浮雲
  
   高峰秀子、森雅之

※ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  〜ゆき子と富田〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに ←:終わりに] web拍手 by FC2
(1955)(白黒)(東宝)(キ ネマ旬報ベストテン第1位)(第10回毎日映画コンクール日本映画大賞)-Floating Clouds-
監督…成 瀬巳喜男(キ ネマ旬報監督賞)
製作…藤本真澄 
原作…林芙美子『浮雲』
脚本…水木洋子
撮影…玉井正夫 
美術…中古智 
編集…大井英史
録音…下永尚
照明…石井長四郎
音楽…斎藤一郎 
監督助手… 岡本喜八 
出演…高 峰秀子(タ イピスト後にパンパン/幸田ゆき子)(キ ネマ旬報主演女優賞)
………森 雅之(農 林省の技師/富岡兼吾)(キ ネマ旬報主演男優賞)
………中北千枝子(富岡の妻/邦子)
………岡田茉莉子(向井清吉の女房/おせい)
………山形勲(伊庭杉夫)
………加東大介(向井清吉)

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 成 瀬巳喜男監督が、「人間を男と女の問題としてとりあ げていって、その絶頂みたいなものをつきつめてみた」とあった。(1996.6.30新聞記事『「ラブシー ン」のときめき』山田宏一著 参考)

 正に、男と女の複雑な心理 を描 いた最高傑作だ。

 主役ゆき子に高 峰秀子、富田に森 雅之。このキャスティングがいい。

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昭和18年にゆき 子は、農林省のタイピストとして仏印へ渡った。
そ こで、農林省の技師の富田と出会う。

二人は関係を持つようになるが終戦になり、妻と別れるといって富田は先に引き揚げてゆ く。
後 から引き揚げたゆき子が、富田の元を訪ねるが…


『浮雲』高峰秀子、森雅之

なじられても、傷つけられても、好きだから離れられないゆき子と、優柔不断で女を 引き込んで行く富田。


『浮雲』高峰秀子、森雅之


『浮雲』森雅之、高峰秀子


『浮雲』岡田茉莉子、加東大介、高峰秀子、森雅之


『浮雲』高峰秀子、森雅之

引き帰すことの出来ないところまで追いつめられているゆき子に、
富 田…「このままではだめだ別れよう」と 言う富田。
ゆ き子…「私はどこへ帰るのよ? どこへも行く ところがないでしょ
私も連れて行って」と 言ってすがるゆき子。


『浮雲』高峰秀子、森雅之

離れ小島(屋久島)に向う途中に病で 倒れるゆき子。
看 病する富田。

やっと、島にたどりつくが、ゆき子の病状は思わしくない。

幾分、気分が良くなったと思われた日、富田は、何時ものようにからかう。
ゆき子も、
ゆ き子…「意地悪ねぇ」と いいながらも、一時、幸福感を味わう。
だが…

ゆき子の死に顔を見詰め、明かりを持って来てゆき子の唇に口紅をつけてやる富田。
それは、富田のくちづけを意味している。
富田が明かりでゆき子を照らす。


『浮雲』高峰秀子、森雅之

幸せそうなゆき子の死に顔。
動かぬゆき子にすがりついて泣く富田。

“花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき”と林芙美子の詩が画面に…

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 いい。名作ここにありだ。

 森 雅之の演じた優柔不断の男・富田が実にいい。
 男の色気があって惹きつける。

 それに、ゆき子役の高 峰秀子のけだるそうな表情・やるせない表情・惨めな面持ちが、切なく迫ってくる。

 二人の名演と、成 瀬巳喜男監督の男と女の内面をえぐる演出が旨く絡み合っている。

 特に、成 瀬監督の女心をえぐる演出は、素晴らしく、引き込まれて行く。

 伊香保温泉のおせい(岡 田茉莉子)の、ぞくっとさせる色気や、加東大介 の味のある演技も見ものだ。
 
 ゆき子と富岡と共に伊香保温泉や屋久島を脳裏に焼付けた『浮雲』は、林芙美 子原 作、水木洋子脚色、成 瀬巳喜男監督として映画史上に残る名作となった。

 この作品を観終えた時、私は、フェ リーニ『道』の ラストシーンを思い浮かべた。
 砂浜でザンパノが星空を見上げ、 大切な人を失ったことに気付かされて、砂を握り 締め泣き出す。
 それと、富田が動かぬゆき子にす がりついて泣く姿が重なり合った。

