トリコロール/赤の愛
イレーヌ・ジャコブ
☆ →
記号[☆:スタッフ・キャスト →: 始めに]
(1994)(フランス/ポー
ランド/スイス)(ポーランド:Trzy
kolory:Czerwony)-Trois couleurs: Rouge-
監督…ク
シシュトフ・キェシロフスキ
出演…イ
レーヌ・ジャコブ(バ
ランティーヌ)
………ジャン=ルイ・トランティニャ ン(元判事)
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ク
シシュトフ・キェシロフスキ監督の『トリコロール3部作(青
の愛・ 白の愛・赤の愛)』の最終章であり、これはフラ
ンス国旗三色の持つ青(自
由)、白(平等)、赤(博愛)の意
味をテーマにキェシロフスキ監督が作った運命と偶然の恋愛物語三部作の幕下ろしである。『青の愛』『白
の愛』も秀作だが、『赤の愛』は特に素晴らしい。
孤独な元判事(ジャ
ン=ルイ・トランティニャン)と純真な女子大生
バランティーヌ(イ
レーヌ・ジャコブ)の出会いによっ
てもたらされる心理描写 を見事に演出している。
私が一番、注目したのは明りだ。実に効果的に使われている。
まず、憤っているバランティーヌの背後に美しい光線が射しこんでくる。空間
が眩 しく照らし出される。それは、内なるものの開放でもある。
そして、繰り返される消し忘れたヘッドライト。動揺が伝わる。
それから、判事の家の窓からバランティーヌが夕日を見詰めるシーンだ。対立
して いた判事に興味を持つことを意味している。一抹の安静を得る。
明りをもう一度、登場させる。重要なポイントとして。それは、裸電球だ。被
いを
していない人工の明りは突き刺す視線を意味している。バランティーヌはおもわず顔を背ける。電球に被い
がされる。柔らかな空間に変化して行く。
赤は衝撃・動揺・怒りで、その抑揚を明りで演出している。
キェシロフスキ監督はドキュメンタリー作家らしい視点で、広告の大幕、
窓、フロ
ントガラス、コップ、小石、それぞれに息を吹き込む演出をする。監督の手法に目が離せない。
そして、この作品を際立たせたのはイ
レーヌ・ジャコブの存在だ。ジャコブは品格があり知的だ。戸惑い、揺らいでいる表情が
い
い。そして、温かい眼差しで見詰める彼女は例えようがないほどいい。優しい人ではないかと思ってしま
う。
共演のジャン=ルイ・トランティニャンも渋いいい味を出して、人生のひだを
演じ ている。
キェシロフスキ監督の眼差しはジャン=ルイ・トランティニャンが役する判事とし
てイレーヌ・ジャコブに注がれている。
生前「『トリコロール 赤の愛』はイ レーヌ・ジャコブをイ
メージして作った」とコメントしてい
る。ジャコブの清楚なところに惚れ込んだそうだ。
ジャコブもその監督の思いに応える演技をしている。
演出家と役者が作品に寄せる思いが深くなると感銘を与える作品が誕生する。かってフェ
デリコ・フェリーニ監督とジュリエッタ・マシーナの『道』や、小 津安二郎監督と原
節子の『晩春』がそうだったように。
キェ
シロフスキ監督の作品は2003/3/8〜4/25まで渋谷のル・シネマで上映 された。『ト
リコロール3部作(青の愛・白の愛・赤の愛)』『ふたりのベロニカ』『傷跡』『アマチュア』『偶然』『終わりなし』『殺人に
関する短いフィルム』『愛に関する短いフィルム』などでほとんど鑑賞した。
そもそも、私がキェ
シロフスキ監督を知ったのは、1990数年頃に「モーゼの十戒」をイメージし、一話完結型
の連 作十話で構成された『デカローグ』(1887〜1989)を見てからだった。
その中でも第5話『殺人に関する物語』や第6話『愛に関する物語』に衝撃
を受 けた。その第5話のオリジナルバージョンの『殺人に関する短いフィルム』(1987)と第6話のロングバージョン『愛に関する短いフィルム』(1988)も上映されたので十分楽しめた。
『トリコロール 赤の愛』を作った後に亡くなったキェシロフスキ監督
程、次回作を期待された人 はいないと言われていた。この『赤の愛』は
1996年3月13日に54才で心臓病で亡くなっ た監督の遺作だ。
※ニューヨーク批評家協会賞外国映画賞、ロ
サンゼルス批
評家 協会賞
外国映画賞を受賞。
※ア
カデミー賞の監
督賞・オ リジナル脚本賞・撮
影賞にノミネート。
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『トリ
コロール 赤の愛』イレーヌ・ジャコブ
『トリ
コロール 赤の愛』イレーヌ・ジャコブ
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コロール 赤の愛』イレーヌ・ジャコブ
『トリ
コロール 赤の愛』イレーヌ・ジャコブ
『トリ
コロール 赤の愛』イレーヌ・ジャコブ
キェシ
ロフスキ・コレクション〜ゆらめく愛の輪郭/ワルシャワからパリへ〜
Bunkamuraを支えるオ
フィシャルサプライヤー パンフレット 表紙 イ レーヌ・ジャコブ
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