ライムライト
  
   クレア・ブルーム、チャールズ・チャップリン

※ストーリーを載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。

  自 信喪失テリーカル ヴェロプリ マドンナ告白真実プライドスポッ トライト 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わり に] web拍手 by FC2
(1952)(キ ネマ旬報第2位)-Limelight-
監督…チャー ルズ・チャップリン
製作…チャー ルズ・チャップリン
脚本…チャー ルズ・チャップリン
音楽…チャー ルズ・チャップリン
挿入曲♪テリーの テーマ
出演…チャー ルズ・チャップリン(道化師/カルヴェロ)
………クレア・ブルーム(バレリーナ/テレーズ/テリー)
………バスター・キートン
………シドニー・チャップリン(作曲家/ネヴィル)

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 私が初めて、『ラ イムライト』を観たのは、1970年代の後半だ。涙が溢れて止まらなかったのを思 い出す。

 ア メリカから追放されようとしていたチャップリンは己の哲学をこの作品で語っ た。

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自信喪失

精神的麻 痺で歩けなくなったのをリューマチによるものと思い、すべてが空しくなった若 いバレリーナ、テリー(クレア・ブルーム)が、自殺を図っ た。それを酔って帰ってきていた初老の道化師、カルヴェロ(チャー ルズ・チャップリン)が偶然に見つけ救う。

一生懸命 に介抱をしたカルヴェ ロが自信喪失しているテリーに、
カ ルヴェロ「人 生を恐れてはい けない 人生に必要な物は勇気と 想像力と 少々のお金だ
戦うんだ 人生そのもののためにだ 生き 苦しみ 楽しむんだ
生きていく事は美しく 素晴らしい
死と同じく 生も避けられない
生命だ 命だ
宇宙にある力が 地球を動かし 木を育てる
君の中にある力と同じだ その力を使う勇気と意志を持つんだ」と、 力強く言う。
 それは、かつ て喜劇の名優で、一世を風靡した道化師であったが、今や現実の世界から受け入れられていないカルヴェロ 自身にも言っていた。

カルヴェ ロは、ノミの芸で観客にうけたと思い客席を見回すとひとりもいない、怖い夢で 目を覚ます。


チャー ルズ・チャップリン

 彼自身も自信 喪失しているのだ。

〜テリー〜
 
テリーが歩けるようになるように、また、若いテリーに自信を持たせられるように情 熱を注ぐカルヴェロ。
 それはカルヴェロ自身の自信 にもなってゆく。

だが、カルヴェロがかつての名前を伏せ舞台に上がっても観客が出ていってしまうと いう冷ややかな反応が続く。
 プライドがズタズタにされ る。

テリーと知り合ってから止めていた酒を、また飲み始める。
 カルヴェロの逃げ場だ。

テ リーに今夜の舞台のことを話し契約が打ち切りになったと言う。
そ して、
カ ルヴェロ「私は終わりだ も うだめだ」
と、 テーブルにうつ伏せ泣き出す。
テ リー「バカな事を
カルヴェロが1回の舞台で旗をまくの?
貴方は偉大な芸人よ
今こそ芸人魂を見せる時よ 戦うのよ」と、 力強く立ち上がり、
泣き続けるカルヴェロに近寄り、

「窓の所で私に何といったの?
覚えているでしょ
地球を動かす宇宙の力のことよ
あなたの中にその力があるのよ
今こそその力を使う時よ 戦うのよ…」と、 言うとテリーは自分が立ち、歩いているのに気がついた。
「見てよ 歩いてるわ」
頭 をあげ、テリーを見て驚くカルヴェロ。
テ リー「歩いてるわ
歩いてるわ」
感 動に打ち震えながら、
「歩いてるわ
カルヴェロ 歩いてるわ
歩いてるわ
歩いてるわ」と、 歓喜の声を出し続ける。


クレ ア・ブルーム、チャールズ・チャップリン

テリーが 歩けるようになったのを喜びつつも、カルヴェロ自身は舞台に戻る気になれない でいた。

〜 カルヴェロ〜

6ヶ月が 経つ。
テリーはダンサーとして復帰していた。
カルヴェロはテリーの心配をよそに酒に溺れた生活を続けた。

そんなカ ルヴェロに舞台の話が来る。
当初は乗り気ではなかったが、舞台に立つことにする。

 
テ リーは、かつて文具店に勤めていた時に恋心を抱いていた作曲家ネヴィルとオーディションで再会する。

演出家の ポスタントはテリーの踊りに満足し、彼女を新しいプリマに選ぶ。
契約を交わすためにオーディションをした舞台から別室へ移って行く。

舞 台の袖に座っていたカルヴェロが一人残される。
誰一人気付かずにいる。
扉が閉じられ照明が消される。
かつて照明を浴びて活躍していた舞台だ。
カルヴェロの寂しそうな表情が映し出される。
 胸が締 め付けられる。
 切ない。

