二十四の瞳

   田辺由実子(加部小ツル)、上原博子(片桐コトエ)、石井裕子(“マちゃん”/香川マスノ)、高峰秀子(“小 石先生”/大石先生/大石久子)
   神原いく子(“フジちゃん”/木下富士子)、草野節子(“マッちゃん”/川本松江)、加瀬かをる(山石早 苗)、小池泰代(“ミーさん”/西口ミサ子)
   宮川真(“キッチン”/徳田吉次)、佐藤国男(“ニクタ”/相沢仁太)、渡辺五雄(竹下竹一)、郷古秀樹 (“ソンキ”/岡田磯吉)、寺下雄朗(“タンコ”/森岡正)

※ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  〜プロローグ昭和三年四月四日〜〜始業式〜〜大石先生と生徒たち〜〜九月一日〜〜“大石”〜〜大石先生の家〜〜約束五年後〜〜春休み
修学旅行〜〜將來への希望〜〜校長〜〜卒業式
八年後〜〜四年後〜〜八月十五日〜〜戦争が終わった 翌年〜〜記念写真エピローグ〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに ←:終わりに] web拍手 by FC2
(1954)(白黒)(松竹大 船)(キ ネマ旬報ベストテン第1位)(ゴー ルデングローブ外国語映画賞)(第9回毎日 映画コンクール日本映画大 賞)(ハリウッド外人記者協会による世界映画祭で最 高点獲得)-Twenty Four Eyes/Twenty-four Eyes-
監督…木 下恵介(第9回毎日映画コンクール監督賞)
製作…桑田良太郎 
原作…壷井栄(1899-1967 香川県小豆島生まれ)
脚色…木 下恵介(第9回毎日映画コンクール脚本賞)
撮影…楠田浩之
美術…中村公彦
録音…大野久雄(第9回毎日映画コンクール録音賞)
照明…豊島良三
音楽…木下忠司
挿入曲♪仰げば尊し♪アーニー・ローリー♪村 の鍛冶屋♪故郷♪七つの子♪春の小川♪荒城の月♪浜辺の歌♪朧月夜♪里の秋♪せいくらべ♪冬の星座♪埴生の宿♪ 庭の千草♪蛍の光
出演…高 峰秀子(大 石先生/小学校のおなご先生“小石先生”“泣きみそ先生”/大石久子)(ブルーリボン主演女優賞)(第9 回毎 日映画コンクール女優主演賞)(映画世界社女優演技賞)(日 本映 画功労女優賞)(産経国民映画女優賞)
………笠智衆(男先生)
………浦辺粂子(男先生の妻)
………明石潮(校長)
………高橋トヨ子(小林先生)
………大塚君代(田村先生)
………鬼笑介(教員)
………高木信夫(教員)
………上村勉(教員)
………寺田佳代子(看護婦)
………小林十九二(松江の父)
………草香田鶴子(松江の母)
………清川虹子(よろずや)
………高原駿雄(ちりりんや/加部小ツルの父)
………浪花千栄子(飯屋のかみさん)
………本橋和子(マスノの母)
………天本英世(大石先生の夫)
………八代豊、八代敏行(大石先生の長男/大吉)
………浮田久之、木下尚爾(大石先生の次男/並木)
………郷古慶子(大石先生の長女/八津)
………夏川静江(大石先生の母)
………郷古秀樹、郷古仁史、田村高廣(“ソンキ”/岡田磯吉)
………渡辺五雄、渡辺四朗、三浦礼(竹下竹一)
………宮川真、宮川純一、戸井田康国(“キッチン”/徳田吉次)
………寺下雄朗、寺下雄章、大槻義一(“タンコ”/森岡正)
………佐藤国男、佐藤武志、清水竜雄(“ニクタ”/相沢仁太)
………石井裕子、石井シサ子、月丘夢 路(“マちゃん”/ 香川マスノ)
………小池泰代、小池章子、篠原都代 子(“ミーさん”/ 西口ミサ子)
………草野節子、草野貞子、井川邦子(“マッちゃん”/川本松江)
………加瀬かをる、加瀬香代子、小林 トシ子(山石早苗)
………田辺由実子、田辺南穂子、南眞 由美(加部小ツル)
………神原いく子、尾津豊子(“フジちゃん”/木下富士子)
………上原博子、上原雅子、永井美子(片桐コトエ)
※昭和29年度藝術祭參加作品
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 瀬戸内海小豆島の分校に赴任して きた 新任のおなご先生と担任した12人の小学一年生の生徒との交流を通して、貧しい暮しや戦争の悲惨さを描 いてゆく。
 叙情派、木 下恵介監督の最高傑作である。

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〜プロローグ〜

この作品は、♪仰げば尊しを歌う子供たちの歌声から始まる。

♪仰げば尊し わが師の恩
教えの庭にも はやいくとせ
おもえばいと疾し このとし月
いまこそわかれめ いざさらば

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〜昭和三年四月四日〜


『二十四の瞳』

♪アーニー・ローリーのメロディーが流れる。

“瀬戸内海の 島々の中で 淡路島につぐ 二番目に大きな島
小豆島”

“小学校の生徒は 四年までが岬の分教場にゆき 五年になってはじめて 片道五キ ロの本村の 小学校へかようのである
昭和三年四月四日”

生徒たちが♪村の鍛冶屋を歌いながら登校している。


『二十四の瞳』子供たち

♪しばしも止まずに 槌うつ響
飛散る火の花 はしる湯玉
ふいごの風さへ 息をもつがず
仕事にせい出す 村の鍛冶屋
 
あるじは名高き いつこく老爺
早起・早寝の 病知らず
鐵より堅しと ほこれる腕に
勝りて堅きは 彼がこころ

かせぐにおひつく 貧乏なくて
名物鍛冶屋は 日日に繁昌
あたりに類なき 仕事のほまれ…

退職する小林先生に気が付いて歌をやめ走り寄る。
新 任の先生の事を聞き名前が大石でも小さいのだったら「小石じゃ 小石先生じゃ」といい、小林先生に別れを言って分教場に向かう。

