過去を持つ愛情
  
   フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュランら
ストーリーの 結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。
  無罪リスボン〜〜少年〜〜ホテル〜〜ファ ド〜〜ルイス警 部椅子遊 覧船〜〜仕掛け1〜〜合鍵〜〜深酒〜〜疑惑〜〜
〜〜仕掛 け2〜〜仕掛け3〜〜ジュー ス〜〜飢え〜〜写真〜〜南米行き〜〜告白〜〜止め〜〜〜〜デッキ〜〜出港〜〜裁きの場
 
記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わり に] web拍手 by FC2
(1954)(仏)(白黒)- Les Amants du Tage-
監督…アンリ・ヴェルヌイユ
原作…ジョゼフ・ケッセル
脚本…マルク・ジルベール・ソーバ ジョン
脚色…ジャック・コンパネーズ
撮影…ロジェ・ユベール
音楽指揮…ミシェル・ルグラン
ファド歌手…アマリア・ロドリケス
主題歌…
♪暗いはしけ
出演…フ ランソワーズ・アルヌール(カトリーヌ/キャサリーン)
………ダニエル・ジュラン(ピエール)
………トレヴァー・ハワード(ルイス警部)
………マルセル・ダリオ(友人)
………ジャック・ムウリエール(少年)
………アマリア・ロドリケス(歌手)

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 ヨー ロッパから南米への出発港だといわれるポルトガルのリスボンを 舞台に展開する哀切なメロドラマ。

 アマリア・ロドリケスが歌うポルト ガルの民謡ファド♪暗いはしけを訳す ダニエル・ジュランを見詰めるフランソワーズ・アルヌールが実に いい。
 アルヌールの事をほのぐらい背徳的なかげりとけだるい官能性が宿っている】といった人がいたが、その通りだと思う。
 彼女の 魅力を引き出す演出をしたアンリ・ヴェル ヌイユ監督 の手腕が見事だ。

 暗い過去を引きずってリスボンに流れて来た男女が出会い、そして…
 ミシェ ル・ルグランの音楽と、アマリア・ロド リゲスの歌うファドがいつまでも心に切なく響く、「信じて」の言葉と共に。

〜無罪〜

ピ エール(ダ ニエル・ジュラン)がパリへ帰還する。


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュランら
ピエールが 家のドアに鍵を差し込む


『過 去を持つ愛情』

ベッドで妻が他の男性と戯れているの が、鏡に映っているのを目にするピ エール


『過 去を持つ愛情』
持っていた銃を妻に向けるピエール


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

放たれ た銃声の音。
“バ バババ〜ン”

射殺され鏡の前で倒れる妻と、割れる鏡の音。

“ガシャ〜ン”

 鏡が割れることがラストシ
ンの伏線のように思える

ピエール(ダ ニエル・ジュラン)パリへ帰還し た日に妻の不貞の現場を見 た衝撃で銃殺し た。
弁 護士…「彼は妻を殺した
だが 彼は何よりも
まず 兵士だ
敵を発見した時のように 反応し ただけだ
撃ったのは彼ではない
降下部隊の勇士が 撃ったのだ
彼は 祖国を救った英雄だ
彼こそ我々の誇りであり 敬愛の的なのだ
祖国のために散った 英霊たちに成りかわり ―
陪審員諸氏は よく情状を酌量して頂きたい
英雄を救うために」
という 弁護で無罪になった。


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュランら

だが、一本気なピエールは 正当に 裁かれずに、捻じ曲げられたよう な判決に苛立った。
 妻 を殺した罪を裁かれなかったことを、背負っていかなければならないからだ。


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

〜リスボン〜

ピエールは
パリを離れ放浪の末、リスボン へ居着きタクシーの運転手をしていた。
いつか南米へ行こうと思いながら。

一方、カトリーヌ(フ ランソワーズ・ アルヌール)パリで 香水売りをしていたところをイギリスの富豪に見初めら れ結婚した。
そ の後、夫は交通事故で死に膨大な遺産を手 にした。
だが、“疑いの目
を向け られ逃れるようにリスボンへ来た。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アル ヌール、ダニエル・ジュランら

そのカトリーヌが滞在 するホテルへ行くのに乗ったタクシーの運転手がピエー ルだった。
 
暗 い過去を引きずってリスボンに流れて来た男女の出会いだ。

バックミラー越しにしきり にカトリーヌを見るピエー ル
 異郷で 自分と同じように旅を続けている魅力的な同郷の女性に遭遇したからだ。
ピエールの熱い視線を感じる
カトリーヌ。


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、
フラン ソワーズ・アルヌール

途中で地元の人と口論してい たピエールの発音で同郷だと知り、親近感を持ったカトリーヌがにこやかに降りて代金を支払う


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、
フラン ソワーズ・アルヌール

多 過ぎるというピエールに、
カトリーヌ
「パリ訛りのお礼よ」とチップをはずむカ トリーヌ


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、
フラン ソワーズ・アルヌール

〜少年〜

ピ エールが住み込んでいる家の少年(ジャック・ムウリ エール)が、彼がいるのを見つけて喜んで近づく。
 親しさが伝わるいい演出だ。
 


『過 去を持つ愛情』ジャック・ムウリエール

少年とにこやかに話すピ エール。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、ジャッ ク・ムウリエール

奢って貰うのがアイスだと、どうでもい いという風にすべてトッピングした少年のアイスだ。
 
家計(母 子家 庭)を助 けるため仕事をしているので大人びているのだ。


『過 去を持つ愛情』

〜 ホテル〜

ホテルに宿泊している英国人た ちが、話題の人、カトリー ヌを好奇の目で見 ている。
 好奇の目を向ける人々をドアの鏡に映し出す手法で、心理描写に効果をあげてい る。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌールら

事故を話題にして面白がり、カトリーヌに疑惑の目を向け る英国人たち。
居 心地が悪くなるカトリーヌ。



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌールら

席を立って部屋へ戻ろうとするカ トリーヌの後を追う少年(ジャック・ムウリエール)
 
ピ エールが沢山チッ プを貰ったと話していた相手だからだ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ジャッ ク・ムウリエール

カトリーヌにガイドをすると申し出る少 年。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ジャッ ク・ムウリエール

ガイドを受けたカトリーヌを案内する少 年が、ちょっと、戻って手配を頼んでいたホテルのボーイに謝礼のコインを投げて渡す。
 大人びた少年の演出が面白い。


『過 去を持つ愛情』ジャック・ムウリエール

〜 ファド〜

少年に案内されて酒場へ来たカ トリーヌが、少年に手招きされた席に 向かう。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌールら

ポルトガ ルの民謡ファドをアマリア・ロドリケスが歌う。


『過 去を持つ愛情』アマリア・ロドリケスら

少年に
同席を頼まれたピ エールの隣に座ってファドを聴 いているカ トリーヌに、
少 年…ど う?」と 感想を聞く少年。
カトリーヌ「きれ いね  ただ言葉の意味が…」と言うカトリーヌ
少年…「死ん だ漁 師の妻の歌さ
夕方 浜 に出て出て 妻は
死んだ夫に語りかけるんだ
愛の言葉をね」

一生懸命説明する少年に微笑むカトリーヌ。
ピエールが訳しだす。
ピエール
「“あ なた の横で 目覚めた時―”」
ピエールを見る
カトリーヌ。
ピエール「“今 日もきれいだよ とあなたが”」


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、アマリア・ロドリケス、ダニエル・ジュランら

「“戸を開けると 日の出だった
あなたの小舟が 光に揺れた
舟は帆をあげ 沖の方へ
あなたは雄々しく 手を振った
”」
一点を見つめて訳し
ているピエールを見つめて聞いているカトリーヌ。
 ファドを訳すダニエル・ジュランを見詰めるフランソワーズ
・アルヌールが 実にいい
ピエール
「“あなたは もう帰らないと 皆が言う
そんなことってないわ”」

カトリーヌ側に視線が移し
訳すピエー ル。
視線 を移して聞くカ トリーヌ
ピ エール「“そ う あなたは今も
私のそばにいる”」


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ちらりとカトリーヌを見て 続けるピエール。
ピ エール「“砂を巻き 上げる風の中
音をたてるヤカン… 誰もいない椅子
かまどの陰や 寝床のぬくもりの中
私の肩のくぼみ
そこに あなたはいる
”」


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

「“い つまでも
いつまでも
”」
切々と訳すピエール。
 
カ トリーヌへの愛の言葉を。
瞳を潤ませるカトリーヌ。
 
ピエールの愛の言葉をキャッチしているから。

歌い終わったアマリア・ロドリ ケスに 客たちが拍手をする。
カトリーヌと
ピエールも
ピ エールの方を向き、
カトリーヌ「ど うも」と礼を言うカ トリーヌ
照れ隠しに
ピ エール「昼 間のチップのお礼さ」と 言い、
 照れ隠しだ。

皮肉ぽっく、

ピ エール「金 持ちは違うね」と言いながら貰ったチップを取り出し、
ピ エール「めっ たにない上客さ
貴族なんてね」
カトリーヌを見て言うピエール
ピエールを見て、
カトリーヌ「私 の母は お針子だったわ」と 言うカトリーヌ。
ピ エール「そ う」と言うピエー ル
 悪いことを言ったと思っている。
ピ エール「リ ス ボンはどう?」
カトリーヌ
「ま だ 何とも」
ピエール
「ど の 国も見かけは大体 同じだが―
においが違う ここは
海藻とイワシのにおいだ」
笑うピエー ル、微笑むカ トリーヌ