契約を終 えたテリーが舞台の扉を開け入ってくる。
暗 い所に座ったままのカルヴェロに、
テ リー「カ ルヴェロ」と、 声かける。
カ ルヴェロ「こ こにいるよ」
近 づいてきて、
テ リー「捜 してたのよ なぜ暗 い所に坐っているの?」と、 言い、
カルヴェロの隣に腰掛け、にこやかに彼を見詰めている。

握り締めたハンカチを見ながら、
カ ルヴェロ「ご らん こんなに 涙が出て」
テ リーの方を向き、
「止まらないんだ」
テ リーの手に優しく触れ、
「君は本当の芸術家だよ」
しっ かり見て頭を縦に振りながら、
「まちがいない」
気 を取り直し視線をそらして、
「泣いたりして バカだね」
に こやかにテリーは、
テ リー「カ ルヴェロ」
カ ルヴェロの様子を見て、
今言わなくてはと、

「この時を待ってたのよ
愛してるわ
前からいいたかったのよ
あなたが私を 夜の女と思った時からよ
私を引き取って 世話をして
私の命を救った
元気をつけて
私はあなたを愛してるわ」と、 愛を告白する。
ハ ンカチを握り締めていたカルヴェロが振り返る。
テ リー「お 願い カルヴェロ  私と結婚して」と、 求婚する。
カ ルヴェロ「バ カな事を」
テ リー「バ カな事じゃないわ」
カ ルヴェロ「私 は年よりだよ」
テ リー「何 だっていいのよ
愛してるのよ それが大切よ」
カ ルヴェロは真に受けず笑い出し宥める。

〜プリマドンナ〜

舞台初 日。
カルヴェロもピエロで出演している。

テリーのプリマとしてのバレエを披露する場面が迫る。
舞台の袖で出番を待っているテリーが、傍を通りかかったピエロ姿のカルヴェロに声 を掛ける。
テ リー「カ ルヴェロ」
テリーに近づきながら、
カ ルヴェロ「何 だね」
テリーは硬い表情で笑いながら、
テ リー「ど う?」と、自分の姿を見てもらう。
プリマのコスチュームを着けているテリーをながら、
カ ルヴェロ「す ばらしい」と、親指を立てる。
そのカルヴェロの手を握り締めて、
テ リー「こ わいのよ」
カ ルヴェロ「何 も怖かない」と、勇気付ける。
テ リー「祈っ てね」
カ ルヴェロ「神 は自ら助けるも のを助ける」と、 両手でテリーの手を包み込み勇気付ける。