その生徒たちの前を大石先生(高 峰秀子)が洋服で自転車に乗って通りかかる。
生 徒たちに、
大 石先生・・・「おはよう」と 明るく挨拶をする大石先生。

♪故郷のメロディーが流れる。

驚いて大石先生を見ながら、
女 の生徒・・・「ごっついな〜」と 言う。
男 の生徒・・・「おなごのくせに 自転車に乗っ てやがる」と 言う。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)と子供たち


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

大石先生・・・「おはよ うございます」と 挨拶する大石先生。
畑 仕事をしていた手を休め、大石先生を見ながら、
岬 の人・・・「おなごが 洋服きといばい」と 言う。

大石先生・・・「おはよ うございます」と 挨拶する大石先生。
大 石先生を見て、驚き慌てて近所の奥さんの方へ走ってゆき、
よ ろずや・・・「ちょっと ちょっと 今 洋服きた女の人が 自転車に乗って通ったの
あれは 今度のおなご先生かいのお」と 言う。
 よろずやのおかみ役の清川虹子が小走りする姿が上手い。
 噂話好きの田舎のおばさんが板についている。

近所の奥さんを連れてきて自転車に乗っている大石先生を見ながら、
よ ろずや・・・「男みたいよおな 上着きとる」と 言う。
近 所の奥さん・・・「ほんに 日本も変わったの お
おなご先生が自転車に乗って 洋服もきとる
警察に言われんせいかいな〜」

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〜始業式〜

分教場にある大石先生(高 峰秀子)の自転車に生徒たちが群がって騒いで いる。
そ れを見た大石先生が、
大 石先生・・・「みんな そんなに自転車 珍し いの
乗 せてあげようか」と 言う。
生 徒たちが逃げてゆく。


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

始業式が終わり、12人の小学1年の担任となった大石先生は教室で、
大 石先生・・・「さあ みんな自分の名前を呼ば れたら 大きな声で返事するんですよ
先生 早くみんなの名前を覚えてしまいたいから ねっ」


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

「“岡田磯吉君」 


『二十四の瞳』上原博子(片桐コトエ)、郷古秀樹(“ソンキ”/岡田磯吉)

「岡田磯吉君 いないんですか〜”」と 言う。
ニ クタ・・・「いる」
大 石先生・・・「じゃあ ハイって返事をするの よ
“岡田磯吉君”」
ニ クタ・・・「ソンキ
返事せい」
生 徒たち・・・笑う。
大 石先生・・・「みんな “ソンキ”っていう の」
ソ ンキ・・・頷く。


『二十四の瞳』郷古秀樹(“ソンキ”/岡田磯吉)

大石先生・・・「そう  そんなら“磯吉のソンキさ〜ん”」


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

ソンキ・・・「ハイ」
生 徒たち・・・楽しそうに声を出して笑う。
大石先生は出席を取りながら、それぞれのあだ名などをメモしてゆく。


『二十四の瞳』渡辺五雄(竹下竹一)


『二十四の瞳』宮川真(“キッチン”/徳田吉次)


『二十四の瞳』寺下雄朗(“タンコ”/森岡正)


『二十四の瞳』佐藤国男(“ニクタ”/相沢仁太)


『二十四の瞳』草野節子(“マッちゃん”/川本松江)


『二十四の瞳』小池泰代(“ミーさん”/西口ミサ子)


『二十四の瞳』石井裕子(“マちゃん”/香川マスノ)


『二十四の瞳』神原いく子(“フジちゃん”/木下富士子)


『二十四の瞳』加瀬かをる(山石早苗)


『二十四の瞳』上原博子(片桐コトエ)


『二十四の瞳』田辺由実子(加部小ツル)

♪故郷のメロディーが流れる。

大石先生が自転車に乗って帰る。
生 徒たちに、
大 石先生・・・「さようなら」と 手を振って言う大石先生。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)と子供たち

生徒たち・・・「さよう なら 大石小石 大石小石…」
大石先生に付けたあだ名を生徒たちが繰り返す。

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〜大石先生と生徒たち〜

大石先生は生徒たちと汽車ゴッコをしたり、歌を歌って野原を散歩したりして子供た ちの気持ちを掴んでゆく。

大石先生・ 生徒たち・・・「♪汽車は走る 煙をはいて
シュシュシュ シュシュシュ
シュシュシュ シュシュシュ」


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)と子供たち

「トンネル抜けて 鉄橋渡り
汽車は走る シュシュシュ シュシュシュ
汽車は走る 煙をはいて
シュシュシュ シュシュシュ
シュシュシュ シュシュシュ
トンネル抜けて 鉄橋渡り
汽車は走る …」

「♪…なぜ啼くの 烏は山に」


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

「可愛い七つの 子があるからよ
可愛い可愛いと 烏は…」

「♪開いた開いた 何の花が開いた」


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

「レンゲの花が開いた
開いたとおもったら いつの間にかつぼんだ

「つぼんだつぼんだ 何の花がつぼんだ」


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)と子供たち

「レンゲの花がつぼんだ
つぼんだとおもったら いつの間にか開いた」

大石先生は洋服を着て自転車に乗っていることを岬の人たちによく思われていないこ とを悩む。
それでも、12人の瞳を思い浮かべ頑張っていくことを決意する。
 映し出される“二十四の瞳”がキラキラ輝いている。