忘れてしまいたい過去を持つ二人は、 急速に惹かれ合う。

〜ルイス警部〜

ロンドンからルイス 警部(トレヴァー・ハワード)が カトリーヌが宿泊しているというホテルに現れる。
 
フロントのテーブルに歪んで映し出し、
い かにも怖い存在になるといった描写だ。


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

カトリーヌがチェックアウトしたということを聞き、探し出す一手を考えているルイス警部


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワードら

カ トリーヌは夫殺しの容疑が掛かったが証拠がなく逮捕されずにいた。
だが、
計画的な夫殺しだと確信しているルイス警部は執拗に 追っているのだ
 決め手は彼女の自供のみであるか ら、
追い込むチャンスをじっと待っている。

〜椅子〜

ピ エールの向かいのアパートに住むことにしたカトリーヌ
修繕したカトリーヌの椅子を
ピエールが届 けに来る。
シャワーを浴びていたカトリーヌがバ スローブ姿で現れ、
カトリーヌ「ぐら つか ない?」と言うカ トリーヌ。
ピエール「白ク マが座ったって 壊れるもんか」と 言うピエール
嬉しそうにピエールを見ながら椅 子の肘掛に足の乗せて腰掛ける。
カトリーヌに、

ピエール「ど う?」聞くピエール
濡れた髪を解しながら、
カトリーヌ「完ぺ き」と嬉しそうに言うカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

カトリーヌに見とれていたピエールが、
ピエール
「じゃ  そろそろ行かないと」と 言うピエール
カトリーヌ「待っ て 修繕費は?」と言うカトリーヌ
ピ エール「いい んだ  商売じゃないんだから」と 言うピエール
カトリーヌ「じゃ  ご好意に甘えるわね
どうも」
と微笑むカトリーヌ
ピ エール「い いって」と言うピエール
微笑むカトリーヌ

ピ エール「じゃ  また」と言うピエール
カトリーヌ「では またね」と言うカト リーヌ
カトリーヌを見ている
ピエール。
仕方なく帰ろうと出口の方へ向かう。
 一目で他の女と違うものを感じているピエールは、カトリーヌと一緒にいたいのだ。
ドアの前まで行きカトリーヌの方に向き直る。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

 ここからのカットが素晴らしい。ピエールの視線がカトリーヌの姿態へ。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

カトリーヌのところに戻り、

ピ エール「おれ に用の時は」と 言うピエール
カトリーヌ「窓か ら呼ぶわ」
と 言うカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

カトリーヌを見ている
ピエール。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

ピエール「じゃ」と 言い、カ トリーヌを見ながら出口に向かうピエール
ピエールをにこやかに見つめているカ トリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

  ピエールの欲望の視線がカ トリーヌの姿態へ。
 ピエールの欲望をキャッチしている
カトリーヌの誘惑の瞳



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

 【ほのぐらい背徳的なかげりとけだるい官能性が宿っている】
フラン ソワーズ
・アルヌールにノックアウトされた殿方が 大勢いたことだろう。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

ド アのノブを触ったものの、またカトリーヌのところに戻り
ピ エール「ナザ レを?」と言うピエール
カトリーヌ「それ 誰」
と 悪戯っぽく言うカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

ピ エール「海岸 の名さ」と笑い、「イワ シの本場なんだ」と 言うピエール
椅子から立ち上がって話を聞く
カ トリーヌ

ピ エール「網を あげると 一帯が銀の敷物に
そこへ遊びに行こうと 仲間と話してるんだ
一緒にどう?」
と 誘うピエール
 “二 人で
と 言いたいのだが、言い出せないでいる。
カトリーヌ「お誘 いは  うれしいけど―
私の知らない人たちだし」
と言 うカトリーヌ
ピ エール「あ あ」と頷き、
「それもそうだな じゃ」
と 言うピエール
カトリーヌ「あり がとう」と言うカトリーヌ
ピエールは残念そうに出口 に向かうおうとしたが、思い直してカ トリーヌの方を見る。
決 心して、
ピ エール「2人 で行こう」と誘うピエール
微笑むカトリーヌ

 
やっ と言ったのね



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フラン ソワーズ・アルヌール

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遊覧船

遊 覧船でデージョ河の河口を眺めながら、
ピエール「河は  いいね」と言うピエール
カトリーヌ
「河っ て目も耳も持たず 堂々としてるわね
きれい… デージョ河 好き?」
と言 うカトリーヌ
 幸せそうだ。
ピ エール「河な ら どこでも好きさ
河岸を散歩すると―
どんなに嫌なことも 忘れられる」
カトリーヌ「広く 旅を?]
ピエール「放浪 をね」と 言うピエール
船尾へ移動するカトリーヌの後を着いて行くピエール。
ピエール「セー ヌ河の遊覧船を 思い出すよ
乗った事は?」
カトリーヌ「いい え 一度ぐらいは
と思ってたけど
それより子供の頃から 川船に乗ってみたくて」

ピエール「親に  ねだらなかったの?」
カトリーヌ
「父は 私が5歳の時 死んだの
貧乏な人だったわ
母がお針子だってことは 一度」

ピエール「あの 時は すまなかった」
カトリーヌ「いい のよ… あなたのご両親は?」
ピエール「父は  サンルイ島で家具師を」
カトリーヌ
「私  サンミシェルよ」
ピエール「近所 だ
そばに寺院が」
カトリーヌ「うち もよ」
ピエール
「世間は狭 いね」


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フラン ソワーズ・アルヌール


『過去を持つ愛情』フラン ソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュランら


『過去を持つ愛情』フラン ソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュランら

手をつなぎ楽しそうに遊覧船を降りた二人の前 に、カトリーヌを追っているルイス警部が現れる。

〜 仕掛け1〜



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

表情が一変して引きつっている
カトリーヌに、
ルイス警部「レ ディ・ ディンバー 奇遇ですな
ご機嫌 うるわしゅう」
と ワザとらしい笑顔をつくり帽子を取り挨拶をするルイス警部。
 ルイス警部が帽子を取り、挨拶をするポーズは再三出てくる。
 追い込むにつれ、仕草が大袈裟になって行く。
 自信の表れである。
 注目だ。



『過 去を持つ愛情』ト レヴァー・ハワード

“誰だろう
ルイス警部を見ているピエール。
強張った表情で、

カトリーヌ「こん にちわ」と応対するカ トリーヌ
 やっ と掴んだ愛を壊されることを恐れている
ルイス警部「古き ポルトガルをご散策中ですかな」と 言うルイス警部。
ピ エールをちらりと見るカトリーヌ。
 どのように思って見ているのか気に掛かり、不安なのだ

構いなく続けるルイス警部。
 後ろにいるピエールに聞かせるために。
 
カトリーヌとの仲を知りピ エールに近づこうとしているのだ。
ルイス警部「ご葬 儀の 時より
お顔色も つややかで」
と 言うルイス警部。
カトリーヌ「あの 時は 気分が」と 即座に答えるカトリーヌ
 これ以 上、あの時のことを話されたくないので。
ルイス警部「英国 では さんざんでしたな
霧やら 嫌な思い出やら
お引き止めして どうも失礼」
言 うルイス警部。
 
カ トリーヌのことを知りたがっているピ エールに餌を少しだけチラつかせる手法を取る腕利きの警部をトレヴァー・ハワードが見 事に演じている。
カトリーヌ「ちっ とも」と 言い、早く立ち去ろうとするカトリーヌ。
引き止めるように、

ルイス警部
「私を 恨んでおられないので ホッとしました」と 言い、ピエールの方を見るルイス警部。


『過去を持つ愛情』ト レヴァー・ハワードフラン ソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュランら

仕方 なく、
カトリーヌ「ピ エー ル・ルービエさん ルイスさん」と 言い、二人を紹 介するカトリーヌ
ルイス警部
「どう も ルービエさん」と 言い、
ピエールと握手し

「お楽しみのお邪魔をして すみません」
と言うルイス警部。
ハラハラしている
カトリーヌ
ルイス警部「では 奥様  また近いうちに」と 言うルイス警部。
思わず、

カトリーヌ「ご滞 在は いつまで?」と 聞くカトリーヌ
ルイス警部「さあ  い つまででしょうな
ではまた]
と軽く帽子を取り挨拶し立ち 去るルイス警部。
 木の上の牝鳥(カトリーヌ)を 引き摺り下ろしたい猫(ルイス警部)は、 牝鳥の近くにいる雄鳥に目を着けたのだ。
 
ルイス警部が、ピ エールに仕掛けた最初の罠
ピエール「知り 合い?」カトリーヌに聞くピエール
首 を横に振り、この場から早く立ち去ろうとピエールを誘導する

カ トリーヌナザレ海岸を張り切ってガ イドするピエール。
喪服姿の女性たちが
砂辺に座って海の方を見ている。
カ トリーヌ「あの 人たちは 何を?」と 聞くカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フラン ソワーズ・アルヌール、ダニエ ル・ジュランら

ピエール「漁船 が戻るまで祈りを」と説明するピエール。
カトリーヌ
「そん なに 危険?」
ピエール「かな りね
父親や夫が遭難した家は
ザラさ だから喪服を」
カトリーヌ「あの 手つきは?」
ピエール「海神 を静めるためさ」と説明するピエール。

