
デ
ビッド…「悪い冗談だろ 担ごうとしてるん
だ」
驚
いて言うデビッド。
ス
ミス…「違う
客が求めるローンも 提供している」と
言うスミス。
デ
ビッド…「何時もバーで鴨を見つけて 押し
売りするのか」と
疑うデビッド。
ス
ミス…「競争が厳しいんでね 待ってちゃ商
売にならない」
デ
ビッドを見て言うスミス。
デ
ビッド…「そんな話し あっていいのかい」
動揺するデビッド。
ス
ミス…「落ち着け たまたまバーで会った二
人が
他愛のない雑談をしてるだけだ
そう思えばいい」
クー
ルな物言いで話すスミス。
ス
ミスを見るデビッド。
ス
ミス…「そう望むなら」と
言いグラスに視線を移し、反応を待つスミス。
デ
ビッド…「参考までに聞くけど
その仕事 幾らでやる」
動
揺しながら聞くデビッド。
ス
ミス…「君は大層な車に乗ってるな」と
言うスミス。
デ
ビッド…「今 そんなこと関係ないだろ」
焦
るデビッド。
ス
ミス…「丁度それぐらいだ 勿論キャッシュ
で
興味あるか」
取
引するスミス。
デ
ビッド…「からかってるんじゃないと言う
証拠は」と
言うデビッド。
ス
ミス…「信じろとは言わんよ」と
デビッドを見て言うスミス。
考
えるデビッド(ドワイト・シュルツ)。
ス
ミス…「無理強いする気は ないからな」
『悪妻の値段』ドワイト・シュルツ
「困ってる様子だから 声を掛けただけだ
いらないと言うんなら それでいい」
立
ち上がり出て行こうとするスミス。
デ
ビッド…「あっ 分かった
頼む」
藁にも縋る思いで話に乗るデビッド。
席
に戻り、
ス
ミス…「話を決める前に 肉や野菜を買うの
とは
ちょっと違う
一度決めたら もう取り消しは聞かない」と
デビッドを見て言うスミス。
顔を凍りつかせてスミスを見ているデビッド。
ス
ミス…「念のため もう一度聞いておく
いいんだな 直ぐにも 話を進めるぞ」
念を押すスミス。
デ
ビッド…「やってくれ!」
思い切って言うデビッド。
ス
ミス…「よかろう
引き受けた」と
言うスミス。
『悪妻の値段』
動揺を押さえようと目を閉じるデビッド。
Top
〜
悪態〜
酔って帰ってきたデビッドに、
エ
レン…「私の寝室には入れないわ」と
言うエレン。
デ
ビッド…「死んでも入らない ご免こうむる
よ」
酔っ
て言うデビッド。
エ
レン…「何時でも 半分死んでるくせに」
嫌
みを言うエレン。
デ
ビッド…「敢えて否定はしないよ 死なない
方が不思議だろ
君と一緒にベッドに入ったら スーパーマンでも死んだ振りをしたくなる
顔を見ただけで 逃げるか」
蔑
むデビッド。
エ
レン…「ハハハッ 偉そうになによ
一人前の口を利けるの は お酒飲んだ時だけ」
蔑むエレン。
デ
ビッド…「我慢にも限界ってものがあるだ」
エレンの首元を押さえつけて言うデビッド。
エ
レン…「離婚したら
出来るものなら やってご覧なさいよ
一生後悔させてやる」
デビッドの態度に驚くが、強がるエレン。
デ
ビッド…「今のままでも 十分過ぎるほど後
悔してるさ
考えられないな これでも君を愛してた
遥か昔のことだけど」
ド
アを激しく閉め部屋に入るデビッド。
驚いて見ていたエレンが薄ら笑いを浮かべる。
“強気にでているデビッドには あの手を使うしかないか”と。
Top
〜
解約〜
銀行。
行
員パム…「何かあったんですの
養老年金を解約なさるなんて 考えられませんわ」と
言う行員パム。
デ
ビッド…「ああ 家内とも話し合って
自由が利くうちに 楽しもうって決めたんだ」
笑