い よいよ、出番が近づいてきた。
テリーの肩を抱き舞台中央を見ているカルヴェロ。
テリーの顔が強張っている。
怯えたような表情になり、
テ リー「踊 れないわ」と、ポールに顔を伏せしがみつく。
テリーを見て、
カ ルヴェロ「テ リー」と、驚いてテリーを眺める。
カルヴェロに向かって、
テ リー「だ めよ もうだめよ」
カ ルヴェロ「何」
怯 えた顔で、
テ リー「脚 が 動かないのよ」
テ リーの腕を引きながら、
カ ルヴェロ「神 経だ」
ポー ルをしっかり掴んだまま、
テ リー「だ めよ まひしてるの よ」
カ ルヴェロ「神 経だよ 踊りを 続けるんだ」と、 舞台を指差しながら説得する。
ポールにしがみついたまま、
テ リー「こ ろぶわ 脚が動かな いのよ」と、 泣き出す。
思いっきりテリーの頬を叩き、
カ ルヴェロ「踊 りを続けるん だ!」
舞 台を指差しながら追いやるカルヴェロ。
張り飛ばされたテリーは叩かれた頬に手をやりカルヴェロを見ながら舞台の方へ追い やられる。
それを見て、テリーの脚を指差しながら、
カ ルヴェロ「ご らん 脚は悪く ないよ
踊りを続けるんだ」と、 送り出す。
♪ テリーのテーマが流れる。
メ ロディーに合わせて踊りだすテリー。
踊 りながら舞台中央へ向かうテリー。
物陰で膝を突き手を合わせ天に向かって、
カ ルヴェロ「お 願いします
踊りを続けさせて下さい」と、 必死に祈るカルヴェロ。
カ ルヴェロを見た道具係が“何をしているのだろう”と 覗き込む。
ボ タンを探しているような仕草をしてその場を離れるカルヴェロ。
♪テリーのテーマに乗って踊り続けるテリー。
無 事に踊り終わる。
会場から拍手が沸き起こる。
吊 り天井からテリーの姿を見つめ、“よかった 踊り続けられてよかった”と喜ぶカルヴェロ。
拍手喝采を受け 挨拶を続けているテ リー。
それを嬉しそうに見ていたカルヴェロは、テリーに花束が渡されるのを見ると、“お祝いに駆けつけなくては”と慌てて降りてゆく。
小躍りしながらテリーがいる舞台上へ向かってゆくカルヴェロ。
幕が閉められた舞台上では、テリーが皆に囲まれて祝福されている。
その様子を見ながら両手を腰にあて嬉しそうに近づいてゆくカルヴェロ。
テリーがカルヴェロの姿を捕らえる。
テ リー「カ ルヴェロ!」
取り囲んでいる人たちを掻き分け、
テ リー「カ ルヴェロ!」
カルヴェロのところへ走って行き、
「カルヴェロ!」と 抱きつき号泣する。
テ リー「カ ルヴェロ…」
ちょっと恥ずかしそうにしながら、微笑み優しくテリーを包み込み宥めるカルヴェ ロ。
 嬉しそ うだ。
テ リー「カ ルヴェロ…」
泣 き続けるテリー。

〜告白〜

パティー が行われているが、カルヴェロの姿が見えない。
カルヴェロを捜すテリー。
テリーを誘う作曲家ネヴィル。
テリーとは別のところで飲んでいるカルヴェロ。

酔い潰れ てアパートのドアの内で座り込んでいるカルヴェロ。

カルヴェ ロを心配して家路を急ぐテリーを送ってくるネヴィル。
ア パートのドアの外で、カルヴェロの部屋の方を見上げ、
テ リー「彼 は寝たんだわ いろ んな事で疲れたのよ」と、 送ってくたネヴィルに言う。
ドアの内で眠り込んでいたカルヴェロが目を覚ます。
ドアの内にカルヴェロがいるとは思っていないテリーが、ネヴィルに向かって言う。
テ リー「私 も疲れが出てきた わ」
ネ ヴィル「で は行く」
ネ ヴィルの声がするので、カルヴェロは驚き声がする方を向く。
テ リー「入 隊の前に会える?」
ネ ヴィル「今 朝出発する」
ちょっと言いよどみ、
「さよなら テリー
…」
テリーを見詰めキスしようとするネヴィル。
テ リー「だ め やめて」
ネ ヴィル「僕 を愛してると」
テ リー「お 願い」
ネ ヴィル「も う我慢できない」
テ リー「お 願い」
ネ ヴィル「僕 たちは愛し合って いる」
テ リー「私 は何もいってない わ」
ネ ヴィル「黙っ てても態度で分 る」
テ リー「や めて」
驚いて聞き続けるカルヴェロ。
カルヴェロが聞いていると思っていないネヴィルはテリーを見詰めて、
ネ ヴィル「彼 に尽すのは分るが  結婚するのは間違っ てる
君はまだ若い
献身は確かに美しい だが愛じゃない」と、 言う。
それを聞いていたカルヴェロは体を起こしてドアから、そうっと離れて ゆこうとする。
 寂しそ うだ。
テ リー「い いえ ほんとに愛し てるのよ」
ネ ヴィル「憐 れんでるんだ」と、言うネヴィルの言葉がカルヴェロの 胸を突き刺さす。
フラフラとして立ち去ってゆくカルヴェロ。
 痛々し い。
カルヴェロが二人の会話を聞いていて、傷つき立ち去ったのを知らないテリーはネ ヴィルに一点を見詰めてながら言う。
テ リー「憐 れみ以上の物よ 私はそれと生きてきた のよ
彼のこころよ 優しさよ 彼の悲しさよ
私をそれから離せないわ」と。
そして、堪えきれずに泣き出す。
ネ ヴィル「お やすみ テリー
さよなら」と、 言い帰ってゆくネヴィル。
寂しそうに見送るテリー。