ピエールの友人たちと会った二人は、合流し酒場で寛ぐ。
ファ ドを歌っているアマリ ア・ロドリケスたちと目が合いにこやかに挨拶を交わす二人。


『過 去を持つ愛情』マルセル・ダリオダニエ ル・ジュラン、アマリア・ロドリケスフラン ソワーズ・アルヌール

歌が架橋にさしかかるときに、
アマリア・ロドリケスが振り向くと、
二人が座っていたテーブルにグラスだけが 残されている。


『過 去を持つ愛情』

 洒落た演出だ。

夜の浜辺を散歩する二人。
カトリーヌ「もう 脚が」と言い、
砂 場に停泊している小舟に腰掛け、

「砂っ て疲れるわ」と言うカトリーヌ
ピエール「足で  かむように歩くんだ
力強くね
その方が楽だ」
と 言い、小舟の方に戻って来るピエール
カトリーヌ
「物知 りね」
ピエール「アフ リカ で覚えたんだ」
カトリーヌ「い い気持… ずっといたいわ」
ピエール「だ が この舟は好かん
動いてない」



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエ ル・ジュラン

 今の幸 せ・現在の生活を守りたいカトリーヌと、止まりたくない・飛躍したいと思っているピエールの違いが表現されてい る。

カトリーヌ
「あな た 拘束されるのが嫌いね」
ピエール「そう だ」
カトリーヌ「じゃ  結婚生活は?」
ピ エール「おれ には 向かん」
カトリーヌ
「結婚 してたの?」
ピ エール「ああ
一度ね
君もだろ
指輪の跡がある
結婚を?」
と言い、カトリーヌの左手を手に取り指輪の跡を擦るピエール。
カトリーヌ「死別 よ」と即座に答えるカトリーヌ
 カトリーヌの顔が影になり、表情を判り難くする演出で効果を出している。
ピエール「最近 だね 跡が新しい」
カトリーヌ
「1年 前よ」
ピ エール「指輪 しない訳は?」
カトリーヌ
「せん さく 好きね」と 言い、左手を戻す。
腕を組

ピエール「悪 かった]と言うピエール
小舟から離れ、
浜辺に身を委ねる様にして、
カトリーヌ「ピ エール
怒った?」
と言うカトリーヌ
腕組みをしていた
ピエールが振り向き、
ピエール「いや
自分に怒ってる」
と 言う
カトリーヌ「こん な感じ 初めてだわ」
ピ エール「感 じって?」
カトリーヌ
「私た ち よく言い争いをするけど―
そのつど かえって
親密になる感じがするの」
ピ エール「過去 のせいさ」と言い、
カトリーヌの傍に座り、
「同じような苦労を したから」
と 言ピエール
カ トリーヌ「そう ね 初めから分かってたわ
歌を通訳してくれた時よ」


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエ ル・ジュラン

「あの子も よく
あなたの話を」
と言い、手枕して横になり、


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

夜 待ち望む音があるの
あなたの車が帰る音よ

エンジンとブレーキの音
車のドアが開き 閉まると―
あなたの靴音が」
と言うカトリーヌ
浜辺を見ながら、
ピエール「お れ だって
その時 君の窓を見て…」
と 言い、カトリーヌの方に振り向くピエール


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

ピエールを見る
カ トリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

カトリーヌに体を寄せキスをする
ピエール



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエ ル・ジュラン

カ トリーヌ「ダ メ」と言い、起き上がるカトリーヌ
起き上がり、

ピエール「やっ ぱりか」と言ピエール
カ トリーヌ「やっ ぱり?」と聞き返す カトリーヌ
ピエール「おれ が勝手に 舞い上がってたんだ
君はスリルを求めて キスに応じ―
おれとのデートも 別の男を避けるため」
と 言ピエール
カ トリーヌ「思っ たより鈍い人ね」と 言い、波打ち際に 歩き出し、挑発するようにピエールを見るカトリーヌ
カトリーヌを見る
ピエール



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フラン ソワーズ・アルヌール

波打ち際に向かって走り出すカトリーヌ
カトリーヌ を追う
ピエール



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フラン ソワーズ・アルヌール

追ってきたピエールを見るカトリーヌ
足元の海水を
ピエールに掛けて戯れるカ トリーヌ。
ピエールに海水を掛けながら、打ち寄せる波の方に向かうカトリーヌ
カトリーヌを追う
ピエール
波に押し倒される
カトリーヌ
カトリーヌ を抱き上げ、浜辺に連れ戻そうとする
ピエール
押し寄せた波に倒される
ピエール
カトリーヌを抱き起こす
ピエール
カトリーヌを抱き上げ、キスをしながら
浜辺に連れて行くピエール



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール ダニエ ル・ジュラン

心が高ぶるままに、夜の浜辺でキスをするピエールとカ トリーヌ

キスをしながら、カトリーヌを横にし、見つめるピエール



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フラン ソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

見つめるカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フラン ソワーズ・アルヌール

 濡れた
フ ランソワーズ・アルヌールの表情が官能的だ

カ トリーヌの肩紐を外し抱き寄せるピエール
激し く抱き合い、愛し合う二人。



『過 去を持つ愛情』フラン ソワーズ・アルヌール ダニエ ル・ジュラン

そこに荒い波が押し寄せる


『過 去を持つ愛情』

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〜 合鍵〜

朝。
アパー トまで送って来たピエールに、
カ トリーヌ「ピ エール
今晩 食事に来て」
と 言うカトリーヌ
ピエール「いい とも」と言うピエール
カ トリーヌ「カギ を渡しておくわ」と言い、鍵を取り出して渡すカトリーヌ
受け取った鍵 を見て、
ピエール「君 は?」と言うピエール
カ トリーヌ「スペ アが]
と 答えるカトリーヌ


『過去を持つ愛情』フラン ソワーズ・アルヌール ダニエ ル・ジュラン

鍵を見て擦りながら、
ピエール「カ ギは嫌いだ」と言うピエール
カ トリーヌ「訳で も?」と聞くカトリーヌ
鍵を見なが ら、
ピエール「まあ な」と言うピエール
カ トリーヌ「変な 人…
じゃ 今夜ね」
と 言い、アパートの中に入って行くカトリーヌ
渋い顔で鍵を見て、車に乗るピエール


〜深酒〜

友人(マルセル・ダリオ)の店で悪酔いしているピエール
カウンターに座っている
ピエールに近 寄って、
友人「荒れ てるな パリジャン
体を壊すぜ」
と 言い、肩 を揺する友人
ピエール「結構 だね」と言うピエール
友人「とこ ろで 南米の話だが まだ行く気は?」と 聞く友 人
ピエール「なぜ 聞く」と言うピエール
友人「2週 間後に貨物船が着く
口を利こうか?」
と言う友人。
鍵を握り締めながら、

ピエール「ああ  頼むぜ」と 言うピエール
鍵を見ているピエールに、
友人「女の カギ?」と聞く友人
頷き、



『過 去を持つ愛情』ダニエ ル・ジュラン

ピエール「昔  女房もカギをくれた
カギは嫌いだ」
と 言うピエール
友人「何が あった」と言う友人。
一点を見つめて、

ピエール「玄関 を開けると―
女房がいた」
と 言い、
鍵を強く握り、

「裸だった」と 言い、
憎しみを込め、

「そば に男が」言い、
友人を見て、話を続ける。

「地獄を見た思いだった」
と話し、友人を見る。
怒りが込み上げてきたピエールは、
唇 を噛み締めると、

「ちくしょう」
と 言いながら、鍵をカウンターに投げつける
投げた鍵を目で追い哀しそうに拾う
ピエール。
 それはカトリーヌを捨てることに なってしまうからだ。



『過 去を持つ愛情』ダニエ ル・ジュランマ ルセル・ダリオ

ピエールを見ていた友人が優しく肩に手をやり慰める



〜疑惑〜

ピエールを待っ ている
カ トリーヌ。


『過去を持つ愛情』フ ランソワーズ・アルヌール

今夜 は来ないのだと諦め、寂しそうにテーブルに飾られたキャンドルの火を消すカ トリーヌ。
寝る仕度を しようとした時に、車の音が…
窓際に駆けつけ、嬉しそうに
ピエールの車を見る
カトリーヌ。


『過去を持つ愛情』フ ランソワーズ・アルヌール

酔ったピエールが車から降り、チラリと
カ トリーヌの方を見るが居座っているアパートの方へ帰る


『過去を持つ愛情』ダ ニエル・ジュラン

窓からピエールを見ていたカトリーヌは寂しそうに下を向き、窓から離れる。


『過去を持つ愛情』フ ランソワーズ・アルヌール

涙を流して帰って来た
ピエールが 辛そうにベッドに横になるが、直ぐに起き上がりバルコニーから向かいのカトリーヌのアパートを見る
辛そうにカトリーヌの住むアパートに目をやった
ピエール が、視線を落とすと路地にルイス警部がいた。


『過去を持つ愛情』ダ ニエル・ジュラン


『過去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

カ トリーヌのアパートの方に向かうのを目にして、慌てて部屋を出て行くピエール
カトリーヌのアパートに駆けつけ、貰った鍵でドアを手荒く開け る。
ベッドに横になっていた
カトリーヌが驚いて身を起こす。


『過去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』ダニエ ル・ジュラン

ルイス警部が部 屋に隠れていると思い込んでいるピエールは、強張った表情で部屋を探し回る。
戻ってきたピエールがすまなさそうにベッ ドの上 のカトリーヌに、
ピエール「つい  その…」と言うピエール
気を悪くした
カトリーヌが、
カトリーヌ「つい でに
ベッドの下も捜せば?」
と 言う


