NEWSトーク(プロ野球)
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前田智徳選手
-Tomonori Maeda-
<2006 年4月12日　プロ野球セ・リーグ開幕後10試合>

更新　2006/4 /13 17:33

◆カー プ前田智徳選手の苦悩。

1990年9月13日 ジャイアンツ戦(8回表)決勝2ランホームランを放つ前田選手　読売テレビより

　生え抜 きの選手の活躍が一番見られる球団と思えるカープを私は30年程前から応援している。
　特に、走攻守が揃った前田選手に注目してきた。
　何年前かは覚えていないが、目に焼きついて忘れられない光景がある。
　5回裏、外野を守っていた前田選手が1-0の緊迫したジャイアンツ戦で強 い打球を後逸し打者をホーム(ランニングホームラン)に還らせて得 点を許して勝利投手の権利を消してしまった試合だ。
　上手い外野手に見られる紙一重の プレーであったと思うが前田選手は悔しさを体中に感じさせていた。
　そして、その後の打席で決勝2ランホームランを放った。
　ベースを1周する時に泣いていた。
　ソフトボールを経験していた私 は、その時の前田選手の気持ちが痛いほどに伝わってきた。
　“よかったね”と、 テレビの画面に映し出される前田選手に心で声を掛け、一緒に泣いた。
　そして、試合後のヒーローインタ ビューを前田選手が断ったと聞き、益々気に入った。
　だが、前田選手には、その後、試練が待ち構えていた。
　試合中にアキレス腱を断裂してしまった。
　戦列から離脱する。
　やっと、復帰した前田選手は、その後も 故障が続き、シーズンをフル出場することが出来なくなった。
　そこで、打撃のみに活路を見出し てゆくことにした前田選手は再発を恐れ一生懸命に走らなくなった。
　そのことで、打点に重きを置く外国人の チームメイトとトラブルがあったこともあった。（この件に関しては外国人選手を支持する）
　カープは看板の前田選手を切り捨てるわ けにはいかず、守る。
　そして、前田選手は職人と言われ る打法を3番や5番の打席で見せてゆく。
　何 時しか、4番を前田にと話があった時に「自分はフルシーズン、出場できないから」と断ったと聞いたことがある。
　それ程、打順にもこだわりを持っ ている。
　その前田選手に新監督ブラウンは2番を打たせることにした。
　カープファンにはよく分かることだが、 ここ数年2番はネックになっている打順だ。
　赤ヘル旋風を巻き起こしていた頃の高 橋、野村の1・2番コンビのような理想的な打順が組めないできていた。
　1番に適している緒方選手さえ3番や5 番を打たせているような状況が続いた。
　それで、今シーズン、ブラウン監 督は1番・緒方、2番・前田にした。
　この布陣は、ジャイアンツがかっ てとっていた仁志、清水の1・2番コンビのような打撃重視の変則的な形を考えてのことだろう。
　だが、職人気質の前田選手は本来 の2番の役割にこだわっているように見える。
　自分がこの打順に向いていないと 思って悩んでいる。
　それが、打率(.162)に反映されている。
　このまま、シーズンを終えること はないと思うが、HRを打っても自分で納得がいかなければ首をかしげながらダイヤモンドを周る職人の打 法を早く見せて欲しい。
　かって、三冠王を3回取った天才 落合監督が唯一天才と認めた男が前田選手だと聞いて“にんまり”とした私は今日も“前 田、前田、前田”と声援を送るだろう。

追記

前田選手が打 球を後逸したのは、1990年9月13日ジャイアンツ戦(5回裏に川相選手がセン ター に放った打球)で、勝利投手の権 利を失ったのは北別府 選手だった。

広 島一筋で23年、いぶし銀 の活躍を見せた前 田選手は今シー ズンで引退した。
「天才」「侍」と称さ れた打法が 見られたこと に、心から「あ りがとう」「お疲れ様」と前田選手を拍手で 送った引退セレモニー(10月3 日)から、早、2ヶ 月程経った。
“果た してこのよ うな選手が、また、見られるのだろうか”と思う今日この頃だ。

更新　2013/11/29 19:42