鉄 道員


   エドアルド・ネヴォラ、ピエトロ・ジェルミ
※ストーリーの結末を載せています ので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。
  第1部 〜〜〜妊娠〜〜流 産〜〜事 故処分〜〜電話不満事情聴取不満
第2部 
格下げ昔の男誤解サンドロ崩壊スト破り洗濯工場歯車ア ンドレア乾杯クリスマス
マルチェロ〜〜ジュ リア
サラ出発〜 
記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わりに]

(1956)(伊)
-Il ferroviere-

監督…ピ エトロ・ジェルミ(コーク映画祭監督賞)
製作カ ルロ・ポンティ
原案ア ルフレード・ジャンネッティ
脚本ピエトロ・ジェルミ/アル フレード・ジャンネッティ/ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ/エンニオ・デ・コンチーニ/カルロ・ ミュッソ
撮影レ オニダ・バルボーニ
音楽カ ルロ・ルスティケリ
出演ピエトロ・ジェルミ(鉄道機関士/アンドレア・マル コッチ)(サンフランシスコ映画祭男 優賞)
ルイザ・デラ・ノーチェ(妻/サラマルコッチ)
エドアルド・ネヴォラ(末っ子/サンドロマルコッチ)
シルヴァ・コシナ(長女/ジュリアマ ルコッチ)
サーロ・ウルツィ(親友/リベラーニ)
カルロ・ジュフレ(レナート・ボルギ)
レナートー・スペチアーノ(長男/マルチェロ・マルコッチ)



 ネ オ・レアリズモの最後の旗手であるピ エトロ・ジェルミ戦 後イタリアの貧しい鉄道員一家を子供の視線から描き、イタリア映画の体臭を発散させるよ うな感 動作創 り出した。

 
頑固 者であるが情味の深い親父ア ンドレア(ピ エトロ・ジェルミ)愛らしいサンドロ少 年(エ ドアルド・ネヴォラ)貧しくやつ れているが美しい魂を持った妻サラ(ル イザ・デラ・ノーチェ)、 味わいのある親友リベラーニ(サーロ・ウルツィ)、それに、愛情問題 のしがらみと父との狭間で苦しむ美しい長女ジュリア(シ ルヴァ・コシナ)な ど、それぞれの 人物が自然に入り込んでくる。
 身近に感じるから心に響いてくる。

 そこにカル ロ・ルスティケリの哀 感を帯びた美しいメロディー が流れる。
 
今日でもメ ロディーを聴くだけで『鉄 道員』家族を思い浮かべ胸 が熱くなってくる
 また、乾杯口笛心 情繋 がりを意識的に演出したジェルミの手腕も見逃せない

 国際 的に評価され監督・脚本・主演をしたジェ ルミ巧みな演出と、大 ヒットした哀 愁漂う映画音楽を十分に楽しめる作品である

Top

〜第1部
〜酒

ローマの勤労者団地で妻サラと3人の子供と暮らしているアンドレア(ピ エトロ・ジェルミ)は機 関士だ。

『鉄 道員』


『鉄 道員』EL(電気機関車)128形、ピエト ロ・ジェルミ


『鉄道員』エドアルド・ネヴォラ、ピエトロ・ジェルミ

特急列車を運転する父アンドレア(ピ エトロ・ジェルミ)を 英雄のように思っている末っ子サンドロと、厳格で頑固な父とウ マが合わない長女ジュリアと失業中の長男マルチェロ。
予定日が近い妊婦のジュ リア はクリスマスに夫レナートと実家に寄るが、仲間が集うウーゴの 酒場 からアンドレアはなかなか帰ってこなかった。
体調が悪い中で待たされたジュリアは、アンドレアに愛されていないとの思いが深まり気分が悪くなっ てく る。

その頃、アンドレアは、
♪パーマが似合う マリア・ニコラ
パーマのお金は 中尉に払わせた
美しいマリア・ニコラ
みんなのあこがれの娘 求婚者は数知れず
ミレドミレドミレドファ
ファ ファ!

マ リア・ニコラは 金のイヤリングが似合う


『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ、サーロ・ウルツィら
と、上機嫌でギターを弾きながら仲間たちと歌っていた。

『鉄 道員』エドアルド・ネヴォラ
母サラから迎えを頼まれたサンドロも楽しそうにしているアンドレアを見て、一緒に歌い出し伝言を言いそびれてしまった。
 ギ ターを弾きながら仲間たちと歌っている父が大好きだから。

  
深酔いするまで飲んで いるアンドレア。
 酒を注いでくれたウーゴと酔い潰れて 残っている仲間たちにアンドレアが
乾杯”する。
 クリスマスおめでとうと、お開きにする意味を持たせて。

やっと、
サ ンドロに手を引かれて家 に帰る。
階段でアンドレアが口笛で合図するが反応がない。
 これが習慣になっていることを演出し ている。
家の中はひっそりとしていた。
皆で自分をさて置いて出掛けたと思い、ふてくされて寝室に入る
ア ンドレア
置手紙を見つけたサンドロが
サンドロ…「マ マ はジュリア姉さんの 家にいるよ」と、 アンドレアに言うが、
ア ンドレアそうか もう寝ろ」と、 酔っているアンドレアはベッドに横になってしまった。
サンドロ…「起 き て 姉さんの具合が
悪いみたいだよ」
と、 アンドレアを揺り起こそうとするが起きなかった
姉のところに駆けつけたサンドロは、ただ事ではないものを感じる。
サンドロ…“赤 ちゃんを産むときは あんな声を出すのかな
ママは 男の子なら
「アンドレア」にするって…
女の子だったら パパは何て言うかな
気に入らないかも
だってパパは 姉さんが結婚する前から
いつも怒ってばかりいた”

回想するサ ンドロ


〜妊 娠〜


『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ、シルヴァ・コシナ

ジュリア「父さんも知ってるはずだわ」と泣きながら言うジュリア。
ア ンドレア「聞 い てないと声を荒げるアンドレ ア。
ジュリアそうやって
いつも とぼけるんだから
嫌がらせしないで」
と泣くジュリア。
サラ「何 て こと言うの」心配するサラ。
ジュリア「父さん私が嫌いなのよ」と声を上げ泣き崩れるジュリア。
サラ「そ ん なことないわ」宥めるサラ。
ア ンドレア「サ ラ!と大声で呼ぶアンドレ ア。
サラ「は い」ジュリアを気にしながらアンドレアの 方へ 行くサラ。

“姉 さ んとレナートは 仲がよかった
でも あのときー
2人が いつもと違うことに気づいてた”

ジュリアはレナートと交際していたが、以前、何かと世話をし てく れていた男が付きまとっていた。
愛 情問題のしがらみとアンドレアとの狭間で 苦しむジュリアは、レナートじっくり話し合うこと を望んでいたが叶わないでいた。



