招かれざる客
  
   キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

※ストー リーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  カッ プル〜〜不 快〜〜車内の二人〜〜偏見〜〜憤 慨〜〜不安〜〜苦慮〜〜驚愕〜〜お茶〜〜大声混沌〜〜緊張〜〜書斎〜〜決 意
調査報告〜〜俎の上の鯉〜〜笑顔〜〜母娘〜〜マットとジョン〜〜招待
共有〜〜司教〜〜シャッ トアウトリベラルアイスクリーム
ブラック・パワー〜〜1割〜〜ク ラブ
不機嫌〜〜プレンティス夫妻〜〜身支度〜〜空気〜〜〜〜テーブルコーディネート〜〜怒り
二組の家族
母親同士〜〜分散〜〜プ レンティス〜〜待 機〜〜父親同士〜〜母息子〜〜メアリとマット〜〜父息〜〜情 熱人間〜〜回想
ジョ イ〜〜耽る〜〜沈痛〜〜決断〜〜失望〜〜心の準備〜〜集結〜〜〜〜激励
ディナー〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに ←:終わりに] web拍手 by FC2
(1967)(米、コロムビ ア)(アメ リカ 映画ベスト100で99位)-Guess Who's Coming to Dinner-
監督…スタンリー・クレイマー
製作…スタンリー・クレイマー
脚本…ウィリアム・ローズ(ア カデミー脚本賞)
撮影…サム・リーヴィット
音楽…デヴォル
主題曲…♪Billy Hill.
歌…ジャクリン・フォンテイン
出演…ス ペンサー・トレイシー(ジョイの父/マット・ドレイトン)(英国アカデミー賞主演男優賞)
………シ ドニー・ポワチエ(ジョン・W・プレンティス)
………キャ サリン・ヘプバーン(ジョイの母/クリスティーナ・ドレイトン)(ア カデミー主演女優賞)
………キャサリン・ホートン(ジョイ/ジョアナ・ドレイトン)
………セシル・ケラウェイ(ライアン司教)
………ベア・リチャーズ(ジョンの母/メアリ・プレンティス)
………ロイ・E・グレン(ジョンの父/プレンティス氏)

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 自然な演技で惹きつける役者ス ペンサー・トレイシーと 熱演で惹きつけるキャ サリン・ヘプバーンというゴールデン・コンビ。
 それに、人種問題を取り上げた作品に欠かせない、これぞ紳士のシドニー・ポワチ エが競演した傑作で、スタンリー・クレイマー監督が『手 錠のままの脱獄』(1958)に引き継いで人種問題を提起した。

 素 晴らしいウィリアム・ローズの脚本を名優ス ペンサー・トレイシーが語り掛けると、そこがスクリーンの中であることを忘れてしまいそう になる。
  スクリーンに釘付けにさせる説得力は他の追随を許さない確かなものがある

 スペンサー・トレイシーは 舞台での演技をジョン・フォードに認められ映画俳優になったわけだが、 味があり、奥行きのある演技は役者を目指す人たちの憧れる存在だ。

  この『招かれざる客』は、そのス ペンサー・トレイシーと女優たちがお手本にするキャ サリン・ヘプバーンというゴールデン・コンビの“あ、うん”の呼吸と、シ ドニー・ポワチエが父親役のロイ・E・グレンに訴えるシーンでは自分の父親に向かって言ってい たという“生きた”台詞が惹きつけ響いてくる。
  どのシーンも見逃せない、聞き逃せない名作だ。

  この親子たちのような立場になったとき、私はどのような態度、言葉を掛けてやれるの だろうかと考えさせられた作品である。
  娘たちの幸せを一番に思う思いが同じであるから。

 こ の作品はス ペンサー・トレイシーの遺作となった。

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〜カップル〜

飛行機が 映し出されメロディーが流れる。


『招か れざる客』

♪ちょっぴり あげて
ちょっぴり もらって
ちょっぴり
心 痛める
それが愛の物語
愛の栄冠

♪ちょっぴり笑い
ちょっぴり泣いて
雲が流れるままに
それが愛の物語
愛の栄冠


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートンら

♪二人が共にあるかぎり
世界は二人のもの
世界がそっぽを向いて も
二人で手を取り合って
 
♪ちょっぴり勝って
ちょっぴり負けて
ちょっぴり 切ない気 分
それが愛の物語 愛の 栄冠


『招か れざる客』キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチエら

仲睦まし い若いカップルがサンフランシスコ空港で飛行機から降り、タクシーに乗る。

♪ちょっぴり勝って
ちょっぴり負けて
ちょっぴり 切ない気分
それが愛の物語 愛の栄冠

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〜不快〜

車内。
キ スをしているカップルをバックミラーで見た運転手が顔を顰める。
 不 快感があらわに出ているシーンだ。


『招か れざる客』キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチエら

白人の娘 と黒人の青年のカップルだからだ。

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〜車内の二人〜

白人の娘 ジョイ(キャサリン・ホーン)が ハワイで恋に落ちた優秀な黒人の青年医師のジョン(シ ドニー・ポワチエ)と結婚の報告をするために、サ ンフランシスコ の両親の元に連れていこうとしている。
ジョイに、
ジョン「どうかな
僕はホテルで休む
まずは君一人で」と言うジョン。
笑いながら首を振り、
ジョイ「一緒に行くのよ 善は急げだわ
父も母も仕事中 夕食まで会えないかも」と言うジョイ。
ジョン「やはり知らせておくべきだった
爆弾 抱えて帰るんだから」と 言い、笑うジョン。
ジョイ「両親のことは よく分かってるもの」と言うジョイ。
ジョン「だといいが」と 危惧するジョン。
ジョイ「心配ご無用」と ジョンの顔を自分の方に向かせて言うジョイ。

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〜偏見〜

ジョイは 母親のオフィスに寄るが顧客とランチに行っていた。
ジョ ンを母の仕事上のパートナーで友人ヒラリーに、
ジョイ「紹介するわ ドクター・プレンティスよ」
と 紹介するジョイ。
黒人を紹介されて驚くが愛想笑いをして、
ヒ ラリー「よろ しく ドクター」と 挨拶するヒラリー。
ジョ ン「こちらこ そ」と挨拶するジョン。
ジョンを好奇の目で窺うヒラリー。


『招か れざる客』

色々と探 ろうとするヒラリーをかわしオフィスを後にする二人。
ジョンの後姿を睨むヒラ リー。
 ヒラリーが日頃から 黒人に対して抱いている感情が冷たい視線で表現されてい る。


『招か れざる客』

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〜憤慨〜

ジョイの 両親の元に着く。
だ が、出迎えた黒人のメイド、ティリーはジョンを見て憤慨する。


『招か れざる客』キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチエら

 同 じ黒人が白人に擦り寄っている、それも“可愛いジョイをたぶらかして”と思っているから。

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〜不安〜

母 クリスティーナ(キャ サリン・ヘプバーン)がヒラリーの言葉に不 安になり慌てて帰ってくる。
クリスティーナ「ティリー ジョイ
一体…ジョイ」
2階でティリーと話していたジョイが階段を駆け下りてくる。
ジョイ「ママー」
クリスティーナ「大丈夫? 何か問題でも」
不安な面持ちのクリスティーナに、嬉しそうに抱きつくジョイ。
クリスティーナ「商談が成立して ヒラリーに電話したら
何だか変なの
“あなたが帰ってる 気を確かにね”って」と 話すクリスティーナ。
嬉しそうに笑うジョイ。
書斎の電話を借りて父親に電話しているジョンの声が聞こえる。
書斎の方を見て、
クリスティーナ「人の声が お客様?」と 言い、向かうクリスティーナ。
クリスティーナに、
ジョイ「ねえ マ マ」と 呼び止めるジョイ。
ジョイを見るクリスティーナ。
ジョイ「私 幸せ で幸せでもう…」と 幸せそうに言うジョイ。
興奮して話すジョイを見て、
クリスティーナ「はち切れそうね」と 笑うクリスティーナ。
笑うジョイ。
クリスティーナ「感染しそう お相手は?」と 言うクリスティーナ。
 クリスティーナは娘がフィアンセを連れてきたことを喜ぶが、“何かあるのか”と不安を抱いている。
ジョイ「10日前に会ったばかり 信じられないでしょ」と 興奮して話すジョイ。
娘の幸せそうな表情を嬉しそうに見詰め、
クリスティーナ「でもないわ
落ち着いて話して
奇跡は…」と 言い、腰掛けさせ話を聞くクリスティーナ。
ジョイ「彼って  すばらしいの
あんな男性は初めてよ」と 熱っぽく語るジョイ。
共感を持って聞いているクリスティーナ。
ジョイ「20分で 恋に落ちたわ」と 言い、クリスティーナの反応を見るジョイ。
クリスティーナ「なんと 早業だこと」と 言うクリスティーナ。
笑うジョイ。
笑うクリスティーナ。

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〜苦慮〜

書斎で電話しているジョンは白人との結婚で両親が衝撃を受けるのを少しでも和らげ ようと、段取りを踏まえて話を持って行こうと苦慮している。

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〜驚愕〜

クリス ティーナに、
ジョイ「とても穏やかで 確信に満ちてて
ピリピリしてないの
確固たるー
信念があって 目的を 持ってる」と話し続けるジョイ。

愛を込めて話すジョイを見詰めているクリスティーナ。
ジョ イ「一つ言っ ておくわ
前に結婚してて子供も一人
気の毒にー
8年前に事故で 妻子とも亡くしたの」と 涙を浮かべて話し続けるジョイ。
悲しみを共有して聞いているクリスティーナ。
ジョ イ「ジョン は…
名前 言ったっけ」と 笑うジョイ。
笑 うクリスティーナ。
ジョ イ「ジョン・ W・プレンティス
いい名前でしょ」と 言うジョイ。
ク リスティーナ「ジョ ン・W…」
ジョイが言った名前を繰り返していたクリスティーナが、書斎から出てきたジョンを 見て声を失う。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、キャサリン・ホートン

 最愛の娘のフィアンセが黒人だったからだ。
 日 頃から理解を示しているクリスティにしても予想していないことに動揺してしまう。
書 斎を背にしているジョイはジョンに気がつかずに話し続ける。

ジョ イ「私はジョ アナ・プレンティスに」
驚いてジョンを見ているクリスティーナ。
ショックを受けているクリスティーナを刺激しないように、会釈をしながらそっと近 づいてくるジョン。
ジョ イ「実はママ  もう一つ
言っておく事が
彼はとても心配してるの
ママとパパが動転しないか」
咳払いをしてジョイに知らせるジョン。
ジョ イ「やっと登 場 待ちかねたわ」
後 ろを振り返り、嬉しそうに立ち上がってジョンの元へ行くジョイ。
呆然と立ち上がるクリスティーナ。
ジョ ンの腕に手を回し、クリスティーナの前に連れてきて、
ジョ イ「ママ こ れがジョンよ」と 紹介するジョイ。
ク リスティーナ「ド クター・プレンティス
どうも よろしく」と 言葉を詰まらせて握手を求め挨拶するクリスティーナ。
ジョ ン「初めまし て」と 握手し挨拶するジョン。
母 を見ているジョイに、
ジョ ン「すでに爆 弾投下を」と 言うジョン。
ク リスティーナ「え え まあ
盛大に しかも早射ちで」と ウィットで場を和ませようとするクリスティーナ。
笑 うジョンとジョイ。
ジョ ン「彼女はま だ 僕の赤面症を知らず
分かりにくいが」と 言い、ジョイと顔を見合わせて笑うジョン。
呆然としているクリスティーナ。
クリスティーナを見て、
ジョ ン「医者とし て忠告を
倒れる前に 座られた方がいいかと」と 心配するジョン。
ジョ イ「黒人を見 て卒倒」と 言うジョイ。
 思 わぬクリスティーナの反応に驚いている。
一生懸命に場を取り繕うとし、
ク リスティーナ「卒 倒などしませんよ」


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートン

「でも座りましょう」と 言うクリスティーナ。
ソファーの前で笑顔を作って、
「あなたたちも」と 言うクリスティーナ。
 自分自身を落ち着かせようとしている。
一緒に腰掛、何を話そうかと戸惑っているのを笑い顔で場を繕う。
クリスティーナを見ているジョンとジョイ。
クリスティーナ「言っていいわよね
“やれやれ”って」と 言うクリスティーナ。
笑うジョンとジョイ。
クリスティーナ「や れやれ」と 言い、一息つくクリスティーナ。
笑うジョンとジョイ。
ジョイ「いいわよね」と 言い、ジョンを見るジョイ。
ジョン「もちろん」と答えるジョン。
ジョイ「ご両親に 話した?」と ジョンに聞くジョイ。
頷くジョン。
ジョイ「それで」と言うジョイ。
ジョン「僕が真剣で 君は美人らしいと
驚いていたよ」と答えるジョン。
心配そうに聞いているクリスティーナ。
ジョン「つまり…」
ジョイ「相手は白人だと?」と言うジョイ。
ジョン「電話では 言えないよ
大抵の人は ショックを受ける」と 言い、クリスティーナを見るジョン。
クリスティーナ「分かるわ」と 言い、ジョンを見るクリスティーナ。
クリスティーナを見るジョン。