『過 去を持つ愛情』フラン ソワーズ・アルヌール

Top

〜訳

カトリーヌに、

ピエール「訳を 話す」と言い、傍 に行くピエール
カ トリーヌを見つめ
ピエール「分 かってくれ
今夜は来たくなかった」
と 言うピエール
カトリーヌ
「約束 したのに」と 言うカトリーヌ
ピエール「そう だ
まさか もう おれを
嫌いに?」
と 言うピエール
カ トリーヌ「いい え ただ少し冷静に
考えてるの」
と 言うカトリーヌ
ピエール「君と 夕食の約束をして―
楽しみだった
だが どうしても引っ掛かって」
と 辛そうに話すピエール
辛そうに話す
ピエールに、
カトリーヌ
「もう いいの」と言い、ベッドに横になるカトリーヌ
カトリーヌに顔を近づけ、

ピエール「怖い んだ」と言うピエール
カ トリーヌ「…」ピエールを見つめている
カ トリーヌ


『過 去を持つ愛情』 ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

一点の方に目をやり、

ピエール「昔の 二の舞が」と、目を見 開きて言うピエール
カトリーヌ
「昔っ て?」と言うカト リーヌ
体を起こし、

ピエール「女 を 殺した」と言うピエール。
驚いて起き上がり、
カ トリーヌ「ピ エール」と 言い、見つめるカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』 ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

ピエール「女房 をね
おれがやった
だが 無罪になった」
と言うピエール。
カ トリーヌ「…」視 線を落とすカトリーヌ
ピエール「殺し も いろいろさ
殺し屋 狂言者 兵士…
それぞれ殺人の意味が違う」
と話すピエール。
カ トリーヌ「…」一 点を見て聞いているカトリーヌ
ピエール「おれ の場合は痴情だった
お粗末さ」
と話すピエール。
カ トリーヌ「…」視 線を落とすカトリーヌ
ピエール「世間 も同情を」と言うピエール。
ピ エールを見つめ、首に手を回し抱き寄せ、


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

カ トリーヌ「裏切 られたの?」と 言い、優しく顔を擦るカトリーヌ
ピエール「あ あ」と辛そうに言うピエール。
カ トリーヌ「奥さ んに?」と言うカトリーヌ
目を見開き、

ピエール「そう だ」と答えるピエール。
カ トリーヌ「愛し てた?」と寂しそう に聞くカトリーヌ
ピエール「ずっ と そう思っていたが―」と 言い、
カ トリーヌと向かい合い、

「思い 違いだった」と言うピエール。


〜愛


カトリーヌを見つめ、
「おれ には君がいる」と 言い、カ トリーヌを抱き寄せキスをするピエール
ピエールの頬を優しく指で擦りながら、



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

カ トリーヌ「また 奥さんのような
事件が起こると思った?」
と 言うカトリーヌ
ピエール「そう だ」と答えるピ エール。
カ トリーヌ「それ は違うわ
世の中に
同じ女性は いないもの
同じ男性もいないし
同じ恋もないわ
私は あなたを裏切らないわ
と 言い、ピエールを見つめるカ トリーヌ
 フランソワーズ・アルヌールがとても魅力 的だ。
ピエール「お れが好き?」と聞くピエール
カトリーヌ
「言 葉なんて むなしい」と 言い、微笑むカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

ピエール「知 りたい」と言うピエール。
カ トリーヌ「私 は知りたくないわ
ただ…
あなたがいないと
心にポッカリ空洞が…
いると とても安心よ
何も言わないで」
と 言うカトリーヌ
聞きだそうとするピエールの口に、軽く手を持っ て行き、
カトリーヌ
「お 願い」
と 言うカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

 この流れの中の
フ ランソワーズ・アルヌールの
所 作がいい。
 
スクリーンを観ている人たちま で、虜にしてしまう。
見つ め合い、激しくキスを交わすカトリーヌとピエール



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

Top
〜 仕掛け2〜

そこに、電話が鳴る。
“リリリリリリ〜ン”
 二人を引き裂く音だ。
驚いて体を起こす
カ トリーヌと
ピエール
電話に出ようとするカ トリーヌに、

ピエール「出る な」と言うピエール。
ピエールを見る
カトリーヌ
ピエール「ほっ とけ」と言うピエール。
“リリリリリリ〜ン”
電話機の方に行きながら、
カトリーヌ「番号 は 人に教えてないのに」と 言うカトリーヌ
“リ リリリリリ〜ン”
ピエール「きっ と間違い電話さ」と言い、電話機に近寄るピエール。
受話器を取り、

カ トリーヌ「もし もし どなた」と 言うカトリーヌ
“…”
カ トリーヌ「もし もし もしもしと 言うカトリーヌ
カ トリーヌの傍で腰に両手を置いて聞いていたピエールが
ピエール「切っ た?」と顔を顰めて聞く
“…”
送話口に手 を置き、
カトリーヌ「いい え 黙ったまま」と 言い、
手を離して、

「もしもし  誰」


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

「もし もし もしもしと声を荒げて言い、
電話を切るカトリーヌ

受話器の上に手を置いたまま、考え込むカトリーヌ
カトリーヌの傍で
腰 に両手を置いてカ トリーヌを見ているピエール。
カトリーヌが電話機から離れると、また電話が鳴る。
“リ リリリ〜”
ピエールが直ぐに受話器を取り、
ピエールもしも し もしもし声を荒げて言う
ピ エールを見ていたカトリーヌが俯く。
 誰からの電話か判ったから。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

電話を掛けたルイス警部が葉巻を銜えて満足そうな表情を浮かべて電話を切り、公衆電話ボックスか ら出る

 仕掛け2。


『過去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

受話器を持ったまま、
ピエール「切っ た」カ トリーヌに言い、受話器を置くピエール。
俯くカ トリーヌ
カトリーヌ
に、
ピエール「誰だ い」と聞くピ エール。
“どうしよう
と思いながらも決心して、
カトリーヌ
「ルイ スだわ」と言うカトリーヌ
カトリーヌの傍により、

ピエール「恋人 か?」と言うピエール。
カ トリーヌ「また  そんな」と言うカトリーヌ
ピエール「答え ろ」と攻め立てるピエール
カトリーヌ
「いい え」と言うカト リーヌ
ピエール「昔の 男か?」と詰め寄るピエール
カ トリーヌいいえ
ピエール「じゃ  誰だ」と言うピエール
カトリーヌ
「英 国の刑事よ」
と言い、俯くカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ピエール「デカ が… 何の用だ」と言うピエール
ベッドに戻り、横になり、
一点を見ながら、

カ トリーヌ「夫は 車の事故で」と 話し出すカトリーヌ
ピエール「事故 は事故だ 君に何の関係が?」と言うピエール
カトリーヌ
「ルイ スは 事故だと思ってないの
彼の雇い主も 同じ意見よ」
と 話すカトリーヌ
ピエール「雇い 主?」と聞くピエール
カ トリーヌ「夫の 一族よ」
ピエール「…」カ トリーヌを見ているピエール
カトリーヌ
「私は 嫌われ者だったわ
パリの小娘ふぜいがと…
財産まで 相続されるんですもの
幸い ビルが死んだ時
私は別の場所に」
と 話すカトリーヌ
ピエール「夫の 名が ビル?」と聞くピエール
カ トリーヌ「そう よ」
ピエール「そう 呼んでた?」と聞くピエール
 カトリーヌの口から呼び名が出てくるのが不安なのだ。
 “愛していたのでは
と言う思いが広がるから。
カトリーヌ「皆が ね」と答えるカ トリーヌ
頷き、
ピエール「一体  刑事は
何を探ってるんだ」
と言うピエール
カ トリーヌ
「木の下で 鳥をねらう猫がいるわね」


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

「じっと執念深く待って…」
と 話すカトリーヌ
ピエール「君の だんなも―」
カトリーヌ
「…」
ピ エール「君に 邪険に?」と言うピエール
カトリーヌ「ピ エール
その話はもうイヤ」
と 言い、体を反りピエールを求めるカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

ピエール「…」
カ トリーヌを見ている
ピエール。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

ベッドで横になって
いるカトリーヌの体を視線で追 うピエール。
脚から腰、鼓動する胸、そして、愛を求める
カトリーヌの唇へ。
抱かれる
カトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

 ゾクゾクさせるカメラワークに、
フ ランソワーズ・アルヌールの妖艶な表情だ。


〜 仕掛け3〜

ルイス警部がピエールが運転するタクシーに乗り込み、
ルイス警 部「ホテ ルへ」と言う
ピエール「ルイ スさん おれに何か用か]と不機嫌に運転しながら言うピエール
パイプを銜えて、
ルイス警 部「私を 覚えててくれたか」と言い、
鼻で笑い、


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード ダニエ ル・ジュラン

「私は ただホテルのバーへ」と言うルイス警部
ピエールいいか い おれを甘く見るな」と言うピ エール
ルイス警 部「…」
ピエールなぜ  わざと
おれのタクシーに乗った」
と言うピエール
にやりとしながら、
ルイス警 部「君が  感じのよい男だからさ」と言うルイス警部。
不機嫌に、

ピエール「光栄 だねと言うピエール
バックミラーに
ルイス警部が写っている
ピエールじゃ  話はないな?」と苛立って言うピエール
バックミラー越しに、ピエールを見て
ルイス警 部「仲よ くしようじゃないか
レディ・ディンバーの話でもして」
とパイプを銜えて言うルイス警部