いながら嘘を言って養老年金を解約するデビッド。
笑
うパム。
デ
ビッド…「素晴らしいヨットを見つけて 欲
しくなったんで
家内にも見せたら 一目で気に入った
全長12m どんな時化でも乗り切れる
ところが そのう 持ち主ってのが変わった男で
頭金をキャッシュでよこせって 言い張るんだ」と
言いながらバッグに金を詰めるデビッド。
行
員パム…「奥様 お喜びでしょ」と
言うパム。
デ
ビッド…「夢のようだってさ」と
言うデビッド。
Top
〜
取引〜
公共広場でスミスと落ち合うデビッド。
デ
ビッド…「血を流すのか」
ス
ミスに金の入ったバッグを渡して言うデビッド。
スミス…「家に押し入って ピストルで撃ち殺
すとでも思ってるのかね」
歩
きながら言うスミス。
デ
ビッド…「しかし」
ス
ミスの後をついて行きながら言うデビッド。
ス
ミス…「実行は 明日だ」と
言うスミス。
デ
ビッド…「ああっ」
動
揺するデビッド。
ス
ミス…「明日やる」と
言い立ち去るスミス。
デ
ビッド…「明日か」
独
り言を言うデビッド。
Top
〜ネックレス〜
ケリーの車の前で、彼女を待っているデビッド。
ケ
リー…「デビッド そこで何してるの」
デ
ビッドを見て驚くケリー。
デ
ビッド…「君が言ったことは 間違ってる」と
言うデビッド。
ケ
リー…「何の話?」と
言うケリー。
デ
ビッド…「僕のことだ 君と結婚してみせ
る」と 言うデビッド。
驚
いて見ているケリーに、頷くデビッド。
喜
んで抱きつくケリー。
デ
ビッド…「待って 君にあげたいものがある
んだ」と 言うデビッド。
ケ
リー…「なあに?」と
嬉しそうに言うケリー。
ダ
イヤのネックレスを取り出すデビッド。
ケ
リー…「素敵なネックレスじゃない」
ネッ
クレスを渡そうとするデビッド。
ケ
リー…「でも そんなお金ないんでしょ」と
言うケリー。
デ
ビッド…「心配はいらないさ 君ならきっと
似合うよ」と
言うデビッド。
嬉
しそうにデビッドを見詰めるケリー。
抱
き寄せるデビッド。
Top
〜
変身〜
デビッドが帰って来る。
部
屋の照明が落とされ静かなのに驚くデビッド。
“どうしたのか”と心配になり、
デ
ビッド…「ロジーター」と
お手伝いの名を呼ぶ。
返
事がないので、
「エレン」
妻
の名を呼ぶデビッド。
エ
レン…「後1時間は帰ってこないと 思って
たわ」
奥
からエレンが料理しながら出てくる。
デ
ビッド…「電話したけど 誰も家にいなかっ
た」と 言うデビッド。
恥
らうように、
エ
レン…「ロジーターに休みをやったの
あっ お料理を作るのも久し振りだわ
話をするのも」と
言うエレン。
Top
〜
殊勝〜
食事しているデビッドに近寄り、
エ
レン…「どう言うか 朝起きてからずうっ と考えてたけど
いい考えが浮かばないの」と
言い、デビッドのグラスにワインを注ぐエレン。
それを横目で見ているデビッド。
エ
レン…「自分が言った 酷い言葉ばかり思 い出して
それも夕べだけじゃなしに 毎日毎晩
自分に愛想が尽きるわ」
殊勝顔で言うエレン。
デ
ビッド…「…」
エ
レン…「あなたに責任はないの
あたしがいけないの 全部
何故だか知らないけど」
切々と話し、涙ぐむエレン。
デ
ビッド…「いやあ そうじゃないさ
二人いなきゃ喧嘩は 出来ない」と
言うデビッド。
エ
レン…「始めるのは あたしでしょ」
デ
ビッドを見詰めて言うエレン。
デ
ビッド…「…」
エ
レン…「デビッド もう一度やり直したい の
お願いだから チャンス頂戴」
甘えるように言うエレン。
デ
ビッド…「エレン」と