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〜お茶〜

お茶が用 意されたテラスに移りながら、
ジョイ「ジョンが ハワイ大学に 講演に来て
パーティーで出会い」と クリスティーナに話すジョイ。
腰掛けようとしているクリスティーナの椅子を引いてやるジョン。
紳士的な振舞いをするジョンに戸惑いながら礼を言うクリスティーナ。
ジョイ「以来 毎晩会って
毎日 一緒
彼はご両親に会いに 帰る予定だったの」と 話し続けるジョイ。
一心に話を聞いているクリスティーナ。
憤慨しているメイドのティリーが席に着いたジョンの前に皿を手荒く押し出す。
そのような対応を予期していたジョンは、上手く身をかわし紳士的に振舞う。
呆れた表情を浮かべてティリーを見て、
クリスティーナ「ありがとう」と 言い、ティリーを再び見るクリスティーナ。
 長年、この家に仕えているティリーの性格を熟慮した対応である。
クリスティーナの対応に感情の爆発を抑えるティリー。
気まずくなりそうな空気を変えようと、
ジョイ「おいしいわよ」と 言い、サンドイッチをジョンに勧めるジョイ。
ティリーの方を窺いながら受け取るジョン。
“どうしたらいいのか”と考えているクリスティーナに、
ジョイ「コーヒー は?」と 聞くジョイ。
クリスティーナ「いいわ
パパにはもう?」と 聞くクリスティーナ。
ジョイ「まだ
今日は遅いの?」と聞くジョイ。
クリスティーナ「早いはず ゴルフの日だから」と 答えるクリスティーナ。
嬉しそうに、
ジョイ「よかった  夕食のとき話せるわね
ジョンは今夜 ニューヨークに飛んで」と話すジョイ。
驚くクリスティーナ。
ジョイ「明日から 3か月は ジュネーブなの」と 話し続けるジョイ。
確認するように頷いて聞いているクリスティーナ。
ジョイ「私は来週 合流し
結婚する予定
というわけ」
嬉しそうに言うジョイ。
事態を認識して聞いていたジョンが、
楽天的に話すジョイに、

ジョン「簡単そう」と言う。
笑うジョイ。
笑うジョン。
事の重大さを感じて、顔を強張らせているクリスティーナ。
クリスティーナの表情を見て、笑うのをやめる配慮をするジョン。
ジョイ「彼は肌の色の違いが問題と」と話すジョイ。
クリスティーナ「そう」と 言うクリスティーナ。
ジョイ「うちの両親なら 気にしないとー
何度 言ってもだめ」と話すジョイ。
クリスティーナ「…」
ジョイ「だからママを偵察中なのよ こっそり」と言うジョイ。
笑うジョン。
クリスティーナに、
ジョン「実はそう なんです
僕は段階を踏んでと」と言うジョン。
クリスティーナ「…」
ジョンを見ているクリスティーナ。
ジョイに、
ジョン「お父さんにはそうしよう」と言うジョン。
ジョイ「だけど」
ジョン「時間をかけ」
ジョイ「何のため? いずれ話すのよ」と 引かないジョイ。
クリスティーナの方を見て、“この通りなんですよ”と軽く両手を広げるジョン。
車のクラクションが鳴る。
クリスティーナ「早く決めなさい お帰りよ」と 言うクリスティーナ。

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〜大声〜

新聞社を 経営しているジョイの父マット(ス ペンサー・トレーシー)が帰宅する。
ティリー「だんな様」と大声を上げティリーがマットを迎える。

マッ ト「ただい ま」
大きく手を広げて、
ティ リー「世も末 です」と 言うティリー。
マッ ト「何の故障 だ」
ティ リー「私は世 も末だと」と 矢継ぎ早に話すティリー。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシーら

マット「一体 何が」と 動揺して言うマット。
興奮しているティリーはマットに話す間を与えない。
機関銃のような勢いで、
ティリー「お嬢様がテラスに ドクター何やらと」と 言う。
何が起きているのか解らずに苛立って、
マット「ドクターだと」と 言うマット。
テラスの方に向かって行きながら、
マット「どこが悪い
ジョイ」と 心配するマット。

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〜混沌〜

テラスに 近づいてくるマットを見て、
クリスティーナ「お帰りよ」と言うクリスティーナ。

椅 子から飛び出し、
ジョ イ「パパ お 元気?」と マットに抱きつくジョイ。
マッ ト「どうした  医者は?」と 言うマット。
ジョ イ「こちらよ  ドクター・プレンティス
父です」と 嬉しそうに紹介するジョイ。
立ち上がって挨拶するジョン。
マッ ト「やあ ど うも」と 握手を交わすマット。
先ほどのティリーの態度が気になり、
マッ ト「問題で も?」と ジョイに聞くマット。
マッ トがまだ気づいていないことを察知し案ずるクリスティーナ。
ジョ イ「帰国を早 めただけ
ドクターとは同じ飛行機で」と マットに話すジョイ。
マッ ト「そうか  掛けて」
“何だそんなことか”
と ホッとし、

「ティリーが…」と 言うマット。
ジョ イ「彼女 今 日は変なの
コーヒーは?」と 言うジョイ。
成り行きを案じているクリスティーナ。
マッ ト「いや
司教とゴルフの約束だ」と 言うマット。
様 子がおかしいクリスティーナの肩に手を回し、
「どうした 寒いのか」と 言うマット。
ク リスティーナは動揺していることを悟られないようにしながら、
ク リスティーナ「い いえ 大丈夫」と 言い、話を続けようとする。
が、 マットがジョンに話し掛けたのと重なる。
マッ ト「ドクター  この町で診療を?」と 言いながらクリスティーナを見て、肩を叩いて宥めるマット。
 こ のようなことは今までにないことだったから、嫌な予感がしている。
ジョ ンに、
「掛けて」と 言うマット。
腰 掛けながら、
ジョ ン「この町に は一日だけ」と 言うジョン。
マッ ト「ではハワ イで?」と 聞くマット。
ジョ ン「いや 私 はその…
熱帯医学が専門で ここ数年はアフリカに」
答 えに困るジョン。
 結 婚のことを自分から言い出すとショックを与えることになるし、仕事を自慢しているような言い方でな く伝えなければいけないからだ。
マッ ト「それはす ごい」と言うマット。
ジョ イ「すごい人 なの」と言うジョイ。
ジョ イを見るクリスティーナ。
マッ ト「らしいね
私はそろそろ…」と 言い、立ち去ろうとするマット。
慌てて、
ジョ イ「もう少し 話を」と 言うジョイ。
マッ ト「そうした いが約束に遅れる
いずれまた」と 言うマット。
ジョ イ「そうなる わ」と 言うジョイ。


『招か れざる客』キャサリン・ホートン、スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘ プバーン

クリス ティーナ「夕食に お招きしたの」と言うクリスティーナ。
マッ ト「そのとき 話を」と言うマット。

ジョ イ「ぜひ聞い てもらうわ」と 言うジョイ。
ジョイを見るマット。
ジョイを見ていたジョンと視線が合う。
笑顔を見せるジョン。
慌てて笑顔を返したマットの視線が踊る。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

動揺を悟られたくないマットは、
マット「では また後で」と言い、背を向け立ち去ろうとする。
ネクタイを外しながら頭の中 を整理しているマット。
“おかしい”と繋がる。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

 スペンサーが背中で見 せた見事な表現。
 背中の向こうの表情が見えるようだ。

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〜緊張〜

マットが テラスに戻ってくる。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー、シドニー・ポ ワチエ、キャサリン・ホートン

マット「一体 何なんだ」と 確認するマット。
ジョン「失敗だ」
と ジョイに軽く両手を広げるジョン。
ジョ イ「ほらね」と 言うジョイ。
マッ ト「何の事 だ」と 言い、クリスティーナを見るマット。
マッ ト「クリス  説明してくれ」
マッ トを見るクリスティーナ。
ジョ ン「僕が説明 します」と 言うジョン。
マッ ト「君が?  聞こう」と 言い、ジョンを見るマット。
ジョ ン「僕のせい なので
実はこういう訳です」と 言い、話し出すジョン。
ジョ ン「ジョアと 僕は ハワイで出会い」
マッ ト「…」
ジョ ン「以来ずっ と一緒でした
それで 問題が生じたわけで
僕は彼女に恋を
信じられないことに
彼女も僕に恋を」
と 話し、ジョイを見るジョン。
愛を込めてジョンを見詰めているジョイ。
ジョ ン「そこで二 人の結婚を 了解していただきたいと」と 話すジョン。
マッ ト「…」
衝撃に言葉を返せないでいるマット。
ク リスティーナ「…」
マットの思いが解るだけに成り行きを待つクリスティーナ。
ジョ ン「彼女はお 母さんが帰るなり ぶちまけた
僕は姑息にも小出しにと それで…」と 説明するジョン。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、シドニー・ポワチエ

張り詰めて聞いていたマットは、頷きドカッと椅子に腰掛る。
口を真一文字に結び考えを巡 らせ、話をしたいクリスティーナに視線を向ける。
視線を交わすクリスティー ナ。
マットを見ていたジョイが、
ジョイ「緊張させないで」
と 呆れたように言う。
マッ トは、
マッ ト「私は何も  そんなつもりはない」と ジョイに言い、
「そうだろう」と クリスティーナを見る。
そ して、
「掛けて 緊張する」と ジョンを座らせる。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー、シドニー・ポ ワチエ、キャサリン・ホートン

場の空気 を読んだクリスティーナが、
クリスティーナ「コーヒーはいかが」と解そうとする。

マッ ト「ぶちまけ られてー
妻は何か異議でも?」と ジョンを見て言うマット。
ジョ ン「いや ま だ さっきの今で」と 答えるジョン。
ジョ イが驚いて、
ジョ イ「異議っ て?」と言い、
「突然で驚くのは分かるけど
私だって まさか黒人と…
でも事実は 変えようがないわ
反対されても あきらめない
殺すと言われてもね」と 悪戯っぽく両親を見る。
驚いてジョイを見るクリスティーナ。
クリスティーナに視線を送り、“どうしたものか”と手をこまねいているマット。
決意を語り包囲網を張ったジョイは、
ジョ イ「だからど うぞ 異議があれば言って」と マットの反応を待つ。
 愛 する父からこの場をぶち壊すような返事が来ないことを願いながら。
マットの反応を見ているジョン。
娘の気持ちが解るマットは言葉を選んで話す。
マッ ト「私に何を 言えと
考えるには時間が要る
確かに問題はある
意見を求めるなら 考える時間を
そうだろ」と ジョイに言うマット。
聞 いていたジョンが、
ジョ ン「ええ で も無理なんです」と 言う。
言 い辛そうに、
ク リスティーナ「何 ていうか 特殊な問題があるのよ」と 言うクリスティーナ。
ク リスティーナの表情を覗き込むマット。
ジョ ン「僕は今夜 ニューヨークへ 明日はスイス」と 言うジョン。
ク リスティーナ「そ れでジョイとしては
来週にもスイスへ行き 結婚したいと」と 話すクリスティーナ。
マッ ト「そんな急 な」と クリスティーナを見て言うマット。
即座に、
ジョ イ「結婚する の
引き延ばしても時間の無駄
決心は固いわと 言うジョイ。
マッ トの反応を見ていたジョンがジョイに視線を移す。
マッ ト「つまりこ ういう事か
今日中に私たちの返答をと」と 言うマット。
ジョ イ「そうよ  はっきり聞きたいわ
異議なしと
祝福してほしいの」と 頷きながら言うジョイ。
ジョ イを見ていたジョンがマットに視線を移す。
呆然としているマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

“どうしたらいいんだ”とクリスティーナに目で語るマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

“私もどうしたらいいのか 分からないの”と返し、


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

視線を落とすクリスティーナ。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

“どうしたものか”と考えを巡らせるマット。
 こ れまで様々な差別問題を取り上げてきたマットであったが、突然、娘から黒人と結婚するという思いも よらぬ報告を受け動揺する。
 白人と黒人との結婚には想像を絶するような困難があるにもかかわらず、結 論を急がされているのだ。
ジョイ「ゴルフは いいの?」と言うジョイ。
マット「いいんだ」と言い、
「断りの電話を 失礼」と 席を立ち書斎へ行くマット。
立ち上がって見送るジョンに、
ジョイ「あれが父 気に入った?」と言うジョイ。
ジョン「あちらは どうかな」と言うジョン。
ジョイ「不明ね  読めない人なの
ママ以外は」と 言い、クリスティーナを見るジョイ。
クリスティーナ「やり方がまずかったわね
失礼
お楽にね」と 言い、席を立ち書斎へ向かうクリスティーナ。

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〜書斎〜

ガラス戸 から“入っていい”とマットに手を振るクリスティーナ。
社に電話していたマットがクリスティーナを見て“早く早く”と手招きする。
書斎に入ってくるクリスティーナ。
マット「緊急の用 件が2つ
まずライアン師に断りを 家庭の事情で行けぬと
次にジョン・プレンティスなる人物の情報を」と 電話口の部下に言うマット。
驚いて電話をしているマットを見るクリスティーナ。
マット「医学博士で 年は30代半ば」と続ける。
笑いながら“まあ!呆れた”と言う仕草をするクリスティーナ。
クリスティーナの反応に恥ずかしがるが、
“今やそんなことは言っていられない”
と思っているマットは、

マット「黒人だ
資料がなければ 医師会に問い合わせろ
急いでな 折り返し電話を」と 続け電話を切る。
マットの後ろで電話を切るのを待っていたクリスティーナが傍により、
クリスティーナ「そんな必要が?」と言う。
マット「害はない」と 答え、頭を抱えるマット。
クリスティーナ「ハワイ大学で講演をした人物よ」と 言うクリスティーナ。
マット「こんな事態を予想したことは?」と聞くマット。
クリスティーナ「ないわ」と 答えるクリスティーナ。
マット「私もだ  一度たりとも
君はどう反応した」と言うマット。
クリスティーナ「最初は動揺したわ 今もよ
でもー
二人は本気だし覚悟も固い」と 言うクリスティーナ。
マット「本気なのは認める
だが覚悟は甘い」と言うマット。