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〜九月一日〜


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)と子供たち

大石先生(高 峰秀子)は生徒たちの悪戯で足を怪我し て学校を休むことに なる。

♪烏なぜ啼くの 烏は山に
可愛い七つの 子があるからよ


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)ら

可愛い可愛いと 烏は啼くの
可愛い可愛いと 啼くんだよ

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〜“大石”〜

男先生(笠智衆)が 大石先生の代わりに音楽を教えるが生徒たちはつまらなかった。

生徒たちは大石先生に会いたくなり、島から見ると近く見える先生の所へ皆で歩いて いくことにする。
だが…

♪故郷♪朧月夜がメドレーで流れる。

大石先生の家は分教場から遠かった。

♪七つの子のメロディーが流れる。


『二十四の瞳』子供たち

先生が自転車で50分かかって通勤していた距離だ。
中々先生の家に着かない。
コトエが泣き出す。


『二十四の瞳』田辺由実子(加部小ツル)、上原博子(片桐コトエ)ら

♪烏なぜ啼くの 烏は山に
可愛い七つの 子があるからよ

可愛い可愛いと 烏は啼くの
可愛い可愛いと 啼くんだよ

皆も泣き出す。


『二十四の瞳』子供たち

泣きながら歩いている子供たちの傍をバスが“ブッ ブ〜”と クラクションを鳴らしながら通り抜けようとする。


『二十四の瞳』子供たち

バスに乗っている大石先生を目にした竹一(渡辺五雄)が、
竹 一・・・「あっ!小石せんせいだ!」と 声を上げバスを追う。


『二十四の瞳』子供たち

生徒・・・「小石せんせ い!」
生 徒たち・・・「小石せんせ〜い! 小石せん せ〜い!
小石せんせ〜い! 小石せんせ〜い!」
小石先生といいながらバスを追いかける。


『二十四の瞳』子供たち

生徒たち・・・「小石せ んせ〜い! 小石せんせ〜い!
小石せんせ〜い! 小石せんせ〜い!」
大石先生がバスの窓から身を乗り出し子供たちを見て驚く。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

バスを止めてもらい松葉杖姿で降りてくる。


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

駆け寄る子供たち。
生 徒たち・・・「大石せんせ〜い! 大石せん せ〜い!」
「大石せんせ〜い! 大石せんせ〜い!」
先生に抱きついて皆泣き出す。
 先生に駆け寄ってゆく子供たちはいつの間にか、先生を本名で呼んでいる。
 不安で堪らなかった子供たちに、先生は“大石”に見えたのだ。
 見事な演出だ。
大 石先生・・・「どうしたんいったい どうした ん うん」


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

ニクタ・・・「先生の顔 見にきた〜ん」
大石先生も涙が溢れてくる。


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

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〜大石先生の家〜


『二十四の瞳』子供たちと夏川静江(大石先生の母)、高峰秀子(“小石先生”/大 石久子)

大石先生は今日の記念に写真を撮ってもらう。


『二十四の瞳』田辺由実子(加部小ツル)、上原博子(片桐コトエ)、石井裕子 (“マちゃん”/香川マスノ)、高峰秀子(“小石先生”/大石先生/大石久子)
神原いく子(“フジちゃん”/木下富士子)、草野節子(“マッちゃん”/川本松 江)、加瀬かをる(山石早苗)、小池泰代(“ミーさん”/西口ミサ子)
宮川真(“キッチン”/徳田吉次)、佐藤国男(“ニクタ”/相沢仁太)、渡辺五雄 (竹下竹一)、郷古秀樹(“ソンキ”/岡田磯吉)、寺下雄朗(“タンコ”/森岡正)

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〜約束〜

子供たちと大石先生の思いが岬の人たちの大石先生への偏見も変えさせてしまう。
だが、大石先生は怪我で通えないためにやむなく分教場から本校に変わることにな る。


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

それを子供たちに告げると先生の姿を見て喜んでいた皆が泣き出す。
大石先生も泣いている。

♪アーニー・ローリーのメロディーが流れている。

大石先生は皆が本校に通う五年生に再会することを約束し小船に乗る。
子供たちや岬の人たちに見送られ、大石先生を乗せた小船が岬から遠ざかってゆく。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)ら

男先生が、
男 先生…「歌を歌うて送ってやるんじゃ」と、 言って自分が教えた歌の拍子を取る。
が、子供たちが歌うのは大石先生に教わったこの歌だった。

生徒たち・・・「♪烏な ぜ啼くの 烏は山に」


『二十四の瞳』子供たち

「可愛い七つの 子があるからよ

可愛い可愛いと 烏は啼くの
可愛い可愛いと 啼くんだよ」


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)ら

「山の古巣へ いって見て御覧…」

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〜五年後〜

♪春の小川のメロディーが流れる。

“海の色も 山の姿も そっくりそのまゝ 昨日につゞく 今日であった
しかし 流れ去った 五年の歳月の 間に
満州事変 上海事変 世の中は不況の波に おしまくられていた
だが 幼い子供達は 前途に何が待ち 構えているかをしらず 彼等自身の喜びや  彼等自身の悲しみの 中で 伸びていった”

♪荒城の月が流れる。

生徒たち・・・「♪秋陣 営の 霜の色
鳴きゆく雁の 数見せて
植うる剣に 照りそいし
昔の光 いまいずこ

いま荒城の 夜半の月
替らぬ光 たがためぞ
垣に残るは ただ葛
松に歌うは ただ嵐

天上影は 替らねど
栄枯は移る 世の姿
写さんとてか 今もなお
鳴呼荒城の 夜半の月」

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〜春休み〜

大石先生が結婚する。

ユリの花の弁当箱を欲しがっていた松江の家は貧しかった。
母親が赤ちゃんを産んだ後に死に、益々苦しくなってきた。
学校にこなくなった松江の家庭訪問した大石先生が、
大 石先生・・・「ユリの花の弁当箱を持って 学 校においでね 先生 待っているからね」と、 子守をしている松江にユリの花の弁当箱を差し出す


