自転車泥棒
  
   エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニ

※ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  〜〜〜請け出し〜〜仕事〜〜泥 棒、その手口〜〜届出〜〜悄然〜〜相談〜〜探 す〜〜落胆追跡〜〜苛立ち〜〜息子〜〜注文
占い〜〜若 者〜〜仲 間〜〜マフィア〜〜証拠〜〜途 方もなく
競技場〜〜自転車〜〜盗 み〜〜衝撃〜〜罵声〜〜屈 辱〜〜〜〜父息 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わり に] web拍手 by FC2
(1948)(伊)(ア カデミー特別賞(現在の外国映画賞))(キ ネマ旬報ベストテン1位)-Ladri di Biciclette-
監督…ヴィッ トリオ・デ・シーカ
製作…ヴィッ トリオ・デ・シーカ
原作…ルイジ・バルトリーニ
脚本…チェーザレ・ザヴァッティーニ /ヴィッ トリオ・デ・シーカ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/オレステ・ビアンコオリ/アドルフォ・フランチ/ゲ ラルド・ゲラルディ/ジェラルド・グェリエリ
撮影…カルロ・モンテュオリ
音楽…アレッサンドロ・チコニーニ
出演…ランベルト・マジョラーニ(アントニオ・リッチ)
………エンツォ・スタイオーラ(息子/ブルーノ)
………リアネッラ・カレル(妻/マリア)
………ジーノ・サルタマレンダ

第2次世界大戦で敗戦したイタリアの戦後の窮乏(日本 も同じような状況であったであろう)を、アントニオ(ランベル ト・マジョラーニ)一家に焦点を当てド キュメンタリータッチで描いた不朽の名作である。

長い失 業から、ようやく職に就ける。だが、それには“自転車”が必要 だった…

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〜職〜

社会の混 乱のなかで懸命に生きるために職を求め人々が職業紹介所に群がっている。
妻 マリアと6才の息子ブルーノと赤ちゃんの4人家族のアントニオ(ランベルト・マジョラーニ)の名が 呼ばれる。
長 い失業から、ようやく職に就けるのかという興奮を抑えて、

ア ントニオ…「職ですか」と神妙 に聞くアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

市職員…「ビラはりだ 市役所に行け
これを渡せばわかる」とアントニオに紹介状を渡す市職員。
失業者A…「やつだけか」と失業 者がやっかむ。
アントニオ…「ありがた い」と言いながら紹介状を見るアントニオ。
失業者A…「おれたち は?」と言う失業者。
市職員…「あとは旋盤工だ けだ」と答える市職員。
失業者A…「日ぼしにする 気かよ」
苛立つ失業者。
市職員…「ムリを言うな」と失業 者に言い、
立ち去ろうとするアントニオに、

「自転車を忘れるな」と言う市職員。
驚いて振り向くアントニオ。
市職員…「ちゃんと書いて あるだろう」と言う市職員。
アントニオ…「自転車?  持ってはいるが…
2、3日待ってください」と言うアントニオ。
 自転車は生活費のために質 入していた。
市職員…「それじゃダメ だ」と言う市職員。
アントニオ…「当分歩きで やります」と言うアントニオ。
市職員…「そうはいかん  無いならほかにまわす」と言う市職員。
群がっている失業者の中から、
失業者B…「持ってるぞ」と声を 上げ身を乗り出す失業者B。
失業者C…「何を言う お れだって」と言う失業者C。
失業者たち…「おれも」
「おれも」と失業 者たちが身を乗り出して自身を売り込む。
市職員…「お前は左官だろ う」と言う市職員。
失業者C…「かまうもん か」と言う失業者C。
市職員…「ダメだよ」と失業 者に言い、
アントニオに向かって、

「リッチ どうなんだ」と言う市職員。
思わず、
アントニオ…「すぐ都合し ます」と言ってしまうアントニオ。
帰ろうとするアントニオに、
市職員…「だいじょうぶだ な きっと都合しろよ」と念を押す市職員。
アントニオ…「はい 二年 ぶりの仕事なんです」と言 い、急いで家に向かうアントニオ。
妻マリア(リアネッラ・カレル)“質入した自転車があれば職に就け るけど ないといい仕事なのにほかにまわされる”と話す。
 窮乏生活ではとても大変な ことは承知の上で。
マリアは考えた挙句、敷いているシーツを全部剥ぎ取り、それを綺麗に洗い入質す る。

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〜請け出し〜

その金で質入していた自転車を請け出すアントニオ。


『自転 車泥棒』

“今か今か”と手渡される自転車を待っているアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

“これで職に就ける”と自転車を嬉しそうに見るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

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〜仕事〜

早朝、 戻ってきた自転車を丁寧に磨き上げている息子ブルーノ(エン ツォ・スタイオーラ)


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

作業着を 身につけたアントニオは、久しぶりに妻の笑顔で送られご機嫌だ。
久々 の仕事に胸が高まるアントニオ。
頼 もしそうに父を見上げるブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

息子を自 転車に乗せて仕事に向かうアントニオ。
 送っ てもらうことを楽しんでいるブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

談笑している父息。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

ポスター 貼りの仕事にありついたアントニオが、自転車で作業現場に向かう。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

先輩に教 えてもらった方法で外壁にポスターを貼るアントニオ。
 馴 れぬ手つきだが仕事にありつけた喜びで一杯である。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

ポスター を貼り続けるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

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〜泥 棒、その手口〜

ポツリと置かれた自転車に目をやりながら通り過ぎる3人の男たち。


『自転 車泥棒』

まず、一人の男Aが状況を探るため戻って来る。


『自転 車泥棒』

自転車を 見る男A。


『自転 車泥棒』

そして、 作業をしているアントニオを見る男A。


『自転 車泥棒』

駐車してある車の傍らから様子を窺がう作業帽を被った若者。


『自転 車泥棒』


『自転 車泥棒』


『自転 車泥棒』

自転車が 狙われていることに気づかないで、ポスター貼りを続けているアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

止めてある自転車の横に凭れて、若者に盗むタイミングを指示する男B。


『自転 車泥棒』

ポスター の隅に糊を付けるために、自転車に背を向けるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

“今だ!”と目で合図する男B。


『自転 車泥棒』

自転車を盗む若者。
アントニオを見ている男B。


『自転 車泥棒』

自転車を盗まれたことに気づき、
アントニオ…「泥棒!泥棒だ」と叫ぶアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

梯子から 飛び降り、慌てて追い掛けようとするアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

男B…「どうした」とアン トニオに近づき、行く手を阻む男B。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

自転車に 乗って逃げる若者。


『自転 車泥棒』

走って追 い掛けるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

通りか かった車から、
運転手…「乗りな」と声を掛けられる。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