〜真実〜

翌朝、昨 晩のことを考えながらコーヒーを入れているテリー。
カ ルヴェロが昨日の舞台の記事をテリーに読んで聞かせる。
カ ルヴェロ「こ れをお聞き
“テレーズは自信に満ちていた
軽やかに 花を開かせ
女神ダイアナを思わせた”」
新 聞を閉じ、
「絶賛だ」
新 聞を置き、
「君は一夜で名をあげた」
テ リーの背後から、
「どんな気分がする」
向 き直りカルヴェロに抱きつき泣くテリー。
カ ルヴェロ「そ うだ 気がすむまで泣くんだ」と、 宥めるカルヴェロ。
 だが、テリー の涙はネヴィルを愛してことに気づいていて、どうしたらいいのだろうと苦しんでいる涙だ。
カ ルヴェロ「一 生に1度の事 だ」と、 言い離れるカルヴェロ。
 気持ちが 揺れ動いているテリー。
カルヴェロに背を向け、
テ リー「カ ルヴェロ すぐ結婚 しましょう
2人で行くのよ
田舎で暮すのよ 平和と幸福を掴んで」と、言う。
黙って聞いていたカルヴェロがテリーの方を向き、

カ ルヴェロ「幸 福…
君は初めて“幸福”といった」と、 言う。
コーヒーを入れながら、

テ リー「あ なたといれば幸福 よ」と、言う。
カ ルヴェロ「そうかね」
下を向きながらコーヒーを運びソファーに腰掛け、
テ リー「も ちろんよ 愛してる のよ」と、 言う。
カ ルヴェロ「年よりにむだだ よ」
コーヒーをスプーンで混ぜながら、
テ リー「む だではないわ」と、言う。
笑い出しカルヴェロ。

カ ルヴェロ「私 のために青春を むだにするのか
君は もっと幸福に生きて行けるんだ」
テ リーの方を向き、
「私は出てく」と、言う。
驚 いてカルヴェロを見て、
テ リー「何 をいってるの?」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「ど うしても出て行 くほかない」と 言い、窓の方へ歩いて行き振り向く。
「ここにいれば 自分を苦しめるだけだ」
テリーの方へ戻りながら、
「残された年月で真実を掴みたい
真実だ」
カルヴェロの苦しい胸の内を吐き出す。
 この 時、テリーを愛している自分に気付く。
「それしかない
真実だ」
自分に言い聞かせるように頷く。
呆然と歩き出し、
「それが望みだ」
窓の外を見ながら、
「それと少々の誇りが」と、言 うカルヴェロ。
カルヴェロの背に向かって、
テ リー「あ なたが行けば私は死 ぬわ
人生なんて苦しくて冷たいのよ
どうして分からないの? 愛してるのよ」と、言うテリー。
テリーの方へ戻ってきて、
カ ルヴェロ「愛 ではない」と、言うカルヴェロ。
カルヴェロの言葉を遮り、“自分自身にカル ヴェロを愛してるのよ”と 言い聞かせるように、
テ リー「そ うよ
そうよ」
その気持ちを掴んでいるカルヴェロはソ ファーに腰掛け、
カ ルヴェロ「君 が愛してるのは ネビルだ」と 言い脚を組む。
首を振り、
テ リー「ち がうわ」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「彼 は文具店に来た 作曲家だ」と、言 うカルヴェロ。
立 ち上がり、
テ リー「そ うよ まだいわな かったけど…」
テーブルにカップを置くテリー。
ソ ファーを軽く叩きながら、
カ ルヴェロ「私 が予言したよ  覚えているかね」と、言 うカルヴェロ。
聞きたくないとばかりに向きを変えるテリー。
吐き捨てるように続けるカルヴェロ。
カ ルヴェロ「テ ムズを見降し て…」
向 き直り、
テ リー「ち がうわ」と、言 うテリー。
カ ルヴェロ「彼 が君を愛してる という
君も彼を愛していたと」と、言うカルヴェロ。
カルヴェロの傍にきて、
テ リー「で も愛してなんかいな いわ
彼の音楽に憧れてたのよ 彼の芸術によ」と、言 うテリー。
テ リーの手を軽く叩きながら、
カ ルヴェロ「君 達は似合う」と、言うカルヴェロ。
テ リー「で も私は彼を愛してな いのよ
 お願い 私を信じて頂だい」と、言うテリー。

