新・ ヒッチコック劇場
-Alfred Hitchcock Presents-
脱獄囚狂宴(きょう えん)
-Prisoners-
         
     アルフレッド・ヒッチコック

※ストーリーを載せていますので、TV映画をご覧になっていない方は、ご了承下さ い。

  土足〜〜クッション〜〜開放〜〜電話〜〜別れ〜〜脱出 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに :終わりに] web拍手 by FC2
(1980年代)(米)(TV映画)-Prisoners-
演出…クリストファー・クロウ
制作…レビュー・スタジオ(米)
原作…S・R・ロス
脚本…ジョン・バイラム
ストーリーテラー…ア ルフレッド・ヒッチコック
声…熊倉一雄(ア ルフレッド・ヒッチコック)
翻訳…鈴木導

閑静な住まいで、
ジュ リー…「お早う ミスターチップス
ちょっと お庭を見せてあげましょうか」と ジュリーが小鳥に話しかけている。


『脱獄囚狂宴』

「今朝も 外はいいお天気」と 言いながら窓際に籠をかけてやる主婦ジュリー。

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〜 土足〜

そこに脱獄囚ジャックが押し入ってくる。
くっ きりと付いた足跡に驚き手に持っていたガラスの器を落すジュリー。
“ガシャン”
隠 れていたジャックが現れる。
ジュ リー…「アアッ〜」
ジャッ ク…「声を出すな」
ジュ リー…「ア アッ」
ジャッ ク…「他に誰かいるか」
ジュ リー…「いないわ 誰も」
ジャッ ク…「亭主は何時に帰る」
ジュ リー…「ア〜 やめて 4時よ」
ジャッ ク…「ガキは?」
ジュ リー…「お願い」
怖 がるジュリー。
食 べ物と服と車を要求し、暗くなるまでの隠れ家にすると言うジャック。

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〜クッション〜

怖いと思いながらも自分に話しかけてくるジャックに次第に心を許すジュリー。
「潔癖で人嫌い、それに忙しい夫グレンと7年で4回も引越す生活 をしているので友達をつくるのは難しい」と言うジュリー。


『脱獄囚狂宴』

閉じ込められた世界にいるジュリーに、自分が経験したことと共通のものを感じそこから 抜け出させようとするジャック。
そ の世界の象徴のような生活感のない部屋に置かれた、カバーされたままのクッションを切り裂いてしまうジャッ ク。


『脱獄囚狂宴』

そして、何時も独りでいるジュリーの生活を聞いているうちに同情する。
ジャッ ク…「なあ 奥さん
クッションのことは 悪いと思っているよ
外が暗くなったら この家を出てゆく
だけど俺がいなくなっても
あんたはここに入るのが怖いんで
昨日までの俺と同じで
この家に閉じ込められ た囚人だ
俺は逃げ出してきたよ
二度と戻らないと 言いジュリーに、この生活から抜け出させようとするジャック。
ラ ストシーンでジャックが語るように「人 間は閉じ込められるために創れたんじゃない」と言う思いが強いからだ。

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〜 開放〜

時間が経過し、テレビを見ながら居眠りしているジャック。
ジャッ クの目の前のソファーをジュリーが切りつける。
そ して、吹っ切れたように、
ジュ リー…「ウフフフフ アッハハハ ハハ」と 笑い出す。

掃除が行き届いた部屋のソファーを切り刻み羽を散蒔いて、
ジュ リー…「アッハハハ アッハハハ
ハハ アハハハ
こんなに笑ったのは  初めて
お腹が痛い ハハハ  ハハ アハ
本当に あなたが初め てのお客さん」と 大笑いしてはしゃぐ。


『脱獄囚狂宴』

「ウフフフ」
片 手にはウィスキーのボトルを持ちがぶ飲みしているジュリー。
ジャッ ク…「ウフフフ ヘヘヘヘ」
そ んなジュリーを見てにこやかに笑ってウィスキーを飲むジャック。
ジュ リー…「ねえ 長椅子に戻って もう一度 やらない?」と 目を輝かせて言うジュリー。
ジャッ ク…「ウフフフ」
ジュ リーを見て笑っているジャック。
ジャッ ク…「やるか」
ジュ リー…「ああ よかった
行きましょ」と 飛び上がって喜びジャックの手を引っ張って長椅子の方へ連れてゆくジュリー。
部 屋を見渡しジャック。
ジャッ ク…「はっきり言うけど 酷い散らかり ようだ」
ジュ リー…「アッハハハ 居心地は
ずうっと よくなったでしょう」と 嬉しそうに言うジュリー。
テー ブルに広げているゲームを再び始める。