『二十四の瞳』草野貞子(“マッちゃん”/川本松江)、高峰秀子(“小石先生” /大石久子)、小林十九二(松江の父)ら


『二十四の瞳』

だが、そ の弁当箱を持って松江が学校にゆくことはなかった。

生徒から松江のところの赤ちゃんが死んだことを知らされる大石先生。

大石先生が職員室に入ってくる。
異様な空気を感じた大石先生が同僚に聞くと、「“赤”の疑いをかけられた片 岡先生が警察に連れて行かれた」という。
校長が入ってきて、「片岡先生は“草の実”という文集をつかったことで、反 戦思想ととられたらしいが証拠品がないので直ぐ帰されるだろう」と安堵の表情で話す。
それを聞いた大石先生が、その文集なら私も使ったことがあるが、上手い文集 で“赤”というようなものではないと言う。
校長(明石潮)は 慌てて大石先生を連れ立って職員室を出て文集を取り上げる。
大石先生は校長室で燃やされる文集を見詰めながらやるせ無い思いが募ってゆく。


『二十四の瞳』


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

大石先生は学校に来る日を待っていると松江に手紙を出す。

大石先生が教室で生徒たちの質問に答えた内容について校長が呼び出し、注意する。
そして、
校 長・・・「あんまり正直にあうと 馬鹿を見るちゅうことだから」と。

大石先生は松江が嫌々親戚のところに連れて行かれたことを生徒に聞き、なにもして あげられないのを嘆き泣く。

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〜修学旅行〜

“秋 十月”

修学旅行。


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)ら

皆に促されてマスノが♪浜辺の歌を歌う。


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)ら

マスノ・・・「♪あした 浜辺を さまよえば
昔のことぞ しのばるる
風の音よ 雲のさまよ
寄する波も 貝の色も

ゆうべ浜辺を もとおれば
昔の人ぞ しのばるる
寄する波よ 返す波よ
月の色…」

修学旅行の引率をしていた大石先生が通りかかった飯屋の前で、「天ぷら一丁」と松江(草野貞子)の声がした。
驚いて飯屋ののれんを開けるとたすきがけで働いている松江がいた。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

大石先生・・・「マッ ちゃん!」

♪七つの子のメロディーが流れる。


『二十四の瞳』草野貞子(“マッちゃん”/川本松江)

大石先生は松江のことが心配で話を聞こうとするが飯屋のおかみ(浪花千 栄子)が割り込み、松江と ろくに話をさせない。
出港の時間が迫り、
大 石先生・・・「マッちゃん! 元気でね 手紙 頂戴ね 先生も書くから」と 言う大石先生。
俯く松江。
松江を見詰め涙を浮かべて、


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

大石先生・・・「さよう なら」
と言い店を出る大石先生。
じっと立ち竦んでいた松江は、泣きながら店の裏口から外へ出る。


『二十四の瞳』草野貞子(“マッちゃん”/川本松江)

生徒たち・・・「せん せ〜い! せんせ〜い!
せんせ〜い! どこいっといたん」と、 生徒たちが大石先生の傍に走って来ている。

隠れる松江。


『二十四の瞳』草野貞子(“マッちゃん”/川本松江)ら

♪烏なぜ啼くの

表通りで楽しそうに大石先生を取り囲み、手を引っ張っている同級生の姿が目に入 る。


『二十四の瞳』子供たちと高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

路地裏で寂しそうにそれを見詰め泣いている松江。

烏は山に


『二十四の瞳』草野貞子(“マッちゃん”/川本松江)

修学旅行生たちを乗せた船が港を離れてゆく。

可愛い七つの


『二十四の瞳』草野貞子(“マッちゃん”/川本松江)

その船を見て声を出して泣き続ける松江。

子があるからよ
可愛い可愛いと 烏は啼くの


『二十四の瞳』草野貞子(“マッちゃん”/川本松江)

可愛い可愛いと 啼くんだよ

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〜將來への希望〜

黒板に“將來への希望”と書かれている。
生 徒たちが机に向かって、それぞれの希望を書いている。
大石先生は、松江のことを思いながらユリの花を鉛筆書きしている。
そして、視線を空席の松江の机に向ける。
ユリの花の絵に“川本松江”と書き天を仰ぐ。

生徒たちは、それぞれの思いを書いている。
何も書けないでいた富士子(尾津豊子)が突然泣き出す。
大 石先生・・・「どうしたの フジちゃん」
泣 いている富士子の席の方へ行き、
大 石先生・・・「どうしたちゅうの いったい
えっ
先生のところへいらっしゃい ねっ ねっ」
大 石先生は、富士子を抱き寄せるようにして連れて出る。

渡り廊下で優しく肩に手を置く大石先生に、
富 士子・・・「でも あたし 將來への希望なんて いって 何も書けないんです」と 言う富士子。
富士子を宥める。
大 石先生・・・「書けなくたっていいわ
書かなくても 先生よ〜く分かる フジちゃんの辛いの」
富士子が家庭の事情を辛そうに話している。
堪らなくなって、
大 石先生・・・「もういいの もう言わなくって いい」
富士子を強く抱きしめる。
泣き続けている富士子を抱きながら、
大 石先生・・・「先生にも どうしていいか分か らないけど
あんたが苦しんでるの あんたのせいじゃないでしょう
お父さんやお母さんのせいでもないわ
世の中の いろんなことから そうなったんでしょう」
富士子を前にして、両肩をしっかり掴み、
「だからねっ 自分にがっかりしちゃだめ
自分だけはしっかりしてい ようと 思わなきゃねっ
先生 無理なこと言っているようだ けど
先生 もう他に言いようがないのよ」
富士子の髪を撫でながら、
「その代り泣きたい時は いつでも先生ところにいらっしゃい
先生も一緒に泣いたげる ねっ」
胸がつまり泣き出す大石先生。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)、尾津豊子(“フジちゃん” /木下富士子)

