赤と黒
  
  ジェ ラール・フィリップ、ダニエル・ダリュー

※ストー リーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。 

  〜〜裁判〜〜野 心〜〜黒から赤へ〜〜嫉妬〜〜〜〜〜〜抱擁〜〜絞首台〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わり に] web拍手 by FC2
(1954)(仏)-Le Rouge et le Noir-
監督…クロード・オータン=ララ
原作…スタンダール(「赤と黒」副題 「1830年年代史」)
脚色…ジャン・オーランシュ/ピエー ル・ボスト
撮影…ミシェル・ケルベ
音楽…ルネ・クロエレック
出演…ダニエル・ダリュー(ド・レナール夫人/ルイーズ)
………ジェ ラール・フィリップ(ジュリアン・ソレル)
………アントネラ・ルアルディ(侯爵令嬢/マティルド)
………アントワーヌ・バルペトレ
………アンドレ・ブリュノ
………ジャック・クランシー
ヴィクトワール賞最優秀フラ ンス映画賞受賞。

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 19世紀フランスの文豪スタンダールが王 政復古下の貴族社会を舞台にした長編小説を、フランスの巨匠クロード・オータン=ララが映画化した文芸大作 だ。
  美貌と才能で恋と名声を勝ち取ろうとした野心家ジュリアン・ソレルをジェラール・フィリップが好演し、大 ヒットした。
  彼の代表作となった。

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〜鏡〜

“小説 それは道にそって
持ち歩く鏡である サン・レアル

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〜裁判〜

法廷。
町 長ド・レナール侯爵の妻ルイーズ(ダ ニエル・ダリュー)を 銃で狙撃した罪で、下層階級のジュリアン・ソレル(ジェラー ル・フィリップ)が裁かれている。
裁 判長…「当法廷の裁判長 として 良心に従いー
公判の概要を説明します
皆さんはー
この青年の年齢や 狂気なまでの情熱のため
情状酌量を 考えられるかもしれない
しかし 陪審員の皆さんもー
自らの良心に従って 評決をされるでしょう」と 話す裁判長。
陪審員たちが被告席のジュリアン・ソレル(ジェラール・ フィリップ)を冷 ややかに見ている。
裁 判長…「ジュリアン・ソ レルは 殺さなかった
だが殺そうとした」と 続ける裁判長。
傍聴席に集まった貴婦人たちがジュリアンに好奇な視線を送る。
物売りが席を回っている。
 まるで映画鑑賞するような雰囲気だ。
裁 判長…「罪は同じです  予謀されていた
この男は殺人者ですと 断言する裁判長。
被 告席で腕組みして聞いているジュリアン。
裁 判長…「私の権利 義務 として
そう呼びます」と 言い、
「ジュリアン・ソレル つけたす事は?」と 制圧するような視線を送る裁判長。
立ち上がるジュリアン。
驚いて振り返る弁護人。
落ちついて弁護人を制して、ざわめく傍聴席を振り向いたジュリアンが裁判長に向 かって、
ジュ リアン…「はい あり ます」と言う。
ジュリアンに厳しい視線を向ける裁判長。
ざわつく法廷。
威厳を持って話し出すジュリアン。
ジュ リアン…「許しを乞お うとは 思いません
私の罪は 人道にもとるものです
最も素晴らしい婦人に2発の弾を発したのです
レナール夫人は母親とも言うべき人でした
死刑に価します
だが 私はこの罪の為に 罰せられるのか
そうではないのです
あなた方にとって 私の罪とは
下層階級の私がー
這い上がろうとした事だ
私の首を斬るのは 貧困な
階級に生まれー
幸い 教育の機会に恵まれ
上流階級に入ろうとしたー
すべての青年を罰する事な のです
私たちは顔なじみです
私の父は あなた方の為に
働いてた
だから あなた方は私を
許せない
あなた方の中に 労働者は
一人もいない
畑を耕す者も
ブルジョワだけだ
そう あなた方の仲間入り がしたかった
労働者の息子が
時 計の針が12時を指す。
“カァ〜 ン カァ〜ン カァ〜ン カァ〜ン”
ジュ リアン…「それだけで す」と 言い、陪審員たちに優美に手を翳しながら座り腕組みするジュリアン。
 裁 かれることになんら恐れを抱いていない、差別への一石を投じたいだけだと示した。
時 を告げる鐘が鳴っている。
“カァ〜 ン カァ〜ン カァ〜ン カァ〜ン”
裁 判長が咳払いをして、
“リ リリン”と 鈴を鳴らし、
裁 判長…「閉廷」と 告げる。
全 員が起立する。
協 議室へ退く裁判官たちを送るジュリアン。
“カァ〜 ン カァ〜ン カァ〜ン カァ〜ン”
時 を告げる鐘が鳴っている。
被 告席に腰掛けたジュリアンが胸の内でルイーズに、
ジュ リアン…“ルイーズ  もう会えまい
僕は裁かれる
最後に会う機会は ないだろう
わが罪の恐ろしさを あなたに言いたかった”と 語り掛けている。
 ジュ リアンはルイーズに初めて会ったときは優しい夫人だと思いつつも、運命や人間に対する根深い不信感 を持っていたため夫人のことは念頭になかった。だが、今回の出来事で愛しい人であったことに気付 いたのだ。
回 想へ。