小 津安二郎監督は、『浮雲』を観て「私には撮れない」と言い、成 瀬巳喜男監督を絶賛したそうである。
※2005.2.5世田谷文学館 で成瀬巳喜男監督生誕100年トーク&上映会が行なわれた。評論家の川本三郎氏の講演『成瀬巳喜男と林芙美子』 と、『浮雲』が上映された。
150の座席は満席で、川本氏の 講演も興味深い内容であった。

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1995
 
[日 本映画オールタイ ム・ベストテン]映画100年特別企 画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@東 京物語(小 津安二郎) A七人の侍(黒澤 明) B浮雲(成 瀬巳喜男) C人情紙風船(山中貞雄) D西鶴一代女(溝口健二) E飢餓海峡(内田 吐夢) F羅生門(黒澤 明) G生きる(黒澤 明) H丹下左膳餘話・百万両の壷 (山中貞雄) I幕末太陽傳(川島雄三)

@小 津安二郎 A黒澤明 B溝口健二 C大島渚
C成 瀬巳喜男
D
-
E市川崑 F川島雄三 G内田吐夢 H山中貞雄
H木 下恵介
H岡本喜八
H鈴木清順
I
-

@森 雅之 A三国連太郎 B笠智衆 C三船敏郎 D高倉健 E市川雷蔵 F石原裕次郎 G松田優作
G勝新太郎
H
-
I志村喬
I阪東妻三郎
I大河内傳次郎

@原 節子
@山田五十鈴
A
-
B高 峰秀子 C田中絹代 D若尾文子 E京マチ子 F岸恵子 G藤純子 H香川京子 I久我美子
I吉永小百合
※キネマ旬報 臨時 増刊 1995.11.13号
1995年の[日本 映画オールタイム・ベストテン]映画100年特別企画は、映画100年を総括する特別企画として、評論家・作家・ジャーナリストなど104人の選考委員の 全体点数(各個人選出ベストテンの第1位を10点、第2位を9点、以下第10位を 1点)を集計、合計数の多い作品から抽出するという方法で、映画史を通 じての日本映画ベストテンを発表した。

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1999
 
[映 画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キ ネマ旬報創刊80周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@七人の侍(黒澤 明) A浮雲(成 瀬巳喜男) B飢餓海峡(内田吐夢)
B東 京物語(小 津安二郎)
C
-
D幕末太陽傳(川島雄三)
D羅生門(黒澤 明)
E
-
F赤い殺意(今村昌平) G仁義なき戦い(シリーズ) (深作欣二)
G二 十四の瞳(木 下恵介)
H
-
I雨月物語(溝口健二)

@第 三の男(キャロル・リード) A2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック) Bロー マの休日(ウィ リアム・ワイラー)
Cアラビアのロレンス(デ ヴィッド・リーン)
D風 と共に去りぬ(ヴィクター・フレミング) B市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) F駅 馬車(ジョ ン・フォード)
F禁じられた遊び(ルネ・ク レマン)
Fゴッドファーザー(フラン シス・フォード・コッポラ)
F(フェ デリコ・フェリーニ)
G
-
B
-
I
-
※1999
[映画人が選ぶオールタイム・ベスト テン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊80周年記念特別企画 は、従来の映画評論家を中心にしたアンケートとは異なり、監督、プロデューサー、脚本家、撮影監督など、実際に日本 映画の製作に携わる映画人(140人、144人)に、それぞれのベ スト作品10本を順不同で選んでもらう選考方法。(1999年10月下旬号、10 月上旬号においてアンケート結果を発表)