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〜決意〜

ジョンが ガラス戸をノックして、
ジョン「失礼」と 顔を覗かせる。

驚 いて振り向いたクリスティーナが、
ク リスティーナ「ど うぞ 入って」と にこやかな表情で言う。
ジョ ンを見ているマット。
ジョ ン「少しよろ しいですか」と ドレイトン夫妻に言い、入ってくるジョン。
マッ ト「いいとも  何だね」と 言うマット。
ジョ ンお伝えしておきます
僕の決意を
ジョアナは知りません」と ドレイトン夫妻に言うジョン。
マッ ト「決意と は?」と 聞くマット。
ジョ ン「彼女は結 婚を 確定的なものと
しかし実際はー
確定はしていません」と 言うジョン。
マッ ト「だが 娘 は何があろうと
結婚すると」と 言うマット。
ジョ ン「僕はしま せん
ご両親の無条件の 了解なしには」と 言うジョン。
驚いてジョンを見るクリスティーナとマット。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

クリス ティーナ「なぜ どうしてそんな決意を」と聞くクリスティーナ。
ド レイトン夫妻に率直な気持ちを話し出すジョン。


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ

ジョン「事態はー
僕にとっても 青天の へきれき
想像外の事でした
10日前に彼女と 出 会うまでは…
彼女のような人は 初 めてでした
人種の違いを気にしな い
同じ人間としか見ないと話すジョン。
クリスティーナ「…」

娘を正しく見てくれていることに感激し涙ぐみ、マットに視線を送るクリスティー ナ。
マッ ト「…」
ジョンをじっと見ているマット。
ジョ ン「でも僕は すでに 問題を抱えています
困難は自明 さらに
大きな問題を背負ってー
結婚する勇気はない」と 続けるジョン。
マッ ト「その問題 というのは?」と 聞くマット。
ジョ ン「あなたの 態度です
あなた方の
彼女は両親と仲がいい」と 言うジョン。
ク リスティーナ「…」
マッ ト「…」
ジョ ン「結婚のせ いで不仲になれば 傷は深いでしょう
僕には治しようがない 予防するのみです」と 言うジョン。
ク リスティーナ「…」
マッ ト「ありがた い」と 言うマット。
驚 いてマットを見るクリスティーナ。
マッ トの言葉にムッとする感情を抑えて、
ジョ ン「僕は彼女 を愛しています
彼女の笑顔を 何としても守りたい
それにはお二人の了解が 不可欠」と 言い、


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ

「ですから はっきりと
態度を表明して頂きた い」とドレイトン夫妻に迫るジョ ン。
クリスティーナ「…」
ジョンを見ているクリス ティーナ。
頷き、
マット「よく分かった

つまり最後通牒だね」と 言うマット。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

マットを 見るクリスティーナ。
ジョン「ひと言でもー
ただ“さようなら”と」と 言うジョン。
ジョンを見ているクリスティーナ。
ジョンに向かって頷くマット。
ジョン「以上です  聞いてくださって
ありがとう」と ドレイトン夫妻に言い、書斎を出てゆくジョン。
出て行くジョンを見ている二人。
クリスティーナ「…」
マット「…」
 立派な青年だと思いなが ら。

Top

〜調査報告〜

マットを 見て、
クリスティーナ「いかが まだ人物調査が必要 と?」と言うクリスティーナ。

マッ ト「いや」と 答えるマット。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

クリス ティーナ「彼はジョイを正しく見てる
そのことが私はうれ しいの
娘は私たちの願いど おりに育った
いつも言い聞かせて きたわね
白人優越主義は 間 違っていると
肌の色は関係ない
差別する人間はー
偏狭で愚か とにか く間違っていると」と話し、
マットを見て、

「そうでしょ」と言うクリスティーナ。
マット「…」
聞いているマット。

ク リスティーナ「条件をつけた?
ただし黒人と恋をしては いけないと」と 強調して言うクリスティーナ。
 自 分自身にも言っている。
”そんなことないって知ってるだろ”とクリスティーナを見るマット。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

 お互いを知り尽くしている夫婦の間が実にいい。

電話が鳴 り受話器を取るマット。
部下「調査報告を」
ジョ ンの経歴を調べさせた報告の電話だ。

マッ ト「ああ 頼 む」と 言うマット。
部 下「著名な人 物です 1930年ロス生まれ」と 報告する部下。
受話器に近寄り耳を傾けるクリスティーナ。
 チャー ミングな面が演出されている。
部 下「ジョン・ ホプキンス大学を主席で卒業
イェール医大助教授 ロンドン医大教授を経て」と 報告が続く。
耳を研ぎ澄まして聞いているクリスティーナ。
文句の付けようのない報告に顔を顰め、クリスティーナを見て呆れるマット。
「現在はWHOの副局長
著書2冊 論文多数
医学賞を総なめ」と 報告が続く。
素晴らしい経歴に興奮するクリスティーナ。
立派な青年だと思いながらも調べさせたマットはばつが悪くなり渋い顔をする。
報告に微笑み悪戯っぽくマットを見ながら受話器から離れるクリスティーナ。
「1955年に結婚 息子が一人
1959年 妻子とも事故死
さらに…」と 報告が続く。
マッ ト「十分だ  ありがとう」と 電話を切るマット。
後 ろに腰掛けているクリスティーナを見るマット。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

微笑むク リスティーナ、考え込むマット。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

電話機の 傍の小物入れを手に取るマット。
中に入っていた小銭を見て、
マット「2ドル 20セント」と言うマット。
クリスティーナ「彼がかけた電話代でしょう 律儀だこと」と言うクリスティー ナ。
マット「自分を語らぬも道理 華麗すぎる」と 言うマット。
笑うクリスティーナ。

Top

〜俎の上の鯉〜

ジョイと両親の関係に亀裂を生じさせたくないために、決定権をドレイトン夫妻に委 ねることにしたジョンは、テラスの椅子に腰掛けて待っている。
 “俎 の上の鯉”状態を選択したジョンは、上質の鯉でありながら品種の違いだけでコックを悩ませることに なる現実に苛立たしく思っていた。


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ

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〜笑顔〜

ジョンの 気持ちを和ませようと、ジョイが小花をジョンの耳に翳す。
振り向いて、
ジョン「何だい」
と 言うジョン。
ジョ ンに甘えるように、
ジョ イ「愛してる  愛してない」と 言い、笑うジョイ。
小 花を取って笑うジョン。
ジョ イ「どう 私 の両親
期待外れ?」と 聞くジョイ。
ジョ ン「いや す ごいよ」と 言うジョン。
ジョ イ「実わね」と 言うジョイ。
ジョ ン「何だい」と 言うジョン。
ジョ イ「この一週 間 不安で」と 言うジョイ。
小 花を見ていたジョンがジョイの方に振り向いて、
ジョ ン「君が?  まさか」と 言い、笑う。
ジョ イ「最初の反 応が心配だったの
一瞬にして23年間の信頼が 崩れるかもと」と 言い、笑うジョイ。
笑いながら、
ジョ ン「このタヌ キ だまされたよ」と 言うジョン。
楽しそうに笑うジョイ。
笑い合う二人。


『招か れざる客』キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチエ


『招か れざる客』キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチエ

書斎から テラスでジョイとジョンが歓談しているのが見える。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチエ

幸せそうに笑っているジョイを見詰めて胸が一杯になっているクリスティーナ。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

その後ろでマットも見詰めている。
感極まっているクリスティー ナの傍にマットが来て「それで」と声掛ける。
マットに、
クリスティーナ「いつも笑顔の娘だった
生後すぐに大笑い
赤ん坊のころも少女 時代も
高校時代もニコニ コ」と話すと、
胸をつまらせ、

「でも 今ほど幸せ そうな
笑顔は初めてだわ
あの子のために 喜 ばなくては
うれしいわ
あの子が幸せなら私 も
あの子は私たちの傑 作よ
ジョイは いつも ジョイ
それがうれしい」と話すクリスティーナの瞳は 喜びの涙で覆われる。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

感極まって泣いているクリスティーナの腰に、そっと、手を回し抱き寄せるマット。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

 素敵なカップルだと思いながらも、二人が直面する問題を心配するマットと、 あの笑顔を守ってあげたいと思っているクリスティーナ。
 どちらも、ジョイの幸せを 願う温かい両親の目だ。
 ス ペンサー・トレイシーキャ サリーン・ヘプバーンが親の愛を見せる素晴らしいシーンだ。
 二人の表情に釘付けにされ、何度観ても涙が溢れてくる。
 娘の時も、母になった時も、そして、嫁がせる時も、幾度も泣いた。
 その涙は、観るたびに増しているような気がする。

この後 に、軽薄な白人の配達員と、それについて回る軽い乗りの若い黒人のメイドを呆れ て見ているティリーを映し出す。
 真剣なジョンとジョイの交際と、対比させて演出しているのが興味深い。

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〜母娘〜

2階の ジョイの部屋。
ア イロンを掛けながらジョンとの馴初めをクリスティーナに話すジョイ。
 嬉しそうだ。

話 を聞いているクリスティーナ。
 母 親として一番聞いておきたいことのタイミングを待ちながら。
話 に夢中になって服を焦がしそうなジョイとアイロンを代わるクリスティーナ。
マットにはどれくらいで恋に落ちたのかと聞くジョイ。
それに答えたクリスティーナは、このタイミングだと、
ク リスティーナ「聞 いていいかしら 彼とはどこまで…」と 思い切って聞く。
が、
「や めとく」と 躊躇するクリスティーナ。
 やっ ぱり聞いてはいけないという思いが広がる。
驚いてクリスティーナを見たジョイが、
ジョ イ「もう抱か れたかと いうことね
いいわよ まだよ」と サラリと言う。
ドギマギしながら耳を傾けていたクリスティーナがホッとする。
ジョ イ「彼の意思 で」と 言うジョイ。
驚くクリスティーナ。
ジョ イ「私が拒ん だわけじゃ ないのよ」と 続けるジョイ。
アイロンを掛けていたクリスティーナの手が止まる。
ジョ イ「焦げるわ よ」と 言うジョイ。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、キャサリン・ホートン

動揺を見透かされ慌てるクリスティーナ。
 娘のことを案じる母親の内心がよく出ているシーンだ。
ジョイ「私を大切に思って くれてるの」と 言うジョイ。

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〜マットとジョン〜

テラス。
マッ トとジョンが世間話をしている。
機会を見計らって一番聞いて おきたいことを切り出し、
マット「子供のことは考えたかね」
と 言うマット。
真剣に、
ジョ ン「ええ 苦 労するでしょう
でも結婚する以上 子供は欲しい」と 答えるジョン。
頷くマット。


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ、スペンサー・トレイシー

マット「娘も同じように?」と聞く マット。
笑みを浮かべて、

ジョ ン「彼女は “子供は未来の大統領
国が明るくなる”と」と 話すジョン。
頷き、胸が熱くなり俯くマット。


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ、スペンサー・トレイシー

その心情を酌み、
ジョン「あなたの 教育の成果です」と尊敬の念を示すジョン。
俯いて頷いていた頭をあげ、

マッ ト「君はどう 思う」と 言うマット。
不 意を衝かれて言葉を選び、
ジョ ン「彼女は 少々 楽天的すぎる
僕は国務長官にと」と 笑い、顔を顰めて俯いているマットの反応を見て咳払いをするジョン。


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ、スペンサー・トレイシー

現在の社 会情勢をちょっぴり皮肉りながらも、希望を語るジョンの話を聞いていたマットが、
マット「君たちには自信がある
だが私は心配だ 老 婆心かな」と言う。
ジョン「いや 当然です」
と 真摯に答え、
「しかし 時代は変わると 言うジョン。
軽 く頷いて、


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ、スペンサー・トレイシー

マット「私の周囲ほど速くは 変らんよ
一日で答えを出せとは  少々 横暴では?と言うマット。
ジョン「確かに」と言うジョン。
頷くマット。
椅 子から腰を上げグルリと一回りして、

ジョ ン「しかし僕 の意図ではない」と 言い、
「あなたの娘が大丈夫だと」と 椅子の背に両腕をつき続けるジョン。
頷 くマット。
ジョ ン私のパパは 筋金入りのリベラル
生涯 差別と闘ってきた人 よ
きっと大歓迎よ
それでー
会ってみたいと」と 話すジョン。
頷くマット。
2 階のテラスから、
ジョ イ「ジョン
ロスから電話」と 言うジョイ。
ジョ イに手を上げて答えるジョンに、
マッ ト「書斎でど うぞ」と 言うマット。
ジョ ン「ありがと う」と 言い、書斎に向かうジョン。
ジョンを見ているマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

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〜招待〜

父プレン ティス氏からの電話を書斎で受けているジョン。
ジョン「父さん 何かあったの」と言うジョン。
そこにジョイが入ってくる。
プレンティス氏「いやね 思いついたんだ
今夜 母さんと そっちへ行く」と言うプレンティス 氏。
話を聞いているジョイ。
困ったという表情をして、
ジョン「今夜?」と聞き返すジョン。
プレンティス氏「6時半に着く
その女性と四人で夕食を」と続けるプレンティ ス氏。
首を振るジョン。
耳を傾けて聞いていたジョイがジョンに、
ジョイ「うちに」と言う。
受話器の口を塞ぎ、
ジョン「待って」と ジョイに言い、
再びプレンティス氏に、