大石先生は勉強が好きで成績がいいコトエ(上原雅子)に進学を薦めるが、コトエは母親に孝行したいし、進学しないという約束で修学旅行 も行かせて貰ったと言う。

生徒たちにどうしてやることもできない現状に無力感だけが漂う大石先生。


『二十四の瞳』上原雅子(片桐コトエ)、高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

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〜校長〜

大石先生は校長(明石潮)に呼び出さ る。
校 長・・・「あんた “赤”じゃと評判になっとりますぞ」
大 石先生・・・「えっ」
校 長・・・「気を付けてくれんと 困りますよ」
大 石先生・・・「いったい それ どういうこと でしょ
私が何をしたって 言うんでしょう」 
校 長・・・「私しゃ この前にも いっぺん注意したことがあったが
あんた 生徒たちに 言っていいことと 悪いことと ありますぞ 教師とし て」
大 石先生・・・「さあ〜 私が何を言ったか 知 れませんけど
私 生徒に間違ったこと 言わないつもりです」
校 長・・・「それがいかん それが危ないです
あんた 若いから 一途に思っていることを ベラベラっと生徒たちに 喋っ てしまうんじゃが
い〜そっ 今の時勢がいかん そこのところを こ〜う “上手〜く言わん” と 馬鹿を見るんです」
大 石先生・・・「“上手く言う”って どういう ことでしょう」
校 長・・・「ううん 兎に角 あんたも知っているように
満州建国以来 外蒙国境の空気は 険悪になってきとる
こんな島じゃとて 防空練習は ちょいちょいやる
国を挙げて 軍備 軍備で 騒いでいる最中に
あんたは “兵隊になっちゃつまらん”と 言ったそうじゃないか」
大 石先生・・・「いいえ 私はただ 教え子の命 を 惜しんだだけです」
校 長・・・「それがいかん」
大 石先生・・・「でも 私」
校 長・・・「もう あんたは 何も言わんほうがいい
“見ざる 聞かざる 言わざる”
教師は ただただ お国に御奉公のできるような そういう国民に育てあげる のが 義務です」
大石先生・・・「…」
校長の顔を見る大石先生。

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〜卒業式〜

生徒たち・・・「♪仰げ ば尊し わが師の恩
教えの庭にも はやいくとせ
おもえばいと疾し このとし月
いまこそわかれめ いざさらば 

互いにむつみし 日ごろの恩
わかるる後にも やよわするな
身をたて名をあげ やよはげめよ
いまこそわかれめ いざさらば

朝ゆうなれにし まなびの窓
ほたるのともし火 つむ白雪
わするるまぞなき ゆくとし月
いまこそわかれめ いざさらば」

大石先生は国の方針を押しつける教育 に失望して教師を辞めることにする。

訪ねてきた竹一(渡辺四 朗)と磯吉(郷古仁史)に 帽子を被せて成長を喜び、眺める。

そして、富士子の家族が兵庫へ行ったことを二人から聞き、これから先のことを思い やる。

♪蛍の光のメロディーが流れる。

バスで帰る竹一(渡辺四朗)と磯吉(郷 古仁史)に手を振って見送る大石先生。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

バスの窓から身を乗り出して大石先生に手を振る磯吉と竹一。


『二十四の瞳』郷古仁史(“ソンキ”/岡田磯吉)、渡辺四朗(竹下竹一)

“海の色も 山の姿も 昨日につゞく 今日であった
しかし そこに住む人々の 生活はー
支那事変 日独伊防共協定
大きな歴史の 流れに おし流されて いった”

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〜八年後〜


『二十四の瞳』田辺由実子(加部小ツル)、上原博子(片桐コトエ)、石井裕子 (“マちゃん”/香川マスノ)、高峰秀子(“小石先生”/大石先生/大石久子)
神原いく子(“フジちゃん”/木下富士子)、草野節子(“マッちゃん”/川本松 江)、加瀬かをる(山石早苗)、小池泰代(“ミーさん”/西口ミサ子)
宮川真(“キッチン”/徳田吉次)、佐藤国男(“ニクタ”/相沢仁太)、渡辺五雄 (竹下竹一)、郷古秀樹(“ソンキ”/岡田磯吉)、寺下雄朗(“タンコ”/森岡正)

肺病のコトエが記念写真を泣きながら見ている。


『二十四の瞳』永井美子(片桐コトエ)

見舞う大石先生に同級生の成功を羨ましそうに話すと、
コ トエ・・・「先生 私もう永くないんです」と 言う。
大 石先生・・・「何を言うの 元気をださなく ちゃだめじゃない」
泣きながら、
コ トエ・・・「先生 私苦労しました」と 言う。
大石先生も感極まって、
大 石先生・・・「そうねぇ 苦労したでしょう ね」と 言う。


『二十四の瞳』永井美子(片桐コトエ)、高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

コトエは母親に孝行したくて大石先生に薦められた進学ではなく女中奉公に喜んで 行ったと話し、
コ トエ・・・「私 苦労して 苦労して 病気になって帰ってきたのに
お父さんも お母さんも “肺病なんか傍に来るんじゃない”
私 バケツ持ってきて ここにひとりっきりで寝ているんです」と 声を出して泣く。
一緒に声を出して泣く大石先生。


『二十四の瞳』永井美子(片桐コトエ)、高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

大石先生・・・「でも ねぇ 苦労しているの あなたばっかりじゃないと思うわ」
松江とフジコとマスノも苦労していると思うと話し、
「幸せになれる人なんて ないようなもんじゃない
自分ばっかり不幸なんて思わないで 元気だして頂戴」と 励ます。


『二十四の瞳』子供たち(二十四の瞳)と高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

♪七つの子の歌が流れる。

♪烏なぜ啼くの 烏は山に

大石先生が記念写真の12人の顔を、順に見てゆく。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

この“二十四の瞳”が、これからも背負わされるものを思いながら見詰めている。
可愛い七つの 子があるからよ


『二十四の瞳』田辺由実子(加部小ツル)