言うデビッド。
エ
レン…「急にこんなこと言い出しても 信 じられないと思うでしょう
どうしても離婚したい なら」と
言うエレン。
驚いてエレンを見るデビッド。
エ
レン…「それもしかたないわ 争うつもり はないし
財産もすっぱり半分に 分ければいいでしょ
でも 出来たらその後も友達でいて」
悲しそうに言うエレン。
デ
ビッド…「…」
黙って聞いているデビッド。
エ
レン…「今直ぐに決めなくてもいいの
あたしがどう変わるか 見てからにして」
デビッドを見詰めながら言うエレン。
エレンをチラチラ見ているデビッド。
エ
レン…「気に入られる 自信はないの
だけど 精一杯努力するわ」
瞳を潤ませて切々と話し続けるエレン。
デ
ビッド…「ああっ
僕は何と言ったらいいのか」
情に絆されるデビッド。
エ
レン…「何も言わなくていいの
二人で やり直しましょう」
デビッドの顎に、そっと手を持って行くエレン。
デ
ビッド…「あっ」
感動して泣きそうになるデビッド。
エ
レン…「お願い」
甘えるように言うエレン。
『悪妻の値段』
困ったような顔してエレンを見るデビッド。
『悪妻の値段』ドワイト・シュルツ
Top
〜
悪夢〜
エレン…「ラララララララ〜 ララララ〜」
♪
歓喜の歌をハミングしながら、朝食の準備をしているエレン。
エ
レン…「あっ! ああああ〜〜〜」
トー
スターがショートして感電し、目を反り返して倒れるエレン。
デ
ビッド…「あっ ああああ〜」
呻
き声を上げ目が覚めるデビッド。
「あっ ああああ」
ベッ
ドで横になっているエレンの手が、デビッドの喉元に置かれている。
「あ〜」
そ
れに気付き、エレンの手を戻す。
夢
だったことが判るが、魘され疲れ果てベッドから離れる。
エ
レン…「う〜ん あ〜」
気
持ちよさそうに寝返りして休んでいるエレン。
Top
〜
出航〜
スミスに電話するデビッド。
デ
ビッド…「いてくれてよかった」と
言うデビッド。
ス
ミス…「すべてが終わったら 電話するって
言ったろ」と
言うスミス。
デ
ビッド…「そうじゃない 気が変わったんだ
契約を取り消してくれ」と
言うデビッド。
ス
ミス…「もう遅い」と
言うスミス。
デ
ビッド…「金は君にやる 返さなくてもいい
から
あの話は中止にしてくれ いいね
聞いてるのか」
必
死に頼むデビッド。
ス
ミス…「“もう遅い”と言ってるだろ
“船は港を出た”」と
言うスミス。
“どうしよう”と思いながら電話を切るデビッド。
Top
〜
脱出〜
エレン…「デビッド またお湯が出なくなっ
ちゃったわ
水圧が下がったと 思ったら冷たい水…
朝からあなた何してるの?」
寝
室に入って来たエレンが、荷造りをしているデビッドを見て驚く。
デ
ビッド…「ハワイへ行くんだ 2度目の新婚
旅行をする」と
言うデビッド。
エ
レン…「ねえ 待ってよ
あたし そんな資格ないわ
悪いのはあたしですもの」
可
愛く言うエレン。
デ
ビッド…「何を言ってる 幸せになる権利は
皆にあるさ
さあさ ほら
君も必要な物を詰めろ ふた月は帰ってこないつもりでいたまえ」
準
備をしながら言い、エレンにトランクを出してやるデビッド。
嬉
しそうにデビッドを見ているエレン。
デ
ビッド…「ハワイに飽きたら香港に行こうか
次はシンガポール」
楽
しそうに気勢を上げるデビッド。
エ
レン…「ば 馬鹿みたい」
笑
うエレン。
デ
ビッド…「その馬鹿みたいなことをするんだ
今までが真面目にやりすぎたから 上手く行かなかった
今度は気の向くままに 二人で旅をしないか