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〜野心〜

貧しく粗 野な大工の息子ジュリアン(ジェラール・フィリップ)は学問好 きで、大工よりも上流階級への野心に燃えていた。
僧 侶(僧服=黒)か軍人(軍 服=赤)になろうと思っていたのだ。

僧院長の 推薦で町長ド・レナール侯爵家の家庭教師となったジュリアン。
ジュ リアンを紹介されたレナール夫人のルイーズ(ダニエル・ダリュー)は、思い描いていた好ましくない家庭教師とあまりにも違っていて狼狽した。
若 いジュリアンを見詰めていたルイーズは自分自身がおかしくなって笑い出し、嬉しそうに子供たちをジュリアン に紹介した。
子 供たちに優しく挨拶するジュリアン。
ジュ リアンに家庭教師が若い人だと子供たちも自身も思っていなかったと嬉しそうに話すルイーズ。
身 なりのよい、優しい夫人を見るジュリアン。

町長ド・ レナール侯爵は軍人を崇拝している貧しいジュリアンに対して威圧するような態 度で接する。
ジュ リアンは腹立たしい気持ちを抑え、崇拝していているナポレオンの時代であったら活躍がそのまま認められるの にと悔やむ。
持っ てきたナポレオンの写真を侯爵に見付からないように隠し、
ジュ リアン…“威厳だ い つも威厳だ”と 自分に言い聞かせるジュリアン。
ジュ リアンに好意を寄せている召使のエルザが、継ぎ接ぎしたシャツを着ているのを見てシャツの世話を申し出る。

“人の心に触れる時 それを傷つけずにはすまないのだ スタン ダール

ジュリア ンに感謝と好意を持つようになったルイーズが、
ル イーズ…「子供達はとて ものびたわ」
ジュ リアンにと言う。
ジュ リアン…「好きなの で」と 言うジュリアン。
ル イーズ…「母親からのお 礼を 受けとって下さ る?」と 言うルイーズ。
ル イーズを見るジュリアン。
ル イーズ…「何でもないの  私も嬉しいし…
下着類を買うために」と 言うルイーズ。
驚 いてルイーズを見るジュリアン。
ル イーズ…「ただ…」と 言うルイーズ。
ムッ として、
ジュ リアン…「何です?」と 言うジュリアン。
ル イーズ…「主人には  おっしゃらないで」と 言うルイーズ。
ジュ リアン…「私は御主人 から 給金を頂いてま す」と 腹を立てるジュリアン。
思 わぬ反応に驚き、
ル イーズ…「怒ったの?」と 言うルイーズ。
ジュ リアン…「貧しくとも 卑しくはありません」と 威厳を持って言うジュリアン。
ル イーズ…「…」
ジュ リアン…「お心遣いに は感謝します」と 言うジュリアン。
ル イーズ…「…」
ジュ リアン…「夕食に汚い シャツで出たことはない つもりです」と 続けるジュリアン。
ド アを開け、
ジュ リアン…「さあ 子供 達の勉強を
始めます」と 言い、
“部屋に入りますか”という仕草をするジュリアン。

首 を横に振るルイーズ。
ジュ リアン…「では」と 会釈し、子供達の傍に行くジュリアン。
ジュ リアンを見詰めながら静かにドアを閉めるルイーズ。
 凛としたジュリアンに惹か れる。

“猛暑が訪れた
家から数歩の菩提樹の下で
夕涼みをする ならわしになった”