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、ト レヴァー・ハワード

不機嫌 に、
ピエール「いい ともと答え、
「彼女に構うなと言うピエール
ルイス警 部「真実 を 知りたくはないかね
君は自分から真実を知る
喜びを拒否してる
発見の喜びをね」
と含みを持たせて言うルイス警部
ピエールあんた の手には乗らん」と吐き棄てるように言うピエール
ルイス警 部「オセ ロは しっとに燃えたが
君は冷静か」
と言い、笑うルイス警部
ピエールそうと も
ほら 着くぜ」
と言い、“キ〜”手荒く車を止めるピエール
車から 降り、
ルイス警 部「静か な運転の料金は?」と嫌味を言うルイス警部
ピエール雇い主 へ領収書を?」と言うピエール
ルイス警 部彼女が 話したんだな
領収書はいらん 車代は自前だ」
と言い、お金を払いホテルに入 ろうとするルイス警部
ルイス警部を呼び止め、
ピエール「デカ から チップは取らんと言い、チップを返し車を出すピエール
車 を見ながら返されたチップを真上に放り上げ、ヨシとばかりに受け止めホテルの中に入って行くルイス警部
ル イス警部がホテルの中に入って行くのをバックミラーで確認しながら運転していたピエールが、後ろの座席の荷物を見て“キ〜”急ブレーキを掛ける
 
3つ目の仕掛け。
ホ テルのバーでコップを積み重ねながら、3つ目の餌に食いつくピエールを待っているルイス警部
ルイ ス警部を見ながらバーに入って来たピエールが
ピエール「忘れ 物だと言い、カウンターに置く
ルイス警部「忘れ たんじゃない
君が私に 会いたくなった時―
来やすいようにと 思ってね」
と言うルイス警部
睨みな がら、
ピエール褒めよ うか?」と言うピエール
ルイス警 部「いい や…
とにかく よく来た」
と言い、座るように言うルイス警部
バーテ ンに、
ルイス警 部「追加 を」と酒を追加するルイス警部
待ちき れないように、
ピエールおれが 来たのは―」と切り出し、
彼女 を煩わすなと 念を押すためだ」と言うピエール
空のグ ラスを口に持って行き、
ルイス警 部「そう かね」と言い、焦らすルイス警部。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、ト レヴァー・ハワード

 知りたがるピエールに餌をちらつかせたり、引っ込めたりして楽しんでいる

食いつくように、

ピエール「おれ をナメるなと言うピエール
かわすよう にカウンターのつまみを口にしながら、ピエールを見るルイス警部
ピエール彼女か ら話は聞いたぞ」と食って掛かるピエール
ルイス警部「…」
そうか ね”と言うような表情をするルイス警部
 
そ うであればここに来ていないだろと腹で笑っ ている。
ピエール全部 ね」と言うピエール
ルイス警 部「私に も見当はつくがね」と言い、つまみを口にするルイス警部
ピエール見 当?」と言うピエール
食べながら、

ルイス警 部「彼女 の話の内容さ」と言い、
ピエールを見て、

「こう だ
かわいい香水売りが 英国の貴族と結婚した
しかし貴族の一族は 彼女を嫌った」と話すルイス警部



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、ト レヴァー・ハワード

ピ エール…」
食いついて来ているのを確認しながら、
「やが て 夫が事故で死に
彼女に ばく大な遺産が
遺族は調査を依頼し 嫌な刑事が来た」
と語尾をあげ話し、ピエールの反応を見るルイス警部


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、ト レヴァー・ハワード

ピエール「…
睨んで いるピエールに、
ルイス警 部「違う かね」と言うルイス警部
睨みながら、

ピエール違わん よ」と言い、
だが 彼女は事故現場には」と言うピエールに続けるように、
ルイス警 部「いな かった」と言うルイス警部
ピエールそうだ ろ」と言うピエール
ルイス警部「それ は本当さ」と言うルイス警部
ピエールじゃ  なぜ調査を」と言うピエール
ルイス警 部「空白 だよ」と言うルイス警部
ピエール空 白?」
ルイス警 部「空白 な部分が あるからだよ」と言い、
「彼女が まだ話してない
真実がね」
と言ルイス警部。
 “疑惑
という 罠を仕掛けるルイス警部
ピエール「…
ルイス警 部「君も その点を知りたく ないかね」と言うルイス警部
下を向 き、改めてルイス警部を見て
ピエールあんた はゲスだ」と言うピエール
飲んだ グラスを下ろしながら、
ルイス警 部「刑事 なんて こんなものだよ」と言い、
笑い、


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

再 びグラスを口に持って行くルイス警部
ピエール「彼女 に手を出させんぞと言い、
ルイ ス警部の胸倉を掴み、
おれが 守ってやる」と言うピエール
ルイス警 部「彼女 は君だけが頼りさ」と言い笑い、



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、ト レヴァー・ハワード

「残念だよ 分かり合えなくて」
と続けるルイス警部
ピエール「…
疑惑を持ちながら帰るピエール


〜 ジュース〜

ピエー ルとデイトを楽しむカトリーヌ
喉が渇いたと いうカトリーヌに頼まれ、ジュースを買いに行くピエール。
ホテルでカトリーヌのことを 面白がって話していた英国人の中のカップルが、ひとりでいるカトリーヌのところに近寄って来る。
カトリーヌに親しげに話しかける
英国の夫人。
適当に相手を しているカトリーヌ
ジュースを買って来たピエールが、英国人たちを見て躊躇する。
 気取った人の中に入るのが嫌だったからだ。
カ トリーヌピエール呼び、二人にピエールを紹介する
見下げ てピ エールに挨拶する英国の夫 人。
夫人たちの態度に対して、見 せ付けるように
ピエールか らジュースを受け取りラッパ飲みするカトリーヌ
夫人に
飲み物を勧めるピエール。
慌てて断る夫人。


『過去を持つ愛情』ダ ニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌールら

勧められた紳士が受け取ろうとするのを遮り、
紳士を連れ逃げ出す夫人。
去り際に英語で、
「貴族の未亡人が あんな男と」と言う夫人。
ピ エールを気遣カトリーヌ
夫人たちの方を見ているピエールに
カ トリーヌ「どう したの」と言い、ピ エールの手を掴むカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌールら

ピエール今の英 語 分かったよ」と言うピエール
カ トリーヌ「あん な事」と言うカトリーヌ
ピエール君に恥 をかかせた」と言うピエール
ピエールを見詰めて、
カ トリーヌ「あな たが 自慢だわ」と言うカトリーヌ
ピエール本当 か」と言うピエール
甘えるように目配せして、ピエールに寄 り添うカトリーヌ
ピエールに寄り添って 散歩を続けているカトリーヌを後ろから見ているルイス警部
 
ピエールカトリーヌに引け目を感じてい ること、カトリーヌにとってピエールがどんな存在であるのかを探っているのだ。

夜、 カトリーヌの部屋。
カトリーヌのことをすべて知りたいピエールが探りを入れる。
話し たがらないカトリーヌカトリーヌのことを知りたいピエール。
ピエールの態度に不安になるカ トリーヌ


〜飢え〜

カトリーヌのことを知りたいピエールは迷いながらも、ルイス警部が宿泊しているホテルに行く。
 “飛んで火に入る夏の虫

サウナ室で寛いでいるルイス警部が
ルイス警 部「ここ にいるよ ルービエ君
まあ くつろぎたまえ」
と言う。
傍の長 椅子に近寄り、
ピエール…」
重い腰を下ろすピエール。
ピエールに
ルイス警 部「ゆっ くり 息を
肺を蒸気に慣らすんだ
でないと 苦しくなる」
と言うルイス警部。
 
ピエールが張り裂けそうな胸の内になって いるのを読み取っているのだ
ピエールずっ と苦しい」と言うピエール
ピエールをチラリと見て



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード ダニエル・ジュランら

ルイス警 部「そう かね 何か悩み事でも?」とワザとらしく言うルイス警部
苛立ち。
ピエール「あん たさ
あんたが いることさ」
とはき棄てるように言うピエール
ルイス警部「じゃ  なぜ会いに来た
彼女が身の上を話したろ
まだ不足かね
だから ここに来たか」
と言い、思い詰めているピエールを見るルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部「私の 役どころは卑劣漢
彼女は悲劇の主人公」
と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部「何し ろ夫は まれに見る人物だ」と言うルイス警部
上体を 起こし、
ピエール「まれ に見る…
背中に羽でも?
と食って掛かるピエール
ピエールの心情をもてあそぶように
ルイス警 部「とに かく その辺の男より
はるか上の人だった」
と言うルイス警部
ルイス警部を睨んで聞いているピエールに向かって、
ルイス警 部「君や  私なんかよりもね」と言うルイス警部
頭を2度、縦に振り、

ピエール「言っ てくれるぜと言うピエール
ルイス警 部「まず 美男 だった
君も まあまあだが
彼は折り紙つきだ」
と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警部「その 上 金持ちで
気前がよく 教養も」
と言うルイス警部
前のめ りに聞いていたピエールが手を振り下ろし
ピエールもうい い」と言う。
ピエールを見る
ルイス警部



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

ピエール彼女も 彼を 熱愛…」と続けるピエール
ルイス警 部「当然 だね」と言うルイス警部
ピエールだが  愛する男を殺す女が
いるか?」
と言うピエール
ルイス警 部「それ はいい質問だな」と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部「愛す る男を殺す女は
おらん」
と言うルイス警部
身を乗り出し、

ピエールという と…」と言うピエール
ルイス警 部「実は 私は 粗こつ者でね
23年間 同じアパートにいて―
同じ階の住民の数も
知らん」
と言うルイス警部
マサージ師に促され横になり、