アントニ オ…「追ってくれ 早く」と運転 手に言い、一緒に追うアントニオ。
男Aがその車を追い掛けて来 る。


『自転 車泥棒』

車に乗り、
男A…「あそこを行くやつだ」と 言い、帽子を被って自転車に乗っている男を追わせる男A。
 一 緒に追跡するふりをしてターゲットを外す役目である。


『自転 車泥棒』

アントニ オ…「早く」と運転 手に言うアントニオ。
帽 子を被って自転車に乗っている男に近づく。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

自転車に乗っている男に追い付き、車から飛び降りた男Aが男を鷲掴みにする。
驚いて、
自転車に乗っている男…「何だよ」
と言う 自転車に乗っている男。
自転車に乗っている男の顔を見た男Aがアントニオの方を見て、首を横に振る。
 こ こまでがこの男Aの役回りなのだ。


『自転 車泥棒』

人違いだったことに愕然とするアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

男Aにど ういうことか聞く運転手。
運転手に、
男A…「変だな あいつだと

思ったが…」と言う 男A。
運 転手…「どこに目つけてる」と言う 運転手。
立 ち去る男A。
男Aが自転車泥棒の一味だと気づかないで一緒に追ってきたアントニオは、車から降 り走って来た道へ戻ろうとする。
疲 れがどっと押し寄せる。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

虚ろな目 で見回すアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

 盗んだ若者を探す手立てを失ったアントニオの視界に入ってくる街並みは平然 としている。
 どうしたらいいのか 分からずにいるアントニオの心情と対比させた演出だ。


『自転 車泥棒』

どこに逃 げたのか分からない路上を見回すアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

手馴れた3人の自転車泥棒の連携による手口で、家財を質入してまで手に入れた自転 車、買ったばかりの大切な自転車を盗られてしまったアントニオは、肩を落として作業場に戻って来る。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

腹立たし くてバケツを投げ捨てるが、思い直して残ったポスターを貼るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

ポスター を貼り終え、梯子に座り込んだアントニオは苛立ちと、泣き出したい心境になっ ている。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

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〜届出〜

アントニ オは自転車を盗まれたことを届出、警察に訴えるが自転車が頻繁に盗まれる御時世なので相手にしてもらえない。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

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〜悄然〜

悄然とし て息子を迎えに行き、
アントニオ…「ブルーノ」と声を掛けるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

待ちくた びれたブルーノは、
ブルーノ「もう 7時半だよ」とふくれて言う。

ア ントニオ…「バスが遅れて 行こう」と言 い、家路に向かうアントニオ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニら

自転車に 乗って来ていない父を見て、
ブルーノ「自転車は?」と聞くブルーノ。
アントニオ…「…」
答えられないアントニオ。

“どうしたのだろう”と気になって仕様がないブルーノが、
ブルーノ「故障?」と聞く。
アントニオ…「ああ そう だ」と反射的に答えるアントニオ。
 息子に説明している心境ではないのだ。
 黙らせるのに手っ取早い方法だったのである。
父を見ているブルーノ。
息子の解けたマフラーを首に巻いてやるアントニオ。

“あんなに喜んでいた妻に何と言おう”と思いながら、重い足取りで息子を家まで送って行くと、すぐその足で友人 の所に向かう。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

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〜相談〜

友人の清 掃人バイオッコに相談する。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

同情した バイオッコは、
バイオッコ「あ すの朝 市に行ってみよう
盗品はすぐ手放すのが普通なんだ」と力を貸そうと言ってくれる。

ブルーノ から聞いたマリアが心配して駆け付けて来る。
立場がないアントニオ。
 妻 の後から歩いて帰る姿がそれを表している。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、リアネッラ・カレルら


『自転 車泥棒』リアネッラ・カレル、ランベルト・マジョラーニ

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〜探す〜

早朝。
ポ スター貼りにどうしても必要な自転車を友人バイオッコたちの手を借りて市で探すことになる。
機 種に詳しいブルーノも連れて来て一緒に探す。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタ イオーラら

手分けし て自転車の部品を探しまわる父息と友人たち。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタ イオーラら

アントニ オ…「ブルーノ しっかり頼むぞ」と息子 の頬から口元に触れて言うアントニオ。
父に頼りにされ喜ぶブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニら


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニら


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

積み重ね られた自転車を見るアントニオ。


『自転 車泥棒』


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

山積みさ れた部品を見るブルーノ。


『自転 車泥棒』


『自転 車泥棒』

盗まれた 自転車に似ているのを見つけ、警官を呼ぶが違っていた。
結局見つからず、友人たちは引き上げる。
友人バイオッコの配慮で他の市まで送ってもらう。

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〜落 胆〜

別の市に 着くが土砂降りになっていた。
次々と店が閉められる。
土 砂降りの中、片付けられてゆく自転車を目で追うアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

雨に濡れ ているブルーノを見るが、自転車のことで頭が一杯でブルーノのことに考えが及ばずにいるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

雨に濡れ ないように上着を被りながら寒さを凌いで父に寄り添っているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニ

“雨宿りしないのだろうか”と父を見上げるブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニ

息子の視 線に気づくことなく自転車を探すアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

やっと雨 を凌ごうと建物のほうに向かうアントニオ。
父 を追って行こうとして足を滑らせ転ぶブルーノ。
だが、アントニオは気づいていない。

 余 裕がないのだ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニら

汚れを叩 き落としているブルーノを見て、
アントニオ…「どうした」と言うアントニオ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニら

転んだ場 所を指差して、
ブルーノ「転んだの」と声を荒げて言うブルーノ。
 自 分のことを全然、見てくれていない父に怒っている。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニら

アントニ オ…「ふけよ」とハン カチを渡し、ブルーノの頭を撫でるアントニオ。

建物の横 で雨宿りする父息。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニら

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〜追跡〜

その時、 昨日の自転車泥棒らしき若者が目に留まるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ


『自転 車泥棒』

自転車に 乗って通り掛かった若者をよく見るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

若者が浮 浪者の老人に金を渡している。


『自転 車泥棒』

老人…「これだけ?」と言う老人。
若者…「がまんしろ」と言う若者。

老 人…「これじゃあんまりだ」と言う 老人。
立 ち去る若者。
“あいつだ!”と確信し、
ア ントニオ…「泥棒!」と言 い、若者を追うアントニオ。
自 転車で逃げる若者。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタ イオーラら

父の後を 追うブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタ イオーラら

アントニ オ…「泥棒!泥棒!」と大声を上げ、走っ て若者を追うが、自転車で逃げる若者に追い付けない。
そ こで老人を追うことに切り替えるアントニオ。
ブルーノに、