「夕 食はこちらで」と言うジョン。
ジョイ「ご招待して」と言うジョイ。
手で静止、
ジョン「待って」と ジョイに言うジョン。
プレンティス氏「彼女の声か」と言うプレンティス 氏。
ジョン「そうだよ」と答え、
「待って」とプレンティス氏に 言い、
直ぐ傍で話の流れに目を輝かせているジョイに、

「ティリー が怒るぞ」と言うジョン。
かまわず受話器を手に取ったジョイは、
ジョイ「お二人で うちへどうぞ」と招待する。
首を横に振るション。
ジョイ「お迎えに」とプレンティス氏に 言うジョイ。
受話器を奪い取るジョン。
プレンティス氏「誰だね ジョン」と言うプレンティス 氏。
返事に困っているジョン。
プレンティス氏「彼女の招待なら喜んで 楽しみだ」と言うプレンティス 氏。
父プレンティス氏がジョイに好印象を持ってくれているのは嬉しいが、黒人だと思っ ているからであって、いきなりフィアンセは白人だよとは言えずに困っているジョン。
 両親に与える衝撃を少なくしようと苦慮しているジョンの優しさが演出されて いる。
プレンティス氏「じゃ 6時半にな」と言うプレンティス 氏。
ジョン「いやいや いや」
白人であることを手紙で知らせようと思っていたジョンは、電話で言うわけにもいか ず返事に困り慌てる。
プレンティス氏「母さんも楽しみだと
当然だろう」と言い、笑うプレン ティス氏。
同調して笑うジョン。
嬉しそうに笑うジョイ。
プレンティス氏「じゃあ 空港で会おう」と 言い、電話を切ろうとするプレンティス氏。
プレンティス氏に慌てて声を掛けるが電話が切れる。
受話器を持ったままジョイを睨むジョン。
ジョイ「なんて顔」と笑ってジョンを小 突くジョイ。
受 話器を持ったままのジョンが話そうとするが、ジョイは隣の部屋を横切っているクリスティーナに声を掛け彼の 両親を招待したことを伝える。
驚くが困った表情をしているジョンに配慮して、
クリスティーナ「素敵ね」と言うクリスティー ナ。
ジョイ「到着は6時半」と言うジョイ。
申し訳なさそうに書斎のドアの前にいるクリスティーナを見るジョン。
クリスティーナ「ティリーに伝えて」とジョイに言い、テ ラスに向かうクリスティーナ。
ジョイ「OK」と言うジョイ。
怒りを抑えて、
ジョン「いいかい 僕の両親は…
君を黒人だと」とジョイに言うジョ ン。
ジョイ「まだ?」と驚くジョイ。
ジョン「手紙でと」と言うジョン。
首を傾げ、
ジョイ「面倒な人ね」と言い、
「今 知らせたら来ないと?」と笑い、
「私も空港に迎えに」と続けるジョイ。
ジョン「だめだよ まず僕が両親に話す」と言うジョン。
ジョイ「まあ!」
ジョン「予告編だ」と言うジョン。
ジョイ「難しく考えないで
5時半に外で友達と会うの それから空港へ
私の親友よ ぜひ会って」と言うジョイ。
ジョン「…」
呆れてジョイを見ているジョン。

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〜共有〜

花を摘ん でいるクリスティーナに、ジョンから聞いた医療計画を話して聞かせるマット。
 感銘を受けたことを共有しようとしている。
摘んだ花をマットのジャケットに挿してあげるクリスティーナ。
マット「あの年で あの地位 秘訣を尋ねた」と話すマット。
興味を示し聞いているクリスティーナ。
マット「彼は周りに恵まれたのだと
皆 偏見はないと 示したがって」と 話し笑うマット。
笑うクリスティーナ。
マット「まいった 責めようがない」と 言うマット。
クリスティーナ「責めたいの?」とマットの肩に手を やるクリスティーナ。
マット「まさか
父親は郵便配達員」と話すマット。
クリスティーナ「そう」
マット「今は引退し ロスに
黒人の郵便配達員から どうやってあんな息子が」と感心しているマッ ト。
クリスティーナ「今夜 聞けば?」と言いながら石段に 腰掛けるクリスティーナ。
マット「何?」
クリスティーナ「夕食のとき」と言うクリスティー ナ。
驚いて、
マット「誰に
まさか 両親が?」と言うマット。
大きく頷くクリスティーナ。
落ち着きをなくしてクリスティーナの傍に来て、
マット「待ってくれ 誰が呼んだ」と聞くマット。
マットの反応を笑い、
クリスティーナ「ジョイよ」と答えるクリス ティーナ。
マット「あいつめ  次から次へと圧力を
了解がなければ結婚しない
今日中に返事を
その上 初対面の相手を
もてなせか」と苛立って話すマッ ト。
宥めるクリスティーナ。
ジャケットに挿してある花に気づきクリスティーナの膝元にポイと投げ捨てるマット。
マットの気持ちが解るクリスティーナは苦笑いする。

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〜司教〜

仲良くア ルバムを見ているジョンとジョイ。
玄関のベルが鳴る。
ジョイ「私が出る わ」
と ティリーに言い、
ドアを開け、

ジョ イ「おじ様  いらっしゃい」と 嬉しそうに迎えるジョイ。
マッ トの親友であり、よき相談相手でもあるライアン司教(セシ ル・ケラウェイ)がドレイトン邸を訪ねて来たのだ。
司 教「こんにち は 君はまだハワイかと
お父さんはゴルフをけるし
こちらは?」と ジョイに言いながら入ってくる司教。
ジョ イ「ライアン 師 ドクター・プレンティスよ
ハワイ土産よ 結婚するの」と ジョンを司教に紹介するジョイ。
司 教「本当に?
君たちが?」と 言う司教。
笑 うジョイとジョン。


『招か れざる客』セシル・ケラウェイ、キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチエ

司教「よろしく」とジョンと握手を し、
「問題は君か」と 言う司教。
ジョン「ええ そ のようで」と 笑いながら言うジョン。
司教「知らな かった 初耳だ」とジョイに言う司 教。
ジョイ「両親も さっきまで」と言うジョイ。

ジョンと 話した司教は庭にいるマットの所へ行き、結婚に何の問題もないと言う。
“人事だと思って”と剥れるマット。
気遣うクリスティーナ。

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〜シャットアウト〜

ヒラリー がドレイトン邸を訪ねて来る。
 好奇心で。
冷笑してジョンを見ているヒラリーが、煙草に火を点けてもらっている。
 明らかに見下した視線だ。
ヒラリー「どうも」と 言い、
「詮索する気はないの 当然の好奇心ね」と 探りを入れるヒラリー。
ジョン「当然だ」と 答えるジョン。
大人の対応をしているジョンを見るジョイ。
ヒラリーの態度に気分を害しているのを抑えて、
ジョイ「私たち 結婚するの」と 率直に言うジョイ。
 そのことを探りに来ているから。
ヒラリー「そう
知らなかった お母様は何も…」と言うヒラリー。
ヒラリーを見ながらクリスティーナが入って来る。
ジョイ「母も驚いてたわ」と言うジョイ。
ヒラリー「驚いて? そうでしょうね」と言うヒラリー。
憤慨してヒラリーを見ているクリスティーナ。
クリスティーナがいたのに気付き、
ヒラリー「あら
おめでたい話を 聞いたところ」と言うヒラリー。
愛想笑いをして、ヒラリーに近づき、
クリスティーナ「どうしたの わざわざ」と 言うクリスティーナ。
 ジョンたちに配慮して怒りを抑えている。
痛いところを衝かれ返事に困り、ジョンたちをチラリと見るヒラリー。
そして、
ヒラリー「例の絵の件で」と 取って付けた返事をするヒラリー。
ジョンたち向かって、
クリスティーナ「ちょっと失礼」と 言い、ヒラリーの腕を取り連れ出そうとするクリスティーナ。
驚いてクリスティーナを見るヒラリー。
ヒラリーに、
クリスティーナ「車まで送るわ」と言うクリスティー ナ。
話をもっと聞きたいヒラリーはジョンたちに、
ヒラリー「また 近々」と言う。
突き放すように、
クリスティーナ「無理ね 彼は今夜たつし
娘も来週には」とヒラリーに言うク リスティーナ。
ムッとしてヒラリーを見ているジョンとジョイ。
ヒラリー「じゃ お二人ともお幸せに」と 心にも無いことを言い、愛想笑いをするヒラリー。
クリスティーナ「来るのよ」手を引き連れ出すクリスティーナ。
嬉しそうに見送るジョンとジョイ。
外に連れ出されたヒラリーが、
ヒラリー「気の毒に さぞショックでしょう」と言う。
ヒラリーを睨んで上着を閉じるクリスティーナ。
クリスティーナの怒りに気付かずに、
ヒラリー「予感はしたの でもまさか
どうするの 法的には…」と続けるヒラリー。
クリスティーナ「娘は成人よ
電話で済む用件 だったのでは?」と言うクリスティー ナ。
開き直って、
ヒラリー「好奇心に負けたの
まさかジョイが あんなバカなまねを」と言うヒラリー。
上着を閉じていた手をヒラリーの毛皮へ持って行き、
クリスティーナ「もう行って」と 言うクリスティーナ。
ヒラリー「大変だわね」と 言うヒラリー。
クリスティーナ「ご心配なく」と 言ってヒラリーの車のドアを開けるクリスティーナ。
車に乗るヒラリー。
ドアを閉めながら、
クリスティーナ「よく聞いて」と 言い、
ドアを閉めると運転席のヒラリーに、

「まっすぐ画廊に戻り」と 言うクリスティーナ。
車のエンジンを掛けるように促すと、
「ジェニファーに 業務を任せて
何かあれば電話をと
あなたは事務所に行き
5.000ドルの小切手を切って
それから 細心の注意を払って
あなたの痕跡を消してと 続けるクリスティーナ。
ヒラリー「…」
驚いて聞いているヒラリー。
クリスティーナ「お気に入りの あのオモチャもよ
そして5.000ドルの小切手を 持って
永久に私の前から消えてと 続け、
このような別れを言わせるような行動を取ったヒラリーに、

「あなたに非はないのよ
ただ私とあなたはーと 言うクリスティーナの瞳の奥に涙が浮かぶ。
ヒラリー「…」
涙を浮かべて聞いているヒラリー。
クリスティーナ「合わないってだけ」と 言うクリスティーナ。
言葉を返そうとするヒラリーを遮り、
クリスティーナ「何も言わないで 行って」と 言い、手で出て行くように促すクリスティーナ。
出て行くヒラリー。
 クリスティーナは一番大変 な時に好奇心で覗きに来たヒラリーを許せなかった。
再び、上着に手をやり、


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

上着をしっかり閉めるクリスティーナ。
 キャ サリン・ヘプバーンはヒラリーをシャットアウトする気持ちを服で表現した。
 お見事。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

ヒラリー を解雇して戻って来たクリスティーナに、
ジョイ「ヒラリーは下劣よ 最低
クビにしてほしいくらい」と言うジョイ。
クリスティーナ「ジョイ 言いすぎよ」と一応、叱るクリス ティーナ。
 ジョイと同じ思いではあるが、長年、一緒にやってきたヒラリーを解雇するの は胸の痛いことであった。
そして、ジョンに、
「容赦ないんだから ご用心
父親譲りね」と言うクリスティー ナ。
笑うジョン。
 ジョンにはジョイが母親譲りだと分かっていた。

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〜リベラル〜

庭でマッ トと司教が話しているところに戻るクリスティーナ。
司教「力になってやらねば 二人の行く道は険しい」とマットに言ってい る司教。
クリスティーナに気付いて立ち上がろうとする司教に、
クリスティーナ「そのまま 座って」と言い、話に加わる クリスティーナ。
司教「二人は覚悟の上 まじめで聡明な二人だ
困難を承知で なお求め合っている
よほど愛が深いのだ
それほどまでの愛が 報われぬ法はあるまい」と話を続ける司教。
話を聞いていたマットが、
マット「残念だが うまくいくとは思えん
無理な話だ」と言う。
司教「それが本音か それで渋い顔を
実に興味深い
いや 面白いね
えせリベラルの建て前 崩壊の図だ」と 言う司教。
笑うクリスティーナ。
顔を顰めるマット。
マットの反応を面白がり、
司教「戦闘的リベラルの仮面から
反動的な頑固者の素顔が チラリ」と 仕草を交えて言い、笑う司教。
マット「うるさいぞ 説教は教会でやれ」と 苛立つマット。
笑うクリスティーナ。
司教「退散しよう」と立ち上がる司教。
クリスティーナとマットも立ち上がる。
司教「楽しませてもらった
夕食まで魂の救済に励むよ」と言う司教。
笑うクリスティーナ。
渋い顔をしているマット。
マットの反応を見て、
司教「今夜は独りで食事かな」と言う司教。
 誘いを待っている。
間髪を容れずに、
  クリスティーナ「7時半にいらして 彼のご両親も見えるの」と言うクリスティー ナ。
司教「それならば ぜひ
私が必要だな
数で黒人組みに勝てる」と言い、愉快そうに 笑う司教。
笑うクリスティーナ。
クリスティーナを抱擁し、
司教「ありがとう」と礼を言い、
「では 今夜」と 帰りかけるが、
足を止めマットに向かって、

「ビートルズの歌に
何とかなるさ うまくいく」と エレキギターを弾く真似をして戯け愉快そうに笑う司教。
 司 教はリベラルのマットが、自身に直面した問題では困り果てているのをからかい楽しんでいる。
 友人ならではの楽しみ方で。
笑いながら帰って行く司教を見て声を上げ笑うクリスティーナ。
“あいつ人事だと思って”と不愉快な顔をして見送るマット。

