スティング

　　

記号[☆：スタッフ・キャスト　→： 始めに]

　アンチ・ヒーローと呼ばれ る新鮮なヒーローを誕生させた『明 日に向って撃て！』のポール・ニューマン、ロ バート・レッドフォード、ジョージ・ロイ・ヒル監督のトリオが再び洗練されたユーモアたっぷり の作品で楽しませてくれた。

　この作品は軽快に編曲された音楽と共に大ヒットするわけだが、観客も巻き込む仕掛け の面白さ、役者の個性を活かした演出の上手さ、そして何と言っても主演の二人がカッコイイ。
　 ポール・ニューマン、ロ バート・レッドフォードの魅力が溢れている。
　
　 1936年9月、イリノイ州ジョリエットから始まるこの作品は、1930年代のギャングのメッカ、シカゴの 暗黒街を描いている。

　一緒に組んでいた老詐欺師ルーサーをギャングのボスに殺された若い詐欺師フッカー(ロバート・レッドフォード)が、ルーサーから生前に聞いていたベテラン、ゴンドーフ(ポール・ ニューマン)と組む。
　 目的はルーサーの弔い合戦。

　ルーサーを知る仲間たちがゴンドーフ(ポール・ニューマン)の呼びかけに集合する。
　J.J.(レ イ・ウォルストン)、キッド(ハロルド・グールド)、エディ(ジョン・ヘファーナン)、 それに、それぞれの役割を務める詐欺師たちが。
　 J.J.、キッド、エディがゴンドーフの合図に応えるシーンの表情がいい。
　 これから起きることにワクワクさせられる。

　ギャングのボス役のロバート・ショウやスナイダー刑事役のチャールズ・ダーニングの 味のある演技も必見だ。
　
　 そして、当時の雰囲気が味わえる町並みや衣装、それにタイトルバックや各章の絵と、どこを取り上げてもいい ものばかりだ。

　驚き、痛快な気分も味わえる娯楽傑作に拍手だ。

※当初、ジョージ・ロイ・ヒル 監督はゴンドーフ役にピーター・ボイルを考えていたそうだ。だがフッカー役のロ バート・レッドフォードがボイルとはうまく行かないだろうと断ってきた。それで、ポール・ニューマ ンならと考えたという。だが、役が小さいうえに太った酒飲みのオヤジは大スターのニューマンに演じてもらうよう な役ではないと思った。ニューマンも自分の役ではないと消極的だったそうだ。
ならば、彼にふさわしい役に変え ればいいとヒル監督は考え、レッ ドフォードに電話して自分の考えを伝えた。二人でニューマンのアパートへ行きひざ詰めで1時間あま り話し合ったという。だが、出番がレッ ドフォードの 半分しかなく、どうしてもバランスが取れなかった。あきらめて三人は部屋を出てエレベーターを待ったそうだ。な かなか来ないエレベーターにしびれを切らし ていたときに、ヒル監督が「考えてみると、難しい映画じゃないんだから、もっとリラックスしたらどうかな。そう すれば皆で楽しくられるのに」。三人は顔を 見合わせ、しばらく沈黙したあとに、ニューマンが「ジョージ、君の言う通りだ。よし、やろう」だったそうだ。(前橋支局　石飛徳樹記事1992.11.29朝日新聞「シネマ　CINEMA　キネ マ」より)

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『ス ティング』ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード