Laundry(ランドリー)

　　
　　　窪塚洋介、小雪

記号[☆：スタッフ・キャスト　→： 始めに]

　子 供の頃の事故で脳に傷害のあるテル(窪塚洋介)は、 祖母が持つコインランドリーで洗濯物を見張る仕事をしていた。

『Laundry』窪塚 洋介

　洗濯をしに来 た水絵(小雪)が再 度、乾燥機の中に血の後が残る洋 服(自殺行為をした時の血)を 置き忘れた。
　テルは、その血を取り除こうと洗濯機に洗剤を次々に追加してゆき、箱 に入った洗剤を全部放り入れ真っ白になった状態でスイッチを入れる。(汚れたもの をよしとしないテルの心情が演出されたシーンだ)

　恋人に裏切られ絶望し窃盗症の水絵は、生まれ変わろうと実 家に帰る。
　テルは田舎に帰った水絵に 忘れ物を届ける途中にヒッチハイクさせてもらった鳩使いのサリーと知り合う。

　そのサリーはレストランでテルにサラリーマンだっ た時に、事務員の女性が入って来て歓迎会をすることになった話をする。
サリー…「あるやつが酔っ払って　そいつに何か芸をやれと言ってな　女は嫌がっ たよ　恥ずかしいからって　そりゃそうだよな〜　35の女が野郎ばっかりの前で芸なんて出来る わけないよな　でも皆でわあわあ囃し立てて　女は渋々立ち上がった　何やったと思う」
テル…「…」
サリーー「カラスの鳴きまね」
「カラス」
サリー…「ああ　ただ口開いて”カァ”といったんじゃないんだよ　口 をこう変な格好に開いてな　”アァ〜　アァ〜”と 言ったんだよ　何度も何度も”アァ〜　アァ〜”ってな」
テル…口を変にしているテル。
ビールを飲み、
サリー…「一週間経ったらいなくなっていた　何があったのか　俺は知 らねえ　きっと嫌なことでもあったのだろう　そしたら事務のやつが”もうこんなもん必要な い”って”どうせ　こんなもんは嘘ばっかり”だって　履歴書を破いて捨ててしまったんだよ　で 俺はこっそりそれを拾って　そいつを剥がして持って帰ったんだ」
テル…「…」写真に目をやる。
サ リー…「思うんだよ　”履 歴書は嘘でも　写真は本物だ”」
テル…「…」写真を見てサリーを見る。
サ リー…頷 き「ビール　ビール がねえよ」
テル…空ジョッキをテーブ ルに置きなおし注文し、写真をテーブルに置く。
にっこりして、
サリー…「昔 の話だ」と言い、写真を取ろうとする。
　サリーにとってずっと胸に痞えていたことだったのだろう。
その写真の上に、
店 員…「お待たせしました」と、 ビールジョッキを荒っぽく置く店員(弓削智久)。
差し出したまま止まっているサリー。
下敷きになった写真を見ているテル。
サ リー…「うんどれあ〜」と 店員に襲いかかる。
　その後、殴り合いになったのだろう。
　巻き添えになったテルが鼻血を出している。
テルのことを気に入ったサリーは、別れ際に困った時は訪ねて来いと、テルに名刺を渡す。

　後 に訪ねて来たテルと水絵の奇妙は生活が始まるが、
サリー…「俺 に言わせれば　お前ら　一人だと 全然駄目だけど」「二人ならでき る　きっ と上手くいくよ　じゃあな〜」と言い、去ってゆくサリー役の内 藤剛志がまた、いい。
　純真なテルを気に入ったことと、カラスの鳴き声をした女性と水 絵が重ね合わさったこともあるのだろう。

　勿論、窪塚洋介が無垢な テルを好演していて、「愛 だよ　こういうの地球では愛っ て言うんだよ　宇宙じゃ知らな いけどね」な ど、水絵な らずとも純粋さに触れて心を癒される。いや、嫌なことを全て洗い流してくれる。　それに、裏切らない。
　 雨 の中で大声で泣きじゃくるテルに心が動かされた。

　音楽もいい。

　小 雪に注目していた時に、観たことも影響していると思うが、小雪(水 絵)は、 心の病から盗癖を持ってしまう女性の脆くて微妙な心理を実に上手く演じていると思った。
　まず、水絵(小雪)がタバコを吸 う仕草に惹きつけられた。ガラス細工のような内面が垣 間見られたからだ。
　バスの中で、テル(窪塚洋介)から受け 取った洋服を握り締め「ありがとう」と言って泣く水絵は最高だ。
　こ のシーンは、何度観ても涙腺が緩んでしまう。

　それから何よりも好きなのは、水絵(小 雪)がテルに向かって言う「うまくなるといいね」に込められた優しさだ。

『Laundry』窪塚 洋介、小雪

　※小 雪は他の作品でもこのような台詞で優しさを感じるさせることが多い。
　例えば、ドラマ『恋がした いX3』9話で自分の道を見詰め直したいために一方的に別れた元の恋 人から、新しい恋人が出来た　話を聞き、素直な気持ちで「よかったね」と言う処などだ。