ア ントニオ…「じじいの方だ」と言 い、雨宿りしていた方へ急ぐアントニオ。
父 について行くブルーノ。
老 人を見つけたブルーノが、
ブ ルーノ「あそ こだ ほら」と言 う。
老 人を追う父息。
老 人を見失い探すアントニオ。
用 を足したくなったブルーノが場所を探し、“今のうちに”と用を足そうとする。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタ イオーラ

ブルーノ を見つけたアントニオが、
アントニオ…「何してる おいで」と声を上げ呼ぶ。

そ の声に驚いて飛び上がるブルーノ。
 こ の驚く表情が実にいい。
 緊張を解すデ・シーカの演出に拍手だ。
慌 てて駆け出すブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタ イオーラ

老人を見 つけ、跡をつけるアントニオ。
父について行くブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタ イオーラら

老人を問 い詰めるが、白を切られ教会に逃げ込まれる。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

やっと老 人から若者の住所を聞き出し案内するように言うアントニオ。
嫌がる老人。
ア ントニオと老人の様子を見ていた教会の主催者が、騒々しくしているアントニオを引き止めさせる。
その隙に老人に逃げられる。
教会内を探し回るが、不審者だと思われ教会から追い出しを食らうアントニオ。
 ここでも十字を切る大人の真似をする可愛いブルーノが見られる。

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〜苛立ち〜

老人が逃 げ出したと思われる出口をやっと見つけ外に出るアントニオ。
一緒に出たブルーノが、
ブルーノ「もう いないよ」
と言 う。
不審者扱いされた挙句、老人を取り逃がしてしまって苛立っているアントニオは、
ア ントニオ…「うるさい」と 言い、走リながら探す。
父 について行くブルーノ。
歩 き出した父に何か言いたげに見上げているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニ

それを感 じて、
アントニオ…「まだ近くだ」と言う が、目の前に広がるテヴェレ川岸をどう探していいものかと苛立ってくるアントニオ。

ブ ルーノ「油断 するからだよ」と 言うブルーノ。
苛立っているアントニオは怒鳴ってブルーノを殴ってしまう。
驚いて父を見るブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

息子を見るアントニオ。
 思 わず手を上げた自分に驚いている。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

泣き出すブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

剥れて逆 方向へ歩き出すブルーノ。
アントニオ…「どうした どこに行く
おいで」と言うアントニオ。

“嫌だ”と言いながら離れて行くブルーノ。
ア ントニオ…「おいで」と呼ぶ アントニオ。
“嫌だ”と言うブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニ

アントニ オ…「おいでって」と声を荒げて呼ぶア ントニオ。
“嫌だ”と言いながら離れて歩くブルーノ。
息子に添って歩きながら、

ア ントニオ…「ブルーノ しょうのないやつだな
どうした」と言う アントニオ。
木 の横から顔を覗かせ、
ブ ルーノ「ぶつ んだもん」と泣き ながら言うブルーノ。
ア ントニオ…「怒らせるからだ 来い」と言う アントニオ。
ブ ルーノ「ひと りで探せばいい」と言う ブルーノ。
両手を前に差し出し、
ア ントニオ…「来るんだ」と 嘆願するように呼ぶアントニオ。
父 の方に来るブルーノ。
ア ントニオ…「鼻ったれが」と言う アントニオ。
父 をチラチラと見ながら歩くブルーノ。
ア ントニオ…「面倒かけて」と言う アントニオ。
ブ ルーノ「ママ に言うから」と言う ブルーノ。
ア ントニオ…「勝手にしろ」と言う アントニオ。
老 人が隠れていそうな川岸を目にしたアントニオは離れて歩いているブルーノに、
ア ントニオ…「橋で待ってろ いいな」と言い 付ける。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

ブルーノ に、
アントニオ…「探してくる」と言い、川岸に向かうアントニオ。

橋 から父を見ているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

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〜息子〜

老人を探 すアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

男…「大変だ
子どもがおぼれてる ぞ」と叫ぶ声が聞こえる。
“まさか”という思いで聞いていたアントニオだったが、次第に不安になっていく。

男…「橋の下だ
早くボートを出せ」と 叫ぶ声。
“ハッ”とし声がする橋の下へ血相を変えて駆け出すアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

アントニ オ…「ブルーノ ブルーノ ブルーノ〜」
「ブルーノ! ブルー ノ!」と 叫びながら騒然としている橋の下へ駆け寄るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

溺れてい たのは息子ではなかった。
 胸 を撫で下ろす父の表情が良く出ている。
 息子を叱った後だっ ただけに、不安が増幅していたのだ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

橋の上に いる息子を見つけるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

橋の上の 男が、
男…「だいじょうぶか」と下の 男たちに声を掛けている。
男…「ああ 助かった」と答え ながら階段を上がって行く男たち。

安堵の表情を浮かべながら、ブルーノの元へ駆け上がるアントニオ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

剥れて離 れようとするブルーノ。
アントニオ…「ブルーノ」と声を 掛け近づき、
上着を脱いでいる息子に、

「風邪ひくぞ
服を着なさい」と言い、上着に手を伸ばすアントニオ。
 息子が無事だったことを喜びつつも、威厳だけは保とうとしている。
父を避けるブルーノ。
上着を着せようと手を伸ばすアントニオ。
自分で上着を着ようとするブルーノ。
手伝おうと手を伸ばすアントニオ。
嫌がるブルーノ。

川沿いを 離れて歩いていた息子が近づいてきた機に、
アントニオ…「休むか?」と声を掛けるアントニオ。

 顧みないでいたことを反省している。
頷 くブルーノ。
石 垣を示し、
ア ントニオ…「お座り ひと休みしたら家に帰ろ う
さぁ」と言う アントニオ。
腰 掛けたブルーノの目の前の道を、プラカードを翳し“モデナチーム がんばれ!”と掛け声を上げる男たちを乗せた宣伝カーが通り過ぎて行く。
息子に、
ア ントニオ…「モデナはいいのか」と 言うアントニオ。
真一文字に口を結んで首を横に振り、宣伝カーを目で追うブルーノ。
息子の様子を見て、“試合を観に行きたかったのだろうに”と思ったアントニオが、
ア ントニオ…「腹は?」と 聞く。
父を見てから、頷くブルーノ。
財布を開くアントニオ。
それを見るブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニ

財布の中 の金を勘定して、
アントニオ…「ピザ食う か」と言うアントニオ。
父に笑顔を見せ何度も頷くブルーノ。
 父がやっとお腹が空いている事に気づいてくれ機嫌が直る。