ルイス警部「彼女 の嘆きぶりを世間は
褒めそやしたものだ
美しい目から とめどなく涙が
だから驚きだね
こんなに早く彼女が
君の腕に抱かれるとは
君には 魔法の力があるぞ
と話を続けるルイス警部
ピエール事故は 1年前だ」と言うピエール
鼻で笑い、
ルイス警 部「たっ た 11週間前のことだよ 君
正確に言うと 74日前だ」
と言うルイス警部
身を乗 り出し、
ピエールウソ だ」と言うピエール
ルイス警 部「新聞 で 確かめたらどうだ」と言うルイス警部



『過 去を持つ愛情』ダニエ ル・ジュラン、トレヴァー・ハワード

ピエール…」
俯くピエール

落胆しているピエールを見て
ルイス警 部「ウソ は彼女の方だ」と言うルイス警部
ルイス 警部を睨むピエール
お構いなしに、

ルイス警 部「彼女 という人物は 大いなる疑問じゃないか
その答えは次のどれかだ
彼女は夫をだました
または君をだましてる
または2人ともを」
と言うルイス警部
苛立 ち、
ピエールなぜ」と言うピエール
ルイス警 部「簡単 さ
金が目当てで結婚―
君に近づいたのは
孤独をいやすためだった」
と言うルイス警部
ピエール「だか ら何だと言うピエール
ルイス警 部「私の 雇い主は真相を 知りたがってる
彼女が決め手さ」
と言うルイス警部
ピエール「無実 は立証されたはずだと言うピエール
首を横に振り、

ルイス警部「違う ね 有罪が立証されなかったまでのことだ」と言うルイス警部
ピエール事故 だったんだ」と言うピエール
ルイス警 部「あの 女は 知っていたんだ
車が事故を起こすってことをね」
と言うルイス警部
食って 掛かるように、
ピエール証拠 は?」と言うピエール
ルイス警 部「物証 はない この先もね」と言うルイス警部
ピエール「じゃ 帰れ」と言うピエール
ルイス警 部「カー ドの名手は
最後まで勝負をあきらめん
私も 最後の望みをつないでる」
と言い、ピエールを見るルイス警部
ピエールどん な?」と言うピエール
せせら 笑い、
ルイス警 部「それ は言えん」と言うルイス警部
立ち上がる
ピエール
それを見て、
ルイス警 部「その まま出ると 風邪ひくぞ」と言うルイス警部
激しくドアを閉め出て行くピエール。
ピエールが噛み砕いているス トーローを見て、裂かれた先を指で弄ぶルイス警部



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

 ど んどん、深みにはまって行くのを愉しんでいるルイス警部

南米行きの船が港に着いたことを友人から知らされるピエール。

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〜 写真〜

カト リーヌの部屋に遊びに来ている少年
(ジャック・ムウリエー ル)が、ア ルバムを見てカ トリーヌに色々と聞いている。
優しく答えて、教えているカトリーヌ
そこに、苛立っているピエールが入って来る
ピエールの様子を感じ取ったカ トリーヌが、アルバムを閉じる。
それを開け、今、
ルイス警部から聞 いてきたことを嫌味を込めて少年に話すピエール
事 故のこと話し出したピエールに腹を立て、少年に外で遊ぶように言 うカトリーヌ。
少年が
部 屋を出て行くと、
カ トリーヌ「続け て」と言うカトリーヌ
ピエール「もう  ない」と言うピエール
カ トリーヌ「どこ で 会ったの」と言うカトリーヌ
誰にと言いながらカトリーヌに近づく
ピエール
カ トリーヌ「ル イスによ
そんなに会いたかったの
見事にエサに釣られて」
と怒って言 うカトリーヌ
そんなことはないと言うピエール
カ トリーヌ「ディ ンバーの手先よ」と言うカトリーヌ
ピエール知りた かった どうしても」と言うピエール
カ トリーヌ「で  成果は?」と言うカトリーヌ
ピエールああ  ウソが分かった」と言うピエール
カ トリーヌ「ルイ スの?」と言うカトリーヌ
ピエール君だよ
だんなのことを」
と言い、視線を逸らして離れるピエール。
窓際に立って外を見ているピ エールに、
カ トリーヌ「夫の 話なんて一度も」と言うカトリーヌ
外に視線を向けながら、
ピエール沈黙も 時には ひどいウソだ
つらかったよ
君とだんなの話を 聞いて」
と言うピエール
ピエールの傍に来て
カ トリーヌ「だっ て夫婦よ」と言うカトリーヌ
振り向いて、
ピエール愛して た?」と寂しそうに聞くピエール
カ トリーヌ「今更  とやかく言っても」と言うカトリーヌ
ピエール「じゃ
だんなは いつ死んだ?

なぜ 1年前だとウソついた」
と言うピエール
カ トリーヌ「あな たって
結局 常識にこだわるのね
検死の記録を 見せればよかった?」
と言うカト リーヌ
ピエールやめ ろ」と言うピエール
カ トリーヌ「恋 愛って 履歴書が要るの?」と言 うカトリーヌ
ピエール「よせと言うピエール
カ トリーヌ「一 体 何が望み?
あんな刑事に 振り回されて
そんなに 私と別れたいの」
と声を張り 上げて言うカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、 ダニエル・ジュラン

ピエール「悲 しいよと言うピエール
カ トリーヌ「自分 のせいだわ」と 言うカトリーヌ
ピエール「悪 かったと言うピエール
カ トリーヌ「私 だって 我慢には限界が」と言 うカトリーヌ
抱き寄せキスをしようとするピエール
カ トリーヌ「やめ て」と顔を背けるカトリーヌ
強引にキスを迫りテーブルに押し付けるピエール。

キスをする ピエール。
手を首に回 しキスをするカトリーヌ
頭を起こしたピエールが
カ トリーヌの顔の傍に散らばった写真を目にする


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

写真に“いつまでも あなたの妻”とサインされている。
凍りついた表情の
ピエールが写真のカ トリーヌから、テーブルに横になっているカトリーヌへと視線を移す。



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

疑いの眼差しのピエールに、
カ トリーヌ「嫌な 目
まだ何かあるの
言って」
と言うカトリーヌ
カトリーヌを睨んで
ピエールこう やって いつも男を誘惑?」と言うピエール
カ トリーヌ
「出 てって
出てって」



『過去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

「行って」と 声を荒げ起き上がるカトリーヌ
ピエール「お望 みどおりに立つよ
船が明日出る
ウソとも さらばさ
せいぜい昔の思い出を
かわいがれ
と怒鳴りテーブルの写真を払い落とし、


『過 去を持つ愛情』ダニエ ル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

次 の男にやれ」と鍵を床に叩きつけて出て行くピエール
寂しそうに鍵を手に取るカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

ドアがノックされピエールが戻って来たと思い急いで開けるカ トリーヌ。
だが、違っていた。
ルイス警部の次の一手であった。
“旅 券を持参の上、警察署まで来るように
とのことであった


〜南米行き〜

ピエールは
居候していた家 で荷物をトランクに詰め込み、南米行きに乗る準備をする。
カトリーヌと喧嘩別れして来たのを察した少年の母が、
少年の母「彼女 は あんたが大好きなのに」と呆れたように言う。
ピエール「今は な
だが 生涯おれだけでもない
男はすぐ出来る
キスがうまい
と履き捨てるように言う。
少年の母「ピ エール」と声を荒げ嗜める。
クローゼットの開き戸を手荒く閉める
ピエール
 自分の胸の内から、カトリーヌを締め出そうとしている。

いつも大人びている少年(ジャック・ムウリエール)がピエールとの別れを悲し み泣く。
それを嗜めるピエール。
  このような時にしっかりするのが男だということを諭す。

手続きのためということで旅券を取り上げられる
カ トリーヌ
船が出た後に返すという
ルイス警部。

Top
〜 告白〜

酒場で独りで酒を飲んでいる
ピエールに、会いに来るカ トリーヌ
 このま ま別れられないからだ。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

カ トリーヌ「いつ  立つの」と一点を 見つめて言うカトリーヌ。
辛そうに、

ピエール「数時 間後だと言い、
カ トリーヌを見て、
「これ でいいと言い視線を逸らすピエール
寂しそうに、
カ トリーヌ
「引き止め ないわ」


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュランら

「ここに来たのは
あなたに真相を話すためよ
お別れだもの
夫は殺したわ
貧乏に逆戻りするのが
怖かったから」
と 真実を話し出すカトリーヌ
ピエール…」
カ トリーヌ「愛す る振りは 簡単だった
愛も快楽もペテン
私 やれる限りの
愛のペテンをしたわ」
と話すカトリーヌ
カトリーヌを見て


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ピエールペテン ならバレる」と言うピエール
カ トリーヌ「あな たとは別」と言うカトリーヌ
ピエール別だっ て? ウソを
つききれなくなったくせに」
と言うピエール
カ トリーヌ「そう ね」と言うカトリーヌ
ピエール素直だ な」と言うピエール
瞳を潤ませ、

カ トリーヌ「あな たの前だと いつも素直よ」と 言い、視線を落とすカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フラン ソワーズ・アルヌール

ピエール離婚は 彼から?」と聞くピエール
カ トリーヌ「ええ  そして私には
ビタ一文やるものかと」
と 話すカトリーヌ。
カトリーヌを見て、

ピエール「金持 ちよ さらばかと履き棄てるように言うピエール
ピ エールをちらりと見て、辛そうに話を続けるカトリーヌ
カ トリーヌ
「夫は 私 にこう言ったわ
“お前には 貧乏が似合ってる”
私は泣いてすがったわ
彼は私をぶち 出て行った
弁護士の所へ行くために」