僕たちの再出発だ」
エ
レンの手を両手で包み込んで言うデビッド。
エ
レン…「新聞もテレビもない島も いいわ ね」と
言うエレン。
デ
ビッド…「なあ」と
言うデビッド。
電
話が鳴る。
エ
レンを制して慌てて受話器を取るデビッド。
デ
ビッド…「ハイ」と
言うデビッド。
ス
ミス…「私だ」と
言うスミス。
デ
ビッド…「中止出来たか 出来たと言ってく
れ」
エレンに気付かれないように小声で言うデビッド。
ス
ミス…「まだだ」と
言うスミス。
嬉
しそうに荷造りをしているエレン。
ス
ミス…「やってはみるが どうなるか約束は
出来んね」と
言うスミス。
デ
ビッド…「やるんだ 是非ともやってくれ」と
言うデビッド。
ス
ミス…「キャンセル料は1万ドル キャッ
シュで」と
言うスミス。
デ
ビッド…「金はつくるから 何とかしてやめ
させるんだ」と
言うデビッド。
ス
ミス…「分かった」と
言うスミス。
荷造りを続けているエレン。
ス
ミス…「一つだけ言っておくが 今日は何があっても奥さんを外に出すな
また電話する」と
言い電話を切るスミス。
受話器を持ったまま、凍りついたような表情でエレンを見るデビッド。
エ
レン…「悪い知らせ」
デ
ビッドを見て心配するエレン。
『悪妻の値段』ドワイト・シュルツ
デビッド…「出発は見
合わせよう 今日は」と
エレンを見て言い、受話器を置くデビッド。
デ
ビッド…「いずれにしても今は 駄目だ!」と
言い、急いで階段を降りて行くデビッド。
エ
レン…「デビッド 教えてよ
どうしたの」と
言うエレン。
デ
ビッド…「家の戸締りをするんだ 暫く留守
にするんだからね」
戸
締りをするデビッド。
エ
レン…「今の電話 誰なの?」と
言うエレン。
デ
ビッド…「ああ
会社からだ 出掛ける前に処理しとく仕事がある
君は家にいて 荷造りを済ましてくれ」
戸
締りをして回るデビッド。
エ
レン…「無理に旅行しなくても いいのに
よく話し合ってからにしたら」と
言うエレン。
デ
ビッド…「後は頼むよ 何処にも出掛けない
で待ってて
はっきり言っとくよ これまでとは違った人生が始まるんだ
君は家で待ってろ!」と
言い、バタバタと出掛けるデビッド。
Top
〜
金食い虫〜
銀行で1万ドルを下ろし、
デ
ビッド…「やめとけばよかったけど もう遅
い
“金食い虫”って命名したく
なったよ
まだ船出もしないうち から 金ばかり掛かるんだ
帆を買わなきゃいけない ありがとうパム」
不
審そうにしている行員パムに、嘘を言いながら受け取るデビッド。
デビッド…「もしもし
ハイ
いいや 僕だ デビッド・パウエル
家内は家から 一歩も出していない
言うとおり金は用意したから キャンセルしてくれ
頼む」
ス
ミスに公衆電話より電話して頼むデビッド。
デビッド…「ああっ
もしもし エレン
いたね」
エ
レンに電話してホッとするデビッド。
「変わりはないか
いやあ いいんだ 別に急ぎの用じゃない
直ぐ帰るよ ああ 真っ直ぐに
じゃ」と
言い、急いで帰るデビッド。
Top
〜
中止〜
デビッド…「エレン」
家
に帰って来てエレンを呼ぶデビッド。
エ
レン…「こっちよ」と
言うエレン。
デ
ビッド…「あ よかった」
エ
レンが生きていて喜び、声がする方に急いで行くデビッド。
デ
ビッド…「電話なかった」と
言うデビッド。
エ
レン…「マージからだけ 何か連絡ある の」と
言うエレン。
デ
ビッド…「いや あ なけりゃいいんだ」と
言うデビッド。
業
者…「さあ 始めましょうか
ここは終わりましたよ」
