天井桟敷の人々 - Les Enfants du Paradis -

ルメートル…「いつ会える？」
ガランス…「近いうちに　縁があればね」
ルメートル…「しかし　君　パリは広いよ」
ガランス…「好いた同士にはパリも狭いわ」
と、洒落た会話のこの作品は、19世紀の半ばのルイ・フィリップ治世下のパリを舞台に繰り広げられる。

　第1部(犯罪大通り)と第2部(白い男)で構成されている愛憎絵巻の芸術作品である。

　女芸人ガランス(アルレッティ)に恋い焦がれる男たち、それにナタリー(マリア・カザレス)が絡んで愛憎劇が繰り広げられてゆく。
　その中で印象的なのは、ガランスにひと目で心を奪われたバチスト(ジャン＝ルイ・バロー)のパントマイムだ。「恋なんて簡単よ」というガランスに「小さなときめき　永久に幸福だと信じた一夜の思い出」を大切にしているというナイーブなバチストの心情を表現し、パントマイムの神髄をみせた。

　バチスト役のジャン＝ルイ・バローは、劇団を主宰するなどフランス演劇界を代表する役者だそうだ。納得。そして、マリア・カザレスの熱演も惹きつける作品だ。

※歓楽街「犯罪大通り」(1862年のパリ大改造で消滅)というのは、実在した通りであったそうだ。19世紀初頭からパリのタンプル通りに数多くあった芝居小屋で、波乱万丈の大衆劇が大流行し、その演目の内容から、そう呼ばれるようになったと記されている。
この大通りのフュナンビュル座の芸人バチスト・ドゥビュローは、ピエロの無言劇で一躍人気スターになり、俳優のルメートル、殺し屋で詩人のラスネールも実在の人物だそうだ。
「天井桟敷」という言葉もこの通りにあった芝居小屋から生まれた俗語で、舞台から一番遠い立見席のことを示しているとある。
1990年、フランスのテレビ局主催の投票でこの作品は、第1位に輝き、ル・モンド紙は「しわ一つない若々しい映画」と評していたと言う。(雑誌 (2004.2.5)『週間　20世紀シネマ館　No.2』講談社　参考)

Top

『天井桟敷の人々』マリア・カザレス、ジャン＝ルイ・バロー

『天井桟敷の人々』ジャン＝ルイ・バロー、アルレッティ

Top

2009

…キネマ旬報創刊90周年記念特別企画[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]で10 位

**[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]**キネマ旬報創刊90周年記念特別企画
/	1位	2位	3位	4位	5位	6位	7位	8位	9位	10位
日本	①東京物語(小津安二郎)	②七人の侍(黒澤明)	③浮雲(成瀬巳喜男)	④幕末太陽傳(川島雄三)	⑤仁義なき戦い（シリーズ）(深作欣二)	⑥二十四の瞳(木下恵介)	⑦羅生門(黒澤明) ⑦丹下左膳餘話・百万両の壷(山中貞雄) ⑦太陽を盗んだ男(長谷川和彦)	⑧ -	⑨ -	⑩家族ゲーム(森田芳光) ⑩野良犬(黒澤明) ⑩台風クラブ(相米慎二)
外国	①ゴッドファーザー(フランシス・フォード・コッポラ)	②タクシー・ドライバー(マーチン・スコセッシ) ②ウエスト・サイド物語(ロバート・ワイズ)	③ -	④第三の男(キャロル・リード)	⑤勝手にしやがれ(ジャン・リュック・ゴダール) ⑤ワイルドバンチ(サム・ペキンパー)	③ -	⑦2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック)	⑧ローマの休日(ウィリアム・ワイラー) ⑧ブレードランナー(リドリー・スコット)	③ -	⑩駅馬車(ジョン・フォード) ⑩天井棧敷の人々(マルセル・カルネ) ⑩道(フェデリコ・フェリーニ) ⑩めまい(アルフレッド・ヒッチコック) ⑩アラビアのロレンス(デヴィッド・リーン) ⑩暗殺の森(ベルナルド・ベルトルッチ) ⑩地獄の黙示録(フランシス・フォード・コッポラ) ⑩エル・スール(ビクトル・エリセ) ⑩グラン・トリノ(クリント・イーストウッド)

※2009.11

[映画人が選ぶオールタイム・ベストテン]（日本編）（外国編）キネマ旬報創刊90周年記念特別企画は、日本編は114人、外国編は121人の映画評論家や作家、文化人の投票を集計した。