ジュリア ンもルイーズに好意を持つようになる。

夕涼みを しているレナール侯爵とルイーズ。
同 席しているジュリアン。
レ ナール侯爵がジュリアンに、
レ ナール侯爵…「ソレル
新聞を持って来てくれ」と 言う。
召 使のような扱いにムッとして立ち上がるジュリアン。
調 子付いて、
レ ナール侯爵…「ついでに メガネもな」と 言うレナール侯爵。
腹 立たしい感情を抑えて取りに行くジュリアン。
そ れを見ていたルイーズがレナール侯爵に、
ル イーズ…「ひどいわ」と 言う。
レ ナール侯爵…「まだ雇う 気があるからだ」と 言うレナール侯爵。
ル イーズ…「でも あん な」と 言うルイーズ。
レ ナール侯爵…「君より農 民どもの事は よく 知っとる
例の下着代を取り戻しとる」と 声を荒げて言うレナール侯爵。
ジュ リアンが戻ってくるのが見え、言葉を飲み込むルイーズ。
 夫 に呆れている。
近 づいて来たジュリアンから新聞と眼鏡を召使から受け取るようにするレナール侯爵。
レ ナール侯爵の態度に腹を立てながら席に向かうジュリアン。
ジュ リアンを案じているルイーズ。
新 聞を読んでいたレナール侯爵が、
レ ナール侯爵…「“国王を お迎えするのは7年ぶ りだ”」と 自慢して言う。
席 に付くジュリアン。
レ ナール侯爵…「“お祭り を開催し 町にふさわ しい熱狂でお迎えしよう
ヴェリエールの市長は警護隊を設けー
警護隊を伝令して”」と 新聞を広げて声を出し読み続けるレナール侯爵。
つ まらなそうにして聞いているルイーズ。
話 を聞かされていることに閉口しているジュリアン。
レ ナール侯爵…「“国王の 滞在中 軍事特権を行 使する
 皆 警護隊になりたがるな”」と 続けるレナール侯爵。
飲 んでいた飲物をつまらなそうにテーブルに置き、
ル イーズ…「もちろんよ」と レナール侯爵に適当に答え手を降ろすルイーズ。
その手がジュリアンの降ろした手とテーブルの下で触れる。
驚いて手を引くルイーズ。
チラリとお互いを見るルイーズとジュリアン。
自 己陶酔して、
レ ナール侯爵…「私も指揮 がとれて嬉しいよ」と 話を続けているレナール侯爵。
ルイーズの緊張を感じ胸が高鳴るジュリアン。
レ ナール侯爵…「宗教的儀 式は それ以上に壮厳 だよ
名誉なことだ」と 続けるレナール侯爵。
視 線を前に向けたままルイーズの手に触れようと神経を集中しているジュリアン。
視 線を前に向けているルイーズの手に手を伸ばすジュリアン。
理 性で感情の高まりを抑制しながらも、指先はジュリアンを求めているルイーズ。
 二 人の緊張が伝わってくる演出にぐいぐい引き込まれる。
レ ナール侯爵…「国王は聖 クレマンの遺骨を 参 拝なさる
司教猊下にお願いしよう」と 続けているレナール侯爵。
ル イーズの手に触れようとしているジュリアンの手。
レ ナール侯爵…「縁日より 人出があるぞ パリま で知れわたる」と ルイーズに言うレナール侯爵。
ジュ リアン…“また手をひ いたら?
握る勇気があるか”と 心の中で自問自答し、ルイーズの方をチラリと見て、レナール侯爵に視線を向けるジュリアン。
新 聞を開いたまま、欠伸をしているレナール侯爵。
ジュ リアン…“声をあげた ら 奴は飛びかかるな
だが やるしかない
手をとって握るだけだ
怖いのか?
よし 待て 10時半の鐘だ
鳴ったら手をとる まだだ
立ち去ったら おしまいだぞ”と 心の中で考えを巡らせるジュリアン。
新 聞を読んでいたレナール侯爵がクシャミをして、
レ ナール侯爵…「寒くなっ てきたな」と 言い、夜空を見上げる。
ジュ リアン…“鐘はまだ か”と 焦るジュリアン。
“鳴らない”
焦 るジュリアン。
レ ナール侯爵がルイーズの方をチラリと見て、
レ ナール侯爵…「戻るか」と 言う。
ジュ リアン…“まだか”と 鐘の音をジリジリして待っているジュリアン。
“カァン カァン”
ジュ リアン…“鳴った”
“カァン カァン カァン カァン”
ル イーズの手を見るジュリアン。
そ して、ついに掴む。
驚 いたルイーズが手を引こうとする。
ル イーズの手をしっかり握り締めて引き寄せるジュリアン。
ジュ リアンを見て、レナール侯爵に視線を向け、握り締めているジュリアンの手の感触を感じているルイーズ。
 気 持ちが高まっているルイーズとジュリアン。
レ ナール侯爵が眼鏡を外し、
レ ナール侯爵…「もう寒い な」と 言う。
 燃 え上がっているルイーズとジュリアンとの対比が描かれる。
ル イーズに、
レ ナール侯爵…「部屋に戻 ろう」と 言うレナール侯爵。
ル イーズ…「まだ早いわ」と 言うルイーズ。
 テー ブルの下で手は握られたままだ。
ル イーズを見るジュリアン。
ル イーズの真意を汲み取ったジュリアンがレナール侯爵に、
ジュ リアン…「10時半で す」と 言う。
レ ナール侯爵…「そうだ  風邪声だぞ」と 言うレナール侯爵。
テー ブルの下で繋がっている二人の手。
ル イーズ…「いいの 風が 気持ちいいわ」と レナール侯爵の方を見て言うルイーズ。
ル イーズを見るジュリアン。
ル イーズの言葉に頷いて、
レ ナール侯爵…「君は夜更 しすると 勉強がいつ 始まるか分からん」と ジュリアンを見て言うと、
「今朝のように」と 言い、ランプを持ち立ち上がるレナール侯爵。
強 く握り合うテーブルの下の手と手。
ジュ リアン…「今朝は気分 が 悪かったのです」と 言うジュリアン。
2階のジュリアンの部屋を整理していたエルザが外の様子を見ている。
ジュ リアンに、
レ ナール侯爵…「見かけよ り丈夫だと 思ってた のに」と 言うレナール侯爵。
ジュ リアン…「子供の面倒 が悪いと?」と 言うジュリアン。
レ ナール侯爵…「今朝はそ うだ」と 怒鳴り立ち去るレナール侯爵。
ル イーズの手を握り続けているジュリアン。
ル イーズ…「…」
ル イーズの手に顔を寄せキスをするジュリアン。
驚 いて手を引くルイーズ。
引 き寄せ手にキスをするジュリアン。
段々 と腕の方にキスをして迫ってくるジュリアン。
立 ち上がり、
ル イーズ…「何てことを?  他に好きな人がい て」と 言うルイーズ。
ジュ リアン…「僕に?」と 言い、
立ち上がり、