『鉄道員』エドアルド・ネヴォラ、ピエト ロ・ジェルミ、シルヴァ・コシナ、ルイザ・デラ・ノーチェ
そんな時にジュリアがレナー トの子を妊娠していることを知ったアンドレアは激怒して、レナートのところへ怒鳴り込んでいった。
サンド ロ…“レ ナートは僕だけじゃなく パパも追い払うかな”
そしてアンドレアは2人の意思を無視して強引に 結婚させたのだ。
アンドレアに怒鳴り込まれ責 任を取って結婚することにしたレナート、昔交 際していた男との件をはっき りしてからと思っているジュリア。
納得の上でスタートして いな い2人の結婚生活はうまくいかなかった。

そのことを理解してくれているのはサラだけで、ジュリアの支えになっていた。

〜 流産〜

“姉さ んの赤ちゃんは 死んで産まれてきた
僕は クラスで最初のー
「叔父さん」になるはずだった
人は誰でも いつかは死ぬのかな
パパやママが死ぬなんて 考えられないよ”
ジュリアは流産した。
そのことでレナートとの間に溝ができギクシャクしていった。
“ク リ スマスのあと パパの勤務時間が変わって
僕は一人で通学し始めた”

サンドロの学校の成績も悪くなる一方でサラから叱られる。


『鉄道員』ルイザ・デラ・ノーチェ、エドアルド・ネヴォラ

“家族 は相変わらずだった
兄さんは家では 口をきかない”

職 につけないでブラブラしている長男マルチェロは、家では口をき かないで不良仲間とつき合うよう に なっていた。
“ジュ リア姉さんとレナートがー
最後に来たのは パパの誕生日だ
気まずかったよ”
アンドレアの50才の誕 生日 に家族が集ったが、気まずい空気が流れていた。
 こ こ でも“乾杯
をするが、アンドレア だけ盛り上がろうとしているだけであった。

〜事 故〜

そんなある日、機関車(引 機428形186号機)を運転しながら、
ア ンドレアあの晩 早く帰っていれば
ジュリアの赤ん坊はー
元気に産まれていた」
と、親友リベラーニに話す
リベラー ニ「い つ まで そのことで
くよくよしてるんだよ
死産は誰のせいでもない」

慰めるリベラーニ。
首を横に振り、
ア ンドレアあの日以来
すべてが おかしいんだ
ささいなことなんだが
娘の態度が変わってしまった
それにマルチェロも」
と寂しそうに言うアンドレア。
リベラー ニ「そ う 悲観的になるな 少し飲んだほうがいい」
断るアンドレア。
リベラー ニ「代 わ ろうか」
ア ンドレアいい」
リベラーニ「お れ が何のために ここにいると思う」
笑うアンドレア。
タバコを吸おうとマッチの火を点け るリ ベラーニ。
それを見て、
ア ンドレア火を貸せ」と言いタバコを寄せ一服 する アンドレア。
嫌な時間だ」と言うアンドレアに眠たそうにしながら頷き、肩肘付いて目を閉じるリベラーニ。
ア ンドレアまぶしすぎる」と言うアンドレア。
居眠りしていたリベラーニが時計を取り出す。
ア ンドレア何時だ」と言うアンドレア。
リベラー ニ「6 時48分」と言い両腕を枕にして目を閉じるリベラーニ。
時刻表を見て、
ア ンドレア「遅 れ ていると言うアンドレア。
リベラー ニ「ほ ん の30秒だ」と言い再び両腕を枕にし て目を閉じるリベラーニ。
ア ンドレア人がいるぞ」と声を上げるアンドレア。
目を覚ます
リベラーニ。
ア ンドレア「間 に 合わん」と叫ぶアンドレア。
慌ててブレーキを引くリベラーニ。


『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ、サーロ・ウルツィ


『鉄 道員』引機428形186号機
「キィキィキィー  キィキィキィ キィキィキィー …
アンドレアは線路に飛び込んできた男 をひ き殺してしまう。
その動揺から信号を見誤り
列車の牽引 機
640形と衝突事故を起こし そうになる。
処 分

サラはレナートからジュリアと の夫 婦生活が最悪になっているので、別れようと思っていると言われる。
足取り重く家路に着き
ジュリアに知らせようと して いたサラはアンドレアが帰っている のに 驚く。
サラ「帰 り は 明日かと」
ア ンドレア「…」
サラ
「何 か あったの?
話して」
 
ア ンドレア「事 故 が起きたんだ」
サラ
「何 で すって?
どういう事故なの」
 
ア ンドレア「男 が 線路に入りー
おれがひいた」
サラ「事 故 でしょ」 
ア ンドレア「そ う だが
そのあと おれは
信号を見落としたんだ
赤信号を」

サラ
「そ ん な」 
ア ンドレア「間 一 髪だった」
サラ「そ れ で?」 
ア ンドレア「処 分 が下った
停職だ 事情聴取もある」

サラ「ど こ へ?」 
ア ンドレア「寝 る よ」
サラ「ワ イ ンでも飲んだら?」 
ア ンドレア「そ ん な気分じゃない」
寝室に入るアンドレア。

〜電話〜

アンドレアが寝ている間 に そっとベッドから抜け出し、ジュリアにレナートの考 えを 知らせようと電話するサラ。
サラ彼は お前を愛してるわ
私を追いかけてきたのよ
今日は父さんが帰ってるの
明日も行けないわ
いいえ 決めつけないで
時が解決してくれることもあるのよ
物事は日々 変わっていくものなのよ
父さんは よく酔って帰ってきた
殴られたときは憎んだわ
でも そのうちに相手を理解できるものだわ
嫌なことを忘れるくらい
いい思い出ができていくの
そうよ
分かったら返事して
とにかく お願い
彼と話して
約束よ
ジュリア
約束してくれるわね
と涙を流しながら説得す るサ ラ。
ジュリア分かったと涙を流しながら答えるジュリア
サラ“あ り がとう
それじゃ おやすみ
おやすみ ジュリア

心配しながら電話を切るサラ。

この後に昔の男がジュリアに電話してくる
「リリリリン リリリリン
もしもし 君かい?”
ジュリア…”
もしもし”
ジュリア…”
どうした”
受話器を置くジュリア。
「おい ジュリア」
電話を掛けなおす男
「リリリリン リリリリン
受話器を取り、すぐに切り受話器を横に置くジュリア
 この一連のシルヴァ・コシナの 手の動きがいい。



『鉄道員』シルヴァ・コシナ
事情聴取

事情聴取のために出掛けるアンドレアと学校をサボってついて行くサンドロを踊り場で心配そうに見送るサラ。
仕事に行く近所の人が、
近所の人「奥 さ ん」と 挨拶して階段を降りて行く。
気が ついたサラが慌てて、
サラ「こ ん にちは」と 挨拶する。
  同じような光景を最後のシーンにも出し、違いを表している。
  
事情 聴取を受けているアンドレア。
“こ のあと パパは
大変なことになる”