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〜 電話〜

すっかり意気投合するが、次第に別れの時が迫ってきていた。
行 き先のことを話すジャックに、「自 分を人質にして 連れて行ってくれ」と頼むジュリー。
「忙しい夫は 何処にも連れて行ってくれないし 一人では行けな い」と言って。
変 だと思いながらも連れて行くことにするジャック。
嬉 しそうに荷物をまとめて一緒に出て行こうとするジュリー。
ジュ リー…「ジュリーとジャックの
気ままな二人旅の 出発なのね」と ウキウキしているジュリー。
“リリリリリン〜 リリリリリン〜”
電話が鳴る。
を 向いて荷造りしているジュリーは反応を示さないでいる。
電 話に出ないでいるジュリーに、
ジャッ ク…「電話に出ろ」と 言うジャック。
下 を向いたままのジュリーは、なんの反応も示さないで荷造りを続けている。
ジャッ ク…「ええっ」と 怒ってジュリーを強引に電話のところに連れてゆくジャック。
驚くジュリー。
ジュ リーの両腕を掴んで、
ジャッ ク…「電話に出るんだ!」と 声を荒げて言うジャック。
ジュ リー…「ダメよ」と 言うジュリー。
ジャッ ク…「誰も出なきゃ 怪しまれるじゃな いか」と 言うジャック。
ジュ リー…私は電話には 出られないのよ」と 言うジュリー。


『脱獄囚狂宴』

ワザと言っていると思ったジャックは、銃を突き付け、
ジャッ ク…「なあ いいか
こういうことは したくないけど
命がかかってんだ
わかってんだろ」と 言うジャック。
ジュ リー…「でも…」
ジャッ ク…「文句言わずに
俺の言う通りにしろ!」
ジュ リー…「でも あなた 知らないのよ」
ジャッ ク…「いいから 出ろ」と 言い受話器をジュリーに渡すジャック。
ジュ リーに向かって小声で、
ジャッ ク…「言う通りに 言え」
電 話口から、
グ レンの友達クレーバー…「ああ グレンか
私はクレーバーだ」と 言う声がする。
小 声で、
ジャッ ク…「違うって  言え」
戸 惑うジュリー。
受 話器を押し小声で、
ジャッ ク…「早く 言 え」
ジュ リー…「そうじゃないわ ジュリーよ」
グ レンの友達クレーバー…「ジュリー?」
小 声で、
ジャッ ク…「留守だって 言え
帰りが遅く なる 10時過ぎだって」
ジュ リー…「グレンは 今 留守なの
帰りは 10時過ぎになるわ」
グ レンの友達クレーバー…「何かあったんじゃ ないか」
小 声で、
ジャッ ク…「何もないと 言って 早く電話を切るんだ」
ジュ リー…「変わったことは 何もないわ
悪いけど お料理をしているところなんで
電話切るわね」
受 話器をジュリーから取り上げて電話を切るジャック。
ジャッ クを見ているジュリーに、
ジャッ ク…「ああ 誰からだ」と 言うジャック。
ジュ リー…「きっと グレンのお友達だと思う わ
ゴルフに誘おうと したんじゃないかしら」と 沈んだ表情で言うジュリー。
ジャッ ク…「すまなかった」と 頭を垂れるジャック。
ジャッ クを見ているジュリー。
ジャッ ク…「俺は危険を冒すわけには
いかないんでい」
ジャッ クを見ているジュリー。
ジャッ ク…「つい 大声を出してしまった」
ジャッ クを見ながら、
ジュ リー…「もう いいのよ」と 言い視線を落すジュリー。
ジャッ ク…「テレビでも 見るかい」
視線を落しているジュリー。
ジュ リー…「…」
ジャッ ク…「ああ〜」
反応がないジュリーを見てうな垂れるジャック。