「あなた以外に?」と ルイーズと向き合って言うジュリアン。
ル イーズを見詰めて、
ジュ リアン…「愛してま す」と 言うジュリアン。
視 線を落として、
「なんという罪でしょう」と 続けるジュリアン。
2階で聞いていたエルザが驚き、嘆き、怒り、ナポレオンの写真額を壁に投げつける。
“ガ チャ!”
額 のガラスが割れる。
怒っ てジュリアンの部屋を出て行くエルザ。
ジュ リアンに一言言おうと近寄るルイーズを制止、立ち去るジュリアン。
そ の場を立ち去るジュリアンを見ているルイーズ。

召使のエ ルザが二人の仲を知り嫉妬して、ジュリアンが大切にしているナポレオンの写真 入りの額を壊してしまう。
レ ナール侯爵が勝手に部屋に入り壊したと思ったジュリアンは、威厳を潰され召使のような扱いに腹を立てる。
ル イーズを奪うことでレナール侯爵に復讐しようとするジュリアン。
躊 躇いながらもルイーズと深い仲になる。

“恋はラテン語でアモール
そこで恋からモール(死)が生まれる
そして その前に
心のもだえ 憂いー
涙 わな 大それた罪
悔恨ー 「恋の格言」

だが、 ジュリアンは上流社会の差別にあい、天罰だと後悔するルイーズと別れて、か ねてから望んでいた僧侶への道を進むことにする。(当時のフランスでは僧侶にな ることが第1の出世道だった)

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〜黒から赤へ〜

神学校で も階級による差別に悩まされ反逆の感情がますます高まっていくジュリアン。

ド・ラ・ モオル侯爵の秘書となったジュリアンは奔放な侯爵令嬢マティルドと結ばれる。
 高飛車なブルジョワのマティルドを愛したというよりも征服したような喜びを 味わっているジュリアン。
念願の赤い軍服を着て軍人として出世してゆけると喜ぶジュリアン。
 かつて、若い司教が鏡の前でポーズを取っていたのを軽蔑して見ていたジュリ アンが鏡の前でポーズを取っている。
 目標としていた地位に就いたとき、外見に酔いしれてしまうことを演出してい る。