〜 不満〜

責任を問われることに なった アンドレアは、
ア ンドレア
「つま り まじめな者が バカを見たわけだよ
最悪さ
30年間 国のために 身を粉にして働いた
30年だぞ
なのに ある日 突然に責任を問われる
ひどいよ」
「線路に飛び込んだ男を ひいてもー
平然と運転を 続けられる者がいるか?
事故のことを考えて 信号を見落とした
だが連中は飲酒運転が 原因だと言いだす
酒好きを証言する者まで
おれが酔っていたとでも?
確かに少し口にふくんで 気を落ち着かせた
だが お偉方には 信号無視のほうが重要だ
人を死なせたことは 理由にならないらしい」
とテーブルの席で不満を打ち まけ、友人や妻が家に帰るように促してもウーゴの酒場から帰 ろうとしないで飲み続ける。
客たちが帰ってしまってガランとした中でも話し続けているアンドレア。
店じまいしながら話を聞いてやっているウーゴと独り身の客。
母に頼まれてサンドロが迎えに来る。
入り口で父を見ている サン ドラを見るアンドレア。
父の前に来たサンドロ に、
ア ンドレア「お 前 か ここに座れ」と言い、
「ウーゴ 酒だ」とウーゴに向かって言うア ンドレア。
サンドロ…「帰 ろ うよ」と言うサンドロ。
ア ンドレア「何?」と不機嫌に言うアンドレア。

俯いて、
サンドロ…「遅 い から帰ろう」と言うサンドロ。
サンドロの顔に触れ、
ア ンドレア「そ う か ママに頼まれたんだな」と自分の方に向け言うアンドレア。
首を横に振るサンド ロ。
溜息をつき、煙草を一 服し たアンドレアはサンドロを見て顔を覆う。
そして、グラスを手に 取 り、
ア ンドレア「こ れ を飲んだら帰ろう」とサンドロに向かって言うアンドレ ア。
様子を見ていたウーゴ がアンドレアの決心に応えるようにカウン ターの電気を消す。
飲み干したアンドレア は周 りを見渡し、
ア ンドレア「お い  ウーゴ
いくらだ」
と言い金を払おうとする。
ウーゴ…「今 夜 の分は 会社のツケにしとく」と言うウーゴ。
 アンドレアの気持ちが分かるウーゴ の心 遣いだ。

僅かに残っているグラスの 酒を飲み、
ア ンドレア「乾 杯」とウーゴに向かって言うアンドレア。
 ウーゴの心遣いに対する感謝を形と して 示したかった“乾杯”だ。


『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ
サンドロに促されてやっと店を出るア ンドレア
 サンドロに手を引かれ家路に向かう描写が美し い。
 2人の心情を語るようにメロディーが流れる。
 
2人足音がより切なく胸に迫ってくる演出に拍手だ。


『鉄道員』エドアルド・ネヴォラ、ピエト ロ・ジェルミ
“そ のあと 会社の命令で
 パパの仕事は構内に戻った
 古い機関車を 動かす仕事だった”
 

〜 第2部
〜 格下げ〜

アンドレアは構内の古い機関車(SL835形)を動かす仕事に格下げさ せら れた。

『鉄道員』SL835


『鉄 道員』SL835形、ピエト ロ・ジェルミ

Top
〜 昔の男〜

ジュリア
は以前交際していた男の存在 に不 安を持ちながら、レナートとの生活の改善に努める


『鉄 道員』シルヴァ・コシナ、カルロ・ジュフレ
訪ねてきたサンドロと一緒に嬉しそうに買い物に行くジュリア
 シ ルヴァ・コシナが魅力的だ。

『鉄 道員』エドアルド・ネヴォラ、シルヴァ・コシナ

そのジュリアの前に 昔の男が現れる

『鉄道員』シル ヴァ・コシナら

サンドロの手を引き、男 から 逃げるように立ち去るジュリア
そして、サンドロに
ジュリア「今の人のことは 誰にも言わないで
約束できる?」
と頼む。
サンドロ…「誰 な の」
ジュリア「昔の友達よ 内緒にすると
約束して」

サンドロ…「分 かった 黙ってるよ」とふくれて言うサンドロ
 姉に絡む男の存在と、それを隠そうとして いる ことが気に入らなかったのだ。

〜金〜

収入が激減したアンドレ アは 生計をたてるのに苦慮していた。
友人から借りた5000リラの返済もできず、
滞納している組合費2ヶ月分まで請求 され る始末だ。
“6月に もらった通信簿は
最低だった”
鉄 道員が嫌でブ ラブラしている長 男マルチェロを見て苛立つアンドレア。

マルチェロは ガラの悪い男たちに金の返済を 迫られ追い込まれてい る。

学校の成績が落ちる一方のサン ドロは機嫌の悪い父親に通信簿を見 せられないで隠す。
サンドロ…
「同級生が みんな
いい点をもらうのは
学期末にお母さんが 花を持っていくからだ」
と サ ラに言い、
「パ パ にバレるかな」
とマルチェロに言うサンドロ。
 マルチェロの立場とダブらせた台詞 が面白い。

母サラの唯一の宝石をこっそり持ち出して窮地を凌 ごうとしているマルチェロ。
それを目にしたサラは
マルチェロを叱りながらも、宝石を 持ち出しやすいようにしてや る。
サンドロ…“今 日 のところは
何とか バレずにすんだ”
と、 ほっとしているサンドロ。
 この台詞もマルチェロの立場とダブ らせている。

〜誤解〜

パチンコ(Y の形にゴムを通して小石をぶつける道具)遊 んでいたサンドロが、車でジュリアを誘惑している あの 男を目にする
誤解されたと思ったジュリアが車を降り、
ジュリア「サンドロ」と声を掛ける。
サンドロ…「…」
後 ずさりして
ジュリアを見て首を振るサ ンドロ
ジュリア「違うの
待って」
とサンドロの方へ行くジュリア。
サンドロ…
首を振りながら後ずさり するサ ンドロ
ジュリア「待ちなさい
サンドロ 違うのよ」
と言うジュリア
背を向けて離れるサ ンドロ
ジュリア「待って」サンドロを呼び止めるが、サンドロは 背を 向けて駆けて行く。


街中であの男を目にしたサンドロはパチンコ車の窓ガラスに石を撃ち込む。
 敵を退治した訳だ。


『鉄 道員』エドアルド・ネヴォラ

母サラに悩みを打ち明け ようとアパートに向かっていた ジュ リアは、階段を下りてきている父と出くわし戸惑う
ジュリアを見て綺麗だと 言っ た後に、ジュリアの手に触れるアンドレア
 ア ンドレアがジュリアのことを大切に思っていることが描かれて いる。
父に知れたらどうし よう と思い、ドアの前で躊躇するがドアベルを鳴らすジュリア。
ジュリア「母さん」
サラ「ジュリア」
ジュリア
「話があるの」
サラ「何かあったの?」
ジュリア「もう限界だわ つらくて耐えられないの」と言いながら母の胸 に顔を埋めて泣くジュリア