『二十四の瞳』上原博子(片桐コトエ)


『二十四の瞳』石井裕子(“マちゃん”/香川マスノ)


『二十四の瞳』神原いく子(“フジちゃん”/木下富士子)

可愛い可愛いと 烏は啼くの


『二十四の瞳』草野節子(“マッちゃん”/川本松江)


『二十四の瞳』加瀬かをる(山石早苗)

可愛い可愛いと 啼くんだよ


『二 十四の瞳』小池泰代(“ミーさん”/西口ミサ子)


『二十四の瞳』寺下雄朗(“タンコ”/森岡正)


『二十四の瞳』郷古秀樹(“ソンキ”/岡田磯吉)

山の古巣へ いって見て御覧


『二十四の瞳』渡辺五雄(竹下竹一)


『二十四の瞳』佐藤国男(“ニクタ”/相沢仁太)


『二十四の瞳』宮川真(“キッチン”/徳田吉次)

丸い眼をした いい子だよ

♪七つの子の歌に被さるように♪露営の歌が流れてくる。

徳田吉次(戸井田康国)、相沢仁太(清水竜雄)、竹下竹一(三浦礼)、森岡正(大槻義一)、岡田磯吉(田村高廣)が出征していくのを、末子をおぶり小旗を持って泣きながら見送る大石先生。
遠ざかってゆく舟の甲板で教え子たちも、手を振って皆泣いている。

♪暁に祈るが流れている。


『二十四の瞳』


『二十四の瞳』田村高廣(“ソンキ”/岡田磯吉)ら


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)ら

大石先生の夫も出征していく。

Top

  〜四年後〜

“四年の歳月は 大東亜戦争の 擴大とともに 兵隊墓に 白木の墓標を ふやすば かりであった”

♪若鷲の歌が流れている。

大石先生の母親が死に三人の子供との生活になる。

♪朧月夜のメロディーが流れる。

夫の戦死の通知が来る。

♪埴生の宿のメロディーが流れる。

Top

〜八月十五日〜

敗戦を知らせる天皇の玉音放送がある。

♪埴生の宿のハーモニーが流れる。

大石先生の末の女の子が柿の木から落ちて死ぬ。


『二十四の瞳』郷古慶子(大石先生の長女/八津)、高峰秀子(“小石先生”/大石 久子)

♪庭の千草のハーモニーが流れる。

墓で食べ物がろくに食べさせられなかった境遇を悲しみ泣く大石先生。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)、木下尚爾(大石先生の次男 /並木)、八代敏行(大石先生の長男/大吉)

Top

〜戦争が終わった 翌年〜

“四月四日”

♪アーニー・ローリーのメロディーが流れる。

再び教壇に立った大石先生は、生徒の中にかつての教え子の子供を見て涙を流す。


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)ら

♪ 朧月夜の歌が流れる。

♪菜の花畑に 入日薄れ
見わたす山の端 霞ふか し
春風そよ吹く 空を見れ ば
夕日かかりて 匂い淡し

里わの火影も 森の色 も
田中の小径を たどる 人 も
蛙の鳴くねも 鐘の音 も


『二十四の瞳』高峰秀子(“小石先生”/大石久子)

さながら霞める 朧月 夜

♪七つの子のメロディーが流れる。

戦死した教え子の森岡正(大 槻義一)、竹下竹一(三浦礼)、相沢仁太(清水竜雄)の墓参りをして、 墓で泣く大石先生。
生徒たちが泣いている大石先生を見て、
生 徒たち・・・「泣きみそ先生!泣きみそ先生! 泣きみそ先生!」と 声を掛ける。
大石先生は「泣きみそ先生」と子供たちから呼ばれるようになっていた。
生 徒たち・・・「泣きみそ先生!泣きみそ先生! 泣きみそ先生!」

かつての教え子たちが大石先生の歓迎会を開いてくれることになる。

♪蛍の光のメロディーが流れる。

松江(井川邦子)と 涙涙の再会をする大石先生。


『二十四の瞳』篠原都代子(“ミーさん”/西口ミサ子)、高峰秀子(“泣きみそ先 生”/大石久子)、南眞由美(加部小ツル)、井川邦子(“マッちゃん”/川本松江)


『二十四の瞳』篠原都代子(“ミーさん”/西口ミサ子)、高峰秀子(“泣きみそ先 生”/大石久子)、井川邦子(“マッちゃん”/川本松江)、小林トシ子(山石早苗)

そして、皆からのプレゼントの自転車を見て、また、感激のあまり涙を流す。


『二十四の瞳』小林トシ子(山石早苗)、井川邦子(“マッちゃん”/川本松江)、 月丘夢路(“マちゃん”/香川マスノ)
高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)、南眞由美(加部小ツル)、篠原都代子 (“ミーさん”/西口ミサ子)


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)


『二十四の瞳』


『二十四の瞳』

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〜記念写真〜

歓迎会。
大石先生が教え子たちに礼を述べる。

♪七つの子をかつての教え子たちが歌う。


『二十四の瞳』田辺由実子(加部小ツル)、上原博子(片桐コトエ)、石井裕子 (“マちゃん”/香川マスノ)、高峰秀子(“小石先生”/大石先生/大石久子)
神原いく子(“フジちゃん”/木下富士子)、草野節子(“マッちゃん”/川本松 江)、加瀬かをる(山石早苗)、小池泰代(“ミーさん”/西口ミサ子)
宮川真(“キッチン”/徳田吉次)、佐藤国男(“ニクタ”/相沢仁太)、渡辺五雄 (竹下竹一)、郷古秀樹(“ソンキ”/岡田磯吉)、寺下雄朗(“タンコ”/森岡正)

かつての教え子たち・・・「♪ 烏なぜ啼くの 烏は山に」


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)