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〜アイスクリーム〜

気分転換 にクリスティーナをドライブに誘ったマットは、以前、食べて美味しかったアイ スクリームを注文しようと若者が集うファーストフード店に寄る。
だが、商品の名前を思いだせない。
注文を聞きに来た若い女店員に順に名前を言ってもらう。
マット「それだ
それに違いない
オレゴン・イチゴを 大盛りで」と嬉しそうに注文す るマット。

待ちかね たアイスクリームを口にする。
マット「違った
初めての味だ」と顔を顰める。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

がっかり して、もう一口、口に持ってゆき舐めていたマットが、
マット「うん?」と表情を変え頷き、


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

クリス ティーナに、
マット「いける」と言う。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

コーヒー を飲んでいたクリスティーナがにこやかに頷く。
マット「うまいよ これは」と言うマット。
 初めて味合うアイスクリームはジョンに対するマットの感情の変化を演出して いる。
マット「オレゴ ン・イチゴだな」と確認するマット。
クリスティーナ「そう」と頷くクリスティー ナ。

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〜ブラック・パワー〜

ジョイに 勧められてジョンがシャワーを浴びようとシャツを脱いでいる。
そこへ、メイドのティリーが荒っぽくノックしてタオルを持ってくる。
慌ててシャツを胸に当てるジョン。
ジョンを睨んで入ってきたティリーはタオルを手荒く置く。
ジョン「どうも」と礼を言うジョン。
ジョンを指差し、
ティリー「はっきり聞くよ
何をたくらんでるんだい」と詰め寄るティ リー。
ジョン「僕はただ 妻を得ようと」と言うジョン。
ティリー「どうだかね」と吐き捨て、
「もう一つ
ドクターって何のさ」と言うティリー。
ジョン「ヤブ専門」と言い、笑うジョ ン。
ティリー「冗談のつもりかい」と言い、
怒り心頭に発したティリーは、

「白人はごまかせても 私はお見通し
あんたは舌先三寸の したたか者さ
ブラック・パワーの悪用者だ
私が育てたお嬢さんを 傷つけでもしたら
この私が許さないからね」とジョンを指差し噛 み付く。
さらに、
「いいかい
本物のブラック・パワーを  見せてやる
あんた 大して男前じゃないよ」と吐き捨て、ドアを“バ タン!”と荒々しく閉めて出て行く ティリー。
ティリーのブラック・パワーに目を丸くするジョン。

Top

〜1割〜

アイスク リームを食べ終わって女店員に、
マット「うまかった
今度 来たとき
思い出させてくれ」と言うマット。
だが、女店員は、
女店員「ええ またどうぞ」と素っ気無く言い、 相手にしない。
“あっそう 何をグチャグチャ言ってるのだろう このジイさ ん”と思っているから。
相 手にされない嫌な間のまま帰ろうと車をバックさせたマットが、駐車しようと入って来た若い黒人の男が運転す る車にぶつける。
激怒する若い男。
驚いて後ろを振り向き、車を降りて謝りに行くマット。
マットの車に飛び移り、
若い男「このとんま」と言い、
ぶつけられたところを見て、

「どこを見て運転を」と怒る若い男。
マット「目に入らなくて」と言うマット。
若い男「だろうとも 見てなかったんだ
これを見ろ」と激しく抗議する若 い男。
マット「悪かった 保険で…」と謝るマット。
怒りが治まらない若い男は話を遮り、
若い男「どうしてくれる おれの汗の結晶を」と言う。
堪りかねて、
マット「修理にいくら」と言うマット。
若い男「この傷だ」と怒鳴る若い男。
声に驚くマット。
周りに聞かせるように、
若い男「30〜40ドルはかかる
ジジイがヨタヨタ 運転するから…」と大声で言う若い 男。
苛立ったマットは、
マット「50ドルある 新しいのを買え」と怒鳴って、若い男 の手に金を掴ませる。
車に戻るマットに、
若い男「このボケ老人が」と言う若い男。
助手席で待っていたクリスティーナが笑いを堪えて顔を覆う。
イライラして運転席に座るマット。
横目でマットを窺うクリスティーナ。
ドアを“バン!”と手荒く閉める鬼の形相のマット。
その音にびくりとするクリスティーナ。
若い男「ジジイめ
家で寝てろ 出歩くな」と若い男が怒鳴って 追い出す。
マットの車が駐車場から出て行く。
集まった若者たちが若い男に拍手をする。

運転しな がらハンドルを叩き、
マット「なんて日だ」と怒りを爆発させる マット。
マットを見て、顔を覆って笑うクリスティーナ。
クリスティーナに、
マット「この町に 黒人は1割程度
たった1割の1人に ぶち当たるとは」と言うマット。
声を殺して笑うクリスティーナ。

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〜クラブ〜

クラブ歌 手が歌っているのが映し出される。

♪ちょっぴり あげて
ちょっぴり もらって
ちょっぴり
心 痛める
それが愛の物語
愛の栄冠

ちょっぴり笑い
ちょっぴり泣いて
雲が流れるままに
それが愛の物語
愛の栄冠

ジョイは ジョンを友人カップルに紹介して歓談している。
女の友人「ジョンとジョイに」と乾杯しようとする 女の友人。
ジョイ「ジョアナよ ジョンはそう呼ぶの」と言うジョイ。
 ジョンが淑女として扱ってくれていることを知らせる。
顔を見合わせる友人カップル。
改めて、男の友人が、
男の友人「ジョンとジョアナに」と言い、乾杯する。
男の友人がジョンに向かって、
男の友人「相手がジョアナで幸いだ」と言う。
にっこりするジョイ。
男の友人「おやじさんは この町の良心だからね」と話を続ける男の友 人。
ジョン「新聞は定評が」と言うジョン。
男の友人「彼が育てた新聞だ
ペンを武器に 体制と闘ってね」と言う男の友人。
聞いているジョンとジョイ。
ジョイに、
女の友人「あなたは いつスイスへ」と聞く女の友人。
ジョイ「できるだけ早く」と言うジョイ。
女の友人「ジョンと一緒に行けば?」と 言う女の友人。
ジョンを見て、
ジョイ「それもそうよね」と 言うジョイ。
困った表情をするジョン。
ジョンの手を掴み、
ジョイ「そうよ いけない?」と言い寄るジョイ。
女の友人「パスポートは?」と言う女の友人。
ジョイ「YES」と答えるジョイ。
女の友人「支度は?」と聞く女の友人。
ジョイ「特にないわ」と言うジョイ。
女の友人「それなら 一時でも離れることないわ
今夜 一緒に」と 言う女の友人。
返事に困っているジョンに、
ジョイ「そうよね」と にこやかに言い、決めてしまうジョイ。
男の友人「そうさ」と 後押しする男の友人。
男の友人を指差し“人事だと思って”と苦笑いするジョン。

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〜不機嫌〜

マットと クリスティーナが帰って来る。
ジョ ンのジュネーブ行きの時間が迫って来る。
不機嫌なマットに、

ク リスティーナ「6 時よ ジョンの飛行機は
10時45分発
それまでに はっきりさせないと」と 言うクリスティーナ。
苛立っているマットが、
マッ ト「一日で結 論が出せる 問題じゃない
言っとくが うれしいふりはできん
うそになる
それでご破算ならご愁傷様
娘の幸せが一番だ
彼に反感はない しかしだ
いい大人がやる事じゃない
破たんすると分かっている ものを 祝福できるか
悪いが本音だ」と クリスティーナに言う。
 結 婚を許しながらもマットは割り切れないでいる。
首 をすくめるクリスティーナ。
マッ ト「君はどう か
ジョーイの情熱に浮かされ 冷静な目を失っている」


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン

と言い、 ニ階に上がってゆくマット。
階 段を上がってゆくマットを見ているクリスティーナ。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

涙が込み上げてくるクリスティーナ。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

庭に出たクリスティーナの瞳は涙で覆われている。
“どうしたらいい の?”と夕日に語り掛けるクリスティーナ。
 娘 を悲しめることにならないことを願う母親の心情を見事に演じている。
涙が溢れ出しそうなクリス ティーナを夕日が照らす。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

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〜プレンティス夫妻〜

ジョンの 見送りと招待された嫁に会うためプレンティス夫妻が空路でサンフランシスコへ 向かう。
だが、ジョンから結婚する という電話は受けていたが、相手が白人であることは知らされていない。
プレンティス夫妻が空港に着く。

出 迎えたジョンを見て喜ぶ両親。
ジョ ンはにこやかに両親と抱擁を交わすが、電話中でこの場にいないジョイをどのように紹介しようかと戸惑ってい る。
電 話を終えたジョイが両親を出迎える。
嫁が白人であることを知り驚嘆する父プレンティス氏(ロ イ・E・グレン)と、母 メアリ(ベア・リチャー ズ)


『招か れざる客』ロイ・E・グレン、ベア・リチャーズ、シドニー・ポワチエ

愕然としているプレンティス夫妻。
 結婚報告にジョイの両親は驚き、悩んでいる。
 二人の人生において持ち上がるであろう様々な反感や軋轢を心配するからだ。
 それは相手の両親も同じだった。

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〜身支度〜

マットと クリスティーナが訪問客を迎える身支度をしている。
髭を剃ろうと顔に石鹸泡を付けているマットが、
マット「今夜だと」と言う。
顔を洗いながら、
クリスティーナ「らしいわ」と言うクリスティー ナ。
マット「とんでもない 論外だ」と言い、傍に置いて いたウイスキーが入ったグラスを手に取るマット。
クリスティーナ「あなたがどう出るか それはあなたのご自由
ただ 食卓を気まずくさせないで」と顔を拭きながら言 うクリスティーナ。
泡が付いたブラシを棚に置いている専用容器に入れ、傍に置いているグラスを取るマット。
クリスティーナの話に耳を傾けながらウイスキーを一口飲み、
マット「百も承知だよ
食事の後で彼に話す」と言い、
グラスを棚に戻し、

「私の気持ちを」と言うマット。
クリスティーナ「けんかを売る気はないけど」と言うクリスティー ナ。
髭を剃り始めるマット。
マットを見て、
「言わせてもらうわ あなたは間違ってる
人生最大の過ちよと 言い、感情を高ぶらせるクリスティーナ。
髭を剃るのをやめ、グラスを手に取りウイスキーを一口飲むマット。
クリスティーナ「きっと後悔して
一生 苦しむわ」と 迫るクリスティーナ。
頭を横に振り、
マット「君こそ間違ってる
私は娘を思えばこそ 言うんだ」と 言いながらグラスを棚に戻し、ブラシを取り泡を顔に付けるマット。
クリスティーナ「もう一つ」と言うクリスティー ナ。
 こ こで、身支度していたこれまでのシーンが鏡に写っていた映像だと知らせる演出を見せる。
マットの目を見て、
クリスティーナ「あなたは甘いわ」と 反論するクリスティーナ。
 鏡 から実像に変えることで、対決姿勢に出るクリスティーナの決意を強調させる効果を狙う。
 上手い演出だ。
クリスティーナ「あなたの返答 ジョンはー
受け入れる 誠実だから」
“分かってる”とブラシで泡を顔に付けるマット。
クリスティーナ「でもジョイはだめよ 娘を甘く見ないで」
恐れている事を言われクリスティーナを見るマット。
クリスティーナ「闘うわ あなたと
あなたの欺慢と」と 続けるクリスティーナ。
マット「…」
投げ掛けてくる言葉に痛みを感じて聞いているマット。
悲しそうな表情になり、
クリスティーナ「もう一つ 今日まで
考えたこともなかったけど
ジョイがあなたと闘うなら  私は彼女の味方よと 涙を浮かべ、言葉を詰まらせながら言いマットの返事を待つクリスティーナ。
クリスティーナに止めの爆弾を投げ込まれたマットが、鏡の方に向きを変える。
 ここで、また実像から鏡の映像に変る。
痛みを堪えて、
マット「自分の耳が信じられん」と 言い、持っていたブラシを棚のグラスに間違って圧し込むマット。
反動で入っていたウイスキーが飛び散り手を汚すマット。
 押し切ろうとするマットに、ジョイからのしっぺ返しのような演出が見られ興 味深い。
クリスティーナ「いれ直す?」と言うクリスティー ナ。
マット「結構 自分でやる」と汚れた手で髭を剃 るマット。
 マットの苛立ちと頑固さが映し出される。

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〜空気〜

ジョイが 運転する車に乗っている助手席のジョンと後部座席のプレンティス夫妻。
ジョイを見ているプレンティス氏。
思っていた通りに両親に衝撃を与えることになったことに苛立っているジョンを見て いるメアリ。
車 内の重苦しい空気を破ろうと、プレンティス氏とメアリがジョイに向かって、ジョンとジョイがプレンティス夫 妻に同時に話し掛ける。
ジョイ「時間があれば…」と言ったジョイが笑 う。
ジョイを見て笑うジョンとメアリ。
渋い顔のプレンティス氏。
後ろの座席のメアリに向かって、
ジョン「何だい」と言うジョン。
メアリ「お嬢さんのご両親は何と?」と言うメアリ。
頷いて、
プレンティス氏「わしも聞きたい」と言うプレンティス 氏。
ジョイ「私をジョアナと
驚いてました ものすごく
でもそれは 寝耳に水だったから」と運転しながら答え るジョイ。
ジョイを見ているプレンティス夫妻。
ジョイ「たまげて 当然ですわ」と続けるジョイ。
にっこりしてジョイを見ているジョン。
そのジョンに視線を移すメアリ。
メアリを見るジョン。
ジョイに、
プレンティス氏「ならば わしらが
たまげても当然と?」と言い、
ジョンの方を向き、

「では 言わせてもらおう
正気とは とても思えんと 強い口調で言うプレンティス氏。
夫を見るメアリ。
ジョンを見るジョイ。
気を悪くしているジョイを見ていたジョンが、
父親に向かって、

ジョン「父さん 今度の事はー
急な成り行きで なぜかー
こうなってしまったんだ」と 言う。
ジョンの話に耳を傾けているプレンティス氏。
夫を宥めるように肩に手を置き、ジョンを優しく見詰めているメアリ。
ジョン「両方の親には きついだろう
今夜 話し合い
反対があれば率直に
僕らは4時間後に たつ」と 続けるジョン。
運転しながら聞いているジョイ。
プレンティス氏「4時間では言い切れん 8時間は要る」と 苛立って言うプレンティス氏。
笑って、
ジョン「4時間しかない 2倍速で話すんだね」と言うが、笑わない プレンティス氏を見て、嫌な空気を感じるジョン。

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〜涙〜

身支度を 終えたクリスティーナが2階から降りて来ると、玄関のベルが鳴る。
ドアを開けると、ディナーに招かれた司教が立っていた。
声を上げ歓迎するクリスティーナ。
 気持ちを解してくれる司教の訪問だったから。
司教「クリスティーナ」と嬉しそうに言う司 教。
クリスティーナ「ようこそ」と迎えるクリス ティーナ。
抱擁して挨拶を交わす司教とクリスティーナ。
司教「早かったかな」と言う司教。
クリスティーナ「いいのよ どうぞ」と言うクリスティー ナ。
司教「何度も繰り返すようだが
君は私の知るかぎり 最高の女性だよ」と言う司教。
悩みを隠して笑うクリスティーナ。
司教「ひそかにやっかんで いるんだ
マットのやつをね」と言う司教。
涙が込み上げてくるのを堪えて、
クリスティーナ「飲み物は?」と 聞くクリスティーナ。
司教「スコッチと言いたいが」と言い、
「後でワインが?」と聞く司教。
クリスティーナ「ええ」
司教「じゃ ほんの少し
ソーダで割って」と言い、
調合されたスコッチを、

「ありがとう」と受け取った司教が クリスティーナを見ると泣いている。
驚いた司教が、
司教「どうしたんだね」と言う。
堪えようとするが涙が溢れてくるクリスティーナ。
顔を手で覆うクリスティーナ。
心配して覗き込む司教。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、セシル・ケラウェイ

クリス ティーナ「失礼」と言い、
後ろを向き涙を拭き、

「困ってるの」と言いながら司教の 方に向き直り話し出すクリスティーナ。
「マイク
ひどい事になってるのよ
ジョンが言ったの
私たちの了解がなければ 結婚しないと
娘は知らないわ
今夜 彼と飛びたつ気よ
じき 彼のご両親がここに」と泣きながら思いを 吐き出すクリスティーナ。
司教「…」
深刻な表情で聞いている司教。
クリスティーナ「誰も知らないのよ
主人が了解しないと 決めたこと」と 辛そうに言うクリスティーナ。
司教「まさか うそだろう」と 言う司教。
クリスティーナ「…」
悲しそうに司教を見ているクリスティーナ。
司教「マットは?」と聞く司教。
クリスティーナ「2階で着替えを」と答え、
「別人みたい」と涙を拭くクリス ティーナ。
辛 そうにしているクリスティーナの力になろうと思った司教は混合させたスコッチを手に取り、
司教「失礼」と言い2階へ向かお うとする。
そして、クリスティーナの方を向いた司教は、
「信じられん」と声を上げ2階へ向 かう。
勇ましい司教に向かって微笑むクリスティーナの頬は涙で濡れている。

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〜テーブルコーディネート〜

ティリー がテーブルコーディネートをしている。
テーブルに近寄るクリスティーナ。
ティリー「これで?」とクリスティーナに 言うティリー。
テーブルコーディネートを見て、
クリスティーナ「完璧だわ」とティリーに礼を言 うクリスティーナ。
ティリー「奥様 どうなるんです」と聞くティリー。
クリスティーナ「分からないわ まるで」と答えるクリス ティーナ。
ティリー「やめさせるべきですよ バカなまねは」と言うティリー。
クリスティーナ「やめさせる気はないわ
彼は立派な人物よ ジョイは熱愛してる
バカなまねじゃないわ」と言うクリスティー ナ。
ティリー「奥様までそんな事を
ついていけませんね」と言い、部屋を出て 行くティリー。
首を傾げ、
クリスティーナ「みんなついていけない」と独り言を言うクリ スティーナ。

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〜怒り〜

マットの 部屋。
司教がマットに、
司教「何に怒っているか
ジョンにではない 妻や娘 私にでもない
自分自身にだ」と 説教する。
胸 の内では結婚を許しながらも割り切れないでいるマットは、友人にまで説教され怒りが治まらないで、
マット「くそったれが」と言う。
司教「うろたえ る自分に 腹が立つのだ
まさか君がこうなるとは
変だよ どうかしてる
君は自分を見失っている
裏切っている
痛いだろう」と 続ける司教。
マット「いいかげんにしてくれ」
苛立つマット。
司教「30年来 君を誰より
尊敬してきた
知ってるな
この30年で初めて君をー
哀れだと」と 続ける司教。
話しを遮り、
マット「たくさんだ
私の身にもなってみろ
もっとも 隠し子でもいないかぎり
君に父親の気持は 分かりっこないがね
あの二人に未来はない
この腐った世界ではなと 偏見まみれの世界に怒りを爆発させるマット。
司教「未来は彼ら
世界を変える」と 言う司教。
マット「50年後 100年後にな
我々は生きていない」と 言うマット。
呆れて、
司教「やれやれ
君を監禁したいよ
10歳若ければ 組み伏せてでもー
階下に行かせんのだが」と言いながらマット の腕に触れる司教。
マット「何なら やってみるか」と司教の肩を軽く叩 いていたマットが、
「車の音だ 聞こえたか」と戯けて言い、司教 を見る。
マットを見る司教。
 言いたいことを言っても後腐れがない二人の仲が演出されている。

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〜二組の家族〜

ジョンの 両親がジョーイの家に着いた。
お 互いに当惑しながらの挨拶を交わす。
父親同士は、

マッ ト「私として は 少々 性急にすぎぬかと」
プ レンティス氏「わ しも同感です」と、 意見が合う。
 母親同士は我が子の真剣な愛に打たれ、次第に理解を示すが、父親同士は納得 できないでいた。


『招か れざる客』セシル・ケラウェイ、ロイ・E・グレン、ベア・リチャーズ、キャ サリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー

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〜母親同士〜

マットが 何を言い出すか心配してみていたクリスティーナは、先にメアリに話しておかなければとテラスに誘う。
そして、
クリスティーナ「息子さんと二人だけで 話されました?」
と 言うクリスティーナ。
メ アリ「いい え」と 答えるメアリ。
ク リスティーナ「事 態をぜひとも理解して いただきたいのです
説明させていただいても?」と 言うクリスティーナ。
メ アリ「ええ  伺いたいわ」と 言うメアリ。
ク リスティーナ「そ の前に一つ
ぶしつけな質問ですが
ショックですか 息子さんがー
白人女性と こうなって」と 言うクリスティーナ。
笑みを浮かべて、
メ アリ「驚きで す」と 言い、
「初めての事で 想像もしてなかったので
ショックとは違います」と 続け、
「あなたは?」と 聞き返すメアリ。
聞き返されると思っていなくて慌てたクリスティーナが、
ク リスティーナ「最 初はショックだったかも
やはり突然の事で でもー
今は理解してます
娘は若いけれど 子供じゃない
二人は深く 愛し合っています」と 答え涙を浮かべるクリスティーナ。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、ベア・リチャーズ

メアリ「あなたは結婚を認める
でも ご主人は反対 だと?」と聞くメアリ。
クリスティーナ「そうです」と答えるクリスティーナ。
困り果てた表情でメアリも、
メアリ「うちの 主人も」
と 胸の内を語るメアリ。
“やはりね”と言う表情をするクリスティーナ。
 同じ悩みを抱えている二人は同調する。
メ アリ「もっと 時間があれば 慣れてもくるでしょうが
時間がありませんものね
認めるなら 二人を信頼しなくては
尊重しなくては
うちの主人は それができ ないんですと 涙を浮かべて言うメアリ。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン、ベア・リチャーズ

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〜分散〜

テラスで 話すクリスティーナとメアリをガラス越しに見ていたマットが、
マット「話が弾んでいるようだ」と言うマット。

プ レンティス氏「わ しらも二人だけで話を」と マットに言うプレンティス氏。
マッ ト「そう そ うですな
書斎へどうぞ」と 言い、
プレンティス氏を書斎に誘い、

「失礼するよ」と ジョンに言うマット。
ま た、皆に向かって、
マッ ト「申し訳な いが ちょっと」と 言い、書斎に入ってゆくマット。
マッ トたちを見ていたジョンが残った司教とジョイと顔を見合わせる。
司 教「もう一杯  いいかな」と 空になったグラスを差し出す司教。
頷 き司教のグラスを受け取り、ジョイを見るジョン。
ジョ イ「私は結 構」と 言いジョンにキスをして、
「失礼して荷造りするわ 今後10年分の」と 言い司教にキスをして2階に向かうジョイ。
 父親たちから結婚を認めてもらえないだろうと、覚悟を決めている。
ジョイを見送り書斎の方を見たジョンが司教を見る。
 書 斎で交わされる会話が気掛かりだ。


『招か れざる客』セシル・ケラウェイ、シドニー・ポワチエ

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〜プレンティス〜

書斎。
プレンティス氏「ドレイトンさん 気を悪くせんでください
あんたは正気で この結婚 を認めようと?と 腰掛けているマットに詰め寄るプレンティス氏。
マット「いや そうじゃない」と 言うマット。
プレンティス氏「もし認めるなら 郵便局員が
新聞王におそれおおいが
あんたはバカだと言うプレンティス 氏。
不愉快な顔をして、プレンティス氏を見るマット。

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〜待機〜

書斎の二人の会話が気になって堪らないジョンが書斎の方をじっと見ている。
心 配してジョンを見ている司教に気付き笑みを返し、
ジョン「父が言いそうな事は 想像がつく」
と 言い、
「しかし…
あなたは聞いてるはず
ドレイトン氏は 何と言うと?」と 聞く。
司 教「残念だよ  君が退却する気でいるのが
もし反対があった場合…」と 言う司教。
司教の話を聞いて、“反対する気でいるんだ”という思いが広がったジョンは唇をかみ締めて書斎の方を見る。
怒りが込み上げて来て立ち上がったジョンは、
“私が何をした! 一生懸命に頑 張ってきただけじゃないか! どうして反対なんだ! どうしてこんな扱いを受けなければいけないん だ!”
と顔を強張らせる。

 これは作者が観客に向 かって訴えかけているメッセージだ。
 シ ドニー・ポワチエの心の叫びでもある。


『招か れざる客』セシル・ケラウェイ、シドニー・ポワチエ

テラスか ら戻ってきたクリスティーナが背を向けて立っているジョンを見る。
ジョン「彼女は荷造り」とジョイを思い独り 言を言っているジョン。
入って来たのに気付かないでいるジョンに向かって、
クリスティーナ「ジョン お母様と話を」と言うクリスティー ナ。
硬い表情でクリスティーナの方を振り向いたジョンが、クリスティーナ に“失礼”と礼をしてテラスに向かう。
 感 情が高ぶっていてもレディに対して紳士的な振る舞いを身に付けていることを見せている演出だ。
 シドニー・ポワチエの所作に注目だ。
司教に、
クリスティーナ「窮地よ ジョンは?」と聞くクリスティー ナ。
司教「2階だ」と2階を指差して言 う司教。
クリスティーナ「私も」と2階に向かうクリ スティーナ。
ティリーがクリスティーナに、
ティリー「お食事の用意が」と声を掛ける。
硬い表情で、
クリスティーナ「こっちはまだよ」と答えるクリス ティーナ。

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〜父親同士〜

プレン ティス氏「では  わしらは
同じ考えなんです な」と言うプレンティス氏。
頷いて、
マット「そうです
それでも 若い二人 には
やはり酷な状況だ
息子さんには あな たから話した方が」と言うマット。
頷くプレンティス氏。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、ロイ・E・グレン

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〜母息子〜

テラス。
説明し難くそうにメアリに、
ジョン「ご両親の了解がなければ 結婚しないと僕がー」
と 言い、
書斎の方を振り返って、

「条件をつけた」と 言うジョン。
書 斎の方を見ているジョンに、
メ アリ「了解さ れてるわ」と 言うメアリ。
驚 いて向き直るジョン。
メ アリ「お一人 はね」と 言うメアリ。
ジョ ン「確か に?」と 聞き返すジョン。
メ アリ「奥様は 二人を空港まで 送ると」と 話すメアリ。
“どういう意味なのだろう”と耳を傾けるジョン。
メ アリ「ジョン  私は父さんと
40年 生きてきた
これからも」と 言うメアリ。
“分かっているよ”とメアリの両手を両手で優しく包み込むジョン。
メ アリ「でも今 回に関しては 父さんに従えない
母親二人は同じ考えよ」と 涙を浮かべて言うメアリ。
メアリの両手を握りしめるジョン。