流
しの下から体格のいい業者が姿を現す。
デ
ビッド…「誰だ」
驚
くデビッド。
エ
レン…「ピーターに頼んで お湯が出ない のを直しに来てもらってるの」と
言うエレン。
デ
ビッド…「ピーターは?」と
言うデビッド。
業
者…「他で工事がある」と
答える業者。
デ
ビッド…「何時から あの店にいる」
疑
うデビッド。
業
者…「ねえ 修理は俺に任せしてくれよ」と
デビッドに言い、
じゃあ 悪いけど奥さんは 風呂場で待ってて
合図したら蛇口を 捻ってくれないかな」と
エレンに言う業者。
エ
レン…「いいわ」と
言うエレン。
デ
ビッド…「やめろ!」と
言うデビッド。
エ
レン…「じゃ あなたやって」と
言うエレン。
デ
ビッド…「駄目だ
事務所へ電話しろ 今直ぐに
仕事は中止するって もう連絡は入ってるはずだ」
業
者を睨んで言うデビッド。
エ
レン…「アハ あなた何言ってるのよ〜
最近は修理頼んでも来てくれないのを 知ってるでしょ
旅行から帰ったら 熱い風呂に入りたいの」と
言い風呂場に行くエレン。
デ
ビッド…「今朝電話でスミスと話して キャ
ンセルしたんだ
さっさと帰ってくれ!」と
業者に言うデビッド。
作業用ゴーグルをして、
業
者…「いいかい 俺は指図されるのも
急かされるのも 嫌いなんだ
分かったな」と
言い、バーナーのスイッチを入れる業者。
業者を見ているデビッド。
業
者…「よし奥さん お湯出してみて」と
言い、流しの下に屈む業者。
傍にあった包丁を手に取り、業者の背後から被さり喉元に包丁を突きつけるデビッ
ド。
業
者…「うっ ああ〜」
喉元を締め付けられ苦しそうにする業者。
デ
ビッド…「何をしに来たか知ってるが
何度も言ってるだろう 仕事は中止になったんだ」と
言うデビッド。
『悪妻の値段』ドワイト・シュルツら
業者…「待ってくれ」と
言う業者。
電話が鳴る。
デ
ビッド…「黙って出て行けば いいんだ」と
言うデビッド。
風
呂場から、
エ
レン…「あなた 出てくれない」と
言うエレン。
背後から業者を掴んだまま包丁を持ち替え、受話器を取るデビッド。
ス
ミス…「私だ」
受
話器からスミスの声が聞こえる。
デ
ビッド…「スミスか」と
言うデビッド。
ス
ミス…「“船は港に戻った”」と
言うスミス。
デ
ビッド…「何」と
言うデビッド。
ス
ミス…「聞こえたろ “航海は中止だ”と言ったん
だ」と 言うスミス。
デ
ビッド…「ああっ」
受
話器を置き、業者を掴んでいた手を離すデビッド。
デビッドを睨みつける業者。
デ
ビッド…「あ どうやら大変な誤解が あっ
たようだ」
極まり悪そうに言うデビッド。
業
者…「誤解で済むと思ってんのかい 裁判で
ガッチリふんだくってやる」と
怒って言う業者。
デ
ビッド…「待てよ 二人だけで話をつけない
か
冷静に この償いはするよ
裁判なんて やることないだろ」と
言うデビッド。
帰っ
てしまう業者。
エ
レン…「まだ水しか出ないわよ 何で帰っ たの」
2
階から顔を出して言うエレン。
デ
ビッド…「知らないな 変な奴だ」
苦
し紛れに言うデビッド。
エ
レン…「変なこと他にもあるの ダ
イヤのネックレスがないのよ
盗まれたみたい」と
言いながら2階から降りてくるエレン。
デ
ビッド…「…」
エ
レン…「警察に電話してくるわ」
受
話器を取ろうとするエレン。
デ
ビッド…「いや」
受
話器を取ろうとしているエレンの手を押さえるデビッド。
驚
くエレン。
デ
ビッド…「急いで行って来る所があるんだ
君は荷造りを」と
言い出て行くデビッド。