 
〜プライド〜

翌日、稽古に向かっていたカルヴェロは、演出家のポスタントがカル ヴェロの代わりの道化師を呼んでいたことを知り、プライドをずたずたにされる。
 
カ ルヴェロは置手紙を残し姿を消す。
号泣するテリー。

哀しみを 抱えたまま欧州のバレエ公演を続けるテリー。
プリマとして人気が高まってゆく。

一方、カ ルヴェロは大道芸人をしてひっそりと暮らしていた。
偶 然に会ったネヴィルに、
カ ルヴェロ「テ リーに会うか ね」と、言うカルヴェロ。
ネ ヴィル「YES」
“やはりね”と頷くカルヴェロ。
 ちょっ と寂しげだ。
カ ルヴェロ「ど うしてる」と、 ネヴィルに彼女の様子を尋ねる。
ネヴィルは、あの後、テリーが病気になったこと、治ってから欧州を回っていること を話す。
カ ルヴェロ「し じゅう 彼女 に?」
ネ ヴィル「YES」
嬉しそうに頷くネヴィル。
頷きながらカルヴェロ。
カ ルヴェロ「よ かった そうな ると思ってた
時は大作家だ つねに完全な結末を書く」と、言いつつ も寂しい。

ネヴィル からカルヴェロのことを聞いたテリーが、カルヴェロを捜し出す。
カ ルヴェロの後を追って声掛ける。
テ リー「カルヴェロ」

振 り向き驚く、
カ ルヴェロ「テリー
シラノだ 鼻がないがね」


クレ ア・ブルーム、チャールズ・チャップリン

嬉しそうに微笑みながら、
「かけよう」
カフェの席に腰掛ける。
嬉しそうにカルヴェロを見詰めているテリー。
カ ルヴェロ「彼 が話したんだ ね」と、言うカルヴェロ。
涙を浮かべて、
テ リー「ロ ンドン中捜してたの よ」と、言うテリー。
優 しくテリーの手に手を持って行き、
カ ルヴェロ「同 じテリーだな」と、言うカルヴェロ。
声 を詰まらせ、
テ リー「そ う?」と、言うテリー。
大きく頷き、
カ ルヴェロ「少々 大人になっ た」と、言うカルヴェロ。
涙声で、
テ リー「な りたくないわ」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「誰 でもだ」と、横を向くカルヴェロ。
テ リー「ひ とりだとおとなにな るわ」と、 言いバックからハンカチを取り出し泣き続けるテリー。
テリーの手を軽く叩き宥めながら、
カ ルヴェロ「テ リー それでい いんだ
それでいいんだ」と、言うカルヴェロ。
テ リー… 「そ うかしら」と言い、
カルヴェロを見て、

「わからないわ
何かが失われたわ
永久によ」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「何 も失われてない  少々変るだけだ」と、言うカルヴェロ。
テ リー「ま だ愛してるわ」と、言うテリー。
テリーを見詰めて、
カ ルヴェロ「も ちろんだ
いつまでも」と、言うカルヴェロ。
テ リー「カ ルヴェロ 戻ってき て」と、言うテリー。
首を振るカルヴェロ。
テ リー「戻っ てくるのよ」と、言うテリー。
首を振りながら、
カ ルヴェロ「も どれない
前に進まなきゃならない それが進歩だ」と、言うカルヴェロ。
テ リー「で は私も一緒に
あなたを幸福にするわ」と、言うテリー。
視線を逸らしながら、
カ ルヴェロ「そ れがつらい よ く分かってる」
ハンカチを取り出し顔を覆い鼻をかむカルヴェロ。
気持ちを察し声を詰まらせながら話題を変えるテリー。
テ リー「あ なたの記念公演をす るのよ」
カ ルヴェロ「お 情はうけない」と、言うカルヴェロ。
テ リー「お 情じゃないわ 演劇 史に残る公演になるのよ」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「大 げさな事はいや だ」
一点を見詰めて、
「だがもう1度健在を示したい」と、言うカルヴェロ。
嬉しそうに微笑み、
テ リー「そ うよ」と、言うテリー。
頷き、顔を上げテリーを見て、
カ ルヴェロ「ま だ老いぼれてな い」と、自分に言い聞か せる。
「温めていた出し物がある
私と友達とでやる ミュージカル・スケッチだ」と、言うカルヴェロ。
嬉しそうに、
テ リー「素 晴らしい」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「友 達がピアノの名 手で 私がバイオリンだ」と、言うカルヴェロ。
や る気になったカルヴェロを見て、
テ リー「素 晴らしい」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「絶 品のギャグがつ まってる」と、言うカルヴェロ。