Top   
〜サンドロ〜

車の窓ガラスを割ったことで補導されるサンドロ。
質問されても訳を話さない
サンドロを連れ帰ったアンドレア はアパートの階下で
アンドレア「おいで」と話し掛ける。
サンドロ…「…」
姉との約束があるので言えないでいる。
アンドレア「話をしたいんだ」と続けるアンドレア
サンドロ…「男同士で?」と言うサンドロ。
頷き、
アンドレア「ああ 男同士で」と答えるアンドレア
困った顔で父の方へ近寄る
サンドロ
サンド
の顔を
自分の方に向け、
アンドレア「サンドロ
お前はバカな子じゃない
機転も利くし 賢い
石を撃ち込むにも 何か理由があったはずだ」
と言う。
サ ンドロ…「…」
顔を背けるサンドロ。
アンドレア「お前は悪いことをした
だが どうしてなんだ」
と続けるアンドレア。
サンドロ…「…」
俯いているサンドロの頭 を撫 で回しながら、
アンドレア「どうした」と言い、顔を自分の方へ 向け、
「正直に言うんだ」と言うアンドレア。
泣きながら、
サンドロ…「車の中に 姉さんと
知らない男がいたからだ」
と言うサンドロ。
アンドレア「…」
驚くアンドレア。
サ ンドロ…「そいつの顔に向けて 撃ち込んだん だ
内緒だって 姉さんと約束したけど」

アンドレア
聞いているアンドレア。
サンドロ…「もういいんだ
僕は あの男が嫌いだもん」
と言うサンドロ。
訳を聞き出したアンドレアは、
ジュリアが不倫していると誤 解し怒りが爆発する。

〜 崩壊〜

階段を上がっていき、家に来ているジュリアを殴りつける。
後から階段を駆け上っていったサンドロに、
アンドレア「ジュリア こっちへ来い
さっきまで誰に会ってた」
アンドレアが声を荒げ、ジュリアを殴っている 物音 が聞こえる。
階段の住人が踊り場に出 てき て声がする方を見ている。 
アンドレア「車の男は何者だ」と怒鳴りながらジュリアを殴りつづけるアンドレア。
逃げるジュリア。
サラ「あなた やめて」アンドレアの両腕を掴ん で止める母サラ。
アンドレア「黙ってろ」
サラを振り払い、ジュリ アを 殴るアンドレア。


『鉄 道員』シルヴァ・コシナ、ピエト ロ・ジェルミ、ルイザ・デラ・ノーチェ

サラ
「お願 いだから やめて」アンドレアから逃げてきたジュリアを抱き寄せて言うサラ。
ア ンドレア「恥 さ らしめが」ジュリアに向かって怒鳴り殴るアンドレア。
上の階の住民も出てきて怒鳴り声がする方を見ている。
アンドレア「いっ そ近所中の 笑い者になるがいい」と怒鳴りながらジュリアを殴りつづけるアンドレア。
悲鳴を上げているジュリア。
階段で聞いていた
サンドロは、大変なことになっていることを察知して急いで駆け下りて兄を呼びに行く。

ジュリア「全部 父さんのせいよ
18歳まで 木綿の靴下をはかせて
コートもそうよ
父さんのお古を 袖を詰めて着せられたわ
死ぬほど恥ずかしかった」
と泣きながらアンドレアに言うジュリア
アンドレア「何 が 悪い」と言うアンドレア。
ジュリア「レナートと結婚したのも 父さんの命令だから」と泣きながら言ジュリ
アンドレア「黙 れ」とジュリアの口を手で塞ぐようにして 押すアンドレア。
ジュリア「何もかも
もう うんざりだわ」
とはき捨てるように言ジュリ

サラ「ジュ リア もうやめて」と止めに入るサラ。
ジュリア「あの家を出るわ
私だって幸せになりたいの」
と言い泣き出すジュリ
驚いて見ているアンドレア。
心配して見ているサ ラ。
アンドレアに、
ジュリア「父さんの考えは 間違ってるわ
一人で静かに暮らしたい」
と言い、
「メードをやって 食べていくわ」と泣きながら言うジュリ
止めに入るサラ。
ジュリア「だから ほうっておいて」と泣きながら言うジュリ
止めに入っているサラが心配してアンドレアを見る。
ア ンドレア「来 い」とジュリアを掴み、
「邪 魔 だ」と、止めに入ったサラを突き飛ばす
ア ンドレア。
床に倒れ込むサラ。


サンドラから知らせを受け 駆けつけたマルチェロは、アンドレアが母に暴力を振るったと思い、アンドレアに歯向かおうとする。
アンドレアを睨んで近づいてくるマルチェロに、
ア ンドレア「文 句 あるか」と言うアンドレア。
 父 親の威厳を見せようとする。
マルチェロに向かって、
サラ「マルチェロ 何をするの」と必死に言うサラ。
怒りを爆発させたマルチェロがアンド レア に向かってくる。
手を口に当て心配して 見て いるジュリア。
怯えて見ているサンドロ。

マルチェロに向かっ て、
サラ「やめて」と叫ぶサラ。
マルチェロを押さえつ け、 拳をあげるアンドレア。
アンドレアに向かって、
サラ「あなた」と必死に叫ぶサラ。
サラの声で我を取り戻 し、 拳をあげたまま寂しそうにマルチェロを見るアンドレア。
掴まれているマルチェロが、
マ ルチェロ「母さんに乱暴はやめろ」
と 悲しそうにアンドレアに 言う。
ア ンドレア「…」と悲しそうにマルチェロを 見ているアンドレア。
 誤解されているから。
マルチェロ「指 一 本 触れるんじゃない」と怒りをこめてアンドレア に言うマルチェロ。
拳を下ろし掴んでいた手を離し、寂しそうにマルチェロを見る
アンドレア。 
アンドレア「出 て いけ 2人ともだ」と言ってしまうアンドレア。
 
寂しそうだ。
驚いてアンドレアを見 るサ ラ。
アンドレアを見ているジュリア。
驚いて見ているサンドロ。
アンドレアを見ていた マル チェロがジュリアの方へ向かう。
マルチェロを見るジュリア。
悲しそうに出て行くジュリアと、後に続くマルチェロ。
心配して見ていたサラが出て行く2人の方へ駆けてゆき、
サラ「ジュリア マルチェロ
待ちなさい
お願いだから行かないで」
と 言う。
厳 格で頑固なを うとましく思っていたジュリアと、忍従に甘んじている母に同情 して父と口論となったマルチェロは家を出て行った。
サラたちを見ていたアンドレアは、引くに引けなくなった己の立場に一撃する。
食器棚のガラスに拳を撃ち込むというやり方で。
  どうしてこんなことになってしまったのだと悲しむアンドレアの心情が見事に演出されている。

〜 スト破り〜

“ストライキ”
そんな時に
鉄道ストに突入する。
だが一本気なアンドレアは
機関車を動かしてしま う。
“次 の 日の夜 パパが帰るまで
僕もママも眠れなかった”