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〜注文〜

ピザでも 食べさせようと思ってドアを開けるとレストランであった。
一 瞬躊躇するが、半分やけくそになって中に入って行くアントニオ。
後について行くブルーノ。

椅 子に腰掛けたアントニオが、
ア ントニオ…「さぁ お座り」と前の 椅子に息子を座らせる。
嬉 しそうに、
ア ントニオ…「心配するな 派手にやろう」と言う アントニオ。
に こやかにしている父を見るブルーノ。
上 機嫌に、
ア ントニオ…「ボーイさん!」と別の 客の注文を聞いている給士長を呼ぶアントニオ。
給 士長に促されて来た給士がテーブルを拭きながら、
給 士…「ワイン1/2?」と素っ 気無く言う。
 場 違いの客を回されいい気がしていない。
 アントニオの身なりや態度でレストランに初めて入った客だと気づいているの だ。
ア ントニオ…「いや 一本とピザ」と言う アントニオ。
給 士…「ピザはありません」と言う 給士。
 “大 衆食堂じゃあるまいし”という上から 目線だ。
ア ントニオ…「ない?」と聞き 返すアントニオ。
給 士…「レストランでして」と言う 給士。
二 人の会話を聞いているブルーノ。
ア ントニオ…「じゃ食事だ」と言う アントニオ。
給 士…「食事?」と言う 給士。
真後ろの席の少年が食べているのを見るブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

アントニ オに、
給士…「で 何を?」と言う給士。

少年がブルーノにモッツァレラを見せつけるように伸ばして食べている。
 高慢ちきな少年だ。


『自転 車泥棒』

息子の視線の先を見るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

ブルーノに、
アントニオ…「あれにするか?」と言うアントニオ。
嬉しそうに、
ブルーノ「うん」
と 答えるブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラら

給士に、
アントニオ…「モッツァレラだ」と注文するアントニオ。

注 文を受けた給士が厨房の方へ向かう。
“ほら、注文してあげれただろう”と嬉しそうに息子を見て、
ア ントニオ…「ケーキもとってやる
いいだろう?」と言う アントニオ。
 レ ストランでの初めての注文に戸惑ったが、息子の前で体面が保たれて嬉しいのだ。
“僕のパパも注文してくれたよ”という思いで少年の方を見るブルーノ。
 初 めてレストランで食べられること、少年と同じものを注文してもらえたことが嬉しくて堪らないのだ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

ブルーノを睨みながら食べている少年。


『自転 車泥棒』

萎縮するブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

上機嫌に テーブルを軽く叩きながらバンドの生演奏を楽しんでいるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

注文した ワインがくる。
目 の前のグラスにワインを注ぎ、もう一方のグラスに控えめに注いだアントニオが、一気にワインを飲み、
アントニオ…「お前も飲めよ」
と息子 に言う。
ワ インを口にするブルーノ。
息 子に、
ア ントニオ…「母さんが見たら…」と面白 がって言い、笑うアントニオ。
にっ こりしながらワインを飲むブルーノ。
 二 人だけの秘密を楽しんでいる。
にっ こりして父を見ている息子に、
ア ントニオ…「まぁ楽しめ」と言う アントニオ。
バ ンドの生演奏を楽しんでいる父息。
 嬉しそうだ。
注 文したモッツァレラがくる。
嬉 しそうにナイフとフォークを手にするアントニオ。
ブ ルーノもナイフとフォークを手にする。
ア ントニオ…「さぁ食うぞ」と言う アントニオ。
ぎ こちなくナイフとフォークで切ろうとしているブルーノ。
息 子を見ながら、
ア ントニオ…「何とかなるもんさ 死ぬ時以外 は」と言うアントニオ。
 自 分自身に言っている。
モッ ツァレラチーズを伸ばすブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

モッツァレラチーズを伸ばして食べながら少年の方を見るブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

だが少年はブルーノを見ていない。
垂れて落ちそうになったモッツァレラチーズを慌てて食べるブルーノ。
少年が見ているのか気にしながらチーズを伸ばして食べるブルーノ。
少年はブルーノを見ていない。
ワインを注いでいたアントニオが少年のテーブルに別の料理が運ばれてきたのを目に する。
ブルーノもそれを羨ましそうに見ている。
 それは食べられない、注文してもらえないことが分かっているから。
少年がその料理をブルーノに見せつけて食べている。
 勝ち誇っているのだ。
暗い表情になるブルーノ。
 負けたから。
 子供の時から貧富の差を体 験して行く、世の中の厳しい現実を見事に演出している。
父の方に向き直ったブルーノは笑顔を見せる。
 この後、少年を見ることはなかった。
 父への配慮と己のプライドのために。
少年と同じものを注文してやれない悔しさを滲ませて、
アントニオ…「どうせ月百 万も かせいでる連中だろ」と言うアントニオ。
食べていたモッツァレラを皿に戻すブルーノ。
 いじらしい。
それを見て、
アントニオ…「遠慮なんか するな」と言うアントニオ。
再び、モッツァレラを食べ出すブルーノ。
アントニオ…「うまいか」と言う アントニオ。
食べながら頷くブルーノ。
笑顔で息子に答えていたが、
顔が曇り、

アントニオ…「しかしな  やっと職があったってのに
いい金だった」と話し出すアントニオ。
目の前の紙に、
アントニオ…「本給1万2 千…
お前が書け」と言い ながら書き出そうとするが面倒になり息子に渡すアントニオ。
紙と鉛筆を受け取り父を見るブルーノ。
アントニオ…「本給が1万2 千
超勤手当てが2千」と言うアントニオ。
書きながらモッツァレラを頬張るブルーノ。
アントニオ…「家族手当が 日に800で
800×30 合計して」と言うアントニオ。
メモしているブルーノ。
アントニオ…「たいした額 だろうが?
これがあきらめられるか
どうしても自転車を探さないと
そうだろう」と言うアントニオ。
メモを父に渡しながら、
ブルーノ「毎日 市に行こう
あいつらを見つけるんだ」と言い、モッツァレラを食べるブルーノ。
アントニオ…「ムリだ
もうムリだよ
今さら見つけられっこないさ
神様だって」と言うアントニオ。
自分が口にした“神様”に反応するアントニオ。
 妻が占ってもらおうとしていた占い師の事が頭に浮かんだのだ。

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〜占い〜

占い師の 元に急ぐアントニオ。
ついて行くブルーノ。
ど うしても見つからずに今まで妻に金の無駄だと戒めていた占いにまで縋るアントニオ。
 如 何にも疑わしい占い師に縋る姿に、理性では片付かない心理状態が描かれている。


『自 転車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

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〜若者〜

探す場所 も示されずに、“どうしよう”と歩いているとあの自転車泥棒らしき若者とバッタリ出会し、驚いて若者を 見るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