『招か れざる客』ベア・リチャーズ、シドニー・ポワチエ

メアリ「ジョアナはお前を あきらめない
お前がどれだけ 彼女を求めているかよ」と 続けるメアリ。
ジョン「求めて?
求めているよ
この8年 僕の心は凍ってた
もう誰も求めまいと」と 胸の内を語るジョン。
瞳を濡らして聞いているメアリ。
ジョン「ところが 母さん
彼女と出会って10日
生き返った気分だ 素晴らしい」と 興奮して話すジョン。
足音に驚いて振り返ったジョンに、
書斎から出てきたマットが、

マット「失礼 ジョン」と声を掛ける。
マットと傍に行き向き合うジョン。
マット「お父さんと話を」と 言うマット。
ジョン「父と?」と マットを見て言うジョン。
頷いて、
マット「書斎だ」と 言うマット。
“あなたに意見を求めているのに なぜ父と”と納得がいかないジョンはマットに鋭い視線を向ける。
傍に母がいることに配慮して書斎に向かうジョン。
痛みを感じているマットがメアリの方を見る。
メアリが涙を流して見ている。

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〜メアリとマット〜

メアリの 傍に来て、
マット「ご主人と話しました 動転しておられる」と言うマット。

メ アリ「ええ
奥様によれば あなたも」と 言うメアリ。
マッ ト「少し違う  難しい問題です」と 言うマット。
メ アリ「あなた と主人にとって?」と 軽く笑い、
「それなら 事は簡単
二人に反対だと おっしゃれば
問題は解決」と 言うメアリ。
マッ ト「あなたは 喜んでいると?」と 聞くマット。
メ アリ「共に喜 べたらと思います
残念ですわ」と 言うメアリ。
マッ ト「妻の気持 は知ってます
私だって 二人を傷つけた くはないと 言うマット。
メ アリ「ええ
主人もそうです
でも 二人は傷つきます
主人が思う以上に
あなたが思う以上に」と 言うメアリ。
メアリを見るマット。


『招か れざる客』ベア・リチャーズ、スペンサー・トレイシー

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〜父息〜

書斎。
腰掛けているジョンに向かって、
プレンティス氏「彼も反対だ わし以上にな」と言うプレンティス 氏。
ジョン「…」
聞いているジョン。
プレンティス氏「よく聞くんだ」と 声を荒げ、
「生き方を説く気はない
だが お前は間違ってる
常にわしらの誇りだった お前が
どうかしてる」と 嘆き、
「事が急に転がりすぎてる
立ち止まって考えろ
世間が何と言うか
州によってはまだ違法だ
法は変わっても 世間の目は変わらん
お前は初めて道を踏み外し たと 怒鳴るプレンティス氏。
黙って聞いていたジョンが堪りかねて、
ジョン「決めるのは僕だ 黙って…」と 言うジョン。
プレンティス氏「生意気 言うな」と声を荒げるプレン ティス氏。
驚くジョン。
プレンティス氏「親に向かって偉そうに
そうだろうが」と 怒り、
「お前は確かに偉い
だが 誰のお陰で
偉くなれた」と 怒鳴るプレンティス氏。
ジョン「…」
父親を見ているジョン。
プレンティス氏「わしは30年 郵便を配り歩いた
雨の日も風の日も 朝から晩まで
そのお陰でお前は 勉強できた
母さんは自分の物は買わず 学費に回した
古コートで通してな
その恩を忘れ 母さんを泣かす気か」と興奮して声を荒げ るプレンティス氏。
ジョン「…」
父親の顔をまざまざと見るジョン。

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〜情熱〜

テラス。
涙を浮かべて、
メアリ「男の人は年を取ると なぜ

忘れてしまうの
若い二人はお互いを 必要としています
空気が必要なように
二人を見れば 一目瞭然
あなたも主人も 目が見えないのかしら
問題ばかり見てるから
心が見えないのね
二人の思いが…と マットに訴えかけ、
「男の人は年を取ってーと 言い、言葉を選ぶメアリ。
唇を噛み締めメアリを見るマット。
悲しそうに天を仰ぎ、
「性から遠ざかると 忘れ てしまうんですね」と 思い切って言うメアリ。
唇を噛み締め俯くマット。
唇を噛み、
「恋する者の情熱を」と 続けるメアリ。
「息子のお嬢さんへの情熱
覚えがあるはず でも忘れてる
遠い昔の感情 今はもう消えてるでしょう
でも 奥様や私にとって
不思議なのはー
男の人は 思い出しも
しないということ
思い出せば そんな態度はとれません」と 瞳を潤ませてマットを見るメアリ。
メ アリを見るマット。
 マットはメアリに燃えかすのように言われてしまって堪える。


『招か れざる客』ベア・リチャーズ、スペンサー・トレイシー

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〜人間〜

書斎。
プレンティス氏「母さんはいい わしとお前の問題だ」と ジョンと自分を指さして言うプレンティス氏。

ジョ ン「そのとお り 初めて意見が合った」と 言うジョン。
プ レンティス氏「だ から…」と 話を続けようとするプレンティス氏。
プレンティス氏の話を制止し立ち上がり、
ジョ ン「もう十分  聞いた」と 言い、
数歩窓の方へ歩き父親を振り返り、

ジョ ン「僕の番 だ」と 反撃しようとするジョン。
父親の前に来て、
ジョ ン「生き方を 説く気はない そう言いながらー
僕の選択に文句をつけ 恩を売る」と 言い、
思い切って、

「言っとくが
父さんに借りはない
郵便を配り続けたのは 義務だから」と 父親に食って掛かるジョン。
プ レンティス氏「…」
ジョンを見ているプレンティス氏。
ジョ ン「僕を生ん だ以上 育てる義務があった
子供は親に 義務を負わせ るが
親のものじゃないと 興奮して言い、
「僕の人生を父さんの 物 差しで測らないでほしい」と 言うと声を詰まらせて、
「父さんには分かっていない
僕の気持 僕の考え
説明しても 理解しないだろう」と 言うジョン。
プ レンティス氏「…」
意識的に眉間に皺を寄せているプレンティス氏。
 息子の初めての反論にショックを受けているのを隠すために。
「父さんは旧世代の人間
自分のやり方を唯一無二と  信じてる
父親の考えに怒りが込み上げてくるジョン。
そして、
「その世代が死に絶えない と 僕らは自由になれない
縛るのはやめてくれ」


『招か れざる客』ロイ・E・グレン、シドニー・ポワチエ

と怒りを爆発させ父に背を向けるジョン。
ジョンが瞳を真っ赤にして父 を振り向く。
唇を固く結んだ父の瞳から覇 気が消えている。
 泣いている。
父を見ているジョンの瞳に涙 が浮かぶ。
「父さん」と呼び掛けるジョン。
涙を堪えて、
「父さん
僕の父さんと言い、愛を込めて父の身体に触れるジョン。
「僕は息子 愛して る
今までも これから もずっと
でも 父さんは
自分を黒人と
僕は一個の人間と考 えてる」と泣きながら言うジョン。
プレンティス氏「…」

瞳を潤ませて聞いているプレンティス氏。


『招か れざる客』ロイ・E・グレン、シドニー・ポワチエ

ジョン「僕は決めなくちゃならない
自分独りで しかも大急ぎで
だからー
僕を独りにして 母さんの所へ」と 優しく諭すジョン。
肩を落として書斎を出てゆくプレンティス氏。
その姿を悲しそうに見ているジョン。

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〜回想〜

テラス。
独 りで考えを巡らせているマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

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〜ジョイ〜

ジョイの 部屋。
旅支度をしているジョイが嬉しそうにクリスティーナに抱きつく。
そして、明るく、
ジョイ「彼のご両親も説得して
きっと来てくださると 思うけど
お父様は少々 手ごわそう
あの話し方ときたら」と言い、天を仰ぎ笑 うジョイ。
頷き笑うクリスティーナ。
嬉しそうに、
ジョイ「でもお母様は最高」と言うジョイ。
クリスティーナ「ええ とてもいい方」と、にこやかにウィ ンクして、拳を握って強調するクリスティーナ。
ジョイ「私を見たお父様 卒倒するかと」と言うジョイ。
クリスティーナ「パパだって」と言うクリスティー ナ。
ジョイ「そうね 変だった」と思い返して言い、
「ワクワクする ママは?」とクリスティーナに 抱きつくジョイ。
抱きしめながら、
クリスティーナ「そうね ドキドキよ」と言うクリスティー ナ。
 その表情は曇っている。
 マットが下す決断が娘を傷つけることを心配して。

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〜耽る〜

テラス。
一 人でじっと考えに耽っているマットが、プレンティス夫妻たちがいる居間を見る。
そして、庭を歩き回る。

考 えを集約しようと目を閉じる。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

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〜沈痛〜

居間。
ど うなるのか心配して待っているメアリ。
肩 を落としているプレンティス氏。

声 掛け辛い思いでいる司教。


『招か れざる客』セシル・ケラウェイ、ベア・リチャーズ、ロイ・E・グレン

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〜決断〜

テラス。
一人でじっと考えに耽ってい たマットが、“そうだ”という表情をする。
 大切なものを呼び起こしたのだ。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

自らに頷いて、
マット「裏切るか」と、決意の表情になるマッ ト。
 そ こには頼もしい父親の顔があった。

 私たちを惹きこむ父親の顔が。
 上手い。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

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〜失望〜

書斎。
決断を迫ったマットが逃げた ことに怒り、肩を落として書斎を出て行った父親のことを思い遣っているジョン。
書斎のドアを開けるマット。
マットを睨むジョン。
開けたドアから居間が見え、

ジョ ン「ドアを閉 めて」と 言うジョン。
ジョ ンを見ながらドアを閉めるマット。
マットに迫り、
ジョ ン「逃げまし たね」と 失望と怒りを込めて言うジョン。
ジョ ンを見て、
マッ ト「決めつけ るのは早い 今から返事する
用意ができた」と 言い、
頷き、


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、シドニー・ポワチエ

「来たまえ」と言うマット。

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〜心の準備〜

ジョイの 部屋。
これからマットが話すことを案じて、
クリスティーナ「ジョイ
私は全面的に あなたの味方よ」と 言うクリスティーナ。
頷くジョイ。
クリスティーナ「無条件で受け入れるわ
あなたの幸せは私の幸せと 言うクリスティーナ。
ジョイ「分かってる」と 言うジョイ。
クリスティーナ「じゃ よく聞いて
あなたに 言っておくべきだと思うの
あなたは…」と 衝撃を少なくするためにマットのことを話しておこうとするクリスティーナ。
その時、居間からマットが、「クリス 何をしてる」と呼ぶ声が聞こえる。
驚くクリスティーナ。
続いて、「ジョイ 降りておいで」と呼ぶ声が聞こえる。
“何かしら?”と声がする方を見るジョイ。
“いよいよだわ”と顔を強張らせるクリスティーナ。

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〜集結〜

マットは プレンティス夫妻たちがいる居間に皆を集める。
マット「話がある 最後まで
黙って聞くこと」と ジョイに言い、掛けるように言うマット。

心配してマットを見るクリスティーナ。
マッ トが皆に向かって、おもむろに話し始める。
マッ ト「お察しの とおり大事な話だ」


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

しっかりとマットを見るジョン。
何を言い出すのかと思って マットを見るジョイ。
マット「今日は奇妙な というより
とんでもない一日 だった
テラスでこの一日を  振り返り
諸君に私の気持ちを
伝えるべきだと考え た
諸般の理由から…」と話すマット。

話しを聞いているプレンティス夫妻。
何を言おうとしているのかと思ってマットを見ている司教。
マッ ト「始まりは 帰宅したとき ティリーが…」と 話し、
「失礼」と 皆に断り、
「ティリー
時間はとらん」と ティリーを呼ぶマット。
ティ リー「用意な らとっくに」と 言うティリー。
マッ ト「いいから そこに掛けて
プレンティスさん ティリーです」と 言い、プレンティス夫妻に紹介するマット。
会 釈するプレンティス氏に、微笑み挨拶を交わすメアリ。
マッ ト「22年来  我が家の一員で
騒ぎの発端でもある
掛けて」と 言うマット。
ティ リー“何だろ う”と 腰掛けてマットを見ているティリー。


『招か れざる客』

マッ ト「さて
今日の午後 帰宅するや
ティリーが
“世も末ですよ”と」
クリスティーナ「…」
マット「何の事か 分からなかったが
やがて分かった
私の苦手な謎かけの ご とき会話の後ー
娘が結婚するつもりだと  判明した」と話しを続けるマット。
ジョン「…」
ジョイ「…」
マット「相手は初めて 会う青年で」
お互いを見るジョンとジョイ。
マット黒人だった
正直言って私の反応は
ごく普通の父親の 反応 だった
娘も黒人なら違うだろう が」と話すマット。
プレンティス氏「…」
メアリ「…」
マットつまり 私は仰天した
今もしている
娘は一度決めたら 後に ひかない
母親似で」と ジョンの傍に行き、クリスティーナを見るマット。
クリスティーナ「…」
俯くクリスティーナ。
マットその娘が断固 結婚すると
私たちがどう思おうと…
ところが また意外な展 開で

