ジェーン・フォンダ、バネッサ・レッドグレーブ 監督…フレッド・ジンネマン 製作…リチャード・ロス 原作…リリアン・ヘルマン(1973発表 回想録『ペンティメント』(Pentimento)の7篇の中の『ジュリア』) 出演…ジェー ン・フォンダ(作家リリアン) ………ヴァ ネッサ・レッドグレイヴ(バ ネッサ・レッドグレーブの表記も) (医学専攻、ファシズムと戦う女闘士ジュリア)(ア カデミー賞助演女優賞) ………ジェーソン・ロバーズ(探偵作家ダシール・ハメット)(ア カデミー賞助演男優賞) ※ア カデミー賞の脚本(脚色)・助演男優・助演女優の3部 門を受賞 リリアン・ヘルマン原作のこの作品には二人 の素晴らしい女優が競演している。 一人は、ヴァ ネッサ・レッドグレイヴでファシズムと闘う女性運動家のジュリアに扮している。彼女の眼 の動きが非常にいい。眼が語るというのは、こういう演技のことをいうのだと思う。 もう一人はジェー ン・フォンダでこれまたいい。父親のヘ ンリー・フォンダは、名優中 の名優だったが、その七光を受けているのではなく、独自の世界を創りだしている個性豊かないい 役者だ。ジェー ン出演作品の中でも、一番といっていい程の出来だと思う。ジェー ンは、ジュリアを尊敬している幼なじみリリアン(ユダヤ人の作家)の役柄だ。自 立する女の生き方とファシズムへの怒りを見事に演じ切っている。 ジュリア(ヴァ ネッサ)が成人して反ナチ運動をしている ベルリンにリリアン(ジェー ン)が、会いに行く決意をする。それから の展開が面白い。きっと釘付けになると確信す る。 この二人はこの映画を地で行くような私生活だったから、生身のものを感じたのも当然 かもしれない。もう一人、この作品で忘れてはいけない役者がジェーソン・ロバーズだ。渋いいい味を出してい る。お薦めの作品だ。 ※リリアン・ヘルマンは 1905.6.20ニューオリンズ生まれ、現代アメリカ演劇界最高最古参の劇作家で出世作『子供たちの時間』(Children's Hour 34年、ウィ リアム・ワイラー監督で36年『こ の三人』、62年『噂 の二人』の邦題で2回映画化)をはじめ、『小狐たち』(Little Foxes 39年、ワ イラー監督で41年『偽 りの花園』の邦題で映画化)、『ラインの警視』(Watch on the Rhine 41年、ハーマン・シュムリン監督で43年映画化)、あるいは『逃 亡地帯』(66年、アーサー・ペン監督)の脚色を している。50年代はじめの“赤狩り”の時期にはブラック・リストに載せられたが、非米活動委員会でも証言を拒 否して毅然と立ち向かい、崩れなかったそうだ。 ヴェトナム反戦運動の女闘士 だったジェー ン・フォンダはリリア ン役に惚れ込んでいて、リチャード・ロスが映画化権を獲得したのを知ると出演したいと意向をもらしたそうだ。ジェー ン・フォンダは『逃 亡地帯』にも出演していた。 ジュリア役のヴァ ネッサ・レッドグレイヴもイギリスで労働革命党を擁する政治活動家であった。この作 品でア カデミー賞助演女優賞を受賞したヴァ ネッサは授賞式でPLO支持の発言をしたために混乱があった。(1982.12.25 『キネマ旬報増刊 映画史上ベスト200シリーズ アメリカ映画 200』キネマ旬報社 林冬子記事 参 考) Top |