スト破りしたとみなされ たア ンドレアは仲間から疎外される。

アパートの壁に、“マ ルコッチはスト破り”と落書きしてあ るのを目にするサンドロ。
通りかかったリベラーニがサンドロを口笛で呼ぶ。
 
リベラーニも家族同様だ と意 味づけている口笛だ。

自宅の階段の下にも
“マ ルコッチはスト破り”と近所の子供たちが落書きしてい る。
見下げるような近所の子供たちの視線に父がよくない事をしたのだと思い始め、
誇りに思っていた父親像が崩れてアン ドレ アを見る目が変わってくるサンドロ

アンドレアは説明ができない苛立ちでサンドロにも当たるようになる
かっての仲間たちの突き 刺す ような視線に孤立してしまったアンドレアは仕事に行かなくなり、酒量が益々増え酒場で時間をつぶすよう になる。
“パ パ は仕事に行かず 昼は外で時間をつぶし
 口数も ずっと少なくなった
 冗談も言ってくれない”
帰らぬ父を捜すサンドロ。
一緒に捜してやるリベラーニ。
アンドレアが行きそうな酒場を捜し回ってやっていたリベラーニは、やっとアンドレアを見 つけ る。
だが高笑いして相手をしている女と飲んで悪酔いしている
アンドレアの姿だった。
サンドロに見せられない と 思ったリベラーニは、
リベラーニ「も う 家に帰ってるかもな
飲んでたとしても
もう いない」
言うが、サンドロも父の姿を 目にしていた。
“僕は 黙ってたけど パパは
確かに女の人と飲んでいた
パパは どうして家に帰らないんだろう”

〜 洗濯工場〜

レ ナートと別れて洗 濯工場で働いて自活しているジュ リアの ところへ、サンドロが レナート頼 まれた荷物を持って行 く。
サ ンドロ口笛で合図する。
 口笛が家族の合図として浸透しているから。  
過酷な 作業 場で働いていたジュリアが口笛を耳にして振 り向く


『鉄道員』シルヴァ・コシナ
サンドロの姿を目にする。

『鉄道員』シルヴァ・コシナ
ジュリア「サンドロ」と言いながらサンドロ に駆 け寄り、
「サンドロ」と愛おし く抱 き寄せるジュリア
 自活したものの厳し い生活に疲れ はてているジュリアがひと時見せる安らぎの表情が美し いシーンだ。
す ぐに緊張した表情になり、
ジュリア「弟なんです 会うのは
すごく久しぶりなので…
いいですか?」
と上司に許可をもらうジュリ ア

  ジュリアの生活ぶりが演出されている。


『鉄道員』エドアルド・ネヴォラ、シルヴァ・コシナ

一瞬、ジュリアに厳しい表 情を見せるが、
上司「ええ ごゆっくり」とサンドロとジュリアに笑顔 を見 せて言う上司


『鉄道員』エドアルド・ネヴォラ、シルヴァ・コシナ

ジュ リア「ありがとう」と上司に礼を言い、
「おいで」とサンドロの手を引いて 持ち 場を離れ話すジュリア
ジュ リア「元気だった?
大きくなったわね」
周りを見回して、
サ ンドロ…「ここ臭いね」
と 言うサンドロ。
ジュリア「酸のにおいよ すぐ慣れるわ」と表情を曇らせて言い、
「み んなは どうしてる?
母さんは元気かしら」
と聞くジュリア。
サンドロ…「僕 のこと怒ってる?」と言うサンドロ。
首を横に振り、

ジュリア「何を言うの」と言うジュリア。

サンドロ…「こ うなったのは 僕のせいだもん」と言うサンド ロ。
首を横に振り、
ジュリア「怒るはずないでしょ
むしろ あなたにお礼を言いたいくらいよ」
と優しく言うジュリア。
サンドロ…「ど うして」と言うサンドロ。
ジュリア「サンドロのお陰で人生が変わった
一人になれた」
と言うジュリア。
サンドロ…「…」
ジュリアの顔をしっかり見て話 を聞いているサンドロ。
俯き、

ジュリア「確かに 時には寂しくて
気がめいることはあるわ」
と言いながらサンドロを優しく撫でる ジュリア。
サンドロ…
話を聞いているサンドロ。
込み上げてくる感情を抑えながら、
ジュリア「分かってくれる?
でも心が落ち着いているの
とても幸せよ
正しいことをしたという自信もあるの」
と言うジュリア。
サンドロ…
ジュリア「あなたも大人になれば分かるわ」と言うジュリア。
荷 物がレナートに頼まれたものだとサ ンドロから聞き戸惑うジュリア

Top

〜歯車〜

いつも隣で寝ていた夫がいないベットに横になっ ているサラに、
サンドロ…「マ マ」と近くのベッドで横になっていたサンドロが声を 掛ける。
優しく返事をするサラ。
サ ンドロ…「入っ ていい?」と言いながらサラの横に入り込むサンドロ。
サラ「ど う したの」と言うサラ。
サ ンドロ…「今日  レナートに頼まれて
姉さんに荷物を届けたんだ」
と言い、
「本 当は内緒なんだけど」と サラの顔を見て付け加えるサンドロ。
サラ「ジュ リアは何て?」と心配して聞くサラ。
サ ンドロ…「日曜 に映画に 連れていってくれるって
行っていい?」
と言うサンドロ。
優しく頷き、

サラ「ど ん な様子だったか教えて
幸せそうだったかしら
少し落ち着いたかしら」
と言うサラ。
サンドロ…「う ん  そう思うよ
幸せだって言ってた
大人になれば分かると言われたけど
僕は今 知りたいんだ
教えてくれる?

ジュ リ アとパパの どっちが正しいの?」と聞くサンドロ。
サンドロの頭を優しく撫でて聞いていたサラは、

サラ「2 人 とも正しかったの
ケンカとは そういうものよ」
と寂しそうに話す。

サ ンドロ…「仲 直りはできないの?
2人とも正しいのなら どっちも謝らないし…」
と言うサンドロに、
サラ「問 題 はー」と話し出し、
一息入れ、

「今まで
話し合ったことがないこと
だから理由もなく 衝突するの
話し合わないからー
ささいなことで 大ゲンカになってしまう
そのうち不満が たまって
気がついたときには
関係にヒビが入る
お前もー
パパや姉さんの様子を 見てたでしょ
自分は正しいと思う人ほど
仲直りできないのよ

自分は幸せだなんて
言い張ったりするから」
と胸の内を話すサラ。

サ ンドロ…「じゃ あ 姉さんは本当は
幸せじゃないってこと?」
と聞くサンドロ。
サラ「そ う よ
ママだって
少しも幸せじゃない
パパも マルチェロも
お前も幸せじゃないわ
だって
幸せは この家から
出ていったのよ