父を見て 若者を見るブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マ ジョラーニ

アントニ オを見る若者。


『自転 車泥棒』

若者を睨 むアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

アントニ オから視線を逸らし歩き出す若者。
若者の跡をつける父息。
つ けられているのを意識しながら歩く若者。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

建物の曲 がり角にくると急に走り出し逃げる若者。
若者を追い掛ける父息。
娼館に逃げ込む若者。

若 者を追って中に入ろうとするアントニオに、
管 理人…「まだ時間前よ こんなに早く何のつも り」と言い、締め出そうとする 娼館の管理人。
ド アを押し開けて中に入るアントニオ。
ア ントニオを掴んで入らせないようにしていた管理人がブルーノに気づき、
管 理人…「あきれた こども連れ?」と言 い、父について行こうとするブルーノをドアの外に出す。
そ の隙に奥に入って行くアントニオ。
ア ントニオを追いながら、
管 理人…「帰ってよ まだ
やってないんだから」と言 い、ドアを閉める管理人。
若 者を探し回るアントニオ。
ド アの外で待っているブルーノに、
管 理人…「規則は規則なのよ」と言っ ている管理人の声が聞こえる。
建 物の外で待つことにするブルーノ。
 子 供は近寄ってはいけない場所なんだと感じている。
若 者を探し回っているアントニオを掴んで、
管 理人…「とんだお客だわ
そこは食堂よ 出てって」と言う 管理人。
腕を掴まれたまま、食堂に押し入り逃げ込んだ若者を見つけるアントニオ。
管 理人と一緒に世話人もアントニオを曳きとめようとする。
腕 を掴んでいる管理人に、
ア ントニオ…「その男だ」と言う アントニオ。
管 理人たちに腕を掴まれているアントニオに向かって、
若 者…「何だお前」と言う 若者。
ア ントニオ…「知らないってのか」と言う アントニオ。
管 理人が声を荒げる。
娼 婦Aが若者を庇い、
娼 婦A…「頭が痛いのに」と言 う。
血 相を変えて若者に、
ア ントニオ…「話がある」と言う アントニオ。
若 者…「話?」と挑発 する若者。
娼 婦Bが若者を曳きとめる。
 馴染みの娼婦なのだろう。
若 者…「黙ってろ」と娼婦 Bを払いのけ、
「おれにか」とアン トニオに強がる若者。
ア ントニオ…「そうだ」と言う アントニオ。
立ち去ろうとする若者。
腕をつかんでいる管理人たちを振り退け、
ア ントニオ…「逃げようってんだな」と 言い、若者に飛び掛り胸座を取るアントニオ。
若 者…「何する 手を放せよ」と言 い、振り解く若者。
逃 げられないように掴み掛かるアントニオ。
ア ントニオを曳きとめる管理人たち。
娼 婦B…「出てってよ
もういい加減にして」と言う 娼婦B。
若 者の胸座を取り、
ア ントニオ…「よし 外に出ろ」と言う アントニオ。
ア ントニオの腕を振り退け、
若 者…「放せってば
出りゃいいんだろ出りゃ」と開き 直る若者。
世 話人…「ローマで一番の店なのよ
変な騒ぎはやめとくれ
出てってよ
けんかなら外でおやり」と言う 世話人。
二 人を外に押し出す管理人と世話人。
騒 ぎを起こされたくない管理人たちに、若者と一緒に追い出されたアントニオが若者に詰め寄る。
ア ントニオの手を振り退け、
若 者…「で 何だよ」と言う 若者。
外 で待っていたブルーノが駆け寄る。
若者を掴み、
ア ントニオ…「返すんだ」と 言うアントニオ。
アントニオの腕を振り退け、
若 者…「何だよ やぶから棒に
返せって何をだ」と 言い、自宅の方に向かう若者。
 こうなったら仲間に助けてもらおうと思っているのだ。
外壁に押し付け、
ア ントニオ…「自転車だよ」と 言うアントニオ。
ア ントニオの腕を振り退け、
若 者…「自転車?何のことか
わからないね」と言 い、立ち去ろうとする若者。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

若者を掴 み、
アントニオ…「逃げるな」と言う アントニオ。
若者…「うるさいな はり 倒すぞ」と言い、アントニオを突き放し去ろうとする若者。
若者を掴み、
アントニオ…「つべこべ言 わず返せ
返さないとぶっ殺すぞ」と言い、怒りを爆発させるアントニオ。
若者…「頭がおかしいん じゃないのか
とんだ言いがかりだ
どけよ 手を放せ」と言い、逃げようとする若者。
アントニオ…「じゃさっさ と返せ」と言うアントニオ。

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〜仲間〜

若者の仲 間たちがアントニオを取り囲む。
若者が追い詰められているのを察知した仲間がマフィアを呼びに行く。
若者の胸座を取り、
アントニオ…「きのう盗ん だ自転車だよ
フィオリータで」と詰め寄るアントニオ。
若者…「きのうは市場だ」と言う若者。
若者の帽子を掴み、
アントニオ…「この帽子を 見たぞ」と言うアントニオ。
取り囲んでいた若者の仲間Aが、
仲間A…「よくある帽子だ ぜ」と言い、
仲間Bが、

仲間B…「人違いだよ」と続 け、
仲間Cが、

仲間C…「出直して来な」とアン トニオに攻め寄る。
若者…「行くぜ」と言 い、立ち去ろうとする若者。
アントニオ…「ダメだ だ れが逃がすもんか」と若者 の胸座を取り、攻め立てるアントニオ。
アパートの二階から若者の母親が、
若者の母親…「何なの ア ルフレード
おいで」と大声で呼ぶ。
母親に向かって、
若者…「放さないんだ」と言い、
「きのうは市場だってば」とアントニオの片手を振り解く若者。
若者を放さないでいるアントニオに、
仲間B…「そうとも おれ たちが証人だ」と仲間Bが言い、取 り囲んでいた若者の仲間たちがアントニオに詰め寄って来る。