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

「窓から 夫が車に乗るのが見えた
彼はすごく飛ばすの
車軸が折れても 変じゃないわ」
と 話すカトリーヌ
ピエール…」話を聞いているピエール
カ トリーヌ「私が 彼の車に細工を…」と話すカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、フランソワーズ・アルヌール

カトリーヌの傍により

ピエール証拠は ないんだ
ルイスにも どうにもできん」
と言うピエール
思いつめて、

カ トリーヌ「私  全部 自白するわ」と 言うカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ピエールバカな
大変なことになるぞ」
と言うピエール
カ トリーヌ「警部 の思うツボね」と言い、
視線を逸らし、

「彼 は 私の弱点を捜し出したわ」


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

それはあなたよ
ピエール
さあ行って
もう何もかも忘れて
泣きたいの
あなたを愛してたわ
と 言い、カウンターに顔を伏せ泣くカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

ピエールカ トリーヌ」と声を掛けるピエール
顔を上げるカ トリーヌ
ピエール
初めて言ったね
もう離さないよ」



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

「一緒に行こう」
と言うピエール
カ トリーヌ「いや  ピエール」と 言うカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ピエールさあ」と言い、カ トリーヌを誘導するピエール

友人(
マルセル・ダリオ)と 酒場の出口で会い、カ トリーヌを 船に連れて行くように言うピエール
そして、自分はカ トリーヌの荷物を取りに行くと言うピエール
カトリーヌが、

カ トリーヌ「ピ エール」と声を掛けるがすでに店を出 て行った。
そして、友人に旅券がないと告げる。
友人は、
友人そんなことは札束が解決してくれる」と言 いカトリーヌを連れて行く。

〜止め〜

カトリーヌの服を手に取り、準備をしているピエール
ルイス警部がドアを開ける。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラントレヴァー・ハワード

ルイ ス警部を見て
ピエール入っ て」と言うピエール
部屋に入るルイス警部
ピエールやあ  警部」と言い、
荷物を手に持って、

「この アパートなら すぐ空くよ
ディンバーさんは お立ちだ」
と言うピエール
ルイス警 部「君 と?」と言うルイス警部
ピエールああ  驚きか?」と言うピエール
そうだ
と頷き、
ルイス警 部「彼女 が 真相を告白したら―
君たちは別れると 思ってたよ」
と言うルイス警部
トラン クに入れた服を見ながら、
ピエール「ハズ レだと言い、
ルイ ス警部を見て、
「捨て られた女を お捜しだね
ひとり絶望し 泣き叫ぶ女を
君は そっとドアを開ける
今夜こそ 彼女の自白をとるんだと
当ては外れたよ」
と得意げに言うピエール
ルイス警 部「…」と笑いを堪えて聞いているルイス警部
さらに調子付いて、

ピエール努力も 台なし」と身振りを交えて言うピエール



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

ルイス警 部「全部 仰せのとおりさ」と調子を合わせてやり、次の一手を放つルイス警部
金持 ちの女が君を頼った 理由も読めただろ
結局 君に力があったからだよ
私が積み上げたものを ぶち壊す力が」
と言い、
薄笑いを浮かべて部屋を歩き回り、
カトリーヌのストッキングを手に取り、ワザとらしくトランクに入れる
ルイス警部
ピエールに、
ルイス警部「彼 女は 夫殺しを告白したんだね」と言い、見るルイス警部



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

ルイス 警部を見て
ピエールああ」と言うピエール
ルイス警 部「やっ ぱり」と言うルイス警部
ピエール証拠な しじゃ じだんだ踏む思いだろ」と言うピエール
ルイス警 部「全 く」と言い、上目遣いをしてピエールを見るルイス警部
ルイス 警部を睨み
ピエール「彼女 が やった
だが それが何だ
と言い、
「おれ だって 女房を殺してる
2人のきずなさ
運命を信じる?」
と言い、トランクに荷物を詰めるピエール
ルイス警 部「私 が信じるのは 指紋だけだ」と言うルイス警部
トラン クを閉めているピエール
ルイス警 部「ひと つ違うな」と言うルイス警部
トランクを閉めながら、

ピエール「何がと言うピエール
ルイス警 部「君 は愛のため 彼女は金のために殺した
2つの殺人は 本質的に違う」
と言うルイス警部
ピエール人を殺 した点では 同じだ」と反論し、
「あん たも 人を殺せば分かると言うピエール
ルイス警 部「…」
ピエール試 す?」と言うピエール
首を横 に振るルイス警部
ピエー
手紙を 書くよ」と言い、トランクを持ってドアの方へ行くピエール
ドアを開けたピエールに、
ルイス警 部「船ま で送ろう」と言うルイス警部
ピエールもう何 も出て来んぞ」と言うピエール
ルイス警部「憎み 合ったまま 別れたくないんだ」と言うルイス警部
ピエール泣ける ね」と言うピエール
ルイス警 部「私に も 人情があるってことさ」と言うルイス警部
ピエール「よし  変った思い出になると言い部屋を出るピエール
着いて 行くルイス警部

南米 行きの船のデッキでピエールが 来るのを待っているカト リーヌ

港に着いて車から降りるルイス警部とピエール
船の方に向かいながら、
ルイス警 部「出発 か
航海の無事を祈るよ」
と言い、ピエールの肩を叩くルイス警部
不機嫌 に歩いているピエール
肩に手をやり、
ルイス警 部「ブラ ジルでも元気でな」と親しげに言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部「恋愛 運に ついては
もう 保証ずみ
彼女が熱愛しとる」
と言い、ピエールの表情を伺うルイス警部
不機嫌にそうだと答えるピエール



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

ルイス警 部「彼女 が言うなら本当だ」と言うルイス警部
立ち止まってルイス警部の胸倉を掴み、
ピエール
よく聞け」


『過 去を持つ愛情』ト レヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

「彼女とは一度切れた
その時 彼女が何を
しようとしたか分かるか」
と言うピエール
ルイス警 部
「当ててみ よう」


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

「きっと彼女は私の所へ
駆け寄り こう叫ぶ
“あの人が去ったわ もう何の望みも
夫殺しは私よ”」
と得意げに言い、


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

ピエールの胸を小突き、

「彼女は こうすると
君に言ったんだろ」
と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部「君 が やめさせ
彼女は しないで済んだ」
と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部「彼 女の ねらいどおりだ」と言うルイス警部
ピエールウジ 虫」と言うピエール
ルイス警 部「私を どう呼んでも 事態は変らん」と言い笑うルイス警部
そして、
ピエールの胸を小突きながら、
ルイス警 部「や がて君の胸に幾つかの
疑問がわくだろうよ」
と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警部「刑事 が現れた途端 彼女が
身を任せたのはなぜ」
と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部「土壇 場で 殺人を告白したのはなぜ
フランス語で“担ぐ”
と言ったっけ」
と言い、ピエールを見るルイス警部
ピエールそう だ」と言うピエール
ルイス警 部「なぜ  おれを担がなかったのか」と言うルイス警部
ピエール…」
ルイス警 部
「きっ と 身を守るのに
おれが必要だったんだ」



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

「なぜ おれにはウソを
つかなかった…などなど」
と得意げに話すルイス警部
立ち 止ってルイス警部の胸倉を掴み
ピエール黙れ」と言うピエール
笑って、



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、ダニエル・ジュラン

ル イス警部「黙る とも
よい船旅を」
と言い、手を差し出すルイス警部
避けて 船に乗り込むピエール
差し出した手を下ろし、
ルイス警 部「ルー ビエ君」と呼び止めるルイス警部
吊り階 段で立ち止まるピエール
上着の内ポケットに手を入れ、

ルイス警 部「贈 り物だ 彼女の旅券だよ」と言い、ピエール渡すルイス警部
 止めだ。
受け取った旅券を見るピエール



『過 去を持つ愛情』ダニエ ル・ジュラン、トレヴァー・ハワード

ルイス警 部「そ こで最後の疑問だ
旅券を取り上げられ
殺人を告白したのはなぜ」
と彼女への疑いの心を駆り立てるルイス警部
旅券をポケットに入れ、呆然と階段を上る
ピエール
ルイス警部「ルー ビエ君 忘れ物だよ」と言い、トランクを軽く叩くルイス警部
ルイス 警部の言葉が耳から離れられないまま、トランクを持って船に乗り込むピエール
軽く釣り階段を叩き船から離れるルイス警部

 準 備万端だ。十分過ぎる程の手応えだ。
 後は獲物が釣り上がるのを待つだけだ。



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン、トレヴァー・ハワード

〜 窓〜

船室から見えるところに立っている
ルイス警部



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

ルイス 警部を丸窓から見ているカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

船室に入って来たピエールに、
カトリーヌ「怖いわ」と言うカト リーヌ
冷たく、
ピエール何が」と言うピエール
カ トリーヌ「何だ か 幸せすぎて」と言うカトリーヌ
トランクを下ろし、
ピエール心配す るな 1時間で出港だ
すべては終る」
と言い、ベッドに横になるピエール
カ トリーヌ「始ま るのよ」と言うカトリーヌ
手枕にして、



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ピエール「まあ なと言うピエール。
不機嫌なピエールの様子に気 付いて、
カ トリーヌ「ピ エール」と言うカトリーヌ
不機嫌にカトリーヌ を見るピエール
カ トリーヌ「彼  何だって?」と 言うカトリーヌ
ピエール「誰」と言うピエール
カ トリーヌ「ルイ スよ」と言うカト リーヌ
ピエール「見て たのかと言うピエール
カ トリーヌ「あな たが 彼と着いたので
とても怖かったわ」
と 言うカトリーヌ
ピエール「…