〜家〜

カルヴェ ロ記念公演当日。テリーは“今回の公演でカルヴェロが失敗したら死んでしまう”と 心配して、さ くらを集めカルヴェロに気付かれないように、笑うところを打合せしてどこで笑うか教えていた。
演 出家のポスタントがそのテリーに尋ねる。
ポ スタント「い までも彼と結婚 するつもりかね」
一瞬躊躇するテリー。
 これがテリーの偽ざる 内心だ。
だ がテリーは、
テ リー「きっ と幸福にします わ」と 応える。
そ して、ネヴィルは気を使って外出していた。

カルヴェ ロは隠していたお酒を楽屋で飲んでいる。
そこへバレエのコスチューム姿のテリーが入ってくる。

気 付いてカルヴェロを見ているテリーに、
カ ルヴェロ「どう見えるね」
と、言うカルヴェロ。
テ リー「おかしいわ」
カ ルヴェロ「分ってるよ 健康 が心配なんだろ
飲まないとだめだ
胃の中で白い灯りが点滅してる
よくない 今夜は成功したいんだ」と、 言い腰掛ける。

    
クレ ア・ブルーム、チャールズ・チャップリン

腰 掛けたカルヴェロに、
テ リー「飲んでも?}と、言うテリー。
カ ルヴェロ「成功が気になるより  失敗が怖い」と、言うカルヴェロ。
テ リー「何が起ろうと田舎に行ける わ」と、言うテリー。
下を指差しながら、
カ ルヴェロ「ここが私の家だ」と、言うカルヴェロ。
テ リー「劇場は嫌いでしょ」と、言うテリー。 
カ ルヴェロ「嫌いだ 血も嫌いだが  私の血管を流れてる」と、言うカルヴェロ。
ド アがノックされる。
カ ルヴェロ「どうぞ」
ボー イがドアを開け、
ボー イ「カルヴェロさん 舞台です
幸運を お客が待ってま す」と、 出番を知らせる。
鼻で笑い、
カ ルヴェロ「ありがとう」と、言うカルヴェロ。
ド アが閉まる。
考え深く、
「気に入らん
みんなに親切にされると  いっそう孤独を感じる」と、言うカルヴェロ。
カルヴェロの肩を両手で包み込み ながら、
テ リー「カルヴェロ」と、言うテリー。   
テ リーの方へ顔を向けながら、
カ ルヴェロ「君さえ孤独を感じさせ る」と、今回の公演に疑問を抱くカルヴェロ。
テ リー「なぜそんな事を?」と、言うテリー。
首を振りながら下を向き、
カ ルヴェロ「わからない」
両肩を上げ、
「ほんとに分らない」と、言い手袋を手にして立ち上がる。
カルヴェロについてゆくテリー。
掛けてある衣装に気付いて、
テ リー「着替え衣装を」と、 取ってやるテリー。
楽屋を出る二人。

舞台の袖 で、
テ リー「着替え あそこよ」と 言い、カルヴェロの手を両手で包み込みながら話そうとすると、道具係が二人の間を通り抜ける。

 二人が引き裂 かれる運命であることを暗示させる演出を見せる。
テ リー「幸運を祈るわ」
カ ルヴェロ「見ないのか」
テ リー「忘れないで 愛してる わ」


クレ ア・ブルーム、チャールズ・チャップリン

カルヴェ ロ「ほんとう?」
テ リー「い つもよ 心のすべて で」と、言うテリー。
進 行係がカルヴェロを呼ぶ。
テ リー「幸 運を」と、 言い、楽屋へ駈けてゆくテリー。
進 行係へ、
カ ルヴェロ「い くよ」と、言い、手袋をはめ鞭を持ち舞台中央 へ小走りに向かうカルヴェロ。

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〜スポットライト〜

いよいよ、カルヴェロのノミの芸が始まった。
さくらの観客がカルヴェロを拍手で出迎え、テリーに教えられたところで笑ってい る。
 何時しか観客 は心から笑っていた。
様子を見に来ていた演出家のポスタントも涙を流し笑っている。