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〜
呆然〜
ケリーに会いに行くデビッド。
車
のトランクを閉めているケリーに、
デ
ビッド…「ケリー!」
声
を掛けるデビッド。
男
と車に乗るケリー。
デ
ビッド…「ケリー」
ど
うしたのだろうと不安になり声を掛けるデビッド。
車の中を覗くデビッド。
運転席に座っている男を見て驚くデビッド。
スミスだ!
スミスがニタリと笑い窓を閉める。
驚いているデビッドを助手席のケリーが笑って見る。
『悪妻の値段』
車が走り出す。
狐につままれたように呆然として、走り去る車を見ているデビッド。
結託していたスミスとケリーが乗った車を。
『悪妻の値段』ドワイト・シュルツ
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〜
悔恨〜
肩を落とし帰って来るデビッド。
電
気がついたままで、テレビが付けっ放しになっている。
空
になった酒瓶を手に取って見るデビッド。
エ
レン…「あ〜ら 誰かと思ったら
家の彷徨える旦那様ね お帰んなさい」
二階からエレンがグラスを片手に降りて来る。
エ
レン…「早くマリーナに連れてってくれな い 年金を解約して買い込んだヨット
見せてもらうの とっ ても楽しみだわ」
嫌みを言うエレン。
デ
ビッド…「…」
ショ
ンボリとしているデビッド。
エ
レン…「それでハワイに 行くつもりなん でしょ」と
言うエレン。
苦笑いするデビッド。
エ
レン…「二度目の新婚旅行に行くんだった ら お金がないと困るだろうと思って
銀行に電話したら あ なたはやっといてくれたわ〜
やっぱりパパの言う通りよ あなたには常識ってものがないのよ
大事な年金でヨットを買うんだったら その前にせめて一言私に相談して
くれても
いいじゃないの」
『悪妻の値段』ドワイト・シュルツ
「私ね 背中に砂が付くの 大嫌いだと知ってるくせに
ハワイに行こうだなんて 人
を馬鹿にしてるからそんなことになるの…」
嫌みを言い続けるエレン。
独り芝居を演じた自分自身が情けなくて、泣くに泣けないでいるデビッド。
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デビッドが悪妻エレンから逃れたいために乗ろうと
した船は、金ばかり掛けさせ出航しなかった。
考案者ケリーとスミスは、始めから“金”だけが目的だったからだ。
デビッドと付き合っていたケリーは、揺さ振りを掛けるとデビッドは簡単に罠に掛かることが分かっていた訳だ
から。
ケリーに騙されているとも知らず、こっそりエレンの高級ネックレスを持ち出してあげ
たり、年金まで解約してしまったデビッド。
彼
に残ったのは抹殺したかった悪妻エレンと業者からの訴訟だけ。
以前より、もっと立場が悪くなったデビッドには、凄まじい嫌みが浴びせられ続けるのだろう。
おお〜怖い。
更新2007.12.4
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ヒッチコックがデザインしたという似顔絵
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参考文献
ヒッ
チコック劇場
新・
ヒッチコック劇場
ア
ルフレッド・ヒッチコック
サ イトマップ
映 画ありき2
映画あり
き
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