アラン・ドロン ※ストーリーの結末を載せていますの で、映画をご覧になっていない方 は、ご了承下さい。 監督…ルネ・クレマン 製作…ロベール・アキム 原作…パトリシア・ハイスミス『才人リ プリー氏』 脚色…ポール・ジュゴフ/ルネ・クレ マン 撮影…アンリ・ドカエ 音楽…ニーノ・ロータ 出演…ア ラン・ドロン(トム・リプリー) ………マリー・ラフォレ(マルジュ) ………モーリス・ロネ(フィリップ) ………エルヴィーレ・ポペスコ ………ロ ミー・シュナイダー ルネ・クレマンの冴えわたる演出 に、ア ラン・ドロンの美貌とニーノ・ロータの哀愁を漂わせた美しいメロディー、そして、アンリ・ ドカエが写し出す青い地中海にギラギラと焼け付くような太陽の映像美、更に、ラストシーンなどのインパ クトがあるサスペンスの醍醐味に拍手したくなる傑作だ。 卑しき翳りを持つ美貌のトム・リプリーの野望と悲しさをア ラン・ドロンが好演し、退廃的な生活を送るフィリップをモーリス・ロネ、倦怠感と神秘的な魅力 を持つマルジュをマリー・ラフォレが演じ、それぞれの若者の葛藤を見事に描いている。 貧しいト ム(ア ラン・ドロン)は、幼馴染のフィリップ(モーリ ス・ロネ)がイタリアで遊び暮 らしているのを、アメリカへ連れ戻すようにと、 彼の父親から多額の報酬付きで頼まれていた。 戻るよう にフィリップに言うが、報酬欲しさで来ているのを知っているフィリップは、ト ムを奴隷のように扱いばかにする。 そして、
美しい恋人マルジュ(マリー・ラフォレ)を見せつける。 そんなト
ムに殺意を固めさせるようなことをフィリップがする。
マルジュ と愛し合っていたフィリップが、ロープが外れているのに気が付くのは、トムが 太陽にさらされて酷い火傷をした後だった。 トムに恨
みを持たれたと思うフィリップ。 危うい思 いを持ちながらもトムの手の内を探ろうとするフィリップは、またもや、3人で クルージングをする。 計画を実 行しようとするトムは、フィリップと2人だけになるように仕組む。 トムの思 惑通りにマルジュがフィリップに怒り、船から降りていく。 さあ、二
人だけになった。自分に成りすまして財産を奪うと言うトムに、手の内を聞く フィリップ。 そして、
トムの殺害計画が実行される。 胸を刺さ
れ、 海が荒れる。 予てから フィリップの声やサインを真似たり、体格も同じぐらいであったのでフィリップ になりすますトム。
そして、
私が強く印象に残ったシーンになる。 計画通り
行っていたが、フィリップの友人フレディが気付き、再び、犯罪を重ねることに なる。 失意のマ ルジュに優しくして、彼女をフィリップから奪おうとするトム。 マルジュの掌にキスをしながら、彼女を見詰めるトムの眼が獲物を捕らえる。
全てを手に入れられると、喜びテラスへ駆け上がってゆき、チェアに横になるトム。
トム…「最高だ… 一方、陸に上げられたヨットにロープが絡んでいる映像が… カメラがロープをたどって行くと助けを求めているかのように腐食した手がマルジュ
の悲鳴とともに映し出される。 ギラギラした太陽がトムを照り付けている。
ニーノ・ロータの切ないメロディーが流れる中、燦々と太陽を浴びた青い海が映し出
される。 素晴らしいラストシーンだ。
投げ出された魚の頭部に目を止めるのは、トムのように悲惨な暮らしをしてき
たも のだけだ。 そして、何不自由なく裕福なフィリップも決して満たされているわけではない とい うメッセージも。 ※撮影はナポリ湾に浮かぶ最大
の島イスキア島で撮られたそうだ。(1992.9.20朝日新聞 社会部 高
畑芳秋記事『シネマ CINEMA キネマ』参考) Top |