舞 台の袖のドアを開け、歓声を聞き喜ぶテリー。
スキップしながら楽屋へ戻り、涙を流しながら神に感謝する。
 舞台化粧も台無 しだ。
カ ルヴェロの後の出番に間に合うように慌てて化粧を直すテリー。
 
ア ンコールの拍手が鳴り止まない。
ライトを浴びている。
自信を取り戻したカルヴェロが嬉しそうにアンコールに応えている。

再起をか けた老コメディアンカルヴェロが温めていた出し物、友達(バス ター・キートン)と一緒にやるミュージカル・スケッチを出す。
 喜劇界 の大スター、チャッ プリンとバスター・キートン の芸を観られる凄い演出だ。
観客に大いにうけている。
そ して、バイオリンを弾きながら舞台から転げ落ちドラムの中にお尻を突っ込むオチの場面になる。
そのときに、心臓に重圧を…
痛みを堪えてバイオリンを弾き続けるカルヴェロ。
ピアノ伴奏の友達は気にするがカルヴェロの気持を思い演奏し続ける。
他は誰も気付いていない。
観客が大爆笑している。
舞 台下のカルヴェロを担ぎ上げる係員。
ドラムの中にお尻を突っ込んだまま、バイオリンを弾き続け舞台中央に。
拍手喝采だ。
担がれたままバイオリンを弾き続け舞台の袖へ。
鳴り止まない拍手。
舞台の袖でスタッフが笑いながら出迎え大成功を喜んでいる。
具合が悪そうにしながら、
カ ルヴェロ「こ れを」と、 進行係にバイオリンを渡す。
進 行係「ど うした?」
カ ルヴェロ「背 骨を傷つけた  背と胸が痛い」
そ れを聞いていたボーイが進行係に、
ボー イ「ブ レイク先生がいます」と、言う。
進 行係「呼 んで来い」
呼 びに行くボーイ。
苦 しそうな声を上げるカルヴェロ。
テリーが寄って来て、
テ リー「ど うしたの?」と、言うテリー。
進 行係「背 骨を」
カ ルヴェロの傍へ行きながら、
テ リー「お 医者を呼んだ?」と言い、
カルヴェロの様子を見て、

「すぐ楽屋へ」と、言うテリー。
進 行係「お 客にけがだといお う」と、言う進行係。
手を振り、
カ ルヴェロ「い や いうな
舞台に運んでくれ 私がいう」と、言うカルヴェロ。
拍手が鳴り続いている。
幕が開けられ、ドラムの中にお尻を突っ込んだまま係員に担ぎ上げられているカル ヴェロが現れると大喝采になる。
拍手が鳴り止まない。
パートナーが心配そうにカルヴェロを見ている。
拍手を制して、
カ ルヴェロ私のパートナーにとって
私にとって
最高の晩でした
続けたいのですが動けません」と、言うカルヴェロ。
カルヴェロのジョークだと思って大爆笑する観客。
拍手が沸き起こる。
舞台の袖へ運ばれるカルヴェロ。
幕が閉まる。
待っていた医者が指示を出す。
拍手が鳴り止まない。
演出家のポスタントが嬉しそうに舞台の袖へ来て、
ポ スタント「カ ルヴェロはどこ だい お祝いをいいたい」
思い出して声を上げて笑い、
「カルヴェロはどこにいるんだ」と 言って捜す。
後ろからネヴィルも嬉しそうにしてついてきている。
 ネヴィ ルも姿を見せないようにしてカルヴェロの舞台を見ていたのだ。
テリーを見つけ、嬉しそうに指差し、
ポ スタント「カ ルヴェロはどこ にいるんだ」と、言うポスタント。
テ リー「小 道具部屋へ けがを して」と、 応えるテリー。
ポ スタント「何」
驚 くポスタントとネヴィル。
医者を見つけ、
テ リー「医 者が」と、言うテリー。
ポ スタントに、
医 者「す ぐ救急車を」と、言う医者。
驚くテリーに、