悲しみ が込み上げて泣くサラ。
サンドロ…「マ マ  泣かないで
僕まで悲しくなっちゃう」

泣い てる母を見て悲しむサンドロ。
 家族の幸せを願っているサラが「幸せは この家から 出ていったの よ」と、家族の歯車が軋んでしまったことを悲 しむ 言葉が胸を打つ。


〜 アンドレア〜

サンドロはスト破りの 件で友達と遊びにくくなったこともあるが、悲しんでいる母の姿を見てしっかりしなくてはという思いに目覚め、父 に一人前だと認めてもらうには進級しなくてはとの思いで一生懸命に勉強をしだす。
その甲斐があり進級で き る。
サ ンドロ…“ほっとしたよ
これでパパと話ができる
やっと仲直りできるし 一緒に家にも帰れる
死ぬほど勉強したかいがあったよ”
と喜び、父がいる酒場に駆 け足で迎えに行くサンドラ。
酒場のドアを開ける前 に十 字を切ってお祈りするサンドラ。
ドアを開けた向こうに 深酒 で弱りきったアンドレアが座っている。
サンドロを見て、
ア ンドレア「サ ン ドロ」と声を掛けるアンドレア。
恐る恐る父に近づくサ ンド ロ。
ア ンドレア「こっ ちへおいで」と言いながら手招きするアンドレア。
アンドレアの傍に来て 父を 見ているサンドロに、
ア ンドレア「座っ て」と言うアンドレア。

サ ンドロ…「…」 
黙っ てアンドレアを見ながら座るサンドロ。
ア ンドレア「何 か 食べるか」と言い、
思い立ったように、

「ワインを飲もう」
「グラスをくれ」
と酒場の女に言うアンドレア。
苦笑いをして、
「お前と一緒に飲むのは
久しぶりだ」
と言うアンドレア。
頷くサンドロ。
女がグラスを渡す。
ア ンドレア「な ぜ  ここへ?」と言うアンドレア。
サンドロ…「前 に 見たんだ」と 言うサンドロ。
不機 嫌に、
アンドレア「そ れ で?」と聞きながらグラスにワインを注ぐア ンドレア。
黙って俯くサンドロ。
気まずそうにサンドロを見るアンドレア。
アンドレアを見て、
サ ンドロ…「女の 人といた」と 言うサンドロ。
ア ンドレア「…」
注いでいたワインを置き、やり場のない思いでいるアンドレア。
注がれたグラスを掲 げ、
サンドロ…「パ パ 乾杯!」と 優しく言うサンドロ。
  成長したサンドロの“乾杯”だ。

『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ、エドア ルド・ネヴォラ

苦笑いしながらサンドロが差し出したグラスにグラスを近づけ乾杯する
アンドレア。
にっこりしながら飲む サン ドロ。
成長したサンドロを嬉しそうに見ながら飲み、
ア ンドレア「こっ ちへ来て座りなさい」とサンドロの手を引いて言うアンドレ ア。
アンドレアの傍に座る サン ドロ。
ア ンドレア「よ し
パパは前から お前とー
話がしたかった
つまり男同士の話だ」
と言うアンドレア。
サンドロ…「う ん」 
大 きく頷くサンドロ。
ア ンドレア「お 前 は家の階段の下の
落書きを覚えてるか」
と言うアンドレア。
目を背けるサンドロ。

アンドレア「目 を そらすな」と言うアンドレア。
ア ンドレアを見るサンドロ。
ア ンドレア「ス ト 破りじゃない
そう書いてあったが パパは違う
そうじゃないんだ」
と話すアンドレア。
頭を掻き回しながら、
ア ンドレア「ど う 説明すれば 分かってくれるかな
自分は正しいと思ってしたことが
違うと気づくことがある
そうなると すべてが崩れてしまう」
と苦しそうに話すアンドレア。
サンドロ…「リ ベ ラーニさんは スト破りと思ってないよ」と すかさず言うサンドロ。
ア ンドレア「会っ たのか」と言うアンドレア。
サンドロ…「ウー ゴさんの店に 行ったんだ」と 言うサンドロ。
懐かしさが込み上げてきたアンドレアは、

ア ンドレア「今 も いるかな」と時計を見てから言う。

にっこりして頷くサンドロ。
傍にあったコルクを握り締め、

ア ンドレア「パ パ も何度も考えた
ウーゴの店に行こうと
繰り返し想像してた
ドアを開けてこう言うんだ」
と話し、
“おれを殴りたいやつは
好きにしろ”
と」
とコルクを床に投げ捨てて話すアンド レア。
サンドロ…「…」 
苦笑いし、
ア ンドレア「そ ば へ来い」とサンドロの腕を掴み引き寄せ、
愛おしく頭をなで、

「キスしてくれ」と抱き締めキスをするアンドレア。

アンドレアに抱きつくサンドロ。
〜乾 杯〜

アンドレアはサンドロと ウーゴの店のドアを開ける。
店にいたかつての仲間 たち がアンドレアを見る。
入り口で仲間たちの反 応を 待ち受けるア ンドレア。
仲間たちがアンドレア を見 ている、その空気を打ち破るようにウーゴアンドレアに
ウーゴ…「マ ル コッチ 待ってたぞ
極上のワインの樽が 届いたところだ」
と手で呑むしぐさをしながら声を掛け る。 
ア ンドレア「…」
仲間の反応を待っているアンドレア。
リ ベラーニ入り口にいるアンドレアを見ながら
リベラー ニ「独 り 占めかよ
おれたちにも 飲ませてくれるよな」
と続ける
仲 間Aアンドレアを見ながら
仲間A…「ア ン ドレアだけタダ酒か?」と 続ける。
仲間たちの笑い声がする。
表情が緩むアンドレア。
仲間 Aが笑いながら仲間たちを見て同意を求め る。
笑っ て応える仲間たち。
アンドレアがサンドロの 手を引きながら店の中へ入ってくる。
出迎えるウーゴとリベラーニ。
嬉しそうに
ウーゴ…「い や  みんなで飲んでくれ」と言いながらワインを準備し、
「足りなければ 遠慮なく言えよ」と続ける。
リベラーニがアンドレアとサンドロを 出迎えている
仲間たちが暖かく見守っている。
ウーゴ…「さ あ  これだ
当店自慢のワインだぞ」
と言いながらグ ラスをアンドレアに渡しワインを注いでやるウーゴ。
「ほら飲め
勘定は会社のツケだ」
と差し出された仲間たちのグラスに注 いでやる。
嬉しそうに見ているア ンド レア。
アンドレアの背後から も、
仲間B…「お れ にもくれ」と 言い、アンドレアに笑顔を見せる仲間B。
笑顔を返すアンドレ ア。
おどけて、
リベラーニ「気 に するな
樽ごと くれるそうだ」
言うリベラーニ
仲間C…「さ す がウーゴ」と 言う仲間C。
嬉しそうに笑う仲間た ち。
皆に注ぎ終わったウー ゴが嬉し そうに
ウーゴ…「み ん なの健康に乾杯!」と言う。
仲間たち…「乾 杯と 言う仲間たち。
お酒をかみ締めて飲むアンドレアと仲間たち。
 こ の日を待ちわびていた喜びが伝わってくる“乾杯”だ。
それを嬉しそうに見ているサンドロ。


『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ、エドア ルド・ネヴォラサーロ・ウルツィら
ア ンドレアがギターを弾きながら仲間たちとあの歌を楽しそうに歌っている。
♪ パーマが似合う マリア・ニコラ
パーマのお金は 中尉に払わせた
美しいマリア・ニコラ
みんなのあこがれの娘 求婚者は数知れず
ミレドミレドミレドファ
ファ ファ!