下層階級のジュリアンが娘と結婚することが許せないド・ラ・モオル侯爵はジュリア ンの前歴をルイーズに照会した。

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〜嫉妬〜

嫉妬心から告解人に言われるままに筆を走らせてしまうルイーズ。

ルイーズ からジュリアンとの関係を暴露した返事が届きジュリアンの野望は挫折する。

激怒した ジュリアンは教会で懺悔しているルイーズにピストルを発射させる。
銃 声に振り向いたルイーズにもう一発銃弾が放たれる。
再 び発射された弾丸で傷つけられたルイーズは、ジュリアンから罰を受けたことを喜びながら倒れてゆく。
 ジュリアンに対し罪の意識を持ち苦しんでいたから。
呆 然としているジュリアン。
我 に返ったジュリアンが歩き出したとき憲兵が取り押さえる。

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〜時〜

回想から 法廷の場面に戻る。
裁 判官たちが席に戻ってくる。
立 ち上がるジュリアン。
時 計の針が2時を指し、
“カァ〜 ン カァ〜ン”と なる。
懐 中時計の針を合わせながら裁判官たちを見るジュリアン。
開 廷する。
 恋心からピストルを発したことを悟ったジュリアンはあらゆる弁護を拒絶して 法廷に立っていたのだ。

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〜扉〜

法廷の外 に馬車が入ってくる。
扉 を開ける御者に、
レ ナアル侯爵…「降りんよ  ここで待つ」と 言うレナール侯爵。
レ ナール侯爵の横にルイーズが座っている。
扉 を閉める御者。
判 決を聞いて外に出てきた人々で騒然となっている。
疲 れ果てた表情でルイーズがレナール侯爵に、
ル イーズ…「降りましょ」と 言う。
人々 の話声が聞こえてくる。
人々 A…「嘆いてはいな かった」
人々 B…「死を望んでたん だ」
驚 くルイーズとレナール侯爵。
死 刑を望んでいたことを知り、
ル イーズ…「そんな 私が 助かったのに」と 取り乱すルイーズ。
御 者に、
レ ナール侯爵…「出発だ」と 馬車を出すように言うレナール侯爵。
馬 車から降りジュリアンに会いに行こうとするルイーズ。
馬 車からルイーズの腕を掴み、
レ ナール侯爵…「行けば  2度と子供に会えん ぞ」と 子供を引き合いに出して言うレナール侯爵。
ジュ リアンに許しを乞わなければという思いで一杯のルイーズ。
レ ナール侯爵…「成す術は ない 終わりだ」と 言うレナール侯爵。
ル イーズ…「これで終わり なんて」と 言うルイーズ。
レ ナール侯爵…「ごらん  お前たち
ママが捨てて行くぞ」と 寝ている子供たちを起こして言い、止めようとするレナール侯爵。
ふ らふらしながら法廷の方へ向かおうとするルイーズ。
レ ナール侯爵…「ルイーズ  戻れ」と 悲しそうに言うレナール侯爵。
悲 しそうに振り返ったルイーズは、
ル イーズ…「いいえ」と 言い法廷の方へ歩き出す。
御 者に、
レ ナール侯夫…「行け!」と 言い、馬車の扉をピシャリと閉めるレナール侯爵。
立 ち去る馬車。

ジュリア ンに会って心から許しを乞い気持ちを伝え、死刑を回避してやらなくてはとル イーズは馬車から降りる。

“神がいれば 足元にひれ伏そう
「私は死に値する」
でも神よ 私の愛する人を
お返し下さい!”