『脱獄囚狂宴』

Top

〜 別れ〜

外が暗くなる。
ジャッ ク…「ああ 暗くなった
そろそろ 出掛けた方がよさそうだな」
ジュ リー…「そのようね」
ジャッ ク…「まだ 怒ってんのかい」
ジュ リー…「別に」
ジャッ ク…「捕まるのが怖いんで
つい 手荒なこと しちまったんだい
ムショには 戻りたくねぇ
あんたは どんな所か知らねえだろ」
ジュ リー…「もう いいのよ」
ジャッ ク…「ああ〜
もう一度考え直して
一緒に行かねえか」
首 を横に振るジュリー。
ジュ リー…「やっぱり 止めるわ」
ジャッ ク…「それじゃ 達者で長生きしてくれ よ」と 言い立ち去ろうとするジャック。
ジュ リー…「ねえ」
呼 び止めるジュリー。
立 ち止まってジュリーを見るジャック。
ジュ リー…「本当に行かなきゃいけないの」と 言いジャックを見ているジュリー。
ジュ リーに近づき、見詰めキスをするジャック。
ジャッ ク…「じゃあ 元気でな」と 立ち去って行くジャック。
そ のジャックの背に、
ジュ リー…「ありがとう」と お礼を言い涙を流すジュリー。

家を出るジャック。
見 送るジュリー。
ジャッ クがライトで照らされる。
警 官隊が包囲している。
銃 を捨てるように言う警官。
ジャッ クを見ているジュリーの方をちらりと見るジャック。
銃 を取り出すジャック。
銃 を捨てるように言う警官。
ジャッ クを見ているジュリーを見て、
ジャッ ク…「人間は閉じ込められるために
創れたんじゃない」


『脱獄囚狂宴』

と言い銃を警官隊の方へ向けるジャック。
狙 撃班から一斉に銃が発射され、ジャックが倒れる。
ジャッ クを見ているジュリー。
警 官隊が駆け寄ってきているのを見て状況を把握したジュリーが家の中に入ってゆく。
射 殺されたジャックに駆け寄った警官隊の指揮官が、
指 揮官…「こいつがあんなヘマをするとはな」
警 官…「ヘマとは」
指 揮官…「ふん ジュリーさんは耳が悪い」
警 官…「だから」
指 揮官…「唇を見なきゃ
相手の言うことが分か らない
電話で話せるはずがな い」と 言いジュリーが入っていった家の方を見る。

そうだ、ジュリーは聴覚障害者だったのだ。
読唇だけが相手の言いたいことを推測する手段だったのだ。

あの電話に出るまでは、そのことを忘れてしまう程、開放されていた。
初めての客、いや、初めて対等に接してくれているジャックといるのが楽しかった のだ。
だが、あの電話に出させたジャックが聞こえない世界の現実に引き戻してしまった
時間を急いだジャックは、ジュ リーの幸せな時間を切ってしまった。

Top

〜 脱出〜

部屋に入ったジュリーが、鳥籠とトランクを持って外へ出る。
籠を開け小鳥を取り出しキスをして高く飛び立たせる。


『脱獄囚狂宴』

そして、ジュリーもトランクを持ち屋敷、いや牢から出てゆく。
独りで。

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 このドラマはヒッチコックが冒頭で言っていたように対比が楽しめる。
  家に閉じこもっている孤独な主婦ジュリーは自分の相手をしてくれる脱獄囚ジャックと、このまま、ずっと一緒にい たいと思う。だが、ジャックは追われている身なので逃げなくてはならない。
  また、聞こえないことを知られたくないジュリーは、唇をしっかり見て聞こうとしている。
  二度と囚われたくないジャックは、開放された世界のことばかり考えているため、ジュリーをじっくり見ていない。
  そのため聞こえていると思い込んでいる。
  そう、そこには全て時間が関係している。
  時間があるジュリーと、時間がないジャックという。

 そして、もう一つ、囚われるより死を選択するジャックと、死んだジャックに手錠をか けさせる隊長といったような、囚われたくない者と捕らえたい者といったものもある。

更新2007.6.30.
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ヒッチコックがデザインしたという似顔絵

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参考文献
ヒッ チコック劇場
新・ ヒッチコック劇場
ア ルフレッド・ヒッチコック
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