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2000
 
[20 世紀の映画スター ベストテン]
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位



@三船敏郎 A石原裕次郎 B森 雅之 C高倉健 D笠智衆 E市川雷蔵 F勝新太郎
F阪東妻三郎
G
-
H渥美清
H中村錦之助
H森繁久弥
I
-



@原 節子 A吉永小百合 B京マチ子
B高 峰秀子
C
-
D田中絹代 E山田五十鈴 F夏目雅子 G岸恵子
G若尾文子
H
-
I岩下志麻
I藤純子



@ゲー リー・クーパー Aチャー ルズ・チャップリン
Aジョン・ウェイン
B
-
Cマーロン・ブランド
Cア ラン・ドロン
Cジャ ン・ギャバン
D
-
E
-
Fハ ンフリー・ボガート
Fスティーブ・マックイーン
G
-
Hショーン・コネリー
Hポー ル・ニューマン
I
-



@オー ドリー・ヘプバーン Aマ リリン・モンロー Bイ ングリッド・バーグマン Cヴィ ヴィアン・リー Dマ レーネ・ディートリヒ Eグ レース・ケリー Fフ ランソワーズ・アルヌー ル
Fベティ・デイビス
Fジョディ・フォスター
Fグ レタ・ガルボ
Fアンナ・カリーナ
Fジャンヌ・モロー
Fロ ミー・シュナイダー
Fエ リザベス・テーラー
G
-
H
-
I
-
※2000.6.1  朝日新聞記事
映画誌『キネマ旬報』が、映画評論家 や俳優、脚本家ら74人に回答を求めて「20世紀の映画スター」を選出し、ランキングを発表した。

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2009
 
[映 画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キ ネマ旬報創刊90周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@東 京物語(小 津安二郎) A七人の侍(黒澤明) B浮雲(成 瀬 巳喜男) C幕末太陽傳(川島雄三) D仁義なき戦い(シリーズ) (深作欣二) E二 十四の瞳(木 下恵介) F羅生門(黒澤 明)
F丹下左膳餘話・百万両の壷 (山中 貞雄)
F太陽を盗んだ男(長谷川和 彦)
G
-
H
-
I家族ゲーム(森田芳光)
I野良犬(黒澤明)
I台風クラブ(相米慎二)

@ゴッドファーザー(フランシス・フォード・コッポラ) Aタクシー・ドライバー(マー チン・スコセッシ)
Aウエスト・サイド物語(ロ バート・ワイズ)
B
-

C第 三の男(キャロル・リード)
D勝手にしやがれ(ジャン・ リュック・ゴダール)
Dワイルドバンチ(サム・ペ キンパー)
B
-

F2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック)
Gロー マの休日(ウィ リアム・ワイラー)
Gブレードランナー(リド リー・スコット)
B
-
I駅 馬車(ジョ ン・フォード)
I天 井棧敷の人々(マルセル・カルネ)
I(フェ デリコ・フェリーニ)
Iめ まい(ア ルフレッド・ヒッチコック)
Iアラビアのロレンス(デ ヴィッド・リーン)
I暗殺の森(ベルナルド・ベ ルトルッチ)
I地獄の黙示録(フランシ ス・フォード・コッポラ)
Iエル・スール(ビクトル・ エリセ)
Iグラン・トリノ(クリン ト・イーストウッド)
※2009.11
[映画人が選ぶオールタイム・ベスト テン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊90周年記念特別企画 は、日本編は114人、外国編は121人の映画評論家や作家、文化人の投票を集計した。

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参 考文献
高 峰秀子
森 雅之
邦 画
サ イトマップ
映 画ありき2
映画あり き

〜クラシック映画に魅 せられて〜

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