医 者「背 中ではない 心臓で す」と、言う医者。
ポ スタント「カ ルヴェロが」
テ リー「痛 みが?」
医 者「い まはない
今夜危い」と、言う医者。
カ ルヴェロの元へ走ってゆくテリー。
小道具部屋のドアをそうっと開け、寝椅子に横になっているカルヴェロの傍へ行く。
カルヴェロを見詰めるテリー。
弱った声でテリーに、
カ ルヴェロ「何 といってる」と、聞くカルヴェロ。
テ リー「大 丈夫?」と、答えるカルヴェロ。
カ ルヴェロ「も ちろんだ
私は老いた雑草だ
刈られるほど頭をもたげてくる」
一呼吸し、
「拍手を聞いたか」と、言うカルヴェロ。
頷 くテリー。
カ ルヴェロ「さ くらじゃない」と、言うカルヴェロ。
テ リー「そ うよ」と、答えるテリー。
カ ルヴェロ「昔 のとおりだ
これからずっとこうだ」と、言うカルヴェロ。
医 者たちが入ってくる。
カ ルヴェロ「2 人で世界を回る
考えた事がある
君がバレエを  私が喜劇をやる」
視線の先にネヴィルを捕らえて、
「夕暮の優雅なふんいきの中で 彼がいう
君を愛してるという」と、言うカルヴェロ。
カルヴェロの手を取り、泣きながら、
テ リー「い いえ 私が愛してる のはあなたよ」と、言うテリー。
カ ルヴェロ「心 臓と心 何とい う謎だろう」と、言うカルヴェロ。
ボー イがテリーを呼びに来る。
ボー イ「テ レーズさん 舞台で す」
テ リー「す ぐもどるわ」と、 カルヴェロに抱きつき舞台へ向かう。
カ ルヴェロ「先 生 私は死にま す
だが私は何回も死んでいます」と、言うカルヴェロ。
医 者「痛 みますか」
カ ルヴェロ「も う痛まない
テリーは?
彼女が踊るのを観たい」と、言うカルヴェロ。
ポスタントが、
ポ スタント「お 待ち」と、言って係員を連れてくる。
ポ スタント「寝 椅子をそでに 持ってくんだ」と 指示して寝椅子を移動させる。
医 者「救 急車を見て来ます」と、言う医師。

寝 椅子をテリーのバレエが見えるように向けられる。
ポスタントとネヴィルが傍に寄り添う。
テリーのバレエが始まっている。
ポスタントがカルヴェロのようすに気付く。
慌ててネヴィルが医者を呼びに行く。
医者が死を確認する。
救急隊員がカルヴェロに白布をかける。
 白布をかけられたカルヴェロがテリーを 見ているようだ。
舞台で♪テリーのテーマに乗ってテリーが舞っている。
カルヴェロの死を知らずに踊り続けるテリー。
 だが、 テリーには分かっているカルヴェロが何時でも傍にいてくれると。

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 素晴らしいラストシーンに涙が止ま らな い。
 ♪テリーのテーマに込められた哀 愁漂う、美しいメロディーがいつまでも脳裏に焼 きつく。
 
  アメリカから追放されようとしていたチャッ プリンがカルヴェロを通し て、悔しい胸の内を語っている。
 「私は道化師なんだ 表現したいだけなんだ」と、 その思いが伝わってきて切ない。

作曲家ネヴィル役は、チャッ プリンの実の息子。酔っ払って帰って くる最初のシーンでもチャッ プリンの幼い子供たちが出演してい る。
※1919年にD・W・グリフィスたちと組んでユナイテッド・アーティスツ社を創立。以来、52年の『ラ イムライト』まで
チャッ プリンは次々と傑作を作り続けたが、『独 裁者』『殺人狂時代』で非米活動委員会から左翼思想を批判され、『ライムラ イト』を最後にチャッ プリンは一家を上げてすすんでヨー ロッパに移り、スイスのヴヴェイに落ち着く。その後の再入国を事実上拒否されて、72年のアカデミー賞授与式出 席まで20年間アメリカの土はふまなかった。
アメリカは、チャッ プリン「赤」だ、「共 産党員」だといいだしたそうだ。(スクリーン 1972.12 ビッグスターアルバム 世界一流監督の足跡 チャー リー・チャップリン 〜人と芸術〜 岩崎昶筆 参考)
※カルヴェロテリーと再開した時に
「シラノだ 鼻がないがね」とおどけて見せる。
このようなところにもチャッ プリンはカルヴェロと、巨鼻の醜男の 詩人、剣豪シラノ・ド・ベルジュラックを重ね合わせて表現している。興味深い。


チャー ルズ・チャップリンクレア・ブルーム

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