「可愛い七つの 子があるからよ
可愛い可愛いと 烏は啼くの
可愛い可愛いと 啼くんだよ」

思い出の記念写真を大石先生が見て泣いている。
皆を見回し、視線が磯吉(田村高廣)に行くと、また、泣く。
磯吉は戦争で視力を失っていた。
磯吉が、
ソ ンキ・・・「先生 私にも ちょっと見せてく ださい」と 言う。
小 ツル・・・「あっ そうだ ソンキにも見せてやらにゃ」と 小ツル(南眞由美)が言う。
磯吉が写真を持って見ている。
小 ツル・・・「まるで 見えてるようじゃなぁ」
ソ ンキ・・・「うん」


『二十四の瞳』月丘夢路(“マちゃん”/香川マスノ)、小林トシ子(山石早苗)、 井川邦子(“マッちゃん”/川本松江)、南眞由美(加部小ツル)、篠原都代子(“ミーさん”/西口ミサ 子)、
高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)、田村高廣(“ソンキ”/岡田磯吉)

「おう
この写真はなあ 見えるんじゃ」
写真を指で辿っていきながら、
「なあほら まん中のこれが先生じゃろ
その前にわしと竹一と仁太が並んどる
先生の右の これがマーちゃんで こっちが富士子じゃ」
大石先生が泣き出す。


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)

皆も泣いている。
声を詰まらせて磯吉が、
ソ ンキ・・・「マッちゃんが  左の小指を 一本ぎり残して 手を組んどるが」と 言う。
歌手になりたがっていたマスノ(月丘夢路)が泣きながら♪浜 辺の歌を歌いだす。

マスノ・・・「♪あした 浜辺を さまよえば」


『二十四の瞳』月丘夢路(“マちゃん”/香川マスノ)

「昔のことぞ しのばるる」


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)

「風の音よ 雲のさまよ
寄する波も 貝の色も」

磯吉が写真を顔に近づけ、愛おしむように写真を擦っている。


『二十四の瞳』田村高廣(“ソンキ”/岡田磯吉)

それを見て、大石先生は再びハンカチで目頭を押さえて泣く。


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)

「ゆうべ浜辺を もとおれば」

それぞれが、それぞれの想いを巡らせ、時が刻まれてゆく。


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)


『二十四の瞳』戸井田康国(“キッチン”/徳田吉次)

「昔の人ぞ しのばるる」


『二十四の瞳』井川邦子(“マッちゃん”/川本松江)


『二十四の瞳』南眞由美(加部小ツル)


『二十四の瞳』篠原都代子(“ミーさん”/西口ミサ子)

「寄する波よ 返す波よ」


『二十四の瞳』小林トシ子(山石早苗)

「月の色も 星のかげも」

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〜エピローグ〜

プレゼントされた自転車で分校へ通う大石先生が映し出される。
そして、この歌声が流れる。

♪仰げば尊し わが師の恩
教えの庭にも はやいくとせ
おもえばいと疾し このとし月


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)

いまこそわかれめ いざさらば


『二十四の瞳』高峰秀子(“泣きみそ先生”/大石久子)

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 いい、実にいい。高 峰秀子の大石先生が素晴らしい。
 そして、二十四の瞳の子供たち も。
 
 子供たちの歌声の余韻に浸っていると、島の美しい風景が広がってくる。
 そして、大石先生の優しい声が聞 こえてくる。
“岡田磯吉君 岡田磯吉君 いないんですか〜”

※1987年、朝間義隆監督に よってリメイクされた。

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〜写真〜


『二 十四の瞳』高峰秀子etc


『二十四の瞳』高峰秀子


『二十四の瞳』高峰秀子ら


『二 十四の瞳』高峰秀子ら


『二 十四の瞳』高峰秀子ら


『二十四の瞳』高峰秀子ら

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1995
[日 本映画オールタイム・ベストテン]映画100年特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@東 京物語(小 津安二郎) A七人の侍(黒澤明) B浮 雲(成 瀬巳喜男) C人情紙風船(山中貞雄) D西鶴一代女(溝口健二) E飢餓海峡(内田吐夢) F羅生門(黒澤明) G生きる(黒澤明) H丹下左膳餘話・百万両の壷
(山中貞雄)
I幕末太陽傳(川島雄三)

@小 津安二郎 A黒澤明 B溝口健二 C大島渚
C成 瀬巳喜男
D
-
E市川崑 F川島雄三 G内田吐夢 H山中貞雄
H木 下恵介
H岡本喜八
H鈴木清順
I
-

@森 雅之 A三国連太郎 B笠智衆 C三船敏郎 D高倉健 E市川雷蔵 F石原裕次郎 G松田優作
G勝新太郎
H
-
I志村喬
I阪東妻三郎
I大河内傳次郎

@原 節子
@山田五十鈴
A
-
B高 峰秀子 C田中絹代 D若尾文子 E京マチ子 F岸恵子 G藤純子 H香川京子 I久我美子
I吉永小百合
※キネマ旬報 臨時 増刊 1995.11.13号
1995年の[日本映画オールタイ ム・ベストテン]映画100年特別企画は、映画100年を総括する特別企画として、評論家・作家・ジャーナリストな ど104人の選考委員の 全体点数(各個人選出ベストテンの第1位を10点、第2 位を9点、以下第10位を1点)を集計、合計数の多い作品か ら抽出するという方法で、映画史を通じての日本映画ベストテンを発表した。
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1999
[映 画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キ ネマ旬報創刊80周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@七人の侍(黒澤明) A浮 雲(成 瀬巳喜男) B飢餓海峡(内田吐夢)
B東 京物語(小 津安二郎)
C
-
D幕末太陽傳(川島雄三)
D羅生門(黒澤明)
E
-
F赤い殺意(今村昌平) G仁義なき戦い(シリーズ) (深作欣二)
G二 十四の瞳(木 下恵介)
H
-
I雨月物語(溝口健二)

