《シネマトーク》
『フィ ラデルフィア物語』と『上流社会』

-The Philadelphia Story High Society-
 『フィ ラデルフィア物語』(1940)とリ メイク版『上流社会』(1956)を取り上げて みますね。
 『フィ ラデルフィア物語』キャ サリン・ヘプバーンは、 顎を突出し勝気で我儘娘を表に出す演技に対して、『上流社会』は、 悪戯ぽっい茶目っ気、気品に満 ちた表情でグ レース・ケリーはヒロインを演じています。

 ヘ プバーンは、 知性を感じさせる女優ですが、気品というと他の追随を許さないグ レースでしょうね。

 そのグ レースの気品を特に感じたシーンがあります。
  それは、プールに浮かべているヨットを眺めながら、ビング・クロスビーとの思い出に浸っているグレースに、 婚約者が声掛けるのです。
  「ハッ」と我にかえるグレースの、その後の表情と頬に持ってゆく仕草、それに背筋をピーンとして座っている 所ですね。
  神々しく見えました。
  女神そのものって感じでしたよ。

 この『上 流社会』で一番好きなシーンは、やはり、ビング・クロスビー とグレースが♪トゥルー・ラブを ヨットで歌う所ですね。
  クロスビーのバリトン、グレースの魅力にうっとりしてしまいます。

 しか し、作品の質という点では、どうでしょう。

  『上流社会』はミュージカル化されていただけに、軽快でテンポ がいいですよね。
  でも、簡素化され過ぎていたように思いますね。

 一方『フィ ラデルフィア物語』は興業成績を上げようとスタッフ、キャストに力を注いでいただ けに、その効果が出ていたように思いますね。
  個々の魅力が発揮されていて見応えがあったと思います。

 例え ば、図書館からジェー ムズ・スチュアートキャ サリン・ヘプバーンが出てくるのを、美容室で爪の手入れをして貰っているR・ハッセイが不安げ に見詰めているシーンです。

 美容師 は爪の手入れの仕方が悪かったのかと思って「痛かった?」と聞きます。
  ハッセイは「平気 慣れてるの」と言いながらスチュアートに視線を送っているのです。
 心の痛みを爪の痛みにダブらせた表現。
  何時も思いを寄せていながら、遠くから見守る母性愛みたいな愛を見事に演じたシーンだったと思います

 女性を 上手く演出する事にかけては右に出る者なしと言われていた監督、ジョー ジ・キューカーの手腕の一端に触れた思いでした。

 勿論、 演技は一流でも滲出てくる美しさ(知性的な美しさは別として)に欠けているヘ プバーンにダンディーなケー リー・グラント「君は素晴らしい女だ 男を魅了する何かがある  奪いたいと思わ せる何かが」という セリフは、無理があると思いますけど。
  上流階級の女神像に匹敵する人は、グ レース・ケリー以外にはいないでしょう。

 ケー リー・グラントが、引退 しようとしていた時に、「グレースと共演で きるよ」というヒッ チコックからの誘いに抗しきれずにカムバックしたのも彼女に特別な思いを持っていたからでし た。
 「グレース・ケリーとキスすることはすべての男の夢だった」とグラントは語っていますのも、納得と言う他ないですね。

 貴方 は、どちらがお好きかしら?
  何はともあれスタッフ、キャストの重大さをつくづく感じる2作品ですね。


『フィ ラデルフィア物語』(1940)キャサリン・ヘプバーン


『上流 社会』(1956)グレース・ケリー

更新 2005.5.28
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参 考文献
シ ネマトーク
グ レース・ケリー
ケー リー・グラント
ジェー ムズ・スチュアート
ジョー ジ・キューカー
洋 画
映 画ありき2
映画ありき
〜クラシック映画に魅せら れて〜
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