ジョンが私たちに告げ た」と話すマット。
ジョイ“何かしら?”とジョンを見るジョイ。
マット「了解なしには 結婚しないと」と話すマット。
ジョイ「うそでしょ」とジョンを見て言うジョイ。
ジョイを見るジョン。
マット「ジョイ
お前に命令できるのも  これが最後
いいか お黙り」と叱るマット。
驚いてマットを見るジョイ。
真意を掴もうとして聞いている ジョン。
マット「そこでー
私たちは一日で心を決めね ばならぬはめに陥ったと話し、
「そこでだ
妻は例によって現実をー
無視することに決め
ロマンチックな熱に 浮か されて
理性を失ってしまった
クリスティーナの前に行くマッ ト。
マットに向かって肩を窄めるクリ スティーナ。
司教の方へ行きながら、
マット「そしてこの司教殿はいえば」と話し、
「おせっかいにも割り込 んで
私の知性に 陳腐な説教を
浴びせ
ついには私室に押しかけ
私に勝負を挑む始末」司教の前のソファーに腰掛けて続 ける。
司教「…」
決り悪そうに口をモグモグさせる 司教。
マット「飛行機の時間は?」
とジョンに聞くマット。
ジョン「10時45分」と言うジョン。
頷いて、
マット「よろしい」と言い、
「プレンティス氏は 最 も分別があり
私に“悪気はないが 正気か”と」
プレンティス氏に向かって話す マット。
プレンティス氏「…」
頷くプレンティス氏。
マット「夫人の方はー
私は夫同様 男の燃えかす で
覚えてもいないとーとメアリに向かって話すマット。
メアリ「…」
マットを見ているメアリ。
 瞳が潤んでいる。
マッ ト「恋の炎を
若い二人の情熱を」と言うマット。
メアリ「…」
マットを見ているメアリ。
マット「…」
メアリを見ているマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

立ち上がり、
マット「奇妙なことに
その言葉に今日初め て 心が騒いだ」と話し、
マット「あなたは間違っている 大間違いだ

正直 考えたことはなかったが」と メアリに向かって言うマット。
涙が溢れ出しそうな瞳でマットを見ているメアリ。
自分を曝け出して話している友人に胸を打たれている司教。
マッ ト「情熱は 知っている
ジョンの娘への情熱は そっくりそのままー
私が妻に抱いたもの」と 話し、クリスティーナに視線を向けるマット。
涙を浮かべているクリスティーナ。
感極まって、
マッ ト「確かに年 老い」と 言葉を詰まらせ、
マッ ト「燃えかす ではある
だが記憶はまだ 失っていない
鮮やかに 無傷で 残っている
百歳まで生きても なお…
ジョンは 私たち親の意向に
重きを置きすぎた」と 続けるマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

〜絆〜

二人に向かって、
マット「結局 そんなものは
どうでもいい
肝心なのは二人の気 持
気持の深さだ
絆だ」と心を込めて言い、
思い起こ すように、

「それが私たち夫婦の  たとえ半分でも…」と言葉を詰まらせ、
優しく
“そうなんだよ”と頷き、

「それがすべてだ」と話を結ぶマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

目に一杯涙を浮かべてマットを見詰めているクリスティーナ。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン

クリスティーナに愛を込めた微笑を返すマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン

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〜激励〜

再び、二 人の方に向き直るマット。


『招か れざる客』キャサリン・ホートン、スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘ プバーン、シドニー・ポワチエ

二人に向かって、
マット「二人を待ち受ける問題は 想像もつかんが
私は問題ない」と言うマット。
マットの話を聞いていたジョ ンとジョイが顔を見合わせ微笑む。
再び、マットの話を真剣に聞 くジョンと、喜びの涙を浮かべてマットを見ているジョイ。


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートン

ジョンに 向かって、
マット「たぶんー
私と妻と お母さん とで
説得すれば
君のお父さんも」と言うマット。

涙 を浮かべているメアリの瞳が美しく輝く
胸の内で二人の結婚を認めていながら、頑固そうな表情を保っているプレンティス 氏。


『招か れざる客』ベア・リチャーズ、ロイ・E・グレン

マット「世間の風当たりは 覚悟の上だろう
この国では まだ大 多数が
君たちに反感を覚え  顔を 背ける
乗り切らねばならん
二人で毎日 一生涯
偏見を抱く人間は  無視するのもよかろう
その偏狭さ 愚かさ を
哀れむのもいい
だが必要なときは  二人手を取り合い
ののしってやれと、娘に待ち受ける風当たり を思い怒りが込み上がってくるマット。
マットと同じ思いのクリス ティーナの瞳から涙が流れ落ちそうになる。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン

マット「君たちの結婚は事件になる」と続け るマット。
ジョンとジョイが、これから 受けるであろう風当たりに対して思いを馳せている司 教、マットと同じ心配をして聞いているプレンティス夫妻。
メアリの頬を涙が濡らす。
マット「論争を巻き起こすだろう」
と 言い、
二人を見詰め、


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

「素晴らしい二人が
たまたま恋をし」と言い、言葉を詰まらせる マット。
ジョン「…」
ジョイ「…」

マッ ト「たまたま 肌の色が違った」と 続け、
「今はこう思う
世間がいかに騒ごうが 構わん」と、
力を込め、

「問題は唯一ー
互いのことをよく知り
よく理解し 互いの気持を知りながら
結婚せずにいることだ」
と言い、
“そうだよ”
と頷くマット。

ジョイはマットの愛に触れ涙を流し、


『招か れざる客』キャサリン・ホートン

そして、認めてもらえた喜びの目をマットに送っているジョンにしっかりと視線を向 ける。


『招か れざる客』シドニー・ポワチエ

そのジョイの視線に応える視線を送るジョン。
 強い二人の決意が演 出されている。
“この二人ならきっと 乗り越えていってくれるだろう 頑張れよ”と思いながら見ているマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

胸が熱くなりクルリと向きを変え歩き出すマット。
そのマットに、
クリスティーナマット ありがとう!
苦しい決断をしてく れて
二人は乗り越えるわ よ きっと”と熱い視線を送るクリス ティーナ。
 瞳が涙で覆われている。


『招か れざる客』キャサリン・ヘプバーン
 

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〜ディナー〜

皆の方に 向き直ると、
マット「ティリー 食事はまだか」と言い、話を終るマット。

マットに感謝と喜びを示すクリスティーナ。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、セシル・ケラ ウェイ、ベア・リチャーズ、キャサリン・ホートン、ロイ・E・グレン、シドニー・ポワチエら

満面の笑顔でマットと握手したクリスティーナの手はマットの手を包み込み愛と尊敬 の念を伝える。
嬉しそうに司教が立ち上がる。
司教に感謝のキスをするクリスティーナ。
ジョイがジョンの手を引いてマットに抱いて喜びを表す。
そこにはあのメロディーが流れてくる。

♪ちょっぴり笑い
ちょっぴり泣いて
雲が流れるままに
それが愛の物語
愛の栄冠

クリス ティーナがメアリの手を引きテーブルに誘う。
それを笑顔で見ている司教。
ジョンが笑顔でマットと握手 する。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、セシル・ケラ ウェイ、ベア・リチャーズ、キャサリン・ホートン、ロイ・E・グレン、シドニー・ポワチエら

プレン ティス氏も立ち上がる。
お互いの腰に手を回したジョ ンとジョイが仲良くテーブルに向かう。
プレンティス氏とマットと目 が合う。
一抹の寂しさを分かり合う。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ホートン、シドニー・ポワ チエ、キャサリン・ヘプバーン、ベア・リチャーズ、ロイ・E・グレンら

マットが プレンティス氏の肩をたたきディナーの部屋へ誘う。


『招か れざる客』セシル・ケラウェイ、キャサリン・ホートン、シドニー・ポワチ エ、スペンサー・トレイシー、ロイ・E・グレンら

♪二人が共にあるかぎり
世界は二人のもの
世界がそっぽを向いても
二人で手を取り合って

語り合い ながらテーブルに向かうマットとプレンティス氏。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、ロイ・E・グレンら

にこやか な顔がテーブルを囲む。


『招か れざる客』ロイ・E・グレン、ベア・リチャーズ、セシル・ケラウェイ、キャ サリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー、キャサリン・ホートンら

愛に包まれたテーブルで談笑する二組の家族。


『招か れざる客』ロイ・E・グレン、ベア・リチャーズ、セシル・ケラウェイ、キャ サリン・ヘプバーン、スペンサー・トレイシー、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートンら

♪ちょっぴり勝って
ちょっぴり負けて
ちょっぴり 切ない気分
それが愛の物語 愛の栄冠

 ジョンとジョイが受けるであろう荒波も、二人の愛と、この二組の家族たちの 深い愛が愛が一つになって支えてゆくだろう。
 “頑張れ! 負けるな!”“頑張れ! 負けないで!”“頑張れ! 負けるな!”“頑張れ! 負けないで!”“頑張れ! 負けるな!”“頑張れ! 負けないで!”と言う声をしっかりキャッチできる二人は、相手を一人の人間とし て尊敬し、慈しんでいるのだから、偏見に負けない強い絆で乗り越えてゆくだろう。

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 アメリカ社会に根強く残る黒人問題を 真正面から取り上げた作品から40年経った今日、初の黒人大統領が現実的になってきている。
 まだまだ、問題点はあるだろうが、この作品の訴えが甦ってき た。
 「世界は変わる」と。

ス ペンサー・トレイシーは 闘病生活を送っていたが、『招かれざる客』で久しぶりに 映画出演となった。
だが、撮影終了した17日後、6月10日に心臓発作で死去した。
 彼は「肝心なのは 二人の気持 気持の深さだ 絆だ」という重要なメッセージを伝えに 戻って きた。
 何時も心に届く彼のメッセージの中でも特に響いてきた。

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1997

ア メリカ映画ベスト100で99位

2010

…11月 30日、「永遠のヒロイン その愛と素顔 〜私が愛される理由 キャサリン・ ヘプバーン〜」の放送(NHKhi/PM10:00-PM11:30)で紹介されたのを載せる。
共演した姪キャサリーン・ホートンが話すキャ サリンス ペンサー
”スペンサーには特別な撮影スケジュールが
組まれました
朝の10時ごろから 1日3〜4時間に限って
彼は 自分のシーンを演技しました
彼はとてもうまく持ちこたえて
楽しんでいるようでした
あの役を演じることを大切にしていました
ふたりとも 脚本がとても気に入っていました
撮影現場には 彼の健康を気遣う
緊張感がありました
それでも 仕事をするには
とても気持ちの良い現場でした
伯母は 彼が撮影することを望んでいました
とめるのは馬に「もう走らない方がいい」と
言うようなものでしょう
彼がこの仕事に 命を懸けていることを
わかっていて 励ましていたのだと思います
撮影が終わると 私たちはスペンサーの家で
毎晩 一緒に夕食を食べました
食事の後 伯母が部屋を出て行くと
スペンサーが言いました「いいかい質問がある
でも 伯母さんが戻ったら話題を変えるんだ」
その時 初めて聞かれた質問は
「死んだら どうなると思う?」
「わかりません」
「天国と地獄は信じる?」
「いいえ」
「肉体が死んでも 人格は残ると思う?」
「わかりません」
「罪を償うために 地獄に行くとは思わないの?」
「いいえ 絶対にそんなことはないわ」
(伯母が来ると)
「しー 黙って 今日は何を撮影したの?」
「今日の場面はシドニーがやってきて…」
伯母がまた出て行くと
「それで 地獄はどんなものだと思う?」
この秘密の会話は こんな感じで
時々 続いたのです
映画の一番最後のセリフは 脚本家が
スペンサーのために書いたものです
スペンサー・トレイシーが
キャサリン・ヘプバーンに届ける言葉として
伯母は その言葉に
とても心を打たれていました
彼は 演技をする必要はなかったのでしょう
本当の気持ちだったと思います“(NHKhi 2010.11.30放送「永遠のヒロイン その愛と素顔 〜私が愛される理由 キャサリン・ヘプバー ン〜」より 抜粋)

『招 かれざる客』より
マット「家内に抱いた情熱は
ジョンに負けるものじゃない」と 話し、クリスティーナに視線を向けるマット。
涙を浮かべているクリスティーナ。
感極まり、言葉を詰まらせ、
マット「燃えカスは確かだ
だが記憶は決して
うすれてはいない
死ぬまで忘れはしない
ジョンは我々の意向を
重視しすぎた」と 続けるマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

二人に向かって、
マット「親の意見など問題じゃない
肝心なのは当人達の
愛情の深さだ」と心を込めて言い、
思い起こ すように、

「私達たちの半分もあ れば」と言葉を詰まらせ、
優しく
“そうなんだよ”と頷き、

「立派なものだ」と話を結ぶマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー

目に一杯涙を浮かべてマットを見詰めているクリスティーナ。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン

クリスティーナに愛を込めた微笑を返すマット。


『招か れざる客』スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン

撮影が 終って2週間後、ス ペンサー・トレイシーは67年の生涯を閉じた。
”そう エンジンが止まった
止まってしまったのだ
やっと 安らかになれたのよね
スペンサー もういいのよ
よく頑張ったわね
苦しみも 痛みも 絶望も
もう 何もないわ
あなたはひとりで旅立ち
もう 帰ってこない
ああ〜 スペンサーが逝ってしまった
キャ サリンス ペンサーの死を電話で 妻ルイーズに伝えた。
葬式はルイーズが、全て執り行い、キャ サリンは一切人前に出なかった。
教会から運ばれていくス ペンサーの棺を、少し離れた車の中で見送った。
“さようなら ここでお別れよ“
“愛してるって どういうことなのだろう
私は ただ スペンサーから離れるなんて考えられなかった
彼はそこにいて 私は彼のものだった
私は 彼に仕えるのが好きで
彼の言葉に耳をかたむけ 食事を出し
おしゃべりをし 彼のために働くのが好きだった
スペンサーが私のことを どう思っていたのか
それは わからない
彼は そのことについて 話そうとしなかったし
私も話さなかった
ただ 27年間をともに過ごし
それは 私にとって 至福の時間だったということ
それが 愛だと
私は思う(NHKhi 2010.11.30放送「永遠のヒロイン その愛と素顔 〜私が愛される理由 キャサリン・ヘプバー ン〜」より)

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