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〜マフィア〜

知らせを受けた数人のマフィアが来る。
そのリーダー格の男がアント ニオの前に来て、


『自転 車泥棒』

若者を掴んでいる手を解き、
リーダー格の男…「自転車をとられたって?」と言う。
アントニオ…「そうだ」
と言う アントニオ。
アントニオを取り囲んでいるマフィアAが、
マ フィアA…「確かにこいつか」と 言う。
ア ントニオ…「間違いない」と答え るアントニオ。
アントニオの横から役回りを待っていたマフィアBが、
マ フィアB…「どこでだ」と 威圧する。
 手 馴れていることをマフィアBの視線が物語っている。
負 けないように、
ア ントニオ…「フィオリータ」と答え るアントニオ。
マ フィアA…「じゃ警察を呼んで来いよ」と 言うギャングA。
父 が詰め寄られているのを怖い思いで見ていたブルーノが、“警察”というのに反応して取り囲まれた中から抜け出て行く。
マ フィアA…「ここに住んでるんだ 逃げやせん さ」と 続けるマフィアA。
リー ダー格の男の後ろから、
若 者…「ああ おれは構わないぜ
早く呼んで来な」と強が り立ち去ろうとする若者。
 アントニオがマフィアに詰め寄られている隙に逃げ出そうとしている。
 マフィアがそのタイミングを作り出していてやったのだ。
若者に逃げられると察知したアントニオは、
ア ントニオ…「その手にのるか ここにいろ」と 言い、若者を掴むと胸座を取る。
逃げられないと悟った若者は、
若 者…「やめろ さわるな
さわるなってば」と 言い、頭を両手で押えるようにして仰向けに倒れ掛かる。
そ れを見ていた若者の母親がアパートの二階から、
若 者の母親…「アルフレード アルフレード」と息子 の名を呼ぶ。
取 り囲んでいた仲間たちが若者を支えてやる。
仲 間Bが仲間たちに、
仲 間B…「手を貸せ そこに寝かすんだ」と言 い、若者を掴んでいるアントニオの手を払い除けてその場に寝せる。
癲 癇の発作を起こす若者。
い や、起こしたように見せかける。
マフィアのリーダー格の男がアントニオの胸を突き、
リー ダー格の男…「もううせろ」と 恫喝する。
ア ントニオに、
マ フィアA…「見ろよ これを」と発作 を起こしているようにしている若者を見るように言うマフィアA。
アントニオの胸を突き、
リー ダー格の男…「証拠もなしで何だ」と アントニオに詰め寄るリーダー格の男。
マ フィアB…「何様のつもりだ」と アントニオを威圧するマフィアB。
ア ントニオ…「…」
物騒な空気になっていることを感じているアントニオ。
ア パートの二階から若者の母親が、
若 者の母親…「頭はうってない? そっと寝かせ て」と叫ぶ。
若 者の母親の叫ぶ姿から若者に視線を移すアントニオ。
癲 癇の発作を起こしたようにしている若者。


『自転 車泥棒』

アントニオの胸を小突き、
リーダー格の男…「うせろ 人を泥棒呼ばわりして」と恫喝するリーダー格の男。
マフィアA…「二度とツラを見せるな」と言うマフィアA。
若者を見るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

若者の方 に行くギャングA。
ア パートの二階から枕を持ってきた若者の母親が、
若 者の母親…「その悪党を追っ払って」
とアン トニオを悪党呼ばわりしながら、
「かわいそうに 坊や」と言 い、若者に枕をしてやる。
仲 間D…「とっととうせろ」と アントニオに詰め寄る若者の仲間D。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

マフィアBがアントニオを突き、
マフィアB…「ふざけたや つだ
今度は財布をスられたってどなりこむんだろう」と恫喝して追い詰める
マフィアや若者の仲間たちに危害を加えられそうになったアントニオが、
傍にあった 棒を手に取り、

アントニオ…「グルだ」と 言い、構える。
マフィアや若者の仲間たちが詰め寄り騒然となる。
アントニオ…「みんなグル だ!」と声を荒げるアントニオ。
アパートの二階から水を掛け、
住人…「頭を冷やさんと な」と笑い 飛ばす住人と、ブルーノが連れてきた巡査によって、その場が収まる。

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〜証拠〜

アントニ オから話しを聞いた巡査が若者の家を一緒に調べてくれるが見つからない。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

アントニ オに窓の下を見せ、
巡査…「みんな仲間なんだ
時間のムダだよ
顔を見たのか」と言う巡査。

ア ントニオ…「逃げるとこを」と言う アントニオ。
巡 査…「うしろ姿か」と呆れ て背を向ける巡査。
慌 てて、
ア ントニオ…「いえ 正面からです」と言う アントニオ。
巡 査…「もういい」と言 い、
向き直り、

「人は?」と聞く 巡査。
ア ントニオ…「いました」と言う アントニオ。
巡 査…「でも証人なしか」と言う 巡査。
ア ントニオ…「名を聞いてません」と言う アントニオ。
巡 査…「参ったな」と言 い、出口に向かう巡査。
一 緒に部屋を出る父息。
アントニオに、
巡 査…「証拠も証人もなしでは 手の打ちようが ないよ
現行犯で押えるか 盗品が出なくてはな」と 言う巡査。
ア ントニオ…「あいつ 見てろ」と 怒りをあらわにするアントニオ。
怒 りが治まらないアントニオに、
巡 査…「バカはするなよ」と諭す 巡査。
ア ントニオ…「あれがないと終わりなんだ」と 悔しさを滲ませるアントニオ。
 ようやく泥棒に辿り着けたというのに確かな証拠がなく、仲間の返り討ちに 遭ってしまった。
 巡査からは“証拠も証人もなしでは 手の打ちようがない”と言われ、自転車を取り戻す手立てがなくなったことを実感させら れる。
 憤り、悔しさ、苛立ちが増すばかりだ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

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〜途方もなく〜

苛立ちを 抑えることができないで歩いているアントニオ。
離 されないようについて行くブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニ

“明日からどうしよう”という思いで頭が一杯になっているアントニオ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニ

一緒にい るブルーノが道路を横断しようとして危ない目に遭っていることにも気がつかな い。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

アントニ オから離されないように走り寄るブルーノ。
 いたいげだ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニ

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〜競技場〜

アントニ オは肩を落とし歩き回っているうちにローマ国立競技場の近くに来ていた。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

競技場の 前で足が止まるアントニオ。
ア ントニオ…「…」


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

競技場か ら歓声が聞こえる。
 モ デナ対ローマのサッカーの試合が行われているのだろう。


『自転 車泥棒』

ブルーノ に目をやると歩道に座り込んで体を休めている。
 疲 れていることがよく伝わる仕草だ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

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〜自転車〜

競技場の 前の広場に何千台もの自転車が預けられているのに目が行くアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

ずらりと 並んでいる自転車。
そ の前を警備員が歩き回っている。


『自転 車泥棒』

“あんなに沢山あるのに”と思いながら、背を向け漠然と歩き出すアントニオ。
数歩歩いていたアントニオに 一台の自転車が目に留まり立ち止まる。
身を乗り出して本通りから外 れた斜め向かいの建物の前の自転車を見る。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

人気の無い建物の前に自転車が止めてある。


『自転 車泥棒』

“誰もいない所にある”と一瞬浮かんだ考えを打ち消そうと背を向け歩き出したアントニオは再び広 場の自転車を見る。
アントニオ…“沢山あるのに…”