マ リア・ニコラは 金のイヤリングが似合う

ギ ターを弾きながら歌っていたア ンドレアだったが床にくずおれてしまう。
サンドロ…「パ パ」 
リベラー ニ「ア ン ドレア」
驚いてアンドリアに走り寄るサ ンド ロとリ ベラーニ

数ヶ月寝込むアンドレア。
サラがマルチェロに手紙を書いている。
“マ ル チェロ パパは良くなったけど
 まだ安静にしてなきゃだめなの
 3か月たち じきにクリスマスね”

ク リスマス

ジュリアとよりを戻したいと考えていたレナートが、仕事帰りのジュリアを待つ。
レナートに気づいて驚くが通り過ぎようとするジュリア。
ジュリアを見ていたレナートが、
(レナート「ジュ リア」と呼び止める。
ジュリア
「…」
立ち止まり、“ど うしようと動揺して いるジュリア。
近寄り、
「ジュリア」
と声を掛けるレナート
ジュリア
「何しに来たの」と動揺を隠すように言うジュリア。
(レナート「君 に 会って
直接 言いたかった」
と言うレナート
振り向く
ジュリア
目と目が合うレナートとジュリア。

(レ ナート「心 を込めて
メリークリスマスと」
と言うレナート。
優しく、
ジュリア
「ありがとう」と答えるジュリア。

〜マル チェロ〜

幾分気分がよくなったアンドレアがクリスマスだから起きだしてくる。
3人だけで迎えるクリスマスに寂しさを感じているときに、
リ ベラーニが訪ねてくる。
リベラー ニ「家 族 の皆さん
メリークリスマス」
言い、
「サラ この年寄りは
少しは元気になったかな」
とサラに言いながら、ア ンド レアに近寄り嬉しそうに握手するリベラーニ
ア ンドレア「か な りな」と言い、喜ぶアンドレア。
リベラーニ「す ぐ に もっと良くなるぞ」言うリベラーニ
ア ンドレア「ど う してだ」とリベラーニを見て言うア ンドレア。
すでに入り口にいるマ ル チェロの姿を目にしたサラは喜びの表情を浮かべている。
リベラーニに促されて 入り 口を見るアンドレア。
サンドロに手を引かれ て入 り口にマルチェロが立っている。
嬉しそうにマルチェロの手を引くサンドロ
入り口で躊躇しているマルチェロ

アンドレアの反応を心配して、
リベラーニ「落 ち 着いて」アンドレアの肩に手を置いて言うリベラーニ
アンドレア
「…」
マルチェロを見ているアンドレア。
中に入ってアンドレアを見ているマルチェロ。
マルチェロの隣で嬉し そう にしてアンドレアを見ていたサンドロが、
サ ンドロ…「パパ
家に戻って来るって」
と言う。
サンドロを見て、アンドレアを見る
マルチェロ。
椅子から立ち上がって マル チェロの方へ行こうとするアンドレア。
アンドレアの方へ近寄 るマ ルチェロ。
マルチェロの方へ行こ うと するアンドレアを嬉しそうに支えているサラ。
ア ンドレア「マ ル チェロ」と声を掛け抱き寄せるアンドレア
アンドレアに抱きつくマル チェロ。
抱き締めるアンドレア。
そっとマルチェロ の腕に手を添え涙ぐむサラ。
嬉しそうに見ているサンドロとリベラーニ。

サンドロを抱き上げながら、
リ ベラーニ「ワ イ ンを
もう1本 開けよう」
と言うリベラーニ。
サラの頬を嬉しそうに撫でる マル チェロ。
アンドレア「あ あ  もちろんそうするさ」と嬉しそうに言うアンドレア
マルチェ ロを 抱き締めるサラ。
嬉しそうにサラを抱き締める マル チェロ。
マルチェロに、
アンドレア「コー トを脱いだらどうだ」とワインを片手に言い、
「コ ル クを抜いてくれ
この帽子も脱げ」
とリベラーニの帽子を剥ぎ 取るアンドレア

 ヘアーを気にしていたリベラーニが慌てる様子がコミカル だ。
Top

〜ジュリア〜

リベラーニが 誘っていた仲間たちが、それぞれ持ち寄って押し掛けて来る。
賑やかなクリスマスになる。
ギターを弾くアンドレア。
ダンスを踊る客。
大切にしていたグラスで客を持て成すサラ。
 こ の日まで1度も使わずにいた高級なグラスを割られて一瞬、はっとするが今の喜びと比べものにならないとはしゃぐ サラの表情がいい。


嬉しそう にダ ンスを踊っているリベラーニにサンドロ。
それをギターを弾きながら見て楽しんでいるアンドレア。
フィアンセと踊っているマルチェロ。
フィアンセだと知り祝福するアンドレアと客たち。
嬉しそうに見ているサ ラ。
ジュリアから電話がかかってきて話しているサラ。
ジュリアからではと思 いな がら傍に来てサラに、
ア ンドレア「誰 だ」と言うアンドレア。

受 話器を持ちアンドレアを優しく見つめるサラ。
ア ンドレア「ジュ リアか」と言うアンドレア。
頷き 受話器をアンドレアに渡すサラ。
ア ンドレア「…」
受話器を神妙に受け取るアンドレア。
アン ドレアを気遣って離れるサラ。
 アンドレアの性格を知り尽くしてい るサ ラらしい行動だ。
サラが離れるのを確認しながら壁の方を向き、
ア ンドレア「ジュ リア」と心を込めて呼びかけ、
「おれのかわいいジュリアか」
と続けるアンドレア。
体調を案じるジュリア に、頭に 手を遣りながら、
ア ンドレア「も ち ろんだ
ありがとう ジュリア」
と答え、
「お前のことを考えてた」と打ち明けるアンドレア。

ジュリアからの返答に、
ア ンドレア「今 だ よ」と答えるアンドレア。
「そうだ」と言い、
サラの 方に 体を向け、
ア ンドレア「マ ル チェロも来てるよ」と嬉しそうに言うアンドレア。
サラ「…」
アン ドレアを見ているサラ。
サラ を見ながら、
ア ンドレア「母 さ んが言ったか
今 奥で踊ってるんだ」
と話し、
壁の方に向きを変え