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

手を見せ、
カ トリーヌ「私の 手を見て 怖くて
血が出るほど かんだわ」
と 言うカトリーヌ
ピエール…」
カ トリーヌ「彼  何の用?」と言うカトリーヌ
不機嫌な表情でカトリーヌを見て、
ピエール当てて みろ」と言い、
「いや  無理かなと言うと体を起こし、
「やつ は 門出を祝福しに来たんだそうだと言うピエール
カ トリーヌ「…」
ピエール“幸せ に ルービエ君”
とね」
と言い、
苦笑いして、

「贈り 物までと言い、
ポケットから旅券を取り出し、

君の旅 券だ」と渡すピエール
カ トリーヌ「…」受け取るカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ピエール「君 は もう安泰だと言うピエール。
カ トリーヌ「旅券 のこと 言い忘れてて」と 言うカトリーヌ
ピエールよせ  ほかの話にしよう」と言い、 ベッドから離れるピエール
  いや、カ トリーヌから。
哀しそうに、
カトリーヌ「でも こだわっているわね」と言い、
ピエールの傍に行き、
カ トリーヌ「きっ と
一生 こだわるのね」
と言うカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

カトリーヌをチラリと見て
ピエール門出だ ぜ」と言うピエール
カ トリーヌ「門 出… 重い荷物を
引きずってるのに?」
と言うカトリーヌ
ピエール「…
俯いて聞いているピエール



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

カ トリーヌ「ルイ スとか いろいろと」と 言うカトリーヌ
ピエール慣れる さ 時がたてば」と言うピエール
カ トリーヌ「そう ね  お互い
自分の孤独に慣れるわ」
と 言うカトリーヌ
ピエール「…」
カ トリーヌを見る
ピエール
カ トリーヌ「悲し みとも折り合って」と 言うカトリーヌ
ピエール「ああ
もう苦しむことさえ」
と言うピエール
カ トリーヌ「私は  それしか出来ないわ」と 言うカトリーヌ
ピエール「や つが言ってた
おれが君の自首を阻むと
君は見越していたと」
と言うピエール
カ トリーヌ「そ う 思う?」と言うカトリーヌ
肩を窄め、
ピエールいや」と言うピエール
“ボ〜 ン”汽笛が鳴る。
 引 き裂くように。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

カトリーヌに
ピエール「出港 を見る?と言うピエール
首を横に振るカ トリーヌ
船室を出て行こうとするピエールに
カ トリーヌ「ピ エール 愛してるわ」と言うカトリーヌ
ドアの前で立ち止まるピエール
カ トリーヌ「今 度こそ 信じてもらえるわね」
と言うカトリーヌ
そのまま出て行くピエール



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール、ダニエル・ジュラン

ドアを閉める音が哀しく響 く。
 胸を撃ち裂く音だ
カ トリーヌ「…」
 
ピ エールはまだ疑っている。
 
信じていない。


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

悲し みの中、窓の方へ行き、外を見るカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

ルイス警部が窓から 見える所をうろついている。


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

Top

〜 デッキ〜

デッキで海を眺めて、考え事をしている
ピエール


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

窓から外を見ているカトリーヌ
その視線の先にルイス警部がいる



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

俯きドアの方へ行くカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

悲しみに打ちひかれて船室を出るカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌールら

泣きながら港が見えるデッキの手摺に凭れるカトリーヌ



『過去を持つ愛情』フランソワーズ・アルヌール

真下からルイス警部が
カ トリーヌを見上げ、帽子を取り挨拶する。


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

彼女に向かって自信満々に帽子を取ってお辞 儀をするルイス警部を見る
 それが
こっちへおいで
と言う合図だと、カトリーヌは解っているから胸を締め付けられる。


〜 出港〜

“ボ〜ン”汽笛が鳴り船が出港する。
海が見えるデッキにいるピエール。


『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュラン

錨が上 がる。
“ボ〜 ン”汽笛が鳴る。


『過 去を持つ愛情』

港を離れる船。



『過 去を持つ愛情』


『過 去を持つ愛情』

カ トリーヌは船に乗っているものと思っていたピエールは、ルイス警部の元にいるカトリーヌを見て驚く。
港に下りているカトリーヌに気付いたピエールが、
ピエールカ トリーヌ
カ トリーヌと狂気の表情で叫ぶ



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュランら

 カトリーヌの 愛は本物だったのだと気付いたのだ。
ルイス警部の横に立っているカトリーヌがピエールを見ている
 
信じて貰えぬ、胸の苦しさに耐え切れずに、秘かに船を降りたのだ。


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

ピ エール「カ トリーヌと叫ぶピエール



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

船が港から遠ざかって行く。
デッキから、
ピエール「カ トリーヌと叫び、頭を抱えるピエール



『過 去を持つ愛情』ダニエル・ジュランら

 愚かな自分に気がついたのだ。
 愛を信じ切れなかった自分に。

船がだんだん港から遠ざかってカタリーヌの姿が小 さくなって行く。


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

〜裁きの場〜

降りることでしか愛を伝えられなかった
カトリーヌは、船から降りた。
悲しみの中、ピエールを見送っていたカ トリーヌが、ルイス警部の方を見る


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

腰に手を当て船を見ていたルイス警部が、カ トリーヌを見る
無言で 歩き出すカトリーヌ


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

顔 に手をやり、カトリーヌの後から着いて行くルイス警部



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード

悲しみ に打ちひかれて波止場を離れて行くカトリーヌ



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

後ろに手を組み着いて行くルイス警部



『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

裁きの場に向かうカ トリーヌと獲物を捕らえたルイス警部が波止場を離れて行く


『過 去を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

やっと捕らえた獲物を逃がさないことを意味するかのように帽子を押さえて、
警部が裁きの場へ付き添って行く
 自ら裁きの場に向かう獲物だと知りながら。


『過去 を持つ愛情』トレヴァー・ハワード、フランソワーズ・アルヌール

Top

 何と切ないラストシーンであろ う。
 疑 いを持たれたまま暮らすことが出来ないカ トリーヌは、愛の証を立てるために船を降りる。
 罠 を仕掛けて獲物をじっと待っているルイス警部の元へ。
  信じてもらえない南米での生活より、処刑されるであろう裁きの場を選んだカトリーヌ。
“ずっと
疑 いの目を向けられてきていた彼女にとって、愛する人に“信じて貰えないことが耐えられない苦しみだから。

 ピエールはやっと、取れた南米行きに乗りカ トリーヌと一緒の生活をスタートさせようとするが、
 妻の裏切りを引き摺っていたピエールは、「あんな 素敵な女性がどうして自分を好きなのか」と思い続けてカ トリーヌの愛を信じることが出来なかった。
 
兵 士ということで妻殺しが裁かれないという不条理に不信感を持ちつづけていたピエールは愛する人を“疑い の目”で裁いてしまっ た。
 そ れが大切な人を失うことになるとは思いもしないで、裁きの場に追いやる行動をとったのだ。
 
裏 切りに遭ったは、本物の愛も信じられなくなる。なんと悲 しいことだろう
 過去の裏切 りを引きずり続け、真実の愛を失ったピエールは、後悔という重い十字架を背負い続けることであろう。

 愛する人が 出来たというカ トリーヌの弱みを握ったルイス警部は、心理的な罠を仕掛け、ピエールを揺さぶり疑惑を持たせる。
 カ トリーヌのすべてを知りたがるピエールは、敏腕警部には願ったり叶ったり で あった。
 ピエールに焦点を定め、遠巻きから仕掛けをし
、徐々に追い詰め、 雁字搦めにして止めを刺すという、憎たらしいほどに巧みな手法を見せた。
 このルイス警部を演じたトレヴァー・ハワードが憎たらしくなるように上手い。

 過去を持つ二人は、現実の愛も過去に振り回され、未来も閉ざされて し まった。
 妻を殺害したことが兵士の当然の行動の如く裁かれたことに不信感を持ち続けていたピエールは、最後ま で
カ トリーヌ信じることができなかった。
 
ピエールはカトリーヌを失ったことを苦しみ続け、カトリーヌ信じて貰えなかった寂しさを持ちなが ら裁 きの場へ向かう。
  二人に愛があったという真実だけでは、あまりにも哀しすぎる。
 動く物が好きだと言っていた
ピエールは、南米に向かう 船によって、愛する女から引き離されて行くことになった。なんと皮肉なのだろう

  切なく心に轟くファドと、過去を持つカトリーヌとピエール、そこに心理的な罠を仕掛けるルイス警部を絡める描写。
 巧みなカメラワークワークで演出した名作に拍手だ


過去”“現在”“未来の心理描写「鍵・ドア」「窓・鏡」を通して演出されているのも見逃せないところだ。

余 談だが、ピエール(ダニエル・ジュラン) がカトリーヌ(フラン ソワーズ・アルヌール)を抱き上げ浜辺連れ戻そうとするシーンは大変だったのだろうと思う。押 し寄せる波思 いの外強 くダニエル・ジュラ ンがバランスが取れないでい た。何度も撮り直された 感じだ。何度も映像を観ていると、こんなところも見えてくる。これも映画を観ていく中での愉しみ方かもしれな い。

WOWOW 日本語字幕: 吉田泉

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〜 クラシック映画に魅 せられて〜

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