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〜 抱擁〜

面会を許 可されたルイーズが、
ル イーズ…「教えて 私は 信心深いのに
また罪に落ちるわ
あなたを見ると 良心の呵責は消えるの
愛しかない 愛以上よ
神に持つべき気持ちを あなたに感じるの
尊敬に 愛に 服従
あなたが看守を殺せと 言えばー」と ジュリアンに言う。
ジュ リアン…「…」
ル イーズ…「私は殺します
今は あなたを
救いたいだけ
あなたが助かるなら 私は千回でも死ぬ
あなたが 死ぬと言うなら
特赦は願いません
私は言うわ
あなたは死ぬ それもいい」と ジュリアンを見詰めて言うルイーズ。
 貞 淑な人妻だったルイーズが恋に身も心も焦がしている。
 「女の業」が感情を高め突き進んで行く。
 一 途なルイーズの心情がダニエル・ダリューの瞳の奥に見えた。
 熱 演に拍手だ。
ジュ リアン…「何もしない 約束もできるね」と ルイーズの両肩を掴んで言うジュリアン。
ジュ リアンを見詰めながら首を横に振るルイーズ。
ジュ リアン…「決して」と 言うジュリアン。
ル イーズ…「できるわ」と 言いジュリアンとキスをするルイーズ。
強く抱き寄せキスをするジュリアン。
 燃え上がる恋の炎の中の 二人。
ル イーズ…「無理に 生き 長らえさせたりは」と 力なく言うルイーズ。
ル イーズが後追い自殺をするのでは思ったジュリアンは、
ジュ リアン…「何もするな
そして 君は死ぬな
毒でも 刃でも
どんな方法でも
誓うね」と 誓わせる。
ル イーズ…「一緒に死にた いわ」と 嘆願するルイーズ。
ジュ リアン…「死ぬ? 何 を言ってる
バカなことを」と 言い、
ルイーズを抱き寄せ、

「ひと月は何も起こらない
君がいて 僕がいる
ひと月 一緒に過ごそう
一緒に楽しく
こんな幸せは初めてだと 抱擁するジュリアン。
ル イーズ…「こんな幸せは 初めて?」と確認するルイーズ。
ジュ リアン…「そうだ」と 答え、
「心から君と話せる
ひと月 まだたくさんの
日々がある」と 言うジュリアン。
ル イーズ…「たくさんの時 間が」と言うルイーズ。
ルイーズを抱き寄せたまま、
ジュ リアン…「幸せに
残りの命ある日々を 人は死んだと思ってる
僕達だけが 生きてるのを知ってる
もう失う名誉もない
死刑の判決も
愛だけだ
神も人間もー
手は出せない」と 心の奥に届かせるように言うジュリアン。
潤んだ瞳を輝かせて、
ル イーズ…「私達だけ」と 幸せそうに言うルイーズ。
 ジュリアンとルイーズは残された日々に幸せを見出す。

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〜絞首台〜

法廷で差別への一石を投じ、愛を告白したルイーズとの抱擁で真実の愛を確信した ジュリアンは、威厳を持って絞首台へと向かった。
己の生きた証を立てながら。

“レ ナール夫人は約束を守った
決して自分の命を 縮めようとはしなかった
だがジュリアンの死の三日後
子供達を抱きしめながら この世を去った”

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 生まれ持って階級差別があることに疑問を持 ち、知識を得て、“赤 と黒”(服の色から赤は軍 人、黒は、僧侶)を 手に入れようと野望を抱いていたジュリアン。
  やっと手に入れたと喜んだジュリアンを陥れる貴族の策略。
  その策略に手を貸したのが、ルイーズだと知り怒り銃弾を浴びせた。
  だが、それが愛ゆえの行為だったことに気づき、刑を受けるジュリアン。
  許しを乞いにやってきたルイーズもジュリアンを愛していたことが分かり、抱擁する。
  野心に燃えていただけであったジュリアンは、もっとも大切なものがあることを知った。
  それは“人を愛すること、愛されること”だった。
  人を愛し愛されていることを知ったジュリアンは、“真実の 愛”を手に入れて穏やかに絞首台へ 向かう。

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※フランスでは『赤と 黒』が 公開されると大きな反響が湧き上がり、レトル・フランセーズ紙は「この映画でジェラール・フィリップは、完全に ジュリアンになりきっ ている」と絶賛したそう だ。
※文芸映画の名匠クロー ド・オー タン=ララは美術学校出身だという。
※実際にフランスであっ た、元神 学生と地主夫人との不倫、銃撃事件が題材となっているそうだ。(雑誌 2004.1.29『週刊 20世紀シネマ館 No.1』講談社 参考)

字幕: 菊地浩司日本語字幕『赤と黒』WOWOW放送参考

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〜写真〜


『赤と 黒』ジェラール・フィリップ、ダニエル・ダリュー


領事服 姿の肖像画1835年 シルヴェストロ・ヴァレリ画 スタンダール
(1973.5.25)世界文 学全集9 赤と黒 集英社より

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参 考文献
ジェ ラール・フィリップ
洋 画
サ イトマップ
映 画ありき2

映画あり き

〜クラシック映画に魅 せら れて〜

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