ア ンドレア「大 勢  来てる
お前にも見せたいよ」
と続けるアンドレア。
嬉しそうに頷いてアン ドレ アを見ているサラ。
ア ンドレア「同 僚 も みんな
来てくれたんだ
これこそ わが家だ
お前は来てくれるのか」
と頭に手を遣りながら言うアンドレ ア。

 泣いている。
サラの方をちらりと見て、

ア ンドレア「ミ サ のあとか
レナートも一緒だな」
と言うアンドレア。
驚いて聞いているサラ。
サラの方を見て、
アンドレア「ぜ ひ 2人で来い」と言い、
壁の方を向き、

「お前が来れば家族が
全員そろうんだ」
と言いとサラの方を ちらりと見て流れる涙を手で拭い受話器を静かに置くアンドレア。
優 しく見つめているサラ。

『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ、ルイ ザ・デラ・ノーチェ

思 いを込めてサラに近寄り抱き締めるアンドレア。
優しく体を擦るサラ。

 何も言わなくても分かり合える夫婦 像が 描かれている。
 喜びを分かち合っている2人の姿が胸を打つ。


〜サラ〜

客たちが帰り、フィアンセを送って行くマルチェロと、兄について行くサンド ロ。
アンドレアとサラの2人だけになる。
体を支えているサラに、
ア ンドレア「こ ん な楽しいクリスマスは
いつ以来だろう
客が何人来たか分かるか?」
と言い、笑うアンドレア。
サラ「見 当 もつかない」と笑って答えるサラ。
ア ンドレア「な る ほどな
病気のお陰で
人の温かさが分かった」
と言うアンドレア。
嬉 しそうに頷き、
サラ「も う 休んで」と言うサラ。
ベッドに腰掛け靴を脱 ごう とするアンドレア。

サラ「私 が ほどくわ
今日は疲れたでしょ」
と言い靴紐を解いてやるサラ。
自分ですると言うアンドレアを制止、紐を解くサラ。

ア ンドレア「…」
サラを愛おしく見つめ、
ア ンドレア「ど れ どれ
お前も白髪が増えてきたな」
と言うアンドレア。
笑 いながら頷くサラ。
サラの顔に触れ、
アンドレア「年 を 取った」としみじみと言い、
サラの首に手を回し自分の方に向け、

ア ンドレア「だ が  きれいだ」と言うアンドレア。
恥ずかしそうに立ち上がって寝室から出て行こうとするサラ。
  嬉しそうだ。
出て行こうとするサラを引き寄せ、
ア ンドレア「今 も 変わらず好きだよ」と言うアンドレア。

サラ「休 ん でて
コーヒーを入れてくるわ」
と言い、台所へ向かうサラ。
服を脱ぎながら、思い立ったように、

ア ンドレア「ギ ターを持ってきてくれ」と言うアンドレア。
返事するサラ。

ベッドに横になるアン ドレ ア。
サラ「疲 れ ないようにね」と言いながらギターをアンドレアに渡し寝室を出 るサラ。
心の平安を得たアンド レア がベッドに横になったままギターを弾きだす。


『鉄 道員』ピエトロ・ジェルミ
アンドレア「お 前 だけにささげる セレナーデだ」と台所のサラに言うアンドレア。
台所から寝室の方を見ながら微笑みコーヒーを 入れ る準備をするサラ。
ア ンドレア「サ ラ」と言うアンドレア。
サラ「何 よ」と準備しながら答えるサラ。
ア ンドレア「ジュ リアが来ても もうあの話はするな
何もないフリを」
と言うアンドレア。
準備しながら、
サラ「い い わ」と答え、
「マ ル チェロが就職したら
新しいコンロを買ってよね」
と続けるサラ。

アンドレア「オー ブンもな」と言うアンドレア。
サラ「病 気 が治ったら みんなで
あのご老人を訪ねましょ
マルチェロの恩人よ
晴れた日曜に押しかけるの
ジュリアもね 旅費はかからないわ
毎年 切符をもらうけど
使ったことがない」
と準備しながら話すサラ。
ア ンドレア「…」
ギターの音がしないのに気がついたサラが、
サラ「あ な た」と寝室の方に向かって言う。
アンドレア「…」
ギターを弾いていたアンドレアの手が止まっている。
サラ「眠っ たの?」と言うサラ。
眠るように息を引き取 るア ンドレア。
眠っ てしまったのだと思い微笑み台所の椅子に腰掛けるサラ。
  お湯が沸くのを待っている姿が幸せそうだ。


“最後 にパパに会えなかった
でも優しい顔だったらしい
ジュリ ア姉さんが来て
パパの死に顔を見たときも
笑顔を浮かべて 眠ってるようだったと”


〜出発〜

マルチェロが仕事に行く身支度をして い る。
壁にアンドレアの愛用のギターが掛けてある。
パ パが いなくなって もう随分たったけど
ママは家が広くなったと言ってる
僕は毎朝 起きるとすぐに
パパのベッドを見に行く
大急ぎで 朝ごはんを食べてると
ヒゲをそるパパの声が
聞こえてくる
「急げ 列車は
待ってくれないぞ」って”

階段でマルチェロがあの口笛を吹いてサン ドロを呼ぶ。
  マルチェロにも引き継がれた。
走って階段を下りるサンドラに踊り場で、
サラ「サ ン ドロ」と呼ぶサラ。
戻ってサラとハグするサンドロ。

サラ「マ ル チェロ」と言うサラに答えるマルチェロ。


『鉄道員』エドアルド・ネヴォラレナートー・スペチアーノ

マルチェロとサンドロを見送り、呆然としているサラ。
仕事に行く近所の人が、

近 所の人「奥 さん」と挨拶して階段を降りて行くのも気づか ないで いる。
 夫の存在の大きさを表している。
 子供たちが出掛けた後のサラの姿が垣間見れる演出だ。

『鉄道員』ルイザ・デラ・ノーチェ

電車に乗ったマ ルチェロがサンドロに手 を振って仕事に行く。
マルチェロに手を振り、ちょっぴり寂し そうに学校に向かうサ ンドロの頭を同じ小学校の子が、
小 学生「マ ルコッチ」言 いながら手荒く小突いて走 り去る。
アンドレアの声を感じたサンドロは、その声に応えるように上を向き駆けて登校する。

『鉄道 員』エドアルド・ネヴォラ
Top

 
家族と 仲間との結びつきを取り戻したア ンドレアがベッドに身を横たえ愛用のギターを弾きながら、眠るように安らかに息をひきとる シーンからサンドロ少 年が元気に駆けて登校するラ ストシーンへの流れが特に印象深く好きだ。
 心地よく響く
口笛とともにメロディーが一体 となっている

 
戦後の貧しい庶民を常に温かい 眼差しで描いてきたジェルミは“乾杯”と口笛”に心情と繋がりを意識的に演出した。
 作品を見終えたときに
哀 愁漂うメロディーとともに、それらが脳裏に焼きつい ているの はそのためであろう。

 
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参 考文献
監 督
サ イトマップ
映 画ありき2
映画ありき

〜クラ シック映画に魅せら れて〜
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