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

ずらりと 並んでいる自転車。


『自転 車泥棒』

広場の自転車を見ていたアントニオに“あそこに自転車が…”と先ほど見た一台の自転車が頭の中で駆け回ってくる。
 動悸がしてくる。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

向きを変 え一台の自転車の方へ歩き出す。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

アントニ オ…“自転車は まだ止めてある…”


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

自転車から視線を逸らす。
また自転車を見る。
向き直り頭を垂れ、よぎる考 えに首を振り歩く。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラー

ブルーノ の傍に来るアントニオ。
父を見ているブルーノ。
ブルーノの横に座るアントニオ。
父を見るブルーノ。
ブルーノを見るアントニオ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

歓声がす る競技場の方を見る父息。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニ

熱烈な ファンの歓声が聞こえる競技場。


『自転 車泥棒』

両手で頭を押さえながら考え込むアントニオ。
父を見ているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

考え込むアントニオ。
父を見ているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

アントニオが覆っていた手を外し顔を上げると、目の前を自転車に乗った男たちが走 り抜けて行く。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

競技場か ら拍手が聞こえてくるのを気にしながら父を見るブルーノ。
試合が終わったことに気がつ いたアントニオは、ブルーノをチラっと見ると、慌てて立ち上がって本通りを見る。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

試合を見 終わった大勢の観客が本通りを自転車に乗るなどして帰っている。


『自転 車泥棒』

気が逸るアントニオ。
 自転車のことばかり考え ているアントニオにとって、自転車が遠のいて行くような思いに駆られるのだ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

人々の流 れを見ていたアントニオは、向きを変え建物の前に止めてある自転車を見に行く。
アントニオ…“自転車は まだある”


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

広場を見 ようと向きを変えるアントニオ。
父を見ているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

広場を見 るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

試合を見 終えた観客が次々に自転車に乗って帰ろうとしている。


『自転 車泥棒』

広場を見ているアントニオ。
 沢山あった自転車が なくなっていくのを見ていたアントニオは精神的に追い込められていく。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

向きを変え“どうしよう”と頭を抱えながら歩き出すアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

顔をあげ建物の前に止めてある自転車を見る。
 追 い込められると一台の自転車の方に足が向く怖さが描かれている。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

“まだある”“どうしよう”と頭を抱えて自転車を見ている。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

向きを変 え広場を見るアントニオ。
 広 場の自転車が殆ど移動しているのを見て“あの自転車だ!”との思いで一杯になる。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

ブルーノ を見るアントニオ。
疲 れた表情で父を見ているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

ブルーノ の傍に行き、腕を引き上げて立たせるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

ブルーノ に、
アントニオ…「先に帰ってなさい」と電停 の方を示し、小銭を渡し自転車を見に行こうとするアントニオ。

そ の父について行こうとするブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

ブルーノ がついて来ているのに気づき、
アントニオ…「行くんだ」と電停を示して叱る。

電 停に向かうブルーノ。
そ れを見ているアントニオ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら

気が気で ない自転車の方を見ると近寄って行くアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

電停に向 かうブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラら

だが、ブ ルーノは小銭を出そうとして乗りそびれてしまう。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラら

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〜盗み〜

自転車を 盗もうと近寄って行くアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

様子を窺 がうアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

“誰もいない 今だ!”と自転車を盗むアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

自転車に 足をかけて走り出そうとするアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

自転車を 盗まれたのに気がついた持ち主が、
自転車の持ち主…「泥棒だ 捕まえてくれ」と競技 場から出てきた群集に助けを求め、一緒に自転車で逃げるアントニオを追う。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

自転車の 持ち主…「泥棒!」
群集…「泥棒!」と 一緒に叫びながらアントニオを追う持ち主と群集。
逃げるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

群集…「泥棒!泥棒!」と叫び ながらアントニオを追う群集。
追う持ち主。
逃げるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

本通りに いた群集も加わり、
群集…「泥棒!泥棒!」と叫び ながらアントニオを追う。

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〜衝撃〜

群集に追われている父を目にするブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

衝撃に凍りつくブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

驚きのあまり目を見開くブルーノ。
 ブ ルーノ役のエンツィオ・スタイオーラの表情が実にいい。
 ブルーノのショック の大きさが伝わり、胸を締め付けられる。
 苦しく、切ない。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

群集に追われるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

群集に取り囲まれ逃げ場を失うアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

群集に追 いつかれるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

群集に自 転車を薙ぎ倒され、取り押さえられるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

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〜罵声〜

アントニ オに罵声を浴びせ、小突く群集。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

一部始終を見ているブルーノ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ

群集に、
群集…「この野郎 何のつ もりだ
出来心じゃすまさんぞ」と 罵られ、小突き廻されるアントニオ。

〜屈辱〜

駆け寄り、
ブルーノ「パ パ〜」
父の上着にしがみ付いて泣き じゃくり必死で嘆願するブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

屈辱と絶望にふるえるアントニオ。
ブルーノ「パ パ〜」と 泣き叫び、父の上着に必死にしがみ付いているブルーノ。
アントニオを小突きブルーノ を掃い退けようとする群集A。


『自転車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エン ツォ・スタイオーラら

必死に父の上着にしがみ付き、
ブルーノ「パパ〜」と、泣き叫ぶブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

父の上着にしがみ付き、
ブルーノ「パ パ〜」と、泣き叫ぶブルーノ。
罵られ小突かれるアントニ オ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

ブルーノ「パパ〜〜」と、 泣き叫ぶブルーノ。
小突かれながら、ブルーノを 見るアントニオ。
 帰ったと思っていた 息子に情けない姿を見られ立場を失う。
群集A…「警察につき出せ」と 言い、
父の上着にしがみ付いて離れないブルーノに、

「こどもはどいてろ」と、 威喝する群集A。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

ブルーノを掃い退ける群集A。
警 察に突き出そうとする群集に引きずられてゆくアントニオ。
自 転車を押してついて行く持ち主。

掃い退けられたブルーノが落ちている父の帽子を目にする。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ラン ベルト・マジョラーニら

アントニ オの腕を掴んで警察署に向かう群集。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

泣きながら踏みつけられた父の帽子を拾い、帽子の汚れを振り払いながら群集に連れ て行かれる父の後を追うブルーノ。
 踏みつけられた父の 帽子が現状を表している。
 大切な父の帽子を泣 きながら汚れを振り払っているブルーノの姿が胸を打つ。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラら

群集Aに 腕を掴まれているアントニオを見る自転車の持ち主。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

アントニ オの腕を掴んでいる群集Aが自転車の持ち主に、
群集A…「警察は?」と聞く。

自 転車の持ち主…「この先だ」と答 え、
ついて来ているブルーノをチラリと見て、

「証人はこんなにいらんな
2人来てくれ」と言う 自転車の持ち主。
父の傍に来て“父はどうなるのだろう”という思いで見ているブルーノが、嘆願するように自転車の持ち主を見 る。
いじらしいブルーノの視線を感じる自転車の持ち主。


『自転 車泥棒』

ブルーノを見るアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

ブルーノを見ているアントニオを見る自転車の持ち主。
悲しそうに父を見ているブ ルーノ。
 いじらしい。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

アントニオ親子を見ていた自転車の持ち主が堪らなくなり、


『自転 車泥棒』

自転車の 持ち主…「放してやろう」と 言う。
 い じらしいブルーノに免じてアントニオを見逃してやることにしたのだ。
警 察に突き出そうと息巻いていた群集Aは自転車の持ち主の言葉に驚いて、

群 集A…「なぜだ」と言 う。
自 転車の持ち主…「いいんだ 忘れよう」と言 い、自転車を押しその場から立ち去る持ち主。


『自転 車泥棒』

正義感を 振りかざしていた群集Aは、
群集A…「大した親さ
こどもの前だっての に」と嫌味を言う。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

立ち去る 自転車の持ち主を見てホッとしたブルーノが父を見ながら涙を拭う。
 緊張が解れたのだ。
アントニオに当て付けるように、
群集B…「おれなら容赦は  しないがな」と言う群集B。
アントニオを見て、
群集A…「見逃すって言っ てるんだ
早くうせろ」と言い、手荒く背中を突く群集A。
突かれた反動で前のめりするアントニオ。
よろけた父のところへ駆け寄り、俯いて歩く父を見上げながら寄り添って歩くブルーノ。
アントニオの背中に唾を浴びせるように、
群集C「せがれ に感謝しろよ」と 言う群集C。

取り囲ん でいた群集はアントニオに非難を浴びせ散らばっていく。

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〜父〜

父に帽子 を渡すブルーノ。
帽 子を受け取り、汚れを掃い被るアントニオ。
競 技場から出てきた群集の中に混じって家路に向かって歩くアントニオ。

汗 を拭きながら父を見上げ一緒に歩くブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラら

悄然とし ているアントニオはトラックがクラクションを鳴らしながら進んで来ることも、 トラックに肩がぶつかっていることも感じないでただ歩いている。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

悄然とし ているアントニオ。
 目の前が真っ暗状態 なのだ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

父の直ぐ横を歩くブルーノ。
 暗い顔をして黙って歩いている父にどうしていいのか分からないのだ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

今まで見たことがない表情の父を不安げに見上げるブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

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〜 父息〜

ブルーノを見て泣き出しそうになるアントニオ。
 息子にまで情けない姿を見せてしまった、恥ずかしさと惨めさと絶望感で死んで しまいたい心境なのだ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

泣き出すアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニら

泣いている父を見るブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

後悔と恥ずかしさで涙を流している父を見たブルーノが、そっと父の手に触れる。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

反射的に握り返すアントニオ。
 息子の存在を強く感 じたのだ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

その父を涙を浮かべて見上げるブルーノ。
 父が自分の存在を強 く感じていてくれたからだ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

息子の手を握り返すアントニオ。
泣きながら歩くブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

泣きながら歩くアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ

父を見上げるブルーノ。
息子の手を握り締めるアント ニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

父が戻って来たことを感じるブルーノ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

息子の手を傍に寄せるアントニオ。


『自転 車泥棒』ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタイオーラ

寄り添うように群集の中に紛れて行く父息。
これまでより“一番近い距 離”で。


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら


『自転 車泥棒』エンツォ・スタイオーラ、ランベルト・マジョラーニら


『自転 車泥棒』

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 6才の息子ブルーノが父アントニオを見上げ父の手に触れる。
 その手を握り返すアントニオ。
 父息が寄り添って歩いてゆくラストシーンに涙が止めどなく流れた。
 この先、この父息はどうなるのだろうという、切なく、重苦しいストーリーの中で、手 の温もりが光明を放ってくれたからだ。
 “今、 父は自分を一番必要としてくれている”そ れを感じた息子は父の力になろうとするし、父は息子に支えられるよ うになっていくだろう。
 父 息の距離で、そのことをきめ細やかに描いたデ・シーカの演出に拍手を送りたい。
 
 敗戦後の窮乏で混沌としている、その中で誰もが生きるのに必死であった。
 ぶつけようのない怒りや悲しみ、将来への不安に満ちていた。
 失望、焦躁、苛立ち、広がる絶望感。
  荒廃した戦後の社会に目を向け、力強くも緻密なデ・シーカの視覚に重点を置く演出は、問題点を提示しながらも肌 の温もりを感じさせてくれた。

  殆ど全 編をロケで撮り、ローマの庶民の日常を描写したこの作品は、やるせなく悲しい気分が尾を引く。
  それは自転車を盗んだ犯人もまた生活困窮者で、苦しい者同士で生存競争を繰り広げているからだ。

 どうにも変えようのない現実にあらがう群集の中の一人、それは観客の一人一 人の ことでもある。
 生々しく描かれる世界は、現実の 世界である。
 だから、われわれに響いてくるの だ。
 この作品が愛され続けるのは、そ れぞれが抱え、また、ぶち当たる問題点に触れて いるからだ。

ヴィッ トリオ・デ・シーカは撮影のすべてに実景を用いて、貧しい人々の生活をリアルに活写した。
アントニオを演じたランベ ルト・ マジョラーニは演技経験の全く無い電気工であり、ブルーノのエンツィオ・スタイオーラも監督が街で探し出した素 人の子役であったという。
極めて日常的な題材を選 び、素人を起用する。
制作費を節約するためにロ ケー ションを多用したことでリアルになる。
ランベルト・マジョラーニ の貧相 な表情に、エンツィオ・スタイオーラの愛くるしい仕草を絡ませる、さりげなく演出しながら、やりきれない現実を 突き付けるデ・シーカ。
お見事と言うしかない。
『自転車泥棒』が製作された 頃、イタリア映画はドキュメンタリータッチのネオレアリズモが主流で、敗戦後のつめ痕を描いた数多くの名作が作 られた。
そのなかでもこれは金字塔 と言うべき作品である。
※『靴みがき』に関心を 持ったデ ビット・O・セルズニックプロデューサーから『自転車泥棒』を作る際に声を掛けられたデ・シーカは、毅然とその 話を蹴ったという。
資金提供の条件がケー リー・グラ ントを主演にというものであったからだ。
デ・シーカが撮りたいの は、「現実のイタリア」であって、ケーリー・グラントはありえない話であったのだ。

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