@第 三の男(キャロル・リード) A2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック) Bロー マの休日(ウィ リアム・ワイラー) Cアラビアのロレンス(デ ヴィッド・リーン) D風 と共に去りぬ(ヴィクター・フレミング) B市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) F駅 馬車(ジョ ン・フォード)
F禁じられた遊び(ルネ・ク レマン)
Fゴッドファーザー(フラン シス・フォード・コッポラ)
F(フェ デリコ・フェリーニ)
G
-
B
-
I
-
※ 1999
[映画人が選ぶオールタイム・ベスト テン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊80周年記念特別企画 は、従来の映画評論家を中心にしたアンケートとは異なり、監督、プロデューサー、脚本家、撮影監督など、実際に日本 映画の製作に携わる映画人(140人、144人)に、それぞれのベ スト作品10本を順不同で選んでもらう選考方法。(1999年10月下旬号、10 月上旬号においてアンケート結果を発表)

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2000

[日本・外国映画 20世紀の映画スター、 映画監督オールタイム・ベストテン]特 別企画

/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
監督
日 本
@黒澤明 A小 津安二郎 B溝口健二 C木 下恵介 D成 瀬巳喜男 E山田洋次 F市川崑
F内田吐夢
F大島渚
F深作欣二
G
-
H
-
I
-
男優
日 本
@三船敏郎 A石原裕次郎 B森 雅之 C高倉健 D笠智衆 E市川雷蔵 F勝新太郎
F阪東妻三郎
G
-
H渥美清
H中村錦之助(萬屋錦之 介)
H森繁久彌

I
-
女優
日 本
@原 節子 A吉永小百合 B京マチ子 C高 峰秀子 D田中絹代 E山田五十鈴 F夏目雅子 G岸恵子
G若尾文子
H
-
I岩下志麻
I藤純子(富司純子)
監督
外 国
@アルフレッド・ヒッチコック Aフェ デリコ・フェリーニ Bジョ ン・フォード Cジャン=リュック・ゴダール
Cスチィーヴン・スピルバーグ
Cチャー ルズ・チャップリン
Cビ リー・ワイルダー
D
-
E
-
F
-
Gルキノ・ヴィスコンティ Hスタンリー・キューブリック Iルイス・ブニュエル
男優
外 国
@ゲー リー・クーパー Aチャー ルズ・チャップリン
Aジョン・ウェイン
B
-
Cマーロン・ブランド
Cア ラン・ドロン
Cジャ ン・ギャバン
D
-
E
-
Fハ ンフリー・ボガート
Fスティーブ・マックイーン
G
-
Hショーン・コネリー
Hポー ル・ニューマン
I
-
女優
外国
@オー ドリー・ヘプバーン Aマ リリン・モンロー Bイ ングリッド・バー グマン Cヴィ ヴィアン・リー Dマ レーネ・ ディートリヒ Eグ レース・ケリー Fフ ランソワーズ・アルヌー ル
Fベティ・デイビス
Fジョディ・フォスター
Fグ レタ・ガルボ
Fアンナ・カリーナ
Fジャンヌ・モロー
Fロ ミー・シュナイダー
Fエ リザベス・テーラー
G
-
H
-
I
-

[20世紀の映画ス ター](日本編)特別企画、[20世紀の映画ス ター](外国編)特別企画は、評論家・作家・ジャーナ リストなど74人の選考委員に20世紀を代表する男優、女優のそれぞれ3名ずつを選んでもらう選考方法。(2000年5月下旬号、6月上旬号においてアンケート結果を発表)
※2000.6.1 朝日新聞記事
[20世紀の映画監督](日本編)特別企画、[20世紀の映画監督](外国編)特別企画は、評論家・作家・ジャーナリストなど 104人、107人の選考委員に20世紀を代表する監督5名を選んでもらう選考方法。(2000年11月下旬号、11月上旬号においてアンケート結果を発表)
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2009
[映 画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キ ネマ旬報創刊90周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
日本
@東 京物語(小 津安二郎) A七人の侍(黒澤明) B浮 雲(成 瀬巳喜男) C幕末太陽傳(川島雄三) D仁義なき戦い(シリーズ) (深作欣二) E二 十四の瞳(木 下恵介) F羅生門(黒澤明)
F丹下左膳餘話・百万両の壷(山 中貞雄)
F太陽を盗んだ男(長谷川和 彦)
G
-
H
-
I家族ゲーム(森田芳光)
I野良犬(黒澤明)
I台風クラブ(相米慎二)

@ゴッドファーザー(フランシス・フォード・ コッポラ) Aタクシー・ドライバー(マー チン・スコセッシ)
Aウエスト・サイド物語(ロ バート・ワイズ)
B
-
C第 三の男(キャロル・リード) D勝手にしやがれ(ジャン・ リュック・ゴダール)
Dワイルドバンチ(サム・ペ キンパー)
B
-
F2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック) Gロー マの休日(ウィ リアム・ワイラー)
Gブレードランナー(リド リー・スコット)
B
-
I駅 馬車(ジョ ン・フォード)
I天 井棧敷の人々(マルセル・カルネ)
I(フェ デリコ・フェリーニ)
Iめ まい(ア ルフレッド・ヒッチコック)
Iアラビアのロレンス(デ ヴィッド・リーン)
I暗殺の森(ベルナルド・ベ ルトルッチ)
I地獄の黙示録(フランシ ス・フォード・コッポラ)
Iエル・スール(ビクトル・ エリセ)
Iグラン・トリノ(クリン ト・イーストウッド)
※ 2009.11
[映画人が選ぶオールタイム・ベスト テン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊90周年記念特別企画 は、日本編は114人、外国編は121人の映画評論家や作家、文化人の投票を集計した。

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高